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Shape In Motion

M5・M6の次は「SIM(シム)」。2020年のテーラーは“空力”で勝負する

オグさんです。
今回は、テーラーメイド2020年モデルの新製品発表会のレポートをお送りします。

イメージカラーが赤だった前モデルから青に変わり、会場でも青いカラーが目につきました。刷新した感が強く感じられる発表会でしたね

次は「M7/M8」かと思っていたが……

2016年に登場した「M1/M2」から始まったテーラーメイドの「M」シリーズ。翌2017年には17年モデルの「M1/M2」が登場、2018年に「M3/M4」、2019年に「M5/M6」と1年ごとに進化を続け、M5/M6シリーズでは全世界のツアーで21勝をあげたのだそうです。テーラーメイドの方が「最も成功したテーラーメイドのシリーズ」だとも言っていました。多くのゴルファーが「次はM7/M8が出る」と思っていたところ、テーラーメイドは予想を裏切り、新シリーズ「SIM(シム)/SIM MAX」という2つの新シリーズの展開を宣言しました。

SIMとは「Shape In Motion」の頭文字。ヘッドシェイプにテーラーメイドが研究してきた新技術が盛り込まれているそうです。注目すべきは、「空力」で、いかにヘッドをインパクト前に加速させるかというのを重視して設計していること。すでに空力に注目したライバルメーカーもいくつかあります。ピンはクラウンにタービュレーターという突起を配置することで空気の流れをコントロールしていますし、キャロウェイも昔から空力を意識したヘッド設計になっています。ではテーラーメイドはどのように空気抵抗を減らそうと考えたのでしょうか。

飛距離性能と寛容性をどう両立させるか

ドライバーの研究開発は、反発係数の上限がルールで決められているため、どこのメーカーも技術者にとっては二律背反との戦いになります。反発係数を一定とした場合、最大飛距離をより安定して発揮するには、いくつの条件があります。同社の説明に沿った表現を使うと、ヘッドスピード、ミスへの寛容性と打ち出し条件、そしてボールスピードが重要になります。

飛距離性能を高めるうえで重要となるのが、上記のヘッドスピード、寛容性&打ち出し条件、そしてボールスピードです

ゴルフクラブは飛んで曲がらない、つまり飛距離性能とミスしたときの寛容性を両立するのが非常に難しいのです。飛距離だけを追求すれば、寛容性は下がってしまう、反対に寛容性を高めると飛距離性能はどうしても下がってしまいがちになります。

そこに同社は改めて着目し、研究を重ねて開発したのが今回のSIMシリーズなのです。発表会での説明がとてもわかりやすかったのでそのままお話しますと、スピン量を減らして強い弾道を追求すると重心が浅くなります。しかし重心が浅いと、ミスヒットしたときのヘッドのブレが大きくなりやすくなるので寛容性は下がってしまいます。反対に、寛容性を高めるべく重心を深くすると、フェース面の重心位置が高くなってしまうためスピン量が増えやすいクラブになり、飛距離性能を高めるのが難しくなります。

さらに、ヘッドスピードを高めるためにヘッドの後方を高い位置に設計することが有効なのですが、ヘッドの形状を高くするということは重心位置が高くなることに繋がるため、これまた飛距離性能に悪影響を及ぼしてしまうわけです。

浅重心にすれば余計なスピンを抑制した強い弾道を打てるクラブが作れますが、その反動で芯を外したときにブレが大きいモデルになってしまいます

深重心だと慣性モーメントが高まるため、少々芯を外してもヘッドがブレにくくなるためミスに強いヘッドが作れますが、重心位置が高くなってしまうため余計なスピンが入りやすくなってしまうのです

空力を求めるとヘッドの後方を高い位置に設計するのが有効ですが、そうすると当然重心を高くなりやすくなってしまいます

ここで、テーラーメイドが研究を重ねてきた「マルチマテリアル構造」という技術が真価を発揮します。どういうものかというと、ヘッドの後方下部に重量を集中させつつ、空力ボディと異素材を採用することで、重心を深くしつつも低めにし、なおかつ空力的にもすぐれたヘッドを作り上げてきました。

Mシリーズで培った、カーボンを使用した異素材の知識・技術をさらにブラッシュアップし、新たな空力学を取り込むことでさらなる進化を遂げたのです。

後方下部にウェイトを装着することで深重心にしつつ、カーボンを多用することで、重心が高くなりがちな空力ボディを採用してもしっかりと低重心化を実現させたのが、同社独自のマルチマテリアル構造です

ダウンからインパクトまでの空気抵抗を減らすには?

さらにSIMでは空力学的にも細かいこだわりが見て取れます。車や飛行機のように主にまっすぐ進む物体と、円を描くように振るクラブヘッドとを分け、独自の空力ボディを作り上げてきました。

最初に説明されたのがスイング中のヘッドの動き。大切なのはトップからインパクトまでのヘッドが加速するときに、いかに空気抵抗をなくすかであるとのこと。そのトップからインパクトまでのヘッドはフェースに対して垂直に空気抵抗を受けるのではなく、ヘッド下方から、いわゆる”開いた”状態で空気抵抗を受けるので、その方向での空気の流れを考えて設計したそうです。ソールにある突起、同社では「イナーシャジェネレーター」と呼ぶ部分がやや斜めになっているのはそのためだそうです。

クラブでの空力で重要なのは、トップからインパクトまでのヘッドが加速する部分(赤い矢印)という説明

クラブでの空力で重要なのは、トップからインパクトまでのヘッドが加速する部分(赤い矢印)という説明

フェースは開いて下りてくるので、ソール中央の突起、イナーシャジェネレーターをまっすぐ取り付けただけでは余分な空気抵抗を受けてしまうそう

そこでイナーシャジェネレーターをやや斜めに設計することでより空気抵抗を軽減し、インパクトまでスムーズに加速させやすいヘッドが完成しました

ということで誕生したのがSIMシリーズです。展開モデルは、SIMシリーズのドライバーとフェアウェイウッド。SIM MAXシリーズのドライバー、フェアウェイウッド、レスキュー(ユーティリティー)、アイアン2種です。SIMシリーズの展開が少ないのは、アイアンについてはトップアスリートやプロに向けてすでに展開している「P790」をはじめとしたPシリーズとの相性がよいためなのでしょう。

SIMとSIM MAXのラインアップ

では個別にクラブを見ていきましょう。

最初にSIMドライバー。「M5」の後継モデルというポジションのモデルで、M5にもあったスライディングウェイトが搭載されています。今回のSIMドライバーは460ccで、後述するSIM MAXドライバーと同サイズになっています。形状としてはややトゥ側のボリュームがある、洋ナシ型になっています。
SIM MAXドライバーは「M6」の後継機で、スライディングウェイトは搭載されず、寛容性、直進性を高めたモデルと言えます。形状はSIMドライバーとほぼ同じ洋ナシ型で、ぱっと見では差がわかりませんでした。

スライディングウェイトを搭載したSIMドライバー

スライディングウェイトを搭載したSIMドライバー

前モデルのM5は2つウェイトが搭載されていましたが、SIMはウェイトがひとつになり、レールも縦に1列だけになりました

後方が下がっていないディープバック形状ですが、後方下部にウェイトが搭載され重心は深く低くなっています

後方が下がっていないディープバック形状ですが、後方下部にウェイトが搭載され、重心は深く低くなっています

前作のM5はフェースのセンターの真後ろにヘッドの丸みが来る形状を採用していましたが、SIMではややトゥ側にボリュームがる洋ナシ型を採用しています

M5/M6に搭載されていたツイストフェースとスピードインジェクションは継続して採用されています

「M5/M6」に搭載されていたツイストフェースとスピードインジェクションは継続して採用されています

SIM MAXドライバー。SIMドライバーとの外見上の違いは、ロゴと、スライダーがないこと。性能的にはSIM MAXのほうが直進性を高めたモデルと言えます

「SIM フェアウェイウッド」は、前作のM5シリーズで好評だったチタンを引き続き採用したモデル。ドライバー同様、クラウンにカーボンを採用し、同社史上最も低重心なFWに仕上がっているそうです。過去に名作として今でも愛用者が多い「Vスチール」で好評だった、ヌケのよい「Vスチールソール」を採用し、地面との接触面積を減らしてヌケを向上させています。

「SIM MAXフェアウェイウッド」は、クラウンにはカーボン、フェースやボディにはステンレス素材を採用し、SIM同様「Vスチールソール」を採用した高弾道でヌケのよいモデルとして仕上げられています。

SIMフェアウェイウッド。チタンを採用した贅沢なモデル。かつての同社の名器「Vスチール」を模したソールを搭載し、180ccと大きめながらヌケのよさを実現させています

フェアウェイウッド作りに定評のあるテーラーメイドだけに、顔も座りもしっかりしています

フェアウェイウッド作りに定評のあるテーラーメイドだけに、顔も座りもしっかりしています

「SIM MAX レスキュー」は、フェアウェイウッド同様ヌケのよい「Vスチールソール」を採用したユーティリティー。寛容性を高めたアスリートからアベレージゴルファーまで幅広いゴルファーが使えるモデルに仕上がっています。

男子プロがロングアイアンの代わりに使い始めているというユーティリティーです

男子プロがロングアイアンの代わりに使い始めているというユーティリティーです

SIMシリーズのアイアンは、SIM MAXシリーズに2機種用意されています。「SIM MAX アイアン」は寛容性、直進性を高めたポケットキャビティモデル。「SIM MAX OS アイアン」はSIM MAXアイアンの寛容性をさらに高めたモデルで、ひと回りヘッドを大きくし、ロフト角も立った設定になっています。

SIM MAXアイアン(上)とSIM MAX・OSアイアン(下)。どちらもミスに強く直進性を高めたモデルになっていますが、SIM MAX・OSアイアンのほうがヘッドがひと回り大きく、ロフトも立った設計になっています

どちらからも、直進性の高さを感じた

試打ブースでちょっと打たせてもらいました。詳しい試打レポートは後日改めてお送りしますね!

試打ブースでちょっと打たせてもらいました。詳しい試打レポートは後日改めてお送りしますね!

軽く打たせていただいた感想としては、はじき感のある感触ですが、振動が少なくやわらかく感じました。なかなか気持ちのよい打感ですね

このナナメの厚みが今回のキモ!トップからインパクトまでの空気抵抗を軽減させてくれます

このナナメの厚みが今回のキモ! トップからインパクトまでの空気抵抗を軽減させてくれます

今回のSIMシリーズは、大成功を収めたMシリーズのよさを継承しつつ、空力学を見直すことでさらに飛距離性能を高めようという意図を感じました。試打ブースで打った暫定的な印象ですが、直進性はどちらのモデルもかなり高そうです。追ってしっかり数値を取ったレポートをお届けしたいと思いますので、楽しみにお待ちください!

小倉勇人

小倉勇人

ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。

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