オグさんです! 今回はタイトリストの最新モデル「TSi」シリーズのFW(フェアウェイウッド)をお借りできましたので、さっそく試打レポートをお送りしたいと思います。
タイトリスト「TSi3 フェアウェイメタル」(左)、同「TSi2 フェアウェイメタル」
「TSi」シリーズは、前作の「TS(タイトリスト・スピード)」シリーズにinnovation(イノベーション/革新)、inertia(イナーシャ/慣性)、integration(インテグレーション/統合)、impact(インパクト/衝撃)などの意味を持つ“I”を追加した、タイトリストの最新シリーズ。ドライバーは新素材を採用するなど、大きな進化で高い評価を得ています。
TSiシリーズのFWのラインアップは、ドライバー同様「TSi2」と「TSi3」の2タイプ。どれだけ進化しているのか非常に楽しみです! ちなみに、タイトリストでは伝統的に、フェアウェイウッドを「フェアウェイメタル」と呼称します。
では、それぞれについて見ていきましょう。
狙ったところに打ち出しやすいニュートラルなつかまり設定を持ち、多少の打点のミスを許容してくれる直進性の高さと高い弾道が持ち味のアスリート向けモデル。
黒を基調とした落ち着いたカラーリングを採用。ソール後方に搭載された脱着式のウェイトを交換することで、ヘッド重量を調整することができます
ややヒール寄りにボリュームがある形状で、ヒールヒットに強そうな印象がありますね。ドライバー同様、トゥ側がかぶって見えないようにデザインされています
ボディはステンレス製で、フェースには「カーペンタースチール」と言う特殊鋼が使われており、これは前作と変わっていません。しかし数値的な点はもちろん、見た目やフィーリング面まで全面的に見直しが行われています
シャフトはTSiのメタル(ウッド)のためだけに設計されたオリジナルのものを2タイプ用意しています。軽量に仕上げながらもしなやかさとしっかり感を両立させた「TSP110」と、やや粘る挙動で当たり負けしづらい「TSP322」(写真)の2種類です
前作のTSシリーズのFWは、飛距離や性能的な部分で高い評価を得ていましたが、さらにブラッシュアップを行い、より高い次元で性能を追求したのがTSiです。TSi2は、ある程度のスキルを持つゴルファーを対象にした直進性と、ミスへの許容性を重視した仕様。ある程度のミート率がないと性能を引き出すことが難しいのですが、上級者やツアープロがFWに求める性能を具現化したモデルと言えます。
TSi2フェアウェイメタルは、進化した「ARC4.0(アクティブリコイルチャンネル)」と呼ばれるフェース裏の溝がポイント。高い打ち出し角と適正なスピン量を確保しながら、前作よりも高いボール初速を実現しています。さらに、ヘッドの全面的な見直しによって、空力性能の向上と慣性モーメントの増大を実現。さらには、かぶって見えないようにするためのヘッド形状の見直し、よりよい打音、打感のためのヘッド内部の振動管理など、ありとあらゆる面で進化しています。
コンセプトを変えずに性能を追求するのは実にタイトリストらしい進化の仕方ですが、今回のモデルチェンジでは進化の度合いをかなり大きく感じます!
まず構えた形状から。トゥ側とヘッド後方にやや角を持たせたやわらかな三角形は、同社のドライバーとつながりのよい形になっています。ポンとヘッドを置いた時にトゥ側がちょっとだけ開いて見える、いわゆる“逃がした”デザインになっていて、左のミスを嫌がるアスリートにとっては非常に安心感のある形状になっています。
ソール後方のウェイト(別売)を交換することで、総重量の調整や、シャフト交換時などのバランスの調整なども容易にできるようになっています
打ってみると、ライナー性の強い弾道が飛んでいきます。フェースの向きが管理しやすく、狙ったところに打ち出しやすい印象。それでいて左に飛び出しにくいところがいいですね。
直進性が高いので、狭いホールのティーショットなどでも活躍してくれそうです。打感は前作と比べると少しだけやわらかくなった印象。前作はカキンっといった、ややはじき感のある感触でしたが、今作は、パシっというような、少しフェースに乗ってから飛び出すようなイメージの感触です。
狙ったところに打ち出しやすいフェース管理のしやすさと、直進性の高い弾道がTSi2のポイント!
飛距離を重視するなら15°のロフトは武器になりますが、グリーンを狙うクラブとして考えるなら18°以上のロフトが欲しいところ。ヘッドスピード43m/s程度の私が打つと、15°ではほとんどドライバーのような、ライナー性の弾道になりました。飛距離性能で比べれば前作より間違いなく飛ぶようになったと断言できますね!
地面から打った15°のデータ。ちょっとヒールヒット気味だったのですが、スピンは増え過ぎず、きっちり距離が出ています。もう少しパワーがあれば高さも出せると思いますが、私ぐらいのパワーだとこれぐらいですね。高さが欲しいなら18°がおすすめです
操作性に加えてアジャスト機能を持ち、ミスへの許容性よりも自分が狙った弾道の打ちやすさを重視する方のためのモデル。
ソール中央に3か所のポジションを持った可動ウェイトを搭載しているのが最大の特徴
ややトゥ側にボリュームがあり、TSi2と比べて少し小ぶりになっています
素材やテクノロジーはTSi2とほぼ共通。コンセプトの違いによる重心の位置と、可動ウェイトの有無が大きな違いです
「TSi3フェアウェイメタル」は、自分がイメージした弾道を打てるように操作性とアジャスト機能を高めたモデルで、最大の特徴は、ソール中央に「トラックウェイト」と呼ばれる3つのポジションを持った可動ウェイトを搭載していること。ウェイトを固定するカバーには「カイロンマックス」と呼ばれる超高強度炭素繊維強化プラスチックを使用しています。耐久性はもちろん、見た目や振動抑制などにも配慮しているのでしょう。
前作からコンセプトは変えず、ブラッシュアップに徹しているのはTSi2と同様で、ARC4.0の搭載やヘッド形状、空力などの見直しによりTS3と同様の打ち出しとスピン量を実現しながら、ボール初速、飛距離を高めることに成功しています。
構えた印象は、アスリートなら安心!と言える、小ぶりで左を意識させない逃げ顔。打ってみるとまさに形状どおりの弾道が出ます。ヘッドが小ぶりなFWは、ヘッドターンがしやすくつかまり過ぎてしまうこともありますが、このTSi3は小ぶりでありながら、適度なヘッドターンのしやすさでつかまり過ぎることはないですね。ニュートラルよりも少しだけつかまりを抑えている印象です。まさにツアープロや上級者のためのモデルといった仕上がりです。
球質もまさにそんな感じで、ある程度パワーがないとボールが上がりきらない感じ。私ぐらいのパワーだとぶっ飛び系のライナー性の強い弾道が打てますが、15°のモデルではスピンがかかりきらずグリーンでは止められないでしょうね。
15°で地面から打った数値です。スピン量はもはやドライバーのレベル。それだけに飛距離はよく出ていますが、実際に使用するならちょっと高さが足りないですね。私にはTSi2同様18°ぐらいがちょうどよさそうです
ウェイトをヒールポジションにセットして打ってみるとヘッドターンがしやすくなり、個人的には操作性が上がった印象を受けました。反対にトゥポジションにするとヘッドターンが穏やかになった印象で、オートマチックに打てるようになりました。これは使うゴルファーのヘッドローテーションの量によって、つまりスイングタイプによって感じ方が変わると思います。個人的にはヒールポジションが使いやすかったですね。結構操作感が変わるので、試打する時はぜひ試してみてください。
タイトリストが「フェアウェイトラックウェイト」と呼ぶ可動ウェイト。操作感は結構大きく変わるので、より自分の好みに合わせて調整することができます
TSi2フェアウェイメタルは上級者が求めるやさしさを、TSi3フェアウェイメタルは上級者が求める使いやすさをそれぞれ追求した仕上がりになっていました。ミスの幅をできるだけ抑えたいと考えるならTSi2、よりショットの精度をより高めたいと考えるならTSi3といった選び方でよいと思います。
確かに上級者向けの特性ではありますが、ここまで徹底した狙いがあるクラブは、操作する技術がなくてもある程度ミートできる方なら十分結果の出せるクラブになりうるなと感じました。
もちろん重量的な設定もありますので、ヘッドスピードは42m/s程度は欲しいところですが、スイングなりの安定した弾道を打つのには、これくらいはっきりした性能を持ったクラブのほうが一定の方向にボールを飛ばすことができるので、かえって安定するのではとも思います。
ライバルとしては、TSi2はテーラーメイド「SIM MAX」、ピン「G425 MAX」あたり、TSi3はテーラーメイド[SIM」、キャロウェイ「マーベリック サブゼロ」あたりでしょうか。
飛距離、形状、フィーリング面など、あらゆる面で進化したタイトリストの新作フェアウェイウッド。ぜひ試してみてください!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。