南井正弘の「毎日走って、わかった!」
「アディゼロ アディオス プロ」と「ハイペリオンエリート2」をピックアップ!

「最速シューズ」の座をナイキから奪う!? 2足のカーボンプレート内蔵モデルを試走レビュー

「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」は、現在のスポーツシューズ業界における最速シューズの座に君臨している。実際、ケニア人ランナーのエリウド・キプチョゲ選手が、非公認レースながら42.195kmで、2時間の壁を破る1時間59分40秒をマークした際や、日本人ランナーの大迫傑選手が「東京マラソン2020」において2時間5分29秒で走り、みずからの日本記録を更新した際に着用していたのは、同モデルだ。

そんなプロダクトに対抗すべく、新機軸を結集してリリースされ、ワールドワイドで注目されているのが、アディダスの「アディゼロ アディオス プロ」とブルックスの「ハイペリオンエリート2」だ。今回は、この2足の走行性能の高さを徹底レビューする。

アディダス「アディゼロ アディオス プロ」(品番:G55661)。公式サイト価格は27,500円(税込)

アディダス「アディゼロ アディオス プロ」(品番:G55661)。公式サイト価格は27,500円(税込)

ブルックス「ハイペリオンエリート2」(品番:1000371D111-BRU0376)。公式サイト価格は29,700円(税込)

ブルックス「ハイペリオンエリート2」(品番:1000371D111-BRU0376)。公式サイト価格は29,700円(税込)

「ナイキ ヴェイパーフライ」シリーズの最有力な対抗馬

2018年の「ベルリンマラソン」で、エリウド・キプチョゲが2時間1分39秒の世界記録を出したり、2020年の「箱根駅伝」において8割を超える着用率を記録したりと、ここ数シーズンの長距離ランニングシーンをリードしてきたのは、ナイキの「ヴェイパーフライ」シリーズで間違いない。しかしながら、他ブランドもそれに対抗すべく、数々のプロダクトをリリースしており、なかでも今回紹介する2モデルが対抗する最も有力な存在と言ってよいだろう。それがアディダスの「アディゼロ アディオス プロ」とブルックスの「ハイペリオンエリート2」である。

「アディゼロ アディオス プロ」は、アディダス史上最速のランニングシューズを開発すべく、ロネックス・キプルト選手やジェイシリン・ジェプコスゲイ選手といったトップアスリートと、アディダスの専任チームによって共同で開発された1足。本モデルは、足の中足骨をヒントに調整された5本の骨状カーボンバーで構成された「エナジーロッド」を、アディダスで最も軽量かつ反発性の高いフォーム素材「ライトストライク プロ」で挟んだサンドイッチ構造を採用。着地時の適度な沈み込みや安定性、重心移動時の反発性を生み出し、爆発的な推進力をランナーに提供する。

いっぽう、ブルックスの「ハイペリオンエリート2」は、2020年2月末の発売時点では同社史上最速モデルであった「ハイペリオンエリート」の進化版で、2020年9月1日に世界同時発売された。ミッドソールには、「ハイペリオンテンポ」に使われている最新マテリアル「DNA FLASH」を採用。「DNA FLASH」は、液体窒素を素材に融合させる液体形成プロセスを用いた第3のミッドソール素材であり、これによって、独特の安定性と反発力を合わせ持つ可変式カーボンプレートを挟み込むことで、前作よりも安定感、軽快感ともに向上。 ランナーの持つポテンシャルを最大限に引き出してくれるハイエンドモデルに仕上がっている。

「アディゼロ アディオス プロ」を履いて走ってみた!

アディダス「アディゼロ アディオス プロ」

アディダス「アディゼロ アディオス プロ」

まず、「アディゼロ アディオス プロ」に足を入れてみる。

アッパーには、同社ランニングラインにおける最薄最軽量のリサイクルポリエステル製メッシュと、内側に搭載されたサポートケージを組み合わせた「セラーメッシュ」が使用されており、フィット性が高く、かかとから前足部に至るまで足との一体感が強く感じられた。

アッパーには、「セラーメッシュ」を使用。軽さやフィット性を保ちながら、足の部位ごとに適した柔軟性、通気性、サポート性を提供する

アッパーには、「セラーメッシュ」を使用。軽さやフィット性を保ちながら、足の部位ごとに適した柔軟性、通気性、サポート性を提供する

シュータンがサイドで固定されている構造は、2020年7月にレビュー記事を書いた「アディゼロ プロ」と共通の仕様で、中足部のフィット感を向上させてくれている。新たに採用されたミッドソール素材「ライトストライク プロ」は、立っている状態でもそのやわらかさが感じられるが、グラつきがなく安定性は高い。一般的に柔軟なミッドソールは安定性が懸念されるが、この素材の場合は変形後に素早く元に戻ろうとするので、その心配は少ないかと。

ミッドソールには、同社で最も軽量かつ反発性の高いフォーム素材「ライトストライク プロ」を使用

ミッドソールには、同社で最も軽量かつ反発性の高いフォーム素材「ライトストライク プロ」を使用

実際に走り始めてみると、ミッドソールが衝撃を吸収してから、その力を反発に変換するスピードがクイックであることが体感できる。それもあってか、着地安定性がとても高いのだ。それに加え、ヒール部分に内蔵された素材「ナイロン+」と「カーボンファイバー・ヒールプレート」も安定性の向上に貢献している。

徐々にスピードを上げていくと、前足部に5本指状に配された「エナジーロッド」のしなりもプラスされ、浮遊感のある推進力が提供されるので、自然とペースが上がる。「アディゼロ プロ」がこれまでの「アディゼロ」シリーズの走行感をある程度継承していたのに対し、この「アディゼロ アディオス プロ」は、まったく新しい走行感が本当に楽しく、ついついペースを上げたくなる。

アウトソールラバーは、刻みのない、クルマ用タイヤで言えばスリックタイヤのようなタイプで、「グリップは大丈夫だろうか?」と思う人もいるかもしれない。しかし、コンクリートやアスファルトといった路面側に十分な摩擦力がある場合には、抜群のグリップ力を発揮し、ランナーの脚力を逃すことなく路面へと伝えてくれた。日課の6kmランを終えるまでに最速で4分3秒/kmで走ったが、足への負担も少なく、筆者レベルのランナーでも快適に高速走行が楽しめる1足であることが理解できた。

アウトソールラバーは、刻みのないタイプ。コンクリートやアスファルトといった路面側に十分な摩擦力がある道では、グリップ力をしっかりと発揮する

アウトソールラバーは、刻みのないタイプ。コンクリートやアスファルトといった路面側に十分な摩擦力がある道では、グリップ力をしっかりと発揮する

前足部には、5本の骨状カーボンバーで構成された「エナジーロッド」を内蔵。ミッドソールの「ライトストライク」内部に配されるために視認できないが、アウトソールに浮き上がった汚れから、その搭載位置を想像できる

前足部には、5本の骨状カーボンバーで構成された「エナジーロッド」を内蔵。ミッドソールの「ライトストライク」内部に配されるために視認できないが、アウトソールに浮き上がった汚れから、その搭載位置を想像できる

「ハイペリオンエリート2」を履いて走ってみた!

ブルックス「ハイペリオンエリート2」

ブルックス「ハイペリオンエリート2」

次に、「ハイペリオンエリート2」に足を入れた。

アッパーは、基本的に従来モデル「ハイペリオンエリート」を継承しており、その高いフィット感は変わらない。いっぽうで、ミッドソールの素材が「DNA ZERO」から「DNA FLASH」へと変更されたことで履き心地は大きく変わっている。前モデルはどちらか言うと硬めのセッティングだったのだが、本モデルは立っている状態でもそのやわらかさが伝わってくる。「DNA FLASH」は「ハイペリオンテンポ」で経験しているが、「ハイペリオンエリート2」は可変式カーボンプレートを内蔵していることで、その履き心地は「ハイペリオンテンポ」とも異なる。

伸縮性にすぐれたアッパーは、足をやさしく包み込み、快適な履き心地を提供

伸縮性にすぐれたアッパーは、足をやさしく包み込み、快適な履き心地を提供

液化窒素ガスを混ぜ、臨界発泡させて成型しているミッドソール素材「DNA FLASH」をミッドソールに採用。高いレベルの衝撃吸収性と反発性、安定性を確保しながらも、足へのやさしさも感じられる

液化窒素ガスを混ぜ、臨界発泡させて成型しているミッドソール素材「DNA FLASH」をミッドソールに採用。高いレベルの衝撃吸収性と反発性、安定性を確保しながらも、足へのやさしさも感じられる

実際に走り始めてみると、まず感じるのは「DNA FLASH」を採用したことによるソフトな着地感。スローなペースで走っていると、まず感じるのは足へのやさしさだ。徐々にペースを上げると、「DNA FLASH」と可変式カーボンプレートの推進力が融合され、自然と足が前に出るような走行感が得られる。その走り心地は前モデル「ハイペリオンエリート」が転がるような感じだったのに対し、今回の「ハイペリオンエリート2」は跳ねるように前方へ押し出されるような感覚だ。

通常は6kmのランを日課としているが、この日は「ハイペリオンエリート2」の走り心地を思う存分に楽しむべく10kmを走行した。最終的にペースを4分11秒/kmまで上げることができたが、「DNA FLASH」の衝撃吸収性の高さもあって、足への疲労感は最小限。普段と異なるトレーニングをすると、足に違和感が出たりすることもあるが、翌日も翌々日も脚部に疲労感は残っていなかった。

新採用されたアウトソールパターンは、アスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮。ソリッドラバーの配置面積も広いので、アウトソールの耐摩耗性は同種のレーシングシューズではトップレベルにある。かかととつま先をローリングさせた形状の「ラピッドソールテクノロジー」も、よりスムーズな重心移動と推進力を生み出すのに貢献してくれていた。

アスファルトやコンクリートといった舗装路で、最高のグリップ性を発揮するアウトソールパターン。ソリッドラバーを配した面積も広いので、耐摩耗性も十分だ

アスファルトやコンクリートといった舗装路で、最高のグリップ性を発揮するアウトソールパターン。ソリッドラバーを配した面積も広いので、耐摩耗性も十分だ

【まとめ】2モデルともナイキに十分に対抗できるレベル

以上のように、アディダス「アディゼロ アディオス プロ」と、ブルックス「ハイペリオンエリート2」で試走してみたが、前者で6度、後者で7度走った感想は、どちらのシューズも現在ランニングシューズ市場に存在するプロダクトにおいて、「最も速いシューズ」、言い換えると「最も推進力にすぐれたシューズ」であるということだ。

先述のとおり、現在は「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」および「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」が長距離ランニングの世界を席巻しているが、今回紹介した2モデルは、これに十分に対抗できるレベルにある。筆者レベルのランナーが履いても、その走行性能の高さが理解できた。

また、「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」が走力レベルや着地位置をある程度選ぶのに対し、今回の2モデルは、「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」同様に間口が広いという感想を持った。トップアスリートのために開発されたプロダクトではあるが、サブ3.5クラスのランナーが履いても、その走りやすさを体感することができ、自己記録更新の大きな助けになってくれる気がする。

さらに、かかと寄りの着地でも走りにくくなかったことも、一般ランナーにとってはうれしい点だ。新型コロナウイルスの影響もあり、なかなかレース開催は困難な状況だが、レースにエントリーできる状況になった際には、ぜひともトライしてほしい2足である。

ちなみに、2020年9月5日、チェコのプラハで開催された「プラハ・ハーフマラソン」において、ペレス・ジェプチルチル選手(ケニア)が、女子単独レースの世界記録となる1時間5分34秒を、さらに男子レースではキビウォット・カンディエ選手(ケニア)が、世界歴代5位となる58分37秒を記録するなど、「アディゼロ アディオス プロ」を履いたアスリートの活躍が報告されている。これからレースが開催されるようになれば、「ハイペリオンエリート2」を着用した選手の好記録も期待できるので、今後もこの2足を履いたアスリートたちの活躍が楽しみだ。

南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。

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