オグさんです。
今回はクラフトマンとして工房で仕事をしている私が、おうちでできるグリップ交換のやり方をご紹介したいと思います。グリップ交換の作業自体はそんなに難しくないんですよ〜。
いかにスムーズにできるかは、そろえるアイテムによって変わってきます!
最低限使うのは、以下の4つだけ。
・装着する新しいグリップ
・グリップをカットするためのカッター
・グリップを固定するための両面テープ
・グリップをスムーズに入れるための溶剤
このほかに、作業をより便利にしてくれるアイテムがいくつかあるんです。
グリップを固定するための両面テープとグリップを差すための溶剤は、セットで売っていることが多いです。溶剤の横のペンのキャップのようなものは、グリップをシャフトに差すためのサポートグッズ
グリップをカットするためのカッター。これは先端が曲がったタイプで、シャフトを傷つけるリスクが減ります
グリップをシャフトに差しやすくするためのサポートグッズ。使い方は後述します
いわゆる「万力」です。吸盤のようにして机に固定するタイプや、机に挟み込んで固定するタイプなどがあります。「テーブルバイス」として売られており、安いものは3,000円ぐらいで手に入ります。これがあるとないでは大違いなんです!
金属製のバット。シャフトに巻いた両面テープを溶剤で浸すのですが、どうしても溶剤がしたたり落ちてしまいます。それを受け止めるためのグッズです
後片付けを楽にするために、ラップや紙ナプキンを用意しましょう。新聞紙などでもOKです
では早速やっていきたいと思います。
まずは本体についているグリップを外します。
グッズがそろっているか確認してから始めましょう。途中までやって溶剤がない……とか悲惨です(笑)
古いグリップをカッターで切っていきます。スムーズにカットするためには、先が曲がったカッターがおすすめです。スチールシャフトはカッターの刃が少々当たっても問題にはなりませんが、カーボンシャフトに刃が当たるとシャフトに切れ込みが入ってしまい、最悪の場合、そこから折れてしまうこともあるので要注意です。
通常のカッターでもできますが、シャフトに傷をつけないようにするためにも右側のような、刃が曲がっているものがおすすめです
ゴルフ工房では専用のグリップカッターを使っています。シャフトを傷つけるリスクがかなり少ない、プロ用工具です
シャフトに刃を当てないよう注意しながら、グリップのヘッド側からカットしていきます
カーボンシャフトの場合、刃が少しでも当たると切れ目が入ってしまうので細心の注意を払って作業しましょう
比較的グリップが新しければ切れ目が入るとこのまま手でちぎれます
古いグリップを外したところ。グリップを固定するための下巻きテープが残っている状態
次はテープの残りをはがしていきます。このテープは温めると粘着力が低下するので、ドライヤーなどで温めるときれいにはがれやすくなります
工房では「ヒートガン」という道具を使って温めています
下巻きテープが全部取れたら、溶剤を使ってシャフトをきれいに拭きます
工房では「ホワイトガソリン」を使っています。作業場では火気厳禁!
べたべたが残っていてもさほど問題はありませんが、新しくテープを巻くときにくっつきにくくなったり、凸凹になったりするので、なるべくきれいにしておきましょう
テープがきれいに取れたら、一度シャフトをさかさまにしてトントンと軽くたたき、シャフトの中にゴミや小石、砂などが入っていないか確認しておきましょう。ほんの小さなゴミでも、グリップを入れてしまうと音鳴りの原因となります
次に、新しいグリップをシャフトにあてがい、新しい両面テープを巻く部分を確認します
テープを巻く部分の終点に、マジックなどで印をつけておくと巻きすぎを防ぐことができます
巻き方は一般的に2種類あります。「縦巻き」と「らせん巻き」です。
縦巻きは両面テープをつけるのが簡単で、テープを巻く位置によってやや細長く仕上げたいときに使用する巻き方。
らせん巻きはちょっと慣れが必要ですが、均等の太さに仕上げることができます。初めての方は縦巻きからチャレンジするといいでしょう。
グリップの先端側からシャフトのエンドを縦に覆うように貼るのが縦巻き。比較的簡単に巻け、失敗は少ないです
らせん巻きは、シャフトのエンドからテープが重ならないようにらせん状に巻いていく方法。少しテープを余らせてから巻き始めます
テープとテープの隙間をできるだけ少なくするのが腕の見せどころ。隙間が大きいと溶剤が残ってしまい、乾きにくくなってしまいます
あらかじめ印をつけておいた部分まで巻けたら印に合わせてカット。カット部分が水平になるように斜めに切るのがポイントです
下巻きテープは両面テープですので、表面のテープは必ずはがしてください。はがし忘れるとグリップが固定されませんよ!
表面のテープをはがしたら、最初に余らせたテープを、シャフトエンドをふさぐようにして貼ります。これでゴミなどが入りづらくなります
いよいよグリップを差していきます。まず万力でクラブを固定し、テープを巻いたシャフトの下側に、金属性バットなどを敷いて、液体がこぼれてもいいようにしておきます
グリップをまっすぐ入れたいなら、フェース面が真横を向くように向きを確認しながらクラブを固定しましょう
クラブが固定できたら、グリップエンドの穴をふさぎながら溶剤をグリップの中に向けて噴射します。慣れないうちは、結構たっぷり吹くのがコツです
溶剤を噴射したらグリップエンドの穴と先の穴をふさぎ、シャカシャカ振って、グリップ内に溶剤をまんべんなくいきわたらせます
次に、シャフトに貼った下巻きテープにも溶剤を吹きかけ、最後にグリップ内に残った溶剤をテープに垂らしかけます
グリップの先をシャフトエンドに押し込んでグリップを入れ込みます。クラブ側がしっかり固定されていて溶剤がしっかり染み込んでいれば、それほど難しくありません。焦りは禁物です
エンドまでしっかりと押し込んだら、グリップの向きを確認します。クラブが固定されていてもねじれて入りやすいので、ねじれた部分はここで微調整。乾いてしまうと動かせないので、しっかり調整しましょう
グリップエンドまでしっかりシャフトが入っているか確認する意味で、エンドを地面にやや強めに押し付けます。奥まで入れたつもりでも最後まで入ってなかった……なんてことは意外とよくあるので、これをしっかりやりましょう
グリップがちゃんと入っていることが確認できたら、あとは溶剤でグリップの表面を拭きます。グリップを入れるときに両面テープのべたべたが結構ついているので、しっかり拭きましょう
完成! 慣れれば1本10分ぐらいでできますよ!
コツは、スムーズにグリップを入れるために溶剤をケチらないこと。そのため、たくさんこぼしてもそれを受けてくれる金属バットは重要なアイテム。こうすれば溶剤は再利用が可能です。紙ナプキンなどを敷いておけば掃除も楽々です
続いては、最小限のアイテムを使ってグリップをする方法。特に万力。買うにはなかなか勇気のいるアイテムですよね。万力がない場合は、グリップ交換セットについている補助具を使うのがおすすめです。
両面テープを巻き付けるところまでは同じ。万力がないので金属性バットを下に置き、そのうえで作業します。まず、溶剤をシャフト側のテープに吹き付けます。台があるならエンド側を下に向けたやったほうがいいです
次に、念のため補助具にも溶剤を吹きかけます。この補助具は「グリップガイド」とか「スターター」などと呼ばれるもので、グリップを簡単にシャフトに差し込むためのアイテムです
同じようにグリップにも溶剤を噴射し、シャカシャカします
次に、グリップの先に補助具の先端を差し込み、その状態で補助具ごとシャフトに向けて押し込むと、グリップの先端がシャフトにスポッと入ります。クラブが固定されていないと、グリップの先をシャフトのエンドに入れ込むのがとても大変なんです。それをサポートしてくれるのがこの器具。あるととても便利です。簡易的なものがグリップ交換セットについていることもあるので、チェックしてみてください
先端が入ったら補助具だけを下にスライドさせて外し、グリップをエンドまでしっかりと押し込めば完成
万力のときと同じように、最後はまっすぐになるよう微調整して完成です
最初は溶剤が乾かないかと結構焦るのですが、慣れてくるとそれほど難しくはありません。自分でグリップ交換するとクラブに愛着がわきますし、大事にしたくなります。ぜひチャレンジしてみてください。
初めてグリップ交換にチャレンジするなら、ウェッジかドライバーがおすすめです。単品クラブなら失敗しても傷は浅くて済みますから(笑)。アイアンだと、1本だけ違うグリップになると結構気になってしまうものです。
グリップには素材の違いがありますが、エラストマー系のグリップはちょっと気をつけて作業しましょう。エンド側に硬めの素材を使っている製品もあるので、しっかり入れたつもりでも奥まで届いていないことがあります。何度も言いますが、溶剤をたっぷり使うのが失敗を防ぐコツのひとつです!
個人的に、一番難易度が高いと感じるのはパターのグリップ。さまざまな素材の製品があるので、太いグリップなどは一気に奥まで入れないと途中で止まってしまうなんてことも。パターは、ほかのクラブで慣れてからチャレンジしてみてください。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。