実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
通気性、換気性を増した最新モデルは完成度“高”

日本の山岳条件に合わせて開発! 最小重量1.18kgの2人用テント、ニーモ「タニ 2P」


数年前から人気が継続しているテント泊山行。最新の素材と構造によって軽量化と収納時のコンパクト化が進み、バックパックに入れて持ち歩く際の負担が少なくなったことが、その人気に拍車をかけている。

今回ピックアップしたテントは、アメリカのメーカー「ニーモ」の「タニ 2P」だ。2012年に発売開始された「タニ」シリーズはいまや同社の大定番となり、2017年まで「タニLS」という改良モデルが販売されていた。そして、今年のリニューアルで「LS」が外され、発売当初と同じシンプルな名称に。名称こそ昔のものに戻っているが、実際は最新の製品なのである。

超軽量になった「タニ 2P」の付属品をチェック

タニ 2Pの最小重量(ペグなどの付属物を除いた、インナーテント、フライシート、ポールの重量)は、なんと1.18kg。これで2人用とは、まさに超軽量だ。最初期の「タニ2P」は約1.5kg、昨年までの「タニ2P LS」でも1.23kgだったことを考えれば、最新の「タニ 2P」は大幅な重量減を実現したことがわかる。

詳細は後述するが、「タニ 2P」はいわゆる「自立型」で「ダブルウォール」のテント。日本の山で使いやすいタイプである

付属のスタッフバッグに収納した状態。上の小さい袋にペグ、細長い袋にポール、そして左側にある丸みを帯びた袋にインナーテント(テントの本体)とフライシートが入っている

左がインナーテントで、右がフライシート。インナーテントはナイロン、フライシートはシルナイロンという素材の違いはあるが、どちらも15デニールという極薄の生地を使用している。ちなみに、これらを収納するスタッフバッグは防水性で、雨に濡れたテントを入れても水分が外部に流出しない

ハブで連結されたポールは、同じ長さのものが2本。素材は軽量なDACで、設営時はバネのようにしなやかに曲がる

付属のペグは曲がりにくく、折れにくいジュラルミン製。指をかけて引き抜きやすいように、頭の部分には赤いコードがつけられている。ただし、本数は5本のみ。テントの四隅と前室部分という本当に最低限の部分のみにしか使えず、張り綱(ガイライン)なども含めると、あと7本も足りない。自分で足せばいいとはいえ、付属品としては少々不親切といわざるを得ない

山中での破損に備え、リペア用の付属品も。左はインナーテントやフライシートが破れた時に貼り付ける粘着性シートで、右はポールが折れた時に使う金属スリーブである

テントは大きく4タイプに分類される

タニ 2Pについて確認する前に、テントの基本構造をおさらいしておこう。大切なのは、「自立型」と「非自立型」、「ダブルウォール」と「シングルウォール」の違いである。

テントには、テント本体とも言うべきインナーテントにポールを組み合わせただけで立体化する「自立型」と、組み合わせたあとにペグで地面に固定しないと立体化しない「非自立型」がある。そして、インナーテントに雨除けのフライシートをかけたものを、外界と内部との間に壁が2枚になることから「ダブルウォール」テントと呼び、フライシートを省く代わりに(インナー)テントに防水性を持たせたものを、壁が1枚しかないので「シングルウォール」テントと言う。ちなみに、インナーテントとは、テントがダブルウォール構造の場合、フライシートの内側に位置することからの呼称であり、シングルウォール構造ならば実際にはインナーではなく、テントそのものと考えてほしい。

これら2つの要素をかけ合わせると、テントは「自立型&ダブルウォール」「自立型&シングルウォール」「非自立型&ダブルウォール」「非自立型&シングルウォール」の4タイプに大別される。

「タニ 2P」には設営しやすい工夫が満載

今回紹介するタニ 2Pは、「自立型&ダブルウォール」のテントである。日本の山のテント場には地面が岩や小石で覆われている場所も多く、ペグ打ちしなければ立体化しない非自立型は少々使いにくい。また、高温多湿な日本の夏は雨が多いため、雨除けのひさしとなるフライシートがあるほうが浸水に強く、インナーテントとの間にできる「前室」というスペースにブーツなどを置くこともでき、使い勝手がいい。そういう意味で、「自立型&ダブルウォール」は日本の山にもっとも適した構造なのである。

そのうえ、タニ 2Pには設営しやすいようにいくつかの工夫がなされている。インナーテントとポールの組み合わせは「吊り下げ式」。インナーテントに取り付けられているフックをポールにかけるタイプである。以前の主流は、インナーテント外側に付けられた細長い袋状部分にポールを差し込む「スリーブ式」だったが、吊り下げ式のほうが直感的に設営でき、初心者にも使いやすい。ポールの末端もインナーテントのパーツに1度ハメたら簡単には外れない形状となっており、ストレスなく設営することができる。

使用されているフックは最新タイプで、片手で簡単に脱着可能。タニシリーズの旧タイプよりも小型で軽量になっている

ポールの末端は小さなボールのような形状になっており、インナーテントのフロア(床部分)の隅にあるパーツのくぼみに差し込むだけで、しっかりと固定できる

インナーテントにポールを組み合わせただけの状態。インナーテントのスペースの広さは、220(幅)×130(奥行)×最大104(高さ)pとなっている。なお、同シリーズには1人用の「タニ 1P」もラインアップされており、広さは202(横)×105(奥行)×最大103(高さ)p

フライシートをかけると、インナーテントとの間に「前室」という土間的なスペースができ、最大で80pの奥行きになる。1人用「タニ 1P」の最大奥行きは75pだ

そして、タニ 2Pはより使いやすく快適になるようにディテールの変更も行われている。その目的のひとつが通気性の向上。今回のリニューアルで、さらに新しい工夫が加わった。具体的に言うと、フライシートと地面の隙間を強制的に広げ、より多くの風を取り込めるようにしているのだ。

フライシートを外側に取り付けた状態だが、ひとつ上の写真との違いがわかるだろうか?実は中央のファスナーよりも右側の部分のみ、20cmほど地面よりも短くなっているのである

地面よりも短くなった部分をテント内部から見た様子。ファスナー近くにある小さなループにフライシート末端のトグルをかけると、地面との隙間が広がるのだ。これにより、テント内部への直射日光を防ぎつつ、通気性の向上が見込まれる

タニシリーズは、もともとベンチレーターに関するディテールが充実しているが、今期はさらに工夫を凝らし、換気性がますます向上している。湿気の多い日本の山ではありがたい。

テント内部から外を見た様子。インナーテントの入り口の下部は、メッシュとの2重構造となっており、暑い時は開き、寒い時は閉じて使える

外からの光でインナーテントの色までグリーンになってしまっていてわかりにくいが、右下の部分のみテント内部から見たフライシート。フライシートのファスナーはダブルタイプで、上部だけ開き、バー状のパーツで強制的に開くことで換気をうながせる

同じくテント内部から外を見た様子だが、こちらは入口とは反対側。インナーテントのベンチレーターの位置はフライシートのベンチレーターの位置と重なり、外気が2枚の壁を越え、直接内部に流れ込む

上の写真と同じ部分を外側から見た様子。フライシートのベンチレーターはバー状のパーツで広げられ、雨水などが付着してフライシートが重くなっても閉じてしまうことはない

実際に「タニ 2P」でひと晩過ごして感じたこと

通気性、換気性を増したタニ 2Pは、従来モデルよりも快適である。今回のテストでは、テント内部の温度が上昇しないように陽が当りにくい場所にテントを設営したが、それでも日中はかなり蒸し暑かった。だが、ベンチレーターの新しい工夫もあってか、ひとたび風が吹けば涼しい空気がテント内に流れ込むのがよくわかる。テントの重量を1s少々に抑えながら、ここまでベンチレーターの機能を向上させるとは、感心させられた。

そんな最新モデルのタニ 2Pには、ベンチレーター以外の進化も見受けられる。僕はタニシリーズの旧タイプをこれまで使っていたが、いくつか不満がなかったわけではない。たとえば、インナーテントとフライシートがくっつきやすいことや、パーツの一部の接着部分がはがれて取れてしまうことだ。だが、最新モデルでは僕が気にしていた点がいくつか改善されていた。

以前はフライシートの下部にしかなかったコードが、最新モデルではインナーテントにも装備。これらを連動させてペグで固定すると2枚の壁の隙間が広がり、雨天や夜間の結露によって生じるフライシートの水濡れがインナーテントに移りにくい

フライシートを巻き上げて留めるためのトグルと平たいテープ。従来はこのテープが接着剤で貼り付けられていたため、経年劣化ではがれ、フライシートを留められなくなるという問題が多発していた。だが、最新モデルは縫製で固定。もう剥がれ落ちる心配はない

フライシートの濡れがインナーテントに移りやすく、フライシートを留めるパーツが剥がれ落ちるといった問題が解消され、タニシリーズはより使いやすいものになった。いっぽうで、地面からの浸水を避ける工夫や使いやすい居住空間などといった従来からの長所は受け継がれている。

インナーテントのフロアの中央部分は少し浮き上がるようにデザインされ、縫製部分は宙に浮いている。そのため、大雨でテントの下まで水が流れるような事態になっても、内部に浸水を起こしにくい

インナーテントのグレーの部分は防水性の生地。雨濡れに備えて、かなり高い位置まで使われている。その上は通気性を考えた極薄の素材だ

本来は2人用だけのことはあり、全身サイズのマットひとつを置いただけでは余裕がありすぎるほど。ただし、実際に2人で使うと、それほど広いわけではない

横幅が220pもあるので、平均的な身長の男性ならば、分厚い寝袋に入った状態でも頭や足がテントの壁につくことはない。サイドに大型バックパックを置いても狭苦しくはならず、居住性は上々だ

前室の広さも十分。サンダルとブーツの2足、さらにはクッカーやボトルなどを置いても余裕がある。この状態からさらにフライシートが地面に近付くようにペグを打つと、ますます雨から道具類が守られる

山行を終えて

ニーモはアメリカの会社ながら、このモデルに「TANI(=谷)」という名称を付けていることからも想像できるように、日本の気象条件に合わせたモデルの開発を手がけている。今回のリニューアルでタニシリーズの完成度はますます高まり、北アルプスのような夏でも寒冷な高山から、蒸し暑い低山まで幅広い山域で使いやすくなった。ある意味、日本の山岳条件に向いたテントとして、ひとつの完成形に近づいたと言えなくもない。だが、それを認めたうえで、僕なりの視点で改善してほしいことをひとつだけ指摘したい。

先に述べたように、リニューアルされたタニ 2Pの最小重量は1.18kg。最初期の2012年モデルは約1.5kgなので、驚くべきことに300g以上の軽量化が実現している。使用生地を15デニールの極薄にしたことが、その大きな要因のひとつだ。

それがフライシートやインナーテントの上部であれば、まったく問題はない。しかし、地面に触れて穴が空きやすいインナーテントのフロアまでまったく同じ薄さにする必要はないのではないか。そのまま設営すれば一度使うだけで穴が空きかねず、実際には地面との上に何らかのシート状のものを敷き、テントのフロアを守らねばならない。そうしなければ、雨の時にはすぐに浸水してしまい、現実的ではないのである。

つまり、グラウンドシートを併用するのが前提の素材になっており、あまりに軽量化を推進したためにフロアの生地の強度が損なわれていると思わざるをえないのだ。タニ 2Pには純正のオプション品として「フットプリント(グラウンドシート)」も販売されているが、これを合わせて使うと総重量は1.18kgをはるかに上回る重さになり、せっかく軽量に作った意味がまったくなくなる。

次にリニューアルすることがあれば、フロアだけは少し厚みのある丈夫な生地を使ってほしい。その結果、重量が1.3〜1.4kgくらいになっても、2人用では十分に軽量なテントであることは変わらず、なにより破損を怖がらないで、安心して使えるだろう。

とはいえ、やはり今期のタニシリーズの完成度が高さは間違いない。リニューアル前のタニLSを愛用していた僕は、今後はこのリニューアルバージョンも使い、さらに細かい部分の耐久性までチェックしていきたいと考えている。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る