今月は、アメリカにおけるランニング専門店販売シェアNo.1ブランド、ブルックスのロングセラーモデルの新作をレビュー!
本連載では2020年3月、最新レース向けモデルであるブルックスの「ハイペリオン エリート」を紹介したが、そもそもブルックスはアメリカのランニング専門店ルートで最も高いシェアを誇るブランドであることは、日本ではあまり知られていない。
そんなブルックスのプロダクトラインアップにおいて、最もポピュラーなモデルのひとつが「ゴースト」。今回、シリーズ第12弾となる「ゴースト12」を実際に履いて、その高いパフォーマンス性能を体感してみた。
「ゴースト12」(品番:1103161D175-BRM3163)の公式サイト価格は13,750円(税込)
アメリカのある一定以上の規模の街には、大抵「Running Specialty Store」と呼ばれるランニング専門店があり、シューズやウェアの販売を行うだけでなく、ランナーの情報交換の場所としても重要な場所となっている。
そんなランナーにとって不可欠な店舗販売におけるシェアNo.1ブランドがブルックスである。ブルックスは特にシリアスランナーの間でシェアが高く、またマラソン大会などのレースにおける着用率の高さでも知られるが、同ブランドのベストセラーの一角を占めるのが、現行モデルが第12弾となる「ゴースト」シリーズだ。
同シリーズは、着地時に脚が過度に倒れ込まないニュートラルランナーに向けたスタンダードモデル。ランニング初心者からベテランランナーまで対応し、アメリカのランニング市場ではメーカー希望小売価格が130ドルに設定されている中価格帯シューズの代表的存在だ。
筆者はこれまでに、いくつかの世代の「ゴースト」を履いてきたが、派手さはないものの、クッション性、安定性、フィット感をバランスよくミックスしていることを理解していた。ひと昔前の「ゴースト」はどちらかと言うと武骨なデザインであったが、「ゴースト12」はカジュアル用途でも履いてみたくなるような洗練された雰囲気に仕上がっているのも大きな特徴で、日本においてメンズモデルは、今回トライした「ホワイト/ブラック」のほかに、「グレー」「ブラック」「ネイビー/ホワイト」のカラーリングがラインアップされている。
「ゴースト12」のカラーラインアップ
実際に足を入れてみると、エンジニアードメッシュを使用したアッパーからフィット感の高さを感じる。日本でもカラーリングによっては各サイズに「レギュラー」と「ワイド」、そして「スーパーワイド」の3タイプが用意されており、今回は「レギュラー」タイプをセレクトしたが、足長と足囲のバランスがよく、キツくもゆるくもない絶妙なフィット感。よほど足幅が広いランナー以外は、「レギュラー」で問題ないと思う。
アッパーには、通気性と伸縮性が高く、2層に編み込まれたシームレスのエンジニアードメッシュを使用。長時間のランでも、シューズ内部が蒸れにくいうえに、足をしっかりとホールドしてくれる
かかととつま先の高低差は12mmと、高低差が少ないシューズが増えた昨今では大きめのドロップだ。ヒール部分に衝撃吸収素材「DNA LOFT」を使用したミッドソールは、ブルックスのラインアップではやわらかめのセッティングらしいが、立っている状態では沈み込みはあまり感じられず、グラつきもない。
ミッドソール本体には、路面からの衝撃やスピードに応じて衝撃吸収性が変化するクッション素材「BioMoGoDNA」を採用。ヒール部分には、軽量で耐久性にもすぐれるうえ、抜群の衝撃吸収性が独自のクッショニングを生む素材「DNA LOFT」を搭載しており、スムーズな走行感を実現する
走り始めると、まず感じるのはアウトソールのグリップ性の高さとやわらかさの独自のコンビネーション。ある程度の刻みの深さがあり、やわらかめのコンパウンドのラバーアウトソールは、路面をしっかりとグリップするとともに、着地から蹴り出しまで間にミッドソールだけでなくアウトソール部分も変形して素早く戻ろうとすることから、この独特な走行感が得られるのだろう。
また先述の通り、刻みがある程度深いアウトソールは、アスファルトやコンクリートといった舗装路だけでなく、土や芝といったオフロードでも高いグリップ性を発揮してくれるのはうれしいところ。今回のテストランでも公園の土の路面を走ったが、他ブランドのオンロード向けシューズが著しくグリップ力を失う路面でも、「ゴースト12」は高いグリップ力をキープしたままだった。
ある程度深さのあるアウトソールパターンは、アスファルトやコンクリートといったオンロードから、土や芝生といったオフロードにおいてまで、高いグリップ性を発揮
日課の6kmランでは、5分20秒〜6分30秒/kmのペースで走ったが、適度な硬度のミッドソールは快適な走り心地を提供してくれた。クルマにたとえると、先月紹介した「ハイペリオン エリート」がレーシングカーだとしたら、本モデルは高級セダン。それもサスペンションがフワフワしたアメリカ車ではなく、カチッとした足回りのドイツ車のようで、脚力を効率よく路面に伝達してくれる。
「ゴースト12」は、あくまでもニュートラルタイプのランニングシューズなので、着地時に脚が過度に倒れ込むオーバープロネーションのランナーは、ブルックスであれば「アドレナリンGTS20」などをセレクトしたほうがいいが、そうでない場合は、ほとんどのランナーが満足できるはず。アメリカでは、フルマラソンに初参加、あるいはフルマラソンでサブ4.5を目指すランナーから、トップランナーのジョグや「LSD」(ロング・スロー・ディスタンスの略。長い距離をゆっくり走ること)にも対応するシューズとして、その汎用性の高さにも定評がある。
以上のように、「ゴースト12」はあらゆるレベルのランナーに対応するニュートラルタイプのランニングシューズであり、以前の「ゴースト」シリーズよりデザインがかなり洗練された印象となったことから、日本市場でもこれまで以上の売り上げが期待できそうだ。
そのことに追い風となりそうなのが、日本における価格設定。その機能性の高さを考慮すると13,750円(税込)というプライスはかなりお買い得。アメリカで希望小売価格が130ドルの他ブランドのランニングシューズが、日本において14,300〜17,600円で販売されていることも、「ゴースト12」のリーズナブルなプライスを証明している。
ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。