オグさんです。今回はユーティリティーの種類や選び方、おすすめのモデルについてお話ししようと思います。
ユーティリティーとはその名のとおり、モデルや番手によってさまざまに使えるクラブです。ポジションとしては、フェアウェイウッドとアイアンの間に位置し、ヘッドタイプは大きく分けて「ウッド型」と「アイアン型」の2つに分類されます。文字どおり、ウッドとアイアンそれぞれに近い特性を持ったクラブで、ヘッド形状もそれぞれによく似た形に作られており、好みに合わせて選べるようになっています。そもそもユーティリティーは、フェアウェイウッドもしくはロングアイアンが苦手なゴルファーの苦手な部分を補う役目を持って生まれてきた一面があります。うまく活用すればプレーのストレスを減らせること間違いなし! のクラブなのです。
左がフェアウェイウッド、真ん中がユーティリティー、右がアイアン。ウッドとアイアンのいいとこ取りをしたクラブ、ということで欧米では「ハイブリッド」と呼ばれます
ユーティリティーのヘッドタイプに種類があるのは、フェアウェイウッドやアイアンのデメリットをより効果的に補うためです。ウッド型のユーティリティーは、フェアウェイウッドと比べると短く設定されているためミートがしやすく、ヘッドが小ぶりでラフなどのヌケがいいなどのメリットがあります。対してアイアン型ユーティリティーは、アイアンと比べるとヘッドの奥行きがあるためボールが上がりやすく、キャリーが出しやすいメリットがあります。
左上から時計回りにフェアウェイウッド、ウッド型ユーティリティー、アイアン型ユーティリティー、ロングアイアン。ウッド型ユーティリティーはフェアウェイウッドに似た形状をしていますが、ヘッドが小ぶりになっており、いっぽうアイアン型ユーティリティーはアイアンと比べてやや大きく、奥行きが深く作られています
ユーティリティーは多くのメーカーにラインアップされていますが、番手とロフト設定がどのメーカーもほぼ同じであるフェアウェイウッドと違い、メーカーによって番手やロフトの設定、クラブの長さはさまざまです。
この理由は、ゴルフクラブにはJIS規格のような細かい規定がなく、またユーティリティーというジャンルが比較的新しいこともあって、メーカーそれぞれの思考や開発時のターゲットゴルファーの違いなどが影響した結果なのだと思います。そもそもユーティリティーという名の総称もアバウトで、メーカーによって独自の呼称を用いていることもあるくらいですから、たとえ番手表記が同じでも、同じ飛距離が出ると思わないほうがよいでしょう。
価格帯は1本3万〜5万円ぐらい。高価格帯のモデルは、ヘッドにステンレス以外の素材を使っているモデルが多いですね。そのほうがより性能を追求することができるからです。
ユーティリティーの選び方のコツは、まず自分はフェアウェイウッドが得意なのかそれともアイアンが得意なのかを判断します。フェアウェイウッドが得意ならウッド型、アイアンが得意ならアイアン型と、ヘッドタイプを絞り込みましょう。すると得意なクラブが増え、得意でないクラブを使う確率が減りますからね。そのうえで自分がどのくらい飛距離の出るクラブが欲しいのかを明確にすることが大切です。
各番手の飛距離はヘッドやカタログに記載されているロフト角を見るとだいたいの目安が判断できます。どのメーカーも18〜27°くらいまでの幅で番手をラインアップしており、フェアウェイウッドと比べると、5番ウッドと比べて同じかやや飛ばないぐらいがユーティリティーの18〜20°に相当します。これをひとつの目安にしておくとよいでしょう。
ただし前述のとおり、メーカーやモデルによって長さや性能が違うので、すべてのユーティリティーがこれに当てはまるわけではありません。特にアイアン型ユーティリティーは短めに設定されていることが多いので注意が必要です。できれば実際に試打をし、自分の持っているクラブと近い番手やロフトのクラブを打ち比べることで飛距離差を確認することをおすすめします。
フェアウェイウッドと違いユーティリティーはシャフトにも素材の異なったモデルが用意されていることがあります。ドライバーやフェアウェイウッドと同じようにカーボンを使用したシャフトと、金属製のスチールシャフトを装着したモデルがあります。同じヘッドでもスチールシャフトのほうが総重量が重く設定されていることが多く、どちらかと言えばパワーのある人向けとしてラインアップされています。カーボンシャフトのモデルは、比較的軽めに作られているので、自分の持っているクラブの重さに合わせて選ぶとよいでしょう。
それでは、おすすめユーティリティーの紹介です。まずはウッド型から。
ウッド型ユーティリティーとしてはヘッドの奥行きがあり、ボールが上がりやすくなるような工夫がされています。クラウンのフェース寄りをアイアンのトップブレードのように見せることで構えやすさも演出しています
ウッド型でありながら、アイアンの長所もできるだけ取り入れた、まさにユーティリティーといったモデルです。打点のミスに強くボールもよく上がり、安定した弾道が期待できます。クラウンのフェース側をアイアンのトップブレードのように突起させているため、目標に対して正確に構えやすいです。非常に軽量に仕上げてあるので、パワーに自信のない方でも爽快に振り抜けます。同ブランドは打感や打音にもこだわった作りになっていて「キンッ!」という小気味いい金属音はとても爽快ですよ!
角の取れたつるんと丸い形状は、構えたときのプレッシャーを感じさせないやさしい形。フェースのエッジ側の輪郭がシャープな面取りで、ボールを拾いやすそうな安心感を与えてくれます
飛距離にこだわったブランド「UD+2」のユーティリティーで、つかまり性能が非常に高いモデル。ヘッドがターンしやすい設計で、ボールをつかまえスライススピンを減らすことで飛距離ロスを軽減し、安定して飛ばせる仕上がりになっています。スライスやプッシュなどのミスが多い方におすすめですね。フェース下部のリーディングエッジをややシャープに仕上げることで、ボールが拾いやすくなっています。ハーフトップでもボールが上がりやすいので少々のラフからでも活躍してくれそうです。
ウッド型としては奥行きが抑えてあり、シャープな印象がある形状。実はミスに強くつかまりもいい、やさしいヘッドです。大きな形に違和感のある方におすすめです
奥行きが狭く、コンパクトに仕上げてあるため中上級者以上のアスリート向きかなと思ってしまうほどシャープな形状をしていますが、実はとてもミートしやすくミスに強いヘッドです。コンパクトな分、ラフなどからの抜けもいいので悪いライからの使い勝手も文句なし。高さも出るのであまりデメリットが見当たらない、バランスのいい仕上がりになっています。コンパクトなヘッドにプレッシャーを感じないなら試す価値のあるモデルです。
奥行きがやや狭めの小ぶりサイズのヘッド。やわらかな曲線で構成されたフォルムを採用することで、シャープさとやわらかさを両立した絶妙な形状です。ボディとフェースのカラーコントラストにより、フェースの向きがわかりやすくなっています
アスリートブランド「TOUR B」のウッド型ユーティリティーだけあり、操作性を重視した“狙う性能”の高いモデル。つかまり性能はいわゆるニュートラルで、スイングの個性がそのまま弾道に表れます。打点のミスを適度に助けてくれるので、上達を志す初中級者にはもってこいの1本ですね。もちろん上級者にもおすすめできる仕上がりで、予想外のミスが出にくくとても扱いやすいモデルと言えます。シャフトのラインアップがスチールのみなので、重量系のスチールシャフトが装着されたアイアンとのマッチングが良好で、そういったアイアンを使用している方にはぜひ試してもらいたいですね。
角を取った丸みのあるフォルム。ヘッドの奥行きはやや広めで、安心感はありますが、上級者が好む、トゥ側をやや逃がした(右を向けた)「逃げ顔」をしています
やや軽量でミスに強いモデルではありますが、つかまりは適度。形状も適度なサイズでやさしさを感じさせる見た目ですが、トゥ側がやや右を向いたように見えるいわゆる「逃げ顔」になっていて左のミスを予感させない絶妙な仕上がりです。ミスに強いモデルはつかまり性能も高いことが多いので、これはありそうでなかったモデルと言えます。ユーティリティーで左のミスを嫌がるゴルファーは意外と多いので、そういった方にぜひ試してもらいたいですね。ゴルフ歴が長く、競技にも出ているといった方にもおすすめです。
ヘッドが長くミスに強そうな印象を受けますね。クラウンはマット仕上げで、空気抵抗を考えた突起「タービュレーター」が搭載されています
ミスに強いと評判のピン「G410」シリーズのユーティリティー。ほかのモデルと比べるとやや横に大きく、サイドスピンがかかりづらい印象。打点のミスにも強く、直進性の高さが光ります。塗装はマット仕上げで、空力を考えたクラウンの突起「タービュレーター」と相まって独特の雰囲気を持っています。ユーティリティーには珍しい弾道調整機能が付いているので。購入した後もロフト角やライ角を調整できるのもこのモデルの特徴。シャフト次第で初心者からアスリートまで幅広く使える懐の広いクラブです。
角の取れた、小ぶりでいかにもヌケがよさそうなフォルム。トゥ側にややボリュームを持たせることで、つかまり過ぎない雰囲気を出しています。上級者には安心の形状ですね
アスリートブランド「スリクソン」だけあって小ぶりでシャープな印象がありますが、打ってみると打点のミスにまずまず強く、直進性の高いモデルです。ヘッドが小さいのでヌケがいいため、ラフなどでの使い勝手が非常にいいですね。見た目の印象よりもボールは上がりやすく、安定したキャリーが期待できます。つかまり性能はほぼニュートラルで、クラブが助けてくれるような仕上がりではありません。ですが、スイングがある程度安定した方なら、弾道もそろうと思います。実戦に強いクラブですね。
ウッド型ユーティリティーの中では奥行きが比較的広く、投影面積が大きいモデル。ヘッドの輪郭もきれいで、安心感を持たせつつも、フェースと塗装のコントラストなどで鈍重なイメージに見せないような工夫がなされています
アスリートブランドのウッド型ユーティリティーですが、他メーカーの同タイプのユーティリティーと比べるとヘッドは若干大きめ。奥行きがあるためか、高さがしっかり出せます。スピンは適度に入るので、グリーンを上から狙っていけますね。つかまりは、どちらかというと少し抑えめになっていて、左のミスを怖がらずに安心して振っていけます。上級者ほど扱いやすく、初中級者には、正しい打ち方を教えてくれる。そんなクラブだと思います。
ロフトが少なく長いQ18/23(上)はヘッドの奥行きを広く、ロフトが多く短いQ28/33(下)は奥行きを狭くし、用途に合わせてヘッド形状を変えるという凝った設計のクラブ。悪いライから使用する前提のため、ソールがV字型になっています
この「Q(キュー)」というクラブは、深いラフやフェアウェイバンカーなど、悪いライからのショットで威力を発揮するように設計されています。長い番手はヘッドの奥行きを広く取り、打点のミスに強くしながら、V字型のソールでヌケのよさを加味。短い番手は反対に奥行きを狭くし、V字型ソールと合わせてさらなる抜けのよさを追求しつつ、短めのクラブ長でミート率を向上させながらロフトで球の高さをしっかり出す工夫がなされています。どの番手もつかまりがよく、まさに“お助けクラブ”といった仕上がりです。
フェース側のクラウンがシルバー、それ以外をブラックとしたツートーンカラーになっており、上下均等に近い楕円フォルムと相まって目標に構えやすい形状になっています
アスリート向けのブランドでありながら、打点のミスに強く直進性の高いモデルを多くそろえる「M6」シリーズ。ユーティリティーも同じ傾向で設計されているため、直進性が非常に高いですね。打点のミスに強いのですが、特にフェースの下側が強くなっており、ハーフトップをしてもボールがちゃんと浮いてくれます。つかまりはニュートラルに近いですが、ほんの少しだけつかまる方向に振ってある印象。シャフト次第で初心者からアスリートまで使える幅の広いヘッドと言えますね。ちなみに、テーラーメイドではユーティリティーのことを伝統的に「レスキュー」と呼んでいます。まさに、お助けクラブなんですよ。
やわらかな角を持つ均等の取れた端正な顔つき。フェース上にあるスイートスポットの後方延長線上に輪郭の頂点が来るようにデザインされています。ネックの弾道調整機能に加え、重心距離の調整もできるアスリートに向けたウッド型ユーティリティーです
トップアスリートの多くが愛用するタイトリストのウッド型ユーティリティーだけあって、ミスを助けてくれるような機能はほぼ備えていません。その分技術があるゴルファーによりフィットさせられるよう弾道調整機能が充実しています。ヘッドの基本特性としては、つかまりを抑え、ある程度の操作性を備えたモデルになっており、ヘッドサイズは小ぶり。自分好みに調整できるので、こだわりのある人ほど使いやすいと感じるはずです。
形状としてはウッド型に分類されますが、随所にアイアンの長所を取り入れたモデルです。フェースをできるだけ後方に下げ、トゥ側にボリュームを持たせた奥行きの狭いフォルムにより、アイアンっぽく構えられますね
「818H1」と同じアスリート向けのユーティリティー。「アイアンの長所をより強く取り入れたウッド型」という表現がしっくりくるモデルです。フェースを後方に下げることでアイアンのように打っても違和感がなく、アイアンに近い操作性を持っています。強いライナー性の弾道が打ちやすいですが、高さはH1のほうが出しやすい印象でした。このモデルもH1同様ネックの弾道調整のほか、重心距離を調整できる機能を備えているので、より細かい調整が可能になっています。
奥行きは狭めで低重心化を図るためかクラウンがくり抜かれています。ソールの貫通した溝「スピードポケット」など独自の技術により、小ぶりでありながらミスに強い仕上がりになっています
このGAPR(ギャッパー)はテーラーメイドのユーティリティー専用シリーズであり、ヘッドが3タイプ用意されています。これはその中のウッド型、HI(ハイ)。ヘッドは小ぶりで一見難しそうですがミスに強く、適度にボールが上がってくれます。つかまりも適度で、使い勝手はいいですね。弾道調整機能を搭載しており、ロフトやライ角の微調整が可能になっています。「アイアンが好きだけどウッド型も使ってみたい」なんて方にはいいモデルだと思います。
次にアイアン型ユーティリティーのおすすめモデルです。アイアン型は、ロングアイアンの代わりとなるポジションを念頭に設計されているモデルが多く、ウッド型と比べるとやや短めになっていることが多いです。またヘッドの奥行きがウッド型と比べて狭くなっていることが多いので、同じロフトでも打ち出し角は低めになりやすい傾向があります。選び方としては、ウッド型と同じようにロフト角が基準となりますが、ご自身の一番長いアイアンのロフトと長さを確認し、その番手と比べるとおおよその飛距離を予測しやすいでしょう。
一見するとほぼ普通のアイアンのようなきれいな形状。実際はかなり大きめにできていて、安心感はあります
形状はロングアイアンでありながら、ユーティリティーらしいやさしさをしっかり体感できるのがこのモデル。ブレードが横に長く、直進性に優れた弾道が打て、高さもそれなりに出ます。ヘッドが大きいので打点のミスにも強く安定した弾道が期待できますね。アイアンが得意な方なら間違いなくウッド型よりも打ちやすいと感じると思いますよ。
ヘッドサイズはアスリートアイアンよりひと回り大きい程度。構えると、トップブレードがちょっと厚いロングアイアンかなといった様相で、構えやすい形状になっています
振り心地や構えた印象は通常のロングアイアンとほとんど変わらないのですが、打ってみると直進性の高い高弾道の球が出る、そんなクラブです。さすがにウッド型よりは弾道は低めですが、一般的なアベレージゴルファーでも十分使いこなせると思います。つかまりはニュートラルかちょっと抑えてある程度で、上級者も安心して使える仕上がり。中空構造になっているにもかかわらず、打感がやわらかく気持ちいいのもこのモデルの長所です。
強めのグースネックにアイアンの形状を維持しつつ、奥行きを最大限広く取ったデザインは、いかにもつかまりそうな形状をしています。実際よくつかまり、アイアンタイプの中では高いお助け機能を持つやさしいモデルです
カラーリングから“バナナ”の愛称があるアイアン型ユーティリティー。非常によくつかまってボールがよく上がる、やさしいアイアン型ユーティリティーの代表のようなモデルです。ソール幅が広くダフリにも強いので、長いクラブ全般が苦手な方は、とても重宝すると思いますね。ロフト30°というかなり短い番手までラインアップされているので、ロングアイアンで高さが出ないとお悩みの方にもいいですね。ウッド、アイアンに限らず長いクラブが苦手という方にはぜひ試してもらいたいモデルです。
安心して使えるユーティリティーが1本あると、長い距離のショットも怖くなくなりますし、ドライバーなどをミスしたときのリカバリーも楽になります。しかしユーティリティーは種類が豊富で、なおかつモデルによってスペックがバラバラなこともあり、自分が使いやすいモデルに出合うのはなかなか難しいのです。今回の記事が少しでも運命のユーティリティーを探すヒントになれば幸いに思います。私もアイアン型ユーティリティーを愛用しており、ゴルフがとても楽になりましたよ〜。
<写真:野村知也、中居中也>
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。