ファミリーキャンプをする際、衣食住に必要なキャンプ道具を一式持っていくと結構な量になります。自動車で出かける場合でも、ラゲッジスペースの広さによってはそれほど荷物を載せられないことも。そんな時に、よく悩みのタネになるのが大鍋です。料理はたっぷり作りたいけれど、車内だけでなく、キャンプ場でもスペースを占領しますからね。今回は、そんな悩みを解決してくれそうなGSIの“折りたためる鍋” 「エスケープHSポット」を紹介します。
エスケープHSポットの特徴は、鍋の側面にやわらかいシリコーンを採用することで、2Lもしくは3Lという容量の鍋が使用時の1/3ほどの高さにまで折りたためること。もちろん、鍋としての性能も上々です。火にかけられるよう鍋底にはアルミを配置し、さらに、鍋底を囲むように「ヒートラジエーター」を装備。このヒートラジエーターにより熱伝導が高まり、たとえば、お湯を沸かすのにかかる時間は一般的な鍋より約30%短くて済むのだそう。また、フタに湯切り用の穴も備えられているので、パスタなどを茹でる時にも役立ちます。
エスケープHSポットには2Lと3Lの2タイプがラインアップされていますが、今回は3Lタイプを使用。サイズは約26.2(幅)×22.8(奥行)×13(高さ)cm、重量は約556gです
鍋の側面にシリコーンを採用することで、折りたたみを実現。やわらかな素材ですが、耐熱温度は120℃なので、鍋でお湯を沸かしたり、調理しても溶けたり、変形する心配はありません
折りたたむと、約26.2(幅)×22.8(奥行)×5.3(高さ)cmのサイズに。これなら、置き場所を気にせず持ち運べます
フタをしてハンドルを折りたためば、フタがロックされます。この状態にしておけば、鍋を折りたたんで持ち運ぶ際にフタが外れることはありません
鍋底は、ハードアノダイズド加工(硬質アルマイト加工)が施されたアルミ製。汚れや傷が付きにくいコーティングです。なお、フタも同様の素材を採用
鍋底を囲むように装備されているのが、ヒートラジエーター。火が当たる表面積が広くなり、効率よく加熱することができる機能です
鍋内の底部には、テフロン加工されたアルミを配置。焦げ付きにくいので調理がしやすく、汚れも比較的ラクに落とせます。ただし、金属製のフライ返しなどを使うとテフロン加工がはがれる可能性があるので、プラスチック製や木製のものを使いましょう
コンパクトに収納できるのは魅力的ですが、鍋としての実用性がともなっていなければ価値は半減。実は、筆者は前々からエスケープHSポットの存在は知っていたものの、この手のシリコーン製の鍋はバーナーの炎が鍋底からはみ出してしまうと溶けてしまうので、それが心配で使ったことがありませんでした。エスケープHSポットは、面積の広いアルミ製ボトムとヒートラジエーターを装備しているので、そうした心配はなさそうですが……。そのあたりも含めてチェックしていきます!
まずは、一般的な鍋より30%ほど早くお湯を沸かすことができるという点を検証。筆者がファミリーキャンプで使っているステンレス製の大鍋とエスケープHSポットで、水が沸騰するまでの時間を比較してみました。
左がエスケープHSポットで、右が筆者所有のステンレス製の鍋。容量や底面の広さは、同じくらいです
それぞれの鍋に1.5Lずつ水を入れ、加熱。沸騰したことがすぐわかるように、フタはせずに加熱します
同時に点火。日中の屋外では火が写せなかったので、写真はあとから暗いところで撮ったものですが、けっこうな強火で加熱しました
前述の火力で加熱中のエスケープHSポットの底部。火が底部より外にはみ出ることはありませんでした
気温約12℃のもとで、エスケープHSポットは約9分29秒で沸騰しました(測定した数値は、「ラップ1」に表示されています)。フタをして加熱すれば、もっと短時間で沸かせるでしょう
エスケープHSポットのお湯が沸騰したタイミングで、筆者所有のステンレス鍋を見ると、小さな気泡は出てきているものの、まだ沸騰していません。結局、ステンレス鍋のお湯が沸騰したのは、約22分16秒。エスケープHSポットの倍以上の時間がかかりました
エスケープHSポットの熱伝導が非常にすぐれていることがわかったところで、次は調理をしてみます。まずは、たくさんのお湯を沸かして作るパスタ料理。フタに装備されている湯切り穴の使いやすさも確認します!
今回は、効率よくお湯が沸かせるようにフタをして加熱
お湯が沸騰したらパスタを投入。今回は2人分作ります
パスタが茹で終わったら火を止め、フタをします
次は湯切り……なのですが、湯気がすごくてお湯が出ている様子が見えにくかったので、写真は水で代用した状態。折りたたみできるシリコーン製の鍋なので、斜めにした時にグニャっとゆがんだりしないか心配でしたが、形状は変わることなくラクに湯切りができました
ハンドルが大きめで、握りやすいのも◎。しかも、エスケープHSポットを加熱してもハンドルが熱くならないので、ミトンなどをはめる必要がないものいい!
アルミ製のフタは熱くなりますが、フタに装備されたシリコーン製のパッドに指を置けば問題なし。ハンドル近くに配置されているのでハンドルを握ったまま押さえることができ、湯切り中にフタが落下せずに済みます
湯切りしたパスタは、そのままエスケープHSポット内でパスタソースとからめます。鍋底のフッ素加工に傷を付けないように、木製のサービングスプーンとフォークで混ぜました
ミートボールスパゲティの完成! 大皿としてそのままテーブルに出しても、けっこうおしゃれでは!?
ここまではお湯を沸かしたり、そのお湯でパスタを茹でただけなので、炒めたり、味が付いたものをじっくり煮込んだ料理も試してみたい。というのも、油を使ってもシリコーンは問題ないのか、味がしっかりした煮込みをしても鍋にニオイは残らないのかなど気になる点がいくつかあるからです。でも、時間の関係で屋外では調理できず……。ここからは、家庭用のガスコンロでエスケープHSポットを使って調理します。
今回作るのはビーフシチュー。エスケープHSポットを火にかけ、底部が熱くなってからサラダ油を引いて材料を炒めます。熱せられた油でシリコーンが溶けるのではないかと心配でしたが、この程度なら問題なし!
炒め終わったら、水を入れて沸騰させるまで加熱。その後、火力を弱め、30分ほど煮込みます
家庭用のガスコンロで加熱している状態。きちんとゴトクに載り、火がはみ出ることもありませんでした。ただし、ガスコンロは点火時に火力が最大になるため、機種によっては鍋底から火がはみ出てしまう場合も。シリコーン部分を溶かさないためにも、火力調節をしてからエスケープHSポットを載せるほうがいいでしょう
しっかり煮込んだら火を止め、ルウを入れて、とろみが出るまで煮込みます
トータル1時間弱で完成
ビーフシチューを食べきったあとのエスケープHSポット。油を使ったり、煮込んだりしましたが、汚れはキレイに取れるのでしょうか
洗浄は食器洗い用の中性洗剤で行います。シリコーン製なので、研磨剤入りの洗剤や金たわしのような硬いものはNG
洗い終えたあとに油のヌルヌル感は残りませんが、ニオイは若干残っていました。とはいえ、鼻を近づけないとわからない程度なので、個人的にはあまり気になりません。気になる場合は、お湯に10%の酢を加えて浸けておくとニオイが取れるようです
家庭用のガスコンロでも十分に使えるスペックであることはわかりましたが、エスケープHSポットはあくまでアウトドア用の鍋。場所も取らないので、家庭用の鍋として使いたくなるかもしれませんが、日常的に使うと劣化も早くなると思われるので注意しましょう。
エスケープHSポットを使う前に想像していた「剛性は大丈夫?」「シリコーンが溶けない?」という不安はまったくなく、安心して使うことができました。普通の鍋にはない折りたたみ機構を備えた鍋ではありますが、今回試したような、茹でる、煮込む、炒めるといった調理は問題なく行えます。ただ、実際に使ってみると普通の鍋とは少し違う点が見えてきました。ひとつは、食材を炒める時。鍋が軽いため、手を添えていないと鍋が動いてしまうのです。ゴトクが小さめのバーナーを使う際には、調理中に鍋を落とさないように注意しましょう。そして2つ目は、煮込み調理をした際の食材への火の通り具合です。エスケープHSポットは普通の鍋よりも短時間で沸騰させることができるのがメリットですが、そのぶん、煮込み時間が短くなり、普段と同じ感覚で加熱を止めると野菜が少し固い印象。やわらかく煮込みたい場合は、普段より少し長めに加熱したほうがいいかもしれません。
このように、普通の鍋とは若干異なる点もありますが、高さが5cm程度に縮められるのは大きな魅力。使うか使わないかが決まっていない状態でキャンプに大鍋を持っていくのは躊躇してしまいますが、エスケープHSポットなら常備しておいてもじゃまになりません。
アウトドア雑誌の副編集長職を経てフリーランスとして独立。以降、アウトドアをはじめ、グッズ、クルマ、旅行などレジャー関連を中心に執筆している。