実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
照射範囲の光ムラがない独自システムを採用した逸品

さすがレッドレンザーのヘッドランプ! 照射範囲や距離を変えられる「MH5」は納得の完成度!!


登山の必携装備のひとつが、ヘッドランプだ。テント泊や小屋泊の際に活躍するだけではなく、山のセオリーである「早出」を心がけ、薄暗い早朝から歩き始めるためにも必要である。しかし、それ以上に重要なのは“安全対策”としての役割。遭難や事故を起こして山中で夜を迎えざるを得ない時、頼りになるのは周囲を照らせるライトなのである。

性能も使い勝手もいいヘッドランプの構造をチェック

今回テストしたのは、ドイツのメーカー、レッドレンザーの新作「MH5」だ。同社製品の特徴のひとつは、リフレクターとレンズを組み合わせ、広範囲をムラなく照らせる「アドバンスフォーカスシステム」。特許も取得しており、MH5にも搭載されている。そのうえで、光の向きを上下に簡単に変えることもでき、非常に使いやすいヘッドランプだ。

ヘッドのサイズは69(幅)×35(奥行)×38(高さ)mmで、やわらかなヘッドバンドが付いている。電池を含む重量は約92g。写真のブルーを含む4つのカラーが用意されている。光源はLED

ヘッドの角度は、水平から下向きに調整可能。クリック感がない無段階調節だが、しっかりと固定でき、行動中にずれるようなことはない

調整できる角度の範囲は約40°。頭を下げなくても、足元が十分に確認できる

調整できる角度の範囲は約40°。頭を下げなくても、足元が十分に確認できる

ここ数年、アウトドア用のヘッドランプは充電池タイプがメジャーになってきた。しかし、ひとたびバッテリーが切れると、山中で再充電しなければならない。日帰りや1泊ならともかく、山行が数日にわたると充電池タイプのヘッドランプは安心して使えないのである。充電するためにモバイルバッテリーを準備する人も多いが、正直なところめんどうだ。

MH5も専用充電池が使用でき、充電器とmicroUSBケーブルが付属している。だが、うれしいのは、その充電池が単3形乾電池とほぼ同サイズで、充電池と乾電池を併用できること。専用充電池のほうが長い時間使えるため、メインは充電池となるが、バッテリー切れの際は、すぐに乾電池へ切り替えられる。バッテリー切れに気付いてから再充電するのは、山中では現実的ではなく、この点はとてもすばらしい。

一般の乾電池も使用できるのは、とても有用だ。本体のサイドを開くと電池の交換ができるが、この部分はパッキンで保護され、IP54の防じん・防水性を持っている

付属品の専用充電池、充電器、microUSB USBケーブル。充電池は単3形乾電池よりもわずかに大きく、ほかの充電器は使えない

充電中は赤いランプが点灯し、充電が完了すると緑色になる。バッテリー残量ゼロの状態から満充電までは150分かかる。なお、専用充電池を使った際の点灯時間は最大35時間だ

MH5がユニークなのは、本体にクリップがついており、ヘッドバンドから外して別のものに取り付けられることだ。クリップはそれほど大きくないので分厚いものは挟めないが、バックパックのハーネスに取り付けて前方を照らしたり、テント内のコードにかけてランタン代わりにしたりと、使用時の応用範囲が広がる。思いのほか便利な工夫だ。

透明の樹脂パーツを広げるだけで、ヘッドは取り外せる。もとに戻すのも慣れれば簡単だ

透明の樹脂パーツを広げるだけで、ヘッドは取り外せる。もとに戻すのも慣れれば簡単だ

本体裏に装備された金属製のクリップ。幅は約5cm。3〜5mm程度のものがもっともはさみやすい

本体裏に装備された金属製のクリップ。幅は約5cm。3〜5mm程度のものがもっともはさみやすい

バックパックのショルダーハーネスに取り付けた様子。想像以上にしっかり固定できるが、腕をぶつけて落とすことも想定されるので注意して使いたい

ヘッドバンドなども見ておこう。本体とヘッドバンドを連結する樹脂パーツの裏には、黒いクッション性の素材が張られている。厚み3mmほどだが頭部へ当たる感触はやわらかく、必要十分だ。また、ヘッドバンドの末端はフックになっており、使用しない時はコードやストラップ類にかけておくこともでき、長さの調整もラクに行える。

本体裏に位置する半円形のクッション素材。丸いほうを上にして頭部に当てて使う

本体裏に位置する半円形のクッション素材。丸いほうを上にして頭部に当てて使う

ヘッドバンドの左側の端にあるのが、小型フック。本体をヘッドバンドにつけたまま吊す時に使用する

ヘッドバンドの左側の端にあるのが、小型フック。本体をヘッドバンドにつけたまま吊す時に使用する

山の中で使ってみよう!

MH5を実際に山中で使用すると、どんな具合になるのか? 日が暮れる直前に登山道に入り、光量を増減したり、照らす範囲を変えたりと、いくつかのテストを行ってみた。

日没直後で、まだ明るさが残っていた登山道。この状況ならばヘッドランプなしでもまだ歩けるが、MH5を点灯すると前方がうっすらと円形に明るくなった

点灯時はスイッチ部分が青く光る。このスイッチを1度押すと最低出力の「ロー」モードで点灯し、2回押すと最大出力の「パワー」モードに切り替わる

MH5のライト部分はダイヤル状のリングになっており、これを回して伸縮させることで照射範囲と距離を無段階で変えられる。リングが伸びている「スポット照射」の時は、照射範囲は狭いが、光が遠くまで届き、リングが引っ込んでいる「ワイド照射」の時は、光が遠くまで届かないが、照射範囲は広くなる。要するに、リングを回すことで同じパワーの光でありながら、広い範囲を照らすか、遠くまで照らすかを選択できるのだ。

左はリングが引っ込んだ状態で、右が伸ばした状態。3mm程度しか伸縮できないが、光の使い方を大きく変えられる

リングを引っ込めた状態で点灯すると、光を最大に拡散させたワイド照射となる。左右30°の幅を照らすことが可能だ。いっぽう、リングを伸ばして点灯すると、絞られた光がほぼ直線的に遠くまで光が伸びる

リングを出し引きすることで、このように光源とレンズの距離が変わり、光が拡散される範囲が異なってくる

周囲が完全に暗くなると、リングを回すことによって変えられる照射範囲の違いや、ローモードとパワーモードの照射距離の違いが明確になってくる。

では、以下の写真を見てほしい。同じ場所で「ワイド照射/ローモード」「ワイド照射/パワーモード」「スポット照射/ローモード」「スポット照射/パワーモード」という4つの設定で撮影したものだ。ここで注意してほしいのは、先にも述べたように、ワイド照射の時は“照射範囲が最大になる代わりに、照射距離は最短”で、スポット照射の時は“照射距離が最長になる代わりに、照射範囲は最小”となること。また、MH5はリングの操作で中間的な照射距離や照射範囲にもできるが、ここでは最大最小の比較にとどめ、省略する。

合わせて、重要なカタログスペックを紹介しておきたい。光束はローモードで20lm(ルーメン)、パワーモードで400lm。ローモードとパワーモードでは、実に20倍もの違いがある。照射距離はローモードで最長40m、パワーモードで180m。どちらもスポット照射にした時の距離で、こちらは4.5倍の差だ。くわしくは後述するが、これだけの差があるのだから、バッテリーの持ち時間も大きく異なってくる。

【テスト1】足元を照らしてみる

光量を抑えたローモードでも、歩行に十分な明るさを得られ、バッテリーの消費も少なくて済む

光量を抑えたローモードでも、歩行に十分な明るさを得られ、バッテリーの消費も少なくて済む

光量を最大にすると、地面の状態はよりクリアになる。だが、あまりに明るすぎると地面の凹凸が見えにくくなるため、少し光量を絞ったほうが歩きやすそうだ

光量を抑えつつも光が当たる面積を絞ると、光が当たる部分だけは確認できるが、その周囲は見えず、歩行困難な状態になる

光が当たっている部分は真っ白に見えるほどだが、その周囲は真っ暗。やはり歩行はむずかしく、ムダにバッテリーを消費しているだけだ

足元を照らした場合、もっとも歩きやすいのは、明らかに「ワイド照射/パワーモード」の設定だ。しかし、「ワイド照射/ローモード」でも十分に行動できそうだ。少なくとも、バッテリーの消費が激しいパワーモードにする必要はない。

また、ワイド照射時の2枚の写真を見ると、「アドバンスフォーカスシステム」の実力がよくわかる。あれだけの広い範囲を照らしながら、光が当たっている部分には光の濃淡のムラはまったくなく、安心して歩くことができるだろう。これは特筆すべき長所だ。一般的なヘッドランプの場合、中央から周囲に行くほど薄暗くなり、視認性があまりよくなくなる。

【テスト2】前方を照らしてみる

ほぼ真っ暗で、すぐ近くの様子すらわからない。これでは道迷いを起こしてしまう

ほぼ真っ暗で、すぐ近くの様子すらわからない。これでは道迷いを起こしてしまう

中央の登山道以外もよく見えるが、倒木付近の様子は明確ではない。だが、大きな問題はなく歩けそうだ

中央の登山道以外もよく見えるが、倒木付近の様子は明確ではない。だが、大きな問題はなく歩けそうだ

倒木の付近もいくらか見えるとはいえ、それ以外の場所はほとんど確認できない。歩行は困難である

倒木の付近もいくらか見えるとはいえ、それ以外の場所はほとんど確認できない。歩行は困難である

倒木の樹皮まで見えるようになる。この写真では倒木のみに光が当たっているのでわかりにくいが、実際の歩行時は体が前後左右に動くこともあり、倒木の周囲にも光が当たり、状況はもっと把握しやすい

前方を照らした場合でも、もっとも歩きやすいのは「ワイド照射/パワーモード」だ。ただし、それほど遠くまで光が届かず、歩いている道がどのように蛇行しているかなどを確認するためには、「スポット照射/パワーモード」のほうが都合はいい。とくに近くに登山道の分岐点や崖などの危険個所がある場合は、「スポット照射/パワーモード」で遠方の様子を確認すると安全性は高まる。MH5は頭に装着したままでダイヤルの操作がラクに行えるので、歩きながらワイドとスポットを使い分けたい。

テストの写真は、あくまでも撮影用に照射範囲や照射距離に極端な差を出している。実際は、その場のシチュエーションに応じて、中間的な照射範囲を基準に光の調整をするとよいだろう。また、当然のことながら、ローモードよりもパワーモードのほうが光は強く、周囲確認しやすい。だが問題は、2つのモードで消費バッテリーがあまりにも違うことだ。

専用充電池を使った場合、最高出力となるパワーモードの点灯時間は4時間。ローモードで最小出力に抑えれば35時間だ。道迷いなどのトラブルで夜間行動を強いられた時、フルパワーで使い続けるとすぐにバッテリーが切れてしまう。通常はパワーモードの多用を避け、必要時以外はローモードを中心にしたほうがよいだろう。小屋内やテントの周辺ならば、もともとローモードで十分である。

【テスト3】看板の視認性

最後にお見せする写真は、同じ位置から林道にあった看板を撮影したものだ。

光が強過ぎて、書いてある文字が判別できない

光が強過ぎて、書いてある文字が判別できない

光が弱いため、看板のうしろはまったく見えないが、「頭上電線注意」の文字は浮き上がり、重要な情報は手に入る

このような比較を見ると、周囲の状況を正しく判断するためには、パワーモードだけが重要なのではないことがわかる。臨機応変に強弱の光を使い分け、照射範囲や照射距離を変えながら使うのが、安全登山の秘訣なのだ。

山行を終えて

MH5は、ここ数年で発売されたヘッドランプの中でも完成度が高い逸品だ。今回のテストでは照射距離のすごさを十分には見せられなかったと思うほどで、基本性能は申し分ない。しいて難点をあげれば、本体裏にあるクリップが薄いものしか挟めないということくらいか。もう少し分厚いものも挟めるタイプになれば、用途の幅がより広がるに違いない。

個人的には、専用充電池以外に単3形乾電池を併用できるのが非常にうれしい。再充電のために山中へモバイルバッテリーを持っていくのはためらわれるが、単3形乾電池ならば苦ではない。交換用の専用充電池を買い足して持参すれば、ますます長時間使えるようにもなる。近年のヘッドランプには内蔵充電池しか使えないタイプが増えているが、MH5のようにどこででも手に入る乾電池も併用できるものは、安心感が格段に高い。

値段も、メーカー希望小売価格5,500円(税別)と手ごろだ。この価格でこれだけの性能と考えれば、他のメーカーで対抗できる製品はあまりないだろう。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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