実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
収納性と使い勝手がバツグンにいい小型バックパック

わずか368g! 登山からトレランまで幅広く使えるテラノヴァのバックパック「レーサー20プロ」


本格的に春が近付いてきた。深山にはまだまだ雪が積もっているが、暖かさを増した低山や里山には新緑が芽生えつつあり、軽装でも山歩きが楽しめる。そのお供になるのは、日帰り登山で気楽に使える小型バックパックだ。

機能性にすぐれた20Lの小型バックパック

今回、セレクトしたテラノヴァ「レーサー20プロ」は、2018年に発売されたばかりの新製品である。正確に言えば、これは人気モデル「レーサー20」のアップデート版で、しかも日本からの要望で作られた限定モデル。ちなみに、同社の現行のラインアップにはレーサー20自体も残っているが、こちらは完全にリニューアルされていて原型をとどめていないのが興味深い。

表面素材は極薄で、荷物を取り付けるバンジーコードなども非常に細い。その結果、容量20Lで368gという超軽量モデルに。しかも各部のポケットが非常に充実している

モデル名の「レーサー」という名前から想像できるように、もともとこのバックパックは山岳レースやトレイルランニング系の大会に出場する人が使いやすいようにと設計されたものである。レース用に必要な要素とは、バックパックを背負ったままでもモノが取り出せ、エネルギー補給もできる「収納性」、山中を走ったとしても荷物がブレない「フィット感」、そしてなにより「軽量性」だ。これらの長所はもちろん一般の登山にも有用であり、アップデート前のレーサー20が山歩き用のバックパックとしても人気であった理由にもなっている。では、新作「レーサー20プロ」をチェックしていこう。

フロントのファスナーは上下に大きく開き、奥のモノもすぐに取り出せる。このファスナーは止水タイプだが、本体自体は防水構造ではないため、あくまでも雨の影響を軽減する程度のものとして考えたい

このバックパックの収納性は驚くほどだ。荷室は大きく開いてモノの出し入れがしやすく、表面に付けられているポケットはなんと9か所。容量20Lの小型バックパックで、これだけ充実しているものもめずらしい。しかも背負ったままで、そのほとんどに手が届くのである。

両サイドには、小型のボトルを入れられるサイズ感のメッシュポケット。モノが脱落しないようにコードで留められるようになっている。フロントにも大きめのメッシュポケットが左右にあり、その上でバンジーコードが交差している。どちらも背負ったままで手が届く位置だ

伸縮性のバンジーコードには脱いだウェアなどを固定できる。コードロックで長さの調整もできるので、かさばるものにも対応可能だ

バックパックの底にはバックルで留められるループが2か所。ここにトレッキングポールなどの重いものを固定すると重心が低くなり、荷物の重さを感じにくくなる

フロントの右上にも大きめのポケット。両サイドやフロントにあるメッシュポケットとは異なり、完全に閉じられるので、大事なものを保管できる。このポケットのみ、背負ったままでは手が届かない

ショルダーハーネスにも左右に円筒状のポケットがある。小型のボトルやジェル系の食料も入れられるほど口径が広いのは、いかにもレース仕様だ。コードで留めればモノが落ちにくく、カメラを収めるのにも適している

止水ファスナーが使われているウエストハーネスのポケット。このポケットは小型バックパックにしては大きめで、余裕をもって地図やスマートフォンを収納できる

ポケットは表面だけではなく、内側にも設けられているが、1か所のみ。背中側に位置するハイドレーションシステム用のものである。多くのメーカーから販売されているハイドレーションシステムは、大型の水筒に長いチューブを組み合わせ、歩きながらでも水を飲めるようにしたものだが、水筒はどれも縦長の形状。これが背中側に入るというわけである。

ハイドレーションシステムの大型水筒から延びたチューブは、バックパック本体の小さなスリットから外に延ばせる

ショルダーハーネスのループを利用して、チューブを固定。いつでも水分を補給できる

ショルダーハーネスのループを利用して、チューブを固定。いつでも水分を補給できる

ハイドレーションシステムに対応したバックパックの場合、大半はレーサー20プロ同様に背中側へポケットを設けている。なぜなら、荷物の中でも特に重い飲料水は、背中側に配置するとその重さが体と一体となり、重心がブレずに歩きやすくなるからだ。さらにレーサー20プロは背面パッドが必要最低限しかつけられていないため、ここにやわらかな大型水筒が位置すれば、パット代わりになって背中への当たりがよくなるというメリットもある。

ハイドレーションシステムは便利な仕組みではあるが、チューブ内の水は外気と日光で温かくなり、生地が薄いレーサー20プロの場合は特に水筒の水へ体温が移りやすいので、僕自身はあまり使わないだろう。だが、このポケットにはたたんだレインウェアなども収納できる。すると、ウェアの厚みで背中のクッション性を増すこともでき、背負い心地はよくなりそうである。

レーサー20プロの背面構造。メッシュパッドは左右にあるだけで、中央は生地1枚だけ。この部分に硬いものを収納しておくと、背中に違和感を覚えてしまう。ハイドレーションシステムを使わない場合は、ウェアなどで対策を行いたい

パッドは薄手だが、吸汗性がよく、すぐに乾燥していくのがありがたい。ただし色が黒なので、汗を吸い込みすぎると塩を吹いて、白っぽく跡が残るのは避けられない

“山中を歩く、走る”の繰り返しで使用感を確認

僕はレーサー20プロを背負って、長々と山中を歩いた。実は、2世代ほど前のレーサー20を使っていたことがあるのだが、それよりもショルダーハーネスは肉厚になり、荷物の重さが肩に食い込む感覚が薄くなった印象だ。また、ウエストハーネスの長さは以前よりもプラスされ、フィット感も見た目以上である。ハイドレーションシステムは外してしまったので、内部の荷物が背中に当たる感覚は強かったが、前述したようにレインウェアを背中側に入れることにより、その問題も解決。無駄をそぎ落とし、わずか368gで作り上げたバックパックとしては十分すぎる機能性だ。

しかし、これは「レーサー」という名前を冠するモデル。レースほどは頑張らないにしても、小走り程度のスピードで行動してみないと、その真価はわからないのかもしれない。そこで、僕はほかの登山者がいないことを確認しつつ、トレイルランニングもしくはスピードハイクのような感覚で山中を少し走ってみることにした。

スピードが上がらない登り道は荷物の揺れも少なく、レーサー20プロは常に体にフィットしていた。発汗量は増えたが、体にあたる背面やショルダーのパッドは通気性がよく、ベタつく感じはしない

下り道はスピードが出るだけではなく、1歩1歩の高低差があるので、荷物が上下左右に大きくブレる。だが、荷物のブレによって体の動きに支障が出たわけではなく、背負い心地は良好。各部のポケットに入れたモノの脱落もなかった

結論を言えば、大きな問題は一切なし。さすがレースでの使用を考えているだけのことはあり、軽い山中ランニング程度には難なく使える。本格的なアドベンチャーレースのような過酷な条件になると、僕には判断しかねるのだが……。

最後に、「安全」に関するディテールについても触れておきたい。レーサー20プロのチェストハーネスにはホイッスルが付けられており、もしも遭難した時には助けを呼ぶことができる。声を出し続けるのには体力を使うが、ホイッスルを鳴らすのには大きなパワーは必要なく、有用な工夫だ。また、フロントの下部には光を反射するリフレクターも。夜間や早朝行動の際、後続する人の目印になるだけではなく、自転車に乗る時に使う場合はクルマのライトを反射して安全性を高める。細かい点だが、こういう部分も重要だ。

ホイッスルの音は甲高く、遠くまで響き渡る。オレンジ色で視認性が高いため、たとえ意識がもうろうとしている状態でも位置がすぐわかるのもいい

ボトムの部分にあるリフレクターは暗闇で光を反射する。また、サイドに付けられたメーカー名やモデル名のロゴもリフレクターになっている

小さく折りたたむと、1Lのボトル程度の大きさに。テント泊山行の際に、サブパックとして持参するのもいいだろう

山行を終えて

人気モデルがさらにアップデートしただけのことはあり、レーサー20プロの完成度は高い。誰もが普段の山歩きに使えるだろう。背面に使われているのは小面積のパッドだけだから、折りたたんで収納してもかさばらず、サブパックとしても便利そうだ。

あえて改善してほしい部分を上げるとすれば、各部に使われている止水ファスナーだろうか。いくぶんすべりが悪く、開閉するのには少々力を入れなければならない。止水ファスナーは破損しやすいパーツでもあるため、耐久性を高めようとした結果なのかもしれないが、もう少しだけ開閉しやすいほうがスムーズに使えるはずだ。また、ショルダーハーネスのポケットは小型ボトルも入るほど立体的だが、行動中は目の前に位置するため、じゃまに思える場面もあった。この部分はつぶして平たくできるポケットにならないだろうか?

しかし、これだけの軽さでレースにまで対応できる実力はさすがのもの。一般的な小型バックパックにあき足らない人には、おもしろい選択肢となるはずだ。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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