恥ずかしくて今さら人に聞けないテクニックや、人気ルアーのポテンシャルを最大限に引き出すテクニック、そしてこれから流行りそうなテクニック――。
本連載では、そんなバス釣りのテクニックと人気ルアーの魅力を、ライター・横沢鉄平がその道のエキスパートから教えてもらい、現場で実践レポートする。
今回は、前回の「スピナベサイト」に匹敵する必殺技「マイクロピッチシェイク」。教えてくれるのは、前回に引き続き、ボトムアップ代表の「コータローさん」こと、川村光大郎さんだ!
情報源:「ボトムアップ」代表・川村光大郎さん
川村光大郎さんは、釣り具メーカー、ボトムアップの代表にして、オカッパリの第1人者。雑誌「ルアーマガジン」の連載「陸王」では、2度も年間チャンピオンに輝き、人気、実力ともにトップ・オブ・トップのアングラーだ。
「マイクロピッチシェイク」とは、スモラバを極限まで細かく振動させて、すれ切ったバスを釣ってしまうという食わせテクニック。川村さんが得意とする技のひとつだ。
基本的には、岸釣りで足元のブッシュなどを狙い、真下に落としてシェイクする。キャストして、枝などからぶら下げたり、ボトムを引きながらシェイクしてもいい。
俺は、オリジナルの「スモラバロッド」を世に出したことまであるし、スモラバには一家言ある男。正直言って、「そんなの俺も昔からやってるけどね」と、高をくくっていた部分もあった。ところが、ボトムアップの事務所で川村さんが実演するのを見て、愕然としたのだ。
「では、『マイクロピッチシェイク』、始めますよ」(川村さん)
……なかなか始まらない。川村さんは、ロッドを持ったまま静止している。
「見ての通り、腕は全然動かしません」(川村さん)
え……、今シェイクしてたの?
「さっきからシェイクしてますよ」(川村さん)
ちょっと老眼気味の52歳には、とてもティップが動いているようには見えなかったが……、よく見ると、かすかに振動しているような、していないような。これ、電動歯ブラシの振動レベルだ。
「コツは、手のひらの中でシェイクするイメージです。リールを横にするとやりやすいですね。あとは、左手でラインをつまむと、感度がいいですよ」(川村さん)
これはしかし、俺にはできそうに……ないような。
「できる限り……でいいんですよ(苦笑)。力まないほうがいいです」(川村さん)
「こうやって、左手でラインをつまむと感度がいいですね」と川村さん
その「マイクロピッチシェイク」専用に設計されたワームが、「M.P.S.」だ。製品名はもちろん、「マイクロピッチシェイク」の頭文字をとった略称からきている。
「M.P.S(エム・ピー・エス) 2.4インチ」の公式サイト価格は680円(税込)。6本入り
開発コンセプトは2点。
(1)止めてるときに、水平姿勢を保つこと。
(2)シェイクさせると、細かいけれど、複雑に震え合うこと。
「M.P.S 2.4インチ」は、スモラバ装着時でもダウンショットであっても、水平姿勢を維持できるように設計。また、テール、アーム、逆手など、さまざまなパーツが異なる動きを出すようにデザインされている。そして、到達したのがこのフォルム。
「製品のキャッチコピーでも言ってますが、これで食わなかったら、あきらめます(笑)」(川村さん)
使うべきスモラバは、やはり水平姿勢を保てるタイプがいい。ボトムアップのオリジナルは未完成なので、現時点ではダイワとレイドジャパンのスモラバが最適。ウエイトは2.5g前後がいい。
「『エグダマ』は、『M.P.S』にはちょっと針が大きめなんですが、ユーザーの釣果報告ではこの組み合わせがすごく多いんです」(川村さん)
レイドジャパン「EGU-DAMA Type-LEVEL(エグダマ・タイプレベル)」。通称「エグダマ」
マイクロピッチシェイクに関する謎をすべて氷解させるべく、Q&Aコーナーを設けました。Qが俺で、Aは川村さん。
Q1:タックルは?
A1:ベイトフィネスタックルがいいですね。ラインは10ポンド。遠くに投げないので、バーサタイルタックルで12ポンドラインとかでもやっちゃいます。
Q2:アワセは?
A2:即アワセです。宙吊りなので、ラインが張っています。その影響で、食っても違和感を気にして吐き出す奴がいるんです。だから即アワセなんです。
Q3:どのくらいシェイクする?
A3:だいたい10秒くらいです。経験上、それ以上やっても食ってくるのはマレですね。
Q4:なぜ水平姿勢にこだわる?
A4:経験上、圧倒的に釣果が違います。動きも水平のほうがいいんですよ。
Q5:ほかにもコツはありますか?
A5:ラインに癖がついてコイル状になっていたら、動きが伝わりません。そんなときはラインを濡らし、両手で引っ張ってストレッチさせると、明らかによくなります。
ラインをストレッチさせている川村さん
川村さんの「マイクロピッチシェイク」は、とても俺にはできそうにない……、とは思いつつも、千葉県・三島湖で「エグダマ」に「M.P.S 2.4インチ」をセット。「エグダマ」は初めて使ったけど、先のとがったテーパードラバーが混在していて感動した。さすが江口俊介プロ(「エグダマ」の開発者)、これは並みのスモラバじゃないわ。「M.P.S 2.4インチ」とのバランスも悪くないよ。
「エグダマ」に「M.P.S 2.4インチ」をセット
ブッシュの脇に投げると、フォール中にラインが横走りした。でも、アワセるとすっぽ抜けに。そこで、まったく同じ場所に落としたが、今度は反応がない。でも、フッキングしてないし、それほど警戒してはいないのでは?
そう思って、「マイクロピッチシェイク」をやってみた。いや、どうにもマイクロにならない。大体タックルがスピニングだし。そこで、「左手でラインをつまめ」という川村さんのアドバイスを思い出した。
試しにつまんでみると、おお、感度もいいし、なんとなくシェイクまで細かくなったような。すると、期待通りのアタリが出て、これもアドバイス通りに即アワセ!
「ん? で、でかい?」
なんと、やせてはいるが、50(cm)ジャストのデカバスだったのだ!
50ジャスト!
3ポンドのスピニングタックルを使っていたので、かなり手こずったが、うれしい2019年の関東初50アップ。ひとりだったので失敗気味の自撮り写真ですみません。そのあとも、42cmを追加。上あごにガッツリと針が刺さっていた。
42cm!
もう、「マイクロピッチシェイク」なら俺に任せてくれ、と思えるほど、いい日になりました。この技は、もっと練習してみよう!
「ともゑ釣り船店」(三島湖)
房総屈指のビッグバスレイク「三島湖」の老舗レンタルボート店。レンタルエレキなどのサービスも万全で、食事や宿泊も可能だ
バス歴40年、ライター歴22年のベテランライターにしてプロアングラー。雑誌「ルアーマガジン」で連載企画「ドラマチックハンター」などに出演中。その割に腕は普通なので、それを逆手に取った“素人目線”のレビューに定評がある。