レビュー
旅をすることを目的に開発されたキャリア付き電動アシスト自転車

自転車旅にはe-Bikeもあり! ヤマハ「YPJ-TC」で、峠込み約70kmの長距離を走ってみた


真夏に自転車で長距離を走るのは熱中症になる可能性が高くなるので、できれば日中の走行は避けてほしいところだが、長期休暇が取れる夏休みだからこそ、ロングライドをしてみたいという人もいるだろう。そこで提案したいのが、普通の自転車よりも疲労感が圧倒的に少なくて済む、電動アシスト自転車を使ったサイクリングだ。近年は大容量のバッテリーを搭載し、かつ、スポーツタイプの自転車のような軽快な乗り心地の電動アシスト自転車も登場している。今回は、その中でも“自転車旅”に適したヤマハ「YPJ-TC」で、実際に長距離ライドに挑戦してみた!

●熱中症にならないための対策が知りたい人は、こちら!

「YPJ-TC」がロングライドに適する理由

電動アシスト自転車はアシストのおかげでラクに乗ることができるものの、その半面、バッテリーやアシストユニットなどを搭載した車体は普通の自転車よりも重く、バッテリーが切れると快適さは一変する。バッテリーを大容量にすればアシスト可能時間を延ばせるが、車重は増え、バッテリーの存在感によって自転車としてのかっこよさも損なわれてしまうというジレンマがあった。しかし、いちじるしい技術の進歩で、近年は小型で大容量なバッテリーやアシストユニットが開発されたこともあり、アシスト最大距離100kmを実現する電動アシスト自転車もめずらしくない。

ただ、ロングライドするなら、アシスト距離だけでなく乗り心地も重視すべき。普通の自転車でも、シティサイクルタイプよりロードバイクなどのスポーツタイプの自転車のほうが長距離走行に適していることからわかるように、電動アシスト自転車も長距離を走るならスポーツタイプを選ぶほうがいい。かつ、スポーツタイプのフレームに、専用に開発されたアシストユニットを搭載した「e-Bike」なら、車重は比較的軽く、ペダルを漕ぐ感覚も自然。今回ピックアップしたYPJ-TCも、そんなe-Bikeにカテゴライズされる。

サイズ(S/M/L)は1,810/1,810/1,825(全長)×590(全幅)mmで、重量は22.3/22.6(M、L)kg

サイズ(S/M/L)は1,810/1,810/1,825(全長)×590(全幅)mmで、重量は22.3/22.6(M、L)kg

数あるe-Bikeの中でYPJ-TCを“自転車旅”の相棒に選んだ大きな理由は、キャリアが標準装備されている点。電動アシスト機能を搭載しないスポーツタイプの自転車でもキャリアを備えている車種は少ないように、e-Bikeも同様の傾向となっている。ただ、このキャリアは一般的なものよりスリム。というのも、純正アクセサリーの「ドライサイドバッグ 40(メーカー希望小売価格12,744円・税込)/ドライサイドバッグ 20(メーカー希望小売価格11,664円・税込)」を装着することを前提にしており、ドライサイドバッグを付けた際の収まりのよさなどを考慮して、このような細めのキャリアとされたのだ。ただ、価格が1万円強もするバッグなので、それならバックパッキング用のバッグを購入し、キャリアのない自転車に付けるのでいいと思われる方もいるだろう。しかし、ドライサイドバッグは形状的に収納の自由度が高く、YPJ-TCへの取り付けもカンタン! 初心者には、間違いなくとっつきやすい。しかも、キャリアの耐重量は25kg。たとえキャンプ道具を一式まとめたとしても、ひとり分で25kgにまでなることはないだろうが、耐重量めいっぱい積載しても制動安定性は損なわれないような車体設計となっているので安心だ。このほか、YPJ-TCにはアシスト最大距離237kmを実現する大容量バッテリー(36V/13.3Ah)や、ロングライドしても疲れにくいフラットハンドルが装備されるなど、長距離を快適に走るための工夫が随所に施されているのも長距離ライドに向いている。

リアに荷物を積めるキャリアを装備。キャリア後端にはテールライトを備えており、バッテリーからの給電で点灯する

容量20Lのバッグが2つ装備された、純正アクセサリーの「ドライサイドバッグ 40」。バックパッキング用のバッグは細長かったり、一部が細くなったりと形状が独特なため、慣れていないとパッキングが難しいこともあるが、ドライサイドバッグは普通のバッグに近い感覚で収納できる

●バックパッキング用のバッグの紹介だけでなく、バックパッキングの始め方もわかる記事はこちら!

ドライサイドバッグはキャリアに差し込むだけで取り付け完了! 装着方法は簡単だが、しっかり固定されるので走行中にグラつくこともない

なお、ドライサイドバッグは写真のようにグリップに手をかけて持ち上げると、ワンタッチで取り外しできる。付属のショルダーストラップを装着すれば、肩にかけて持ち歩くことも可能だ

スポーツタイプの自転車には装備されていないことが多いサドルスタンドも備えられている。荷物の積み下ろしをすることを考えると、非常にありがたい

ハンドルは、初心者でも操作しやすいフラットタイプ。エルゴノミックデザインのグリップが装着されているので、長距離走っても疲れにくい

フレームはヤマハオリジナルのアルミ製。「YPJ」シリーズのほかのモデルと共通かと思いきや、長距離走行に対応するため、YPJ-TCのフレームは穏やかなハンドリングになるように設計されているという

バッテリー容量は36V/13.3Ahで、バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで約3.5時間かかる。アシスト最大距離はハイモードで91km、スタンダードモードで112km、エコモードで153km、プラスエコモードで237km

バッテリー残量や速度、残りのアシスト可能距離などを表示するマルチファンクションメーターにはUSBポートも装備されており、スマートフォンをはじめとする電子機器を充電することもできる

マルチファンクションメーターで、ライトの点灯/消灯の操作も行う。ライトは後方だけでなく、フロントにも標準装備されており、バッテリーからの給電で点灯する

アシストユニットは、欧州で高い評価を得たコンパクトな「PWseries SE」を採用。高いケイデンス(ペダルの回転数)にも対応したスポーツタイプ向けのユニットだ。フロントのギアは2枚

うしろのギアは9段変速のシマノ製「SORA」グレード。クロスバイク用としては一般的なグレードだ

うしろのギアは9段変速のシマノ製「SORA」グレード。クロスバイク用としては一般的なグレードだ

フロントには、65mmストロークのサスペンションを装備。マウンテンバイク用ほどのストローク量はないが、多少の荒れた道でもものともしない走破性を持つ

ロードバイクと同じ直径のホイールに700×35Cという太めのタイヤを装着。未舗装路での走行にも対応できる表面パターンが施されている

ブレーキは少ない力で効力を発揮し、コントロール性にもすぐれる油圧式のディスクを採用

ブレーキは少ない力で効力を発揮し、コントロール性にもすぐれる油圧式のディスクを採用

前後輪に泥はねをカバーするフェンダーが装備されているのも、天気を気にせず走るロングライドにはうれしいポイントだ

約9kgの荷物を積んで旅に出発!

さっそく、YPJ-TCで旅に出てみよう! 宿に1泊する設定で着替えを用意し、撮影のためのカメラと三脚をバッグに詰めると重量は約9kgになった。奇しくも、この日は気温が35℃を超える猛暑。しかも、日差しが強い! 車重が22kg強の自転車に、これだけの荷物を積んで長距離を走るのかと思うと一瞬気持ちがひるんだが、仕事だからと喝を入れて行動開始!

荷物は、ドライサイドバッグ 40に収納。いろいろなモノを入れたが、収まりが非常にいい。ザックに入れて背負って乗ることもできるが、キャリアに積んだほうが体の疲れや不快感は大幅に軽減できる

そのほか、筆者所有のサドルバッグ(左)にパンク修理キットや工具などを収納。純正アクセサリーとして用意されていたボトルケ−ジ(右)も装備し、万全の状態で出発する

目指す地は、東京都と神奈川県の境にある大垂水峠の頂上。どこを起点にするかで数値は異なるが、東京都の高尾山口駅を起点にすると、大垂水峠の距離は5.8kmで、平均勾配は3.5%となる。たいしたことなさそうな坂に思われるかもしれないが、ヒルクライムのトレーニングとして利用している人もいるなかなかハードなコースだ。

この峠の頂上にたどり着くには、筆者宅から30km走らなければならない。YPJ-TCのアシスト距離は最小でも91km(ハイモード)。往復しても、バッテリー残量は単純計算では問題ない。しかし、バッテリーの消耗は傾斜が強いほど激しくなるため、余裕を持って行程を決めないと、帰り道はアシスト機能なしとなってしまう。もろもろを考慮した結果、今回は112kmアシスト可能なスタンダードモードで走ることに決めた。なお、電動アシスト自転車は時速10kmまではフルパワーでアシストしてくれるが、以降は徐々にアシストは弱まり、時速24kmでゼロになる。バッテリーの消費具合を調べることがこの企画の目的なので、時速10km以上、24km以下の速度でのんびり走ってみよう。

グリップのエンド部分を写真のように握ることもできるのは、ポジションが変えられるのでラク! 長い距離を走るのにはありがたい形状だ

走り出してみると、スタンダードモードでもアシストは十分にパワフル。シティサイクルタイプの電動アシスト自転車と異なり、出だしのアシストがおだやかなうえ、ペダルを踏んだ力にアシストが上乗せされている感覚でスムーズに加速できる。峠はまだまだ遠いものの、道はすでにやや登り基調だが、体力の消耗はそれほど感じない。とはいえ、アシスト機能があっても異常な暑さで、汗がすごいことに。人の体は汗とともに水分や体内のミネラルが排出されるため、水を飲むだけでなく、塩分(ナトリウム)を含むドリンクや食材も一緒に摂るようにしないと熱中症やハンガーノックになりやすい。5分に1度は補給しながら走行しよう。

栄養食品を摂るのも効果的。また、アイスを食べて、体内から冷やすと気分的にもすっきりしていい(カロリーも摂取でき、一石二鳥!)

●熱中症やハンガーノック対策の詳しい情報をチェック!

約20kmを走った時点で、バッテリー残量を確認すると約88%。残りアシスト距離は97kmと表示されており、スタート時の112kmからほとんど減っていない。アシストが少ない速度をキープしながら走行すれば、少々の登りぎみの道であっても、バッテリーはそれほど消費しないようだ。

スタンダードモードのアシスト距離は112km。20km走ったのに、アシスト距離はたった5km分しか減っておらず、メーターの故障かと心配になった

と思ったのもつかの間、徐々に傾斜が強くなってきた。バッテリーがそれほど減っていなかったので、ここからはハイモードに切り替えてみる。

ハンドルの左手側に搭載されたスイッチで走行モードを切り替え!

ハンドルの左手側に搭載されたスイッチで走行モードを切り替え!

ハイモードにすると、さすがに漕ぎ出しから時速10kmくらいまではアシストが強力になったことを体感できる。とはいえ、まだ時速20km以上の速度をキープできるほどの坂道ということもあり、バッテリー消費も大きくなく、体にかかる負荷もほとんどないので「余裕〜」と軽快に漕いでいると、自宅から23kmを過ぎたあたりで目に見えて斜度がきつくなるポイントにさしかかった。ここからは、アシスト機能があってもスピードが出せなくなってくるのだが、軽めのギアを選択してクルクルと足を回してさえいれば、スルスルと坂を登って行けるので足に負担は感じない。速度は出ないが、楽さはあまり変わらない印象だ。

京王線の高尾山口駅を過ぎた辺りから結構な傾斜になったものの、アシストのおかげで体力の消耗はそれほどない

そして、出発してから約3時間後、大垂水峠のもっとも標高が高い地点に到着! 標高は392mで、使用したナビアプリによるとスタート地点からここまでの獲得標高は389mとなっていたので、それなりの高さは登っているようだ。YPJ-TCのメーターをチェックすると、走行距離はちょうど30km。バッテリー残量は77%で、スタンダードモードで86km、ハイモードでも70kmのアシスト走行が可能だと表示されている。出発前は、半分くらいはバッテリーを消費するだろうと思っていたので、予想以上の持ちのよさに感心した。

到達した記念に看板を撮影!

到達した記念に看板を撮影!

ちゃんとYPJ-TCに乗ってきた証明として、記念撮影もしておこう。意外なほど足は疲れていないが、暑さで体力は相当消耗したようで、けっこうグッタリ

目的地に到着した時点のバッテリー残量は77%。きつい傾斜の登り坂でも、思ったよりもバッテリーの持ちはいい

頂上付近にはゆっくり休憩できる場所もないので、そのまま帰路につく。帰り道は下りになるのだが、制動力の高い油圧ディスクブレーキが搭載されているおかげで、安心してスピードを乗せていける。約9kgの荷物と車重約22kg、そして筆者の体重を合算すると100kgくらいの重さになる状況で、下りの走行の安心感が高いのは非常に魅力的だ。

なお、走行中に受ける風が気持ちいいので、途中でルートを変えて多摩川沿いのサイクリングロードを走ることにした。少々遠回りになるが、バッテリー残量は77%もあるので家まで十分持つ。アシストパワーが強いハイモードに切り替えて、よりラクに走って帰ろう!

試しに、アシストがゼロになる時速24km以上の速度も出してみたが、この車重をアシストなしで走るのは結構つらい。アシストのありがたみを痛感した

帰りは行きとは違う道を走り、走行距離は少し長くなったが、約3時間で自宅に到着。本日走った距離を調べてみると68kmだった。登り坂も続いていた行程だったにもかかわらず、バッテリー残量は61%。ハイモードでも、あと67kmアシスト走行できるようだ。これなら、100kmを超えるロングライドも余裕でこなせるのでは!?

スマートフォンのアプリで記録していたログを見ると、けっこう標高差があるところを走ってきたことがわかる

スマートフォンのアプリで記録していたログを見ると、けっこう標高差があるところを走ってきたことがわかる

自宅の到着した際のバッテリー残量は61%。このバッテリー残量があれば、スタンダードモードで68km、ハイモードでも67kmをアシスト走行できる。ということは、このまま今回走行した距離にもう1度チャレンジできてしまうではないか!

マルチファンクションメーターでは消費カロリーもチェックできる。今回の消費カロリーは1,374kcal。電動アシストがあっても、意外とカロリーを消費していたようだ

まとめ

今回、約70kmの距離を走ってみたが、アシストが働く速度域で走ることを心がけていたこともあり、帰着時に足の疲れはほとんど感じなかった。車重の軽いロードバイク(アシスト機能非搭載)でも、登りを含めてこれだけの距離を走れば、筆者の場合、かなり疲れるのだが、暑さによる体力の消耗はあるものの筋肉の疲れは皆無に近い。もちろん、翌日に筋肉痛になることもなかった。このような話をすると、運動になっていないように思われそうだが、カロリーは消費している。電動アシスト自転車は、筋肉に負担をかける無酸素運動の領域をアシストしてくれるので、むしろ効率的に有酸素運動ができるという話を聞いたことがあるが、まさに、そんな感じの疲労感だ。

乗り心地については、申し分なし。ハンドリングがゆっくり曲がっていくので、荷物を積んでいても安定感バツグンだ。スピードは、アシストがゼロにならないように時速24km以下にしていたこともあり、それほど速いわけではないが、信号から信号までそれなりに距離がある区間を、本格的なロードバイクに乗ったライダーにあまり差がつかないまま走ることができた。荷物+車重で30kgを超える自転車で、どう見ても10kg以下のロードバイクについていけるのは、結構すごいこと。YPJ-TCの走行性能は、かなりすぐれていると言えるだろう。2018年8月9日時点の価格.com最安価格は298,080円とそれなりの値段はするが、YPJ-TCにはキャリアだけでなく、フェンダーも装備されているので街乗りにも役立つ。バッテリーの持ちも今回の検証では余裕すぎるほどだったので、自転車旅の相棒として活躍してくれるe-Bikeであることは間違いない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
関連記事
自転車のその他のカテゴリー
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る