南井正弘の「毎日走って、わかった!」
トップアスリート向けランニングシューズ「METASPEED Sky」を試走レビュー!

「アシックス史上最速」を掲げる「メタスピード スカイ」はランニング業界でも最速か!?

2021年の「箱根駅伝」にて着用率95.7%を記録したナイキは、日本におけるトップレベル向けランニングシューズ市場において、圧倒的シェアをキープし続けている。しかしながら、海外では他ブランドも健闘しており、実際、現在のハーフマラソンの世界記録は、男子と女子ともにアディダス「アディゼロ アディオス プロ」を着用したランナーが記録している。

そんな中、2021年3月30日、アシックスは、ストライド型とピッチ型の走法それぞれに対応したトップアスリート向けシューズ「METASPEED(メタスピード)」を開発したことを発表。第1弾として、ストライド型ランナーに向けた「メタスピード スカイ」が、発表の翌日である3月31日より「アシックス オンラインストア」で先行発売された。今回は、アシックスファンのみならず多くのランナーにその登場が待たれていた、「メタスピード」の走行性能を検証する。

3月31日から「アシックス オンラインストア」で先行発売され、4月9日から一部のアシックス直営店や全国のスポーツ用品店で順次発売される「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」。価格は27,500円(税込)

3月31日から「アシックス オンラインストア」で先行発売され、4月9日から一部のアシックス直営店や全国のスポーツ用品店で順次発売される「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」。価格は27,500円(税込)

ミッドソールに新開発フォームやカーボンプレートを採用!

長距離走は、2つの走法に大別される。スピードを上げるに従い、主として1歩の歩幅(ステップ幅)が変化する「ストライド型」と、スピードを上げるにともなって、1歩の歩幅も足の回転数(ピッチ)も変化する「ピッチ型」だ。

アシックスが今回発表した「メタスピード」は、「勝ち方はひとつだけか。」というキャッチコピーが象徴するように、この2つの走法の違いに着目し、ランナーが日頃のトレーニングで身につけた走り方を維持しながら、パフォーマンスを向上させるように設計されているという。すなわち、ランナーがシューズの特性に合わせて極端に走り方を変えるという必要はなくなったと言える。

今回トライすることができたのは、ストライド型ランナーに向けた「メタスピード スカイ」だ。順に各スペックをチェックしていくと、アッパーには、部位によって編み方や孔の大きさを変化させたエンジニアードメッシュを採用。通気性とフィット感、そしてサポート性を兼ね備えることに成功している。

部位によって編み方や孔の大きさを変化させたエンジニアードメッシュをアッパーに採用。通気性とフィット感、サポート性を高めている。なお、つま先の補強材は、外側ではなくアッパー内側に圧着されている

部位によって編み方や孔の大きさを変化させたエンジニアードメッシュをアッパーに採用。通気性とフィット感、サポート性を高めている。なお、つま先の補強材は、外側ではなくアッパー内側に圧着されている

ミッドソールは、新開発の軽量フォーム「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」を採用しており、同社素材の中で最もすぐれた反発性能を発揮する。その内部には、足の動きを安定させ、効率よく身体を前方へと進めるカーボンプレートを内蔵した。さらに、ソールユニット前部にカーブをつけることで、走行時のエネルギー消費につながると言われる足首の過度な屈曲を抑制し、少ないエネルギーで足を前方へと運べるようにするという。

ミッドソールには、新たに開発された「FF ブラスト ターボ」を採用

ミッドソールには、新たに開発された「FF ブラスト ターボ」を採用

【試走レビュー】そんなに力を入れていないのにスイスイ走れる!

実際に「メタスピード スカイ」を履いて走ってみた!

実際に「メタスピード スカイ」を履いて走ってみた!

箱を開けて本モデルを手に取ってみると、まずその軽さに驚く。ボリューミーなシルエットからは想像しづらいが、手元のデジタルスケールで計測すると、片足185g(サイズ26cm)。以前紹介したニューバランスの「FuelCell RC Elite」も見た目よりもかなり軽いと思ったが、それよりも同サイズで6g軽いことになる。

ボリュームたっぷりなフォルムからは想像しづらい、片足185g(サイズ26cm)という軽量性も大きな魅力

ボリュームたっぷりなフォルムからは想像しづらい、片足185g(サイズ26cm)という軽量性も大きな魅力

実際に足を入れてみると、自分の足形にラスト(木型)形状が合っているようでフィット感はかなりよい。そのため、足とシューズの間に無駄なすき間がなく、反対に窮屈感もない。

いっぽうで、アシックスのシューズ特有の、履き口部分のしっかりと包み込むような感覚がなかったのは個人的に寂しかったが、上級ランナー向けで軽量性を追求したモデルであることを考慮すると、そこは求めてはいけないのかもしれない。

立った状態でまず感じるのは、ミッドソール素材「FF ブラスト ターボ」の跳ね返りのスゴさだ。軽く歩いてみると、その印象はさらに増し、カーボンプレート内蔵うんぬんよりも、この新規開発素材の存在感が大きく主張されており、走るのが楽しみになった。

実際に走り始めてみた。最初、ニューシューズの走行感を堪能すべくゆっくり走ろうとした。しかし、普段なら5分50秒/kmくらいの力の入れ具合で走ってみたのに、手元のGPSウォッチでは5分25秒を示していたように、無理なくペースが上がっていくのだ。しばらく4分50秒〜5分/kmほどのペースをキープしてみたが、自分のようなサブ4レベルのランナーでも、心肺と脚部においてあまりキツさを感じなかったことには驚いた。なお、アウトソールのグリップ性も高レベルだった。

さまざまな路面コンディションで、高いグリップ性を発揮する「ASICS GRIP(アシックス グリップ)」を採用。特にアスファルトやコンクリートといった舗装路において、最高のグリップ性能を提供するアウトソールパターンだ。なお、筆者はこれまで、1,500足以上のスポーツシューズを履いてきたが、濡れた路面での滑りにくさは歴代ベスト3に入るほど

さまざまな路面コンディションで、高いグリップ性を発揮する「ASICS GRIP(アシックス グリップ)」を採用。特にアスファルトやコンクリートといった舗装路において、最高のグリップ性能を提供するアウトソールパターンだ。なお、筆者はこれまで、1,500足以上のスポーツシューズを履いてきたが、濡れた路面での滑りにくさは歴代ベスト3に入るほど

より速いペースでの走行感を体感すべく、場所を公道から東京の「中野区立平和の森公園」へと移す。こちらの陸上トラックでは、ピークで3分40秒/kmのペースまで持っていったが、速いペースになればなるほど「FF ブラスト ターボ」の反発力を体感でき、さらにカーボンプレートが適切に着地から蹴り出しまでの動きをサポートしてくれているのを感じることができた。

2度目の走行は、あえてペースを抑えて10kmを走ってみた。58分18秒(5分49秒/km)で走り終えたが、「こんなに力を入れていないのにスイスイ走れるのか!?」と思ったくらいに効率よく走ることができたし、ラン直後の疲労感も従来シューズでは考えられないほどに少なかった。自動車で言えば、中速域に厚みがあるといった感じか。

2020年6月に本連載で取り上げた同社の「メタレーサー」が、かなり速いペースでこそ本領を発揮する仕様だったのに対し、この「メタスピード スカイ」は、トップアスリートをターゲットとしつつ、「幅広い層のランナーにも適応するのでは?」と思った。このことから推察するに、「メタスピード スカイ」では、フルマラソンで3時間30分〜4時間30分のランナーなら、基準とするペースを今までよりも楽に刻むことができると感じ、サブ3よりも速いランナーなら、同じ労力で今までよりも速く走ることができる可能性を実感するだろうということ。極端なヒール着地のランナーは向いていないと思うが、フラット着地や前足部着地のランナーであれば、サブ3ランナーでなくてもトライする価値はあるはずだ。

ただし、他ブランドの厚底レーシングシューズもそうであるように、本モデルで走った翌日は若干ハムストリングに張りがあり(慣れない速いペースで走ったこともあるが……)、大腿二頭筋など、身体の後ろ側の筋肉を従来のシューズよりも使うことは明らか。この部分は、スクワットやランジ、レッグカールといった補助運動などで鍛えておいたほうがいい気がする。

【まとめ】ストイックさよりも楽しさを感じる、圧倒的な汎用性が魅力!

本連載を読んでいる読者の多くは、フルマラソンで3時間を切るようなランナーではなく、走ることが主目的であり、フルマラソン経験者も3時間30分〜5時間くらいで、本来の「メタスピード スカイ」のターゲットユーザーではないだろう。しかしながら、本モデルは、速く走ることができるにもかかわらず、ストイックさよりも楽しさを感じることができるなど、従来型のトップランナー向けレーシングシューズ「マラソン ソーティ」などよりも圧倒的な汎用性の高さを備えている。それだけに、個人的にはさまざまな層のランナーがこのシューズを試すことには賛成だ。

厚底レーシングシューズでは、他ブランドにはなるが、「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」はその守備範囲の広さに定評があり、自分の知り合いでサブ4の壁に何度も跳ね返されたランナーが、このシューズを履いて2021年1月の「館山若潮マラソン」で自己記録を25分更新して3時間42分でゴールしたり、別の友人ランナーは、仕事が多忙で今までにない練習不足で2019年の「大阪マラソン」に臨んだにもかかわらず、このシューズを初めて履いたことで、こちらも見事に初のサブ3.5を達成したりしている。

自分も両方のシューズを履いて走って比較検証した感想は、推進力を始めとした走行性能はいずれもほとんど遜色ないということ。「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」は、そのすぐれた走行性能と汎用性の高さで、「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」が登場後も、着用率トップの地位を譲らずに現在に至っている。

海外では、先述の「アディゼロ アディオス プロ」が徐々にシェアを伸ばしているが、日本ではそれほどでもない。この「メタスピード スカイ」は、「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」にとって、初めて真っ向勝負できたライバルと言え、ナイキ一極集中の状況を変革させるかもしれない。実際、仙台在住の知り合いのサブ3ランナーも、「つま先周りで踏んだ時の前に行く感覚がスムーズというか、気持ちのよい感覚で足を運ぶことができ、同じペースをこれまでよりも楽に刻める気がします。今後のレース用シューズの大本命になるかもしれません」とコメント。彼以外の上級ランナーからの評価でも、機能面ではいい勝負ができているという意見が多数となっている。

いっぽうで、アシックス「メタスピード スカイ」にも、いくつか心配な面がある。

ひとつはその価格だ。27,500円という価格は、一部業界筋の予想よりも若干安かったが、それでも一般的なランニングシューズの2足分となるだけに決して安い買い物ではない。そして直接のライバルと言える「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」の第2弾が、これよりも安い26,950円と下をくぐっているところもマイナス材料と言えそうだ。

もうひとつは、カラーリングが1色のみという点。他ブランドは、トップ向けレーシングシューズでも複数のカラーラインアップを揃えていることが珍しくない。実際に今回の「サンライズレッド」が派手過ぎるという理由で購入を見送ったランナーもいた。逆に言えば、ネガティブ要素はこれくらいなので、アシックスからここまでの高機能レーシングシューズがリリースされたことは、元来のアシックス党ランナーのみならず多くのランナーに歓迎されるだろう。

「アシックス史上最速」のキャッチコピーに偽りはない。4月9日からは全国の主要取扱店でも発売されているので、ぜひとも実際に足を入れて、その走行性能の高さを体感してほしい。

南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
スポーツシューズのその他のカテゴリー
ページトップへ戻る