レビュー
ロードバイクの軽い走行感を損なわない設計に感服!

ロードバイク乗りが思い描く理想のe-Bikeかも!? スペシャライズド「S-WORKS TURBO CREO SL」


数々の自転車レースで実績を残し、高い評価を得ている自転車メーカー「スペシャライズド(SPECIALIZED)」。革新的な技術をいち早く導入することでも知られ、自転車本体だけでなく、パーツやウェアなどの開発でも定評がある。同社はe-Bike(本格的なスポーツタイプの電動アシスト自転車)も手がけており、「TURBO」シリーズとして展開中だ。そんな「TURBO」シリーズの中から今回取り上げるのは、ロードバイクタイプの「CREO(クレオ)」にラインアップされている「S-WORKS TURBO CREO SL」だ。同社のプロフェッショナル向けのモデルのみに与えられる「S-WORKS(エス・ワークス)」の名を冠した最高峰モデルなので、価格は148万5,000円となかなかのもの。しかし、それに見合った豪華な装備と衝撃を受けるほどの走行感を備えている。電動アシスト機能を搭載しない本格的なロードバイクに乗る人が、本当に満足できるe-Bikeと言っても過言でない、本製品の完成度を見ていただきたい!

スペシャライズドならではの思想で設計された軽さを重視した車体

軽量といわれるロードバイクタイプのe-Bikeでも、その車重は15kg程度あるが、S-WORKS TURBO CREO SLは12.2kgと圧倒的に軽い。ここまでの軽量化を実現できた要因はいくつかあるが、そのひとつがフレームとホイールの素材だ。フレームは、もちろんカーボン製。ロードバイクタイプのe-Bikeとしては日本国内で初めてのカーボンフレームを採用したモデルだ。しかも、最上位グレードのカーボン「FACT 11r」を採用し、ホイールにもカーボン製の「Roval CLX 50 Disc」を装備している。Roval CLX 50 Discは軽量なだけでなく、空力性能にすぐれたディープリムに、エアロ形状のスポークや回転抵抗の少ないCeramicSpeed社製ベアリングなどを用いた、レースでも数多くの勝利に貢献してきた自社製のホイール。ちなみに、このホイールだけでも前後セットで30万円以上の価格となる。なお、カーボン製ホイールを搭載したe-Bikeは、日本国内では片手で数えられるほどしか販売されておらず、価格帯も80〜100万円オーバーが普通だ。

フレームにモーターユニットとバッテリーが内蔵されており、一見ではe-Bikeだとはわからないシルエットだ。なお、フレームに装着されているボトルケージは付属しない(オプションでもない、完全な別売品)

フレームは見る角度によって異なる色に輝くマジョーラカラーに塗られ、見た目にもただ者じゃない感を漂わせる

前後ともに、カーボン製で空力性能にすぐれたディープリムホイールを採用。タイヤは700×28mmと、最近のレースでは主流になりつつあるやや太めのものを履く

フレームとのタイヤクリアランスはやや大きめに取られており、42mm幅のタイヤまで履かせることができる

フレームとのタイヤクリアランスはやや大きめに取られており、42mm幅のタイヤまで履かせることができる

ハンドルバーもカーボン製。自社製の「S-WORKS」グレードのものを装備している。単体での価格は33,000円

ハンドルバーもカーボン製。自社製の「S-WORKS」グレードのものを装備している。単体での価格は33,000円

「S-WORKS」のロゴが入ったサドルもカーボンレールで軽量。座り心地にも定評がある

「S-WORKS」のロゴが入ったサドルもカーボンレールで軽量。座り心地にも定評がある

なお、なお、ステムにはサスペンション機構を備えたスペシャライズド製「Future Shock 2.0」を装備。路面からの突き上げを吸収し、疲労を抑える効果がある

軽い車体を実現したもうひとつのポイントは、バッテリーとドライブユニット(モーターやケース、基板などを含むもの)を軽量にしたことだ。車重を大きく左右するバッテリーは、現在の高価格帯のe-Bikeでは容量500Whクラスが主流だが、S-WORKS TURBO CREO SLは320Whという小さめのバッテリーを採用している。そしてドライブユニットには、モーターケースをマグネシウム製にするなどして軽量化を追求した自社製「SL 1.1 モーター」を採用。もともとe-Bikeのドライブユニットは設計の自由度を高め、よりスポーティーなハンドリングにするため、一般的な電動アシスト自転車に搭載されているものより軽量で小型だが、SL 1.1 モーターは他メーカーの軽量なドライブユニットよりも1kgほど軽い1.95kgに仕上げられている。加えて、ドライブユニットの出力も抑えめ。パワフルさに定評のあるBOSCH製ユニットの最大トルクが75Nmなのに対し、SL 1.1 モーターの最大トルクは35Nmと、数値だけ見ると見劣りするほどだが、これは“あえて”のこと。一般的にバッテリー容量を抑えれば車体は軽くなるものの、アシスト走行距離は短くなってしまうが、出力を抑えれば電力消費を抑えられ、十分なアシスト走行距離を確保できるのだ。さらに、ペダルを回す際のフィーリングも普通のロードバイクに近い、自然なものとなるのだそう。つまり、S-WORKS TURBO CREO SLは、出力を抑えることで圧倒的に軽い車体と航続距離を両立し、自分でペダルを回すフィーリングも損なわないという考え方で設計されたe-Bikeなのだ。

SL 1.1 モーターの最大トルクは35Nmと他メーカーのドライブユニットに比べると小さいが、その分、軽さは圧倒的

バッテリー容量も320Whと小さめ。現在の高価格帯のe-bikeでは500Whクラスが主流なのでかなり小さいが、アシスト可能な距離は最長130kmと十分なものだ

フレームのダウンチューブに内蔵されたバッテリーは軽さと剛性を確保するため、着脱できない仕様となっており、充電は付属の充電器を車体に接続して行う。バッテリー残量3%の状態から満充電まで約2時間35分かかる

そのほか、コンポーネントはシマノ製のものを採用。ロードバイク用では最高峰となる「デュラエースDi2」のシフト/ブレーキレバーに、マウンテンバイク用の最上級グレード「XTR Di2」のディレーラー(変速機)を組み合わせている。

シマノ製「デュラエースDi2」グレードのブレーキ/シフトレバーは、レバーサイドのボタンを押すだけで電動での変速が可能

組み合わされるリアディレーラーはマウンテンバイク用の「XTR Di2」。フロント側にディレーラーを搭載せず、軽いギアを選べるように42Tという大きめのスプロケットを装着している

ブレーキはもちろん前後とも油圧ディスク。シマノ製「デュラエース」グレードを装備している

ブレーキはもちろん前後とも油圧ディスク。シマノ製「デュラエース」グレードを装備している

羽が生えたかのような圧倒的に軽い走行感

e-Bikeは、ある程度重量のあるモデルでもアシスト力が働く時速24kmまでは軽快に走行できる。ただ、ロードバイクは時速30km以上で走ることが多く、また、その速度域で巡航するのが気持ちいいもの。そのため、いくらスタート時がアシスト機能によりラクであっても、アシスト力がゼロになってからは重い車体を人力で加速させなければならず、その際に感じる重さが、普通のロードバイクに乗っている人からすると不満に感じる点でもあった。もちろん、車体が軽いというだけで、そういった不満が解消されるわけではない。回転するパーツの抵抗やペダルを踏んだ力が逃げにくい剛性バランスなど、実際の走行時に感じる負荷はさまざまな要因がからんでくるもの。そこで、まずはS-WORKS TURBO CREO SLのアシスト機能を使わずに走ってみることにした。

あまりの軽さに、カメラマンに向かって軽さをアピールしちゃうほど! アシスト機能をオンにせずに走行するのはe-Bike本来の使い方ではないが、S-WORKS TURBO CREO SLならイケるのではないかという好奇心が抑えられなかったのも事実だ(笑)

筆者はこれまで数多くのe-Bikeに試乗しており、そのたびに、アシスト機能をオフにした走行も試している。最近はアシスト機能を作動させなくとも走れるモデルは多くなったが、正直、そのまま走り続けたいとは思わない。“走れる”だけであって、車体や自重による負担を感じないわけではないのだ。しかし、S-WORKS TURBO CREO SLはどこまでも走れるほど軽快。12.2kgという重量は普通のロードバイクとしては決して軽くはないものの、最初に1歩踏み込んだ時に思わず「おぉ!」と声が出たほど軽い走行感だ。バッテリーやモーターといった重いものを積んでいる感覚もほぼなく、どの速度域でもペダルを踏めば俊敏に加速してくれる。これはおそらく、重量バランスが非常にすぐれ、ホイールなどの回転系パーツの効率も高いからだろう。

S-WORKS TURBO CREO SLの車重は、筆者が所有している普通のロードバイクより若干重いのだが、走行感は断然S-WORKS TURBO CREO SLのほうが軽い

あまりにも軽い走行性なので、アシスト機能をオフにしたまま登り坂にチャレンジ! 下の動画のように、軽くペダルを回しているだけで登れてしまった

これほどまでにアシスト機能を使わない状態でのバランスがいいと、オンにすると逆に違和感が出るのではないかと不安にもなったが、e-Bike本来の性能を試さなければならない。トップチューブに内蔵されたボタンで電源を入れ、アシストモードを選択。「ECO」「SPORT」「TURBO」の3種類のモードが用意されている。

操作部がトップチューブにまとめられているのも、パッと見でe-Bikeとわからない見た目に貢献。選択しているアシストモードは円形部分の光り方で判別できるようになっている(写真は、もっとも強力なTURBOモード)。なお、複数ある棒線はバッテリー残量を示すもの

アシスト機能をオンにすると、一気に世界が変わった。もっともアシスト力の低いECOモードでも十分に車体を押し出す力が感じられ、圧倒的にペダリングがラクになる。アシストモードを切り替えながら走るとモーターの出力は感じるものの、自分のペダリングがじゃまされるような感覚はない。e-Bikeは自然なアシストフィーリングが魅力のひとつだが、その中でも最上級といえる上質さだ。

アシスト機能をオンにするとS-WORKS TURBO CREO SLの本領が発揮される。自然なフィーリングながらも確実にペダルが軽くなり、加速もさらに気持ちいい

下の動画は、前述の登り坂。中間のパワーを発揮する「SPORT」モードで走行している様子だ。アシスト機能オフで走行したものと映像では差が感じられないかもしれないが、足にかかる負担は圧倒的に少ない。

e-Bikeに乗っていると、アシストがあるためにそれに頼って変速操作をサボりがちになるが、S-WORKS TURBO CREO SLの場合、きちんと変速して最適なギアで効率的なペダリングを心がけたくなる。ボタン操作で素早く変速できる「Di2」に対応していることもあり、変速操作自体も気持ちいい。そして特筆すべきは、アシストが切れる時速24kmを超えても、そのまま加速していけること。日本国内の規格では、モーターのアシストは時速10kmから徐々に下がっていき、24kmでゼロになるが、その減り方が自然で、アシストが切れたことをほとんど感じさせないのだ。数多くのe-Bikeに試乗してきたが、ここまでアシストがなくなったことを感じないモデルは初めてと言っていい。厳密には、注意深く走っていればアシストが切れたことはわかるのだが、気持ちのいい加速は途切れることがないので、そんなことは気にせず走っていける。時速30km以上での巡航はもちろん、時速40kmオーバーで走ることも苦ではない。まるで羽が生えたかのようなスピード感だ。

サイクリングロードをハイスピードで巡航するのが気持ちいい。こんなe-Bikeはほかにないだろう

サイクリングロードをハイスピードで巡航するのが気持ちいい。こんなe-Bikeはほかにないだろう

乗り回したあと、S-WORKS TURBO CREO SLをかついで階段を上ってみたが、足にも疲れがないうえ、車体も軽いので長い階段を上りきることができた。ライド中にこのようなシーンに遭遇した際に、ためらわずに進めるのがうれしい

ロードバイクの気持ちよさは時速30km以上のハイスピードで風を感じながら走ることにあると思うが、その速度域での軽快感は群を抜いている。筆者がこれまでに乗ったロードバイクタイプのe-Bikeでも時速30km以上で走れるモデルは複数あるものの、アシスト力が効かない領域で速度を維持するため、足に結構な疲れが残ってしまっていた。そんな疲れがS-WORKS TURBO CREO SLは圧倒的に少ない。アシスト機能をオフにした状態であれだけ軽快に走れるのだから当然と言えば当然なのだが、アシストがなくなる領域での走りも衝撃を受けるほど軽やかなので、気持ちよさが途切れることなく味わえる。

再加速もラクなので、信号で止まるのもイヤにならないどころかちょっと楽しみになる

再加速もラクなので、信号で止まるのもイヤにならないどころかちょっと楽しみになる

ちなみに、今回は使用していないがスマートフォンとの連携機能も完備。専用アプリ「MissionControl」でアシストのセッティング変更や走行ルートの記録などが行えるのはもちろん、走りたい距離と時間を入力すると、その間はバッテリーが切れないようにアシストモードの切り替えが自動で行われる「SmartControl」機能も用意されている。

スマートフォンとの接続はBluetoothを使用。アシストのセッティングは、各モードの出力や持続時間をそれぞれ調整することもできる

まとめ

今回紹介したS-WORKS TURBO CREO SLは、スペシャライズドが日本の規格に適合したe-Bikeとして初めて展開したモデルのひとつ。実際に目にする前からスペシャライズドのe-Bikeであればよいものに違いないと思ってはいたものの、正直、S-WORKS TURBO CREO SLの小さめの最大トルクやバッテリー容量は予想外。一抹の不安がよぎったが、実際に乗ってみると、まったくの杞憂に終わった。厳密に言うと、トルクが大きいe-Bikeと比べるとモーターにより押し出される力は弱い。しかし、圧倒的な軽さと走行効率の高さを備えた車体は、最大トルク35Nmでも十分なのだ。平坦な道ではTURBOモードは強すぎるほどで、ECOモードかSPORTモードで不足はない。また、バッテリーについては、少し長い距離を走行してみたがほとんど減らなかった。アシストがゼロになる時速24km以上で走ることが多いロードバイクなので、カタログ値以上にバッテリーの持ちはいいのだろう。

これまでのロードバイクタイプのe-Bikeは、アシスト力やバッテリー容量を確保するため、ある程度重さがあるモデルが多かった。それはそれでe-Bikeのあり方としては間違っていない。ただ、スペシャライズドはユーザー調査から、ロードバイク乗りが求めているのはアシストの強さではなく、軽快さだという結論に至り、S-WORKS TURBO CREO SLを含む「TURBO」シリーズを開発した。これこそ、ロードバイクらしい軽快な走りを確保しつつ、アシスト機能によるラクさもプラスした、ロードバイク乗りが思い描くであろう理想のe-Bikeと言えるのではないだろうか。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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