レビュー
最大トルク値は低いけれどガンガン登れて、扱いやすさも上々

e-MTBとは思えないほどの軽快な走りが楽しめる! スペシャライズド「LEVO SL EXPERT CARBON」

2020年に日本国内で販売を開始したスペシャライズドのe-Bike「TURBO」シリーズのロードバイクタイプ「S-WORKS TURBO CREO SL」に試乗し、驚くほどの軽快な走行感に感動した筆者。それと同時に、同シリーズのマウンテンバイクタイプに乗りたい欲求が抑えられず、「S-WORKS」のひとつ下のグレードとなる「LEVO SL EXPERT CARBON」に試乗してみた。なお、試乗したのは2020年モデルとなる。現在、LEVO SL EXPERT CARBONにはサスペンションやホイール、ブレーキ、ドライブトレインなどパーツを変更し、ダウンヒル寄りにアップデートした2021年モデルも発売されているが、里山やマウンテンバイクパークで遊ぶ程度の筆者からすると2020年モデルでも十分過ぎるスペックであることと、2021年モデルよりも販売価格が121,000円(税込)安いことから2020年モデルをチョイスしてみた。

独自に開発のドライブユニットで軽量な仕上がり

スペシャライズドのe-Bike「TURBO」シリーズは、自社開発のドライブユニット(モーターやケース、センサーなどを含むもの)と完全内蔵式のバッテリーを採用することで軽量な仕上がりとなっているのが特徴。ケースの素材にマグネシウムを使用するなどして軽量化を図った「SL 1.1モーター」を搭載したドライブユニットは、他メーカーの軽量なユニットよりも1kgほど軽い1.95kgを実現し、バッテリーも同価格帯のe-Bikeとしては小さめの320Whとなっている。また、ドライブユニットの出力は一般的なe-Bikeに搭載されているものと同程度の240Wだが、最大トルク値は35Nmと抑えめなのもポイントだ。85Nmというパワフルなトルク値を有するモデルも登場していることを考えると、かなり低めと言えるだろう。こうしたスペックだけ見ると、「車体は軽いけれど航続距離は短めで、モーターの押し出す力も弱いe-Bike」という印象を受けるかもしれないが、車体とのバランスを考慮して設計された出力なので走行性能は申し分ない。現に、ロードバイクタイプ「S-WORKS TURBO CREO SL」に試乗した際には、軽量で走行効率の高い車体であれば、最大トルク値が低くても十分走ることを実感した。

軽量化を追求した自社製の「SL 1.1モーター」を採用したドライブユニットは、軽いだけでなく、サイズもコンパクトだ

軽量化を追求した自社製の「SL 1.1モーター」を採用したドライブユニットは、軽いだけでなく、サイズもコンパクトだ

バッテリーはメインフレームに内蔵。容量は320Whと小さいが、その分、軽い仕上がりとなる

バッテリーはメインフレームに内蔵。容量は320Whと小さいが、その分、軽い仕上がりとなる

なお、バッテリーは取り外すことができないため、フレームにケーブルを挿して充電する。バッテリー残量3%から満充電まで約2時間35分かかるとのこと

なお、バッテリーは取り外すことができないため、フレームにケーブルを挿して充電する。バッテリー残量3%から満充電まで約2時間35分かかるとのこと

航続距離についても、35Nmという低めのトルク値がポイントとなる。出力を抑えることでバッテリーの消費量が少なくなり、小さめのバッテリー容量でも十分な距離をアシスト走行できるようにしているのだ。こうした設計は「TURBO」シリーズ共通となっており、ロードバイクタイプの「CREO(クレオ)」の場合、最長130kmのアシスト走行が可能。今回紹介するLEVO SL EXPERT CARBONはトレイル(山道)を走るなど、走行シチュエーションがさまざまなためアシスト走行距離は公表されていないが、5時間程度のトレイル走行が楽しめるという。

2020年モデルの「LEVO SL EXPERT CARBON」には、適応身長157〜165cmの「S」、165〜178cmの「M」、178〜185cmの「L」という3サイズが用意されている。販売価格は869,0000円(税込)

2020年モデルの「LEVO SL EXPERT CARBON」には、適応身長157〜165cmの「S」、165〜178cmの「M」、178〜185cmの「L」という3サイズが用意されている。販売価格は869,0000円(税込)

フレームは、軽量で剛性の高いカーボン製。近年のマウンテンバイクは剛性を高めるためカーボンフレームを太くしているモデルも多いため、LEVO SL EXPERT CARBONは一見するとe-Bikeとは気付かないほどスリムだ。筆者が過去に試乗してきたe-MTBの中でもこのスリムさは際だっており、それだけでも目を引く存在だろう。このカーボフレームに小型のドライブユニットやバッテリーを備えた車体は、前後にサスペンションを配置したフルサスタイプでありながら18kg以下の重量を実現。一般的なフルサスタイプのe-MTBは、軽いモデルでも22kg程度であることを考えると驚異的だ。

公式発表されていない重量を確かめるため、実測で計ってみると17.4kgと表示された。手持ちなので正確な数値とは言えないが、相当軽いのは間違いない

公式発表されていない重量を確かめるため、実測で計ってみると17.4kgと表示された。手持ちなので正確な数値とは言えないが、相当軽いのは間違いない

装備されているパーツは、現在のトレンドを取り入れたハイスペックなもの。海外のマウンテンバイク市場では標準的になりつつある29インチ径のホイール(カーボン製)や、リアのみの変速ギアSRAM「GX Eagle」(1×12速)を採用しているほか、FOX製の前後サスペンションやドロッパーシートポストも装備するなど、本気でライディングを楽しむ人をターゲットとしていることを感じられるセレクトとなっている。

変速コンポーネントはSRAM製「GX Eagle」12速で、幅広いレンジをカバー。フロントに変速機を搭載しない、近年のマウンテンバイクでは標準的になっている仕様だ

変速コンポーネントはSRAM製「GX Eagle」12速で、幅広いレンジをカバー。フロントに変速機を搭載しない、近年のマウンテンバイクでは標準的になっている仕様だ

フロントに変速がない分、リアのギアは幅が広く、最小が10Tで最大が50T。下りでペダリングするシーンから、激しい登りまで対応できる

フロントに変速がない分、リアのギアは幅が広く、最小が10Tで最大が50T。下りでペダリングするシーンから、激しい登りまで対応できる

29インチのホイールは速度の維持がしやすく、ギャップの乗り越え性能も高い

29インチのホイールは速度の維持がしやすく、ギャップの乗り越え性能も高い

フロントサスペンションはFOX製「Performance 34 FLOAT 29」。ストローク量は150mmだ

フロントサスペンションはFOX製「Performance 34 FLOAT 29」。ストローク量は150mmだ

リアのサスペンションもホイールトラベル量は150mm。近年のオールマウンテンやエンデューロと呼ばれるタイプでは一般的な数値だ

リアのサスペンションもホイールトラベル量は150mm。近年のオールマウンテンやエンデューロと呼ばれるタイプでは一般的な数値だ

サスペンションユニットはFOX製「FLOAT DPS Performance」。左右非対称のフレーム形状もユニークだ

サスペンションユニットはFOX製「FLOAT DPS Performance」。左右非対称のフレーム形状もユニークだ

油圧式のディスクブレーキを装備。SRAM製の4ピストンキャリパーを前後ともに採用している

油圧式のディスクブレーキを装備。SRAM製の4ピストンキャリパーを前後ともに採用している

状況に応じてサドルの位置を変えられるドロッパーシートポストを標準装備。登りではサドルを高くしてペダリングしやすくし、下りでは腰を引きやすいように低くするといった使い方ができる

状況に応じてサドルの位置を変えられるドロッパーシートポストを標準装備。登りではサドルを高くしてペダリングしやすくし、下りでは腰を引きやすいように低くするといった使い方ができる

ドロッパーシートポストの操作レバーは左手側のグリップ近くに装備されているので、走行中に素早くサドルの高さを変えることができる。なお、そのレバーの近くにある「+」「−」のボタンはアシストモードを切り替えるためのもの。「ECO」「SPORT」「TURBO」の3種類のモードが用意されている

ドロッパーシートポストの操作レバーは左手側のグリップ近くに装備されているので、走行中に素早くサドルの高さを変えることができる。なお、そのレバーの近くにある「+」「−」のボタンはアシストモードを切り替えるためのもの。「ECO」「SPORT」「TURBO」の3種類のモードが用意されている

設定されているアシストモードは、トップチューブに備えられた円形のインジケーターの光り方で確認する(光る数が多いほうがパワフル)。その下にあるのはバッテリー残量を示すインジケーター

設定されているアシストモードは、トップチューブに備えられた円形のインジケーターの光り方で確認する(光る数が多いほうがパワフル)。その下にあるのはバッテリー残量を示すインジケーター

ハンドルは幅が780mmで、トレイルで抑えが効きやすい。最近のマウンテンバイクは、このくらいの幅であることが多い。ちなみに、ハンドルも自社製

ハンドルは幅が780mmで、トレイルで抑えが効きやすい。最近のマウンテンバイクは、このくらいの幅であることが多い。ちなみに、ハンドルも自社製

トレイルで本気の性能を体感

LEVO SL EXPERT CARBONは、これまで筆者が試乗したカーボンフレームのe-MTBより5kgほど軽い。マウンテンバイクで山の中を走行する際には振り回すような乗り方をすることもあるので、車体が軽いということは大きなアドバンテージになる。だが、その半面、低めのトルクの影響が気になるところ。同シリーズのロードバイクタイプ「S-WORKS TURBO CREO SL」に試乗した際には、トルクを抑えたことによる不満はまったく感じなかったが、マウンテンバイクとは走行する路面状況が異なる。障害物のある路面や激しい坂を登るシーンなどで漕ぎ出し時のパワー不足を感じることはないだろうか。ベテランマウンテンバイクライダーとともに、その実力をトレイルで検証してみた。

これまでも筆者とともにe-MTBの検証を行ってくれている佐藤真吾さんが、今回も協力してくれた! e-MTBだけでなく、普通のマウンテンバイクでのライディング経験も豊富なベテランライダーの評価も織り交ぜながらお伝えする

これまでも筆者とともにe-MTBの検証を行ってくれている佐藤真吾さんが、今回も協力してくれた! e-MTBだけでなく、普通のマウンテンバイクでのライディング経験も豊富なベテランライダーの評価も織り交ぜながらお伝えする

トレイルに向かう舗装路も登り道が続く。ひと漕ぎごとのトルクは確かに小さいものの、ペダルを回すケイデンスを高めればラクに進んでいけた

トレイルに向かう舗装路も登り道が続く。ひと漕ぎごとのトルクは確かに小さいものの、ペダルを回すケイデンスを高めればラクに進んでいけた

トレイルに到着すると、まるで水を得た魚のようにLEVO SL EXPERT CARBONが本領を発揮。立ち漕ぎで左右に車体を振る際の軽快さは、電動アシスト機能を搭載していない普通のマウンテンバイクに近い。車体をただ軽くしているだけでなく、重心位置などのバランスにも配慮して開発されていることが伝わってくる完成度だ。そして、気がかりだったトルクの低さもほとんど気にならない。かなり角度のある登りにもチャレンジしてみたが、難なく登れてしまった。トルクの低さよりも、車体が軽いというメリットのほうが勝っている感じだ。もしも、35Nmという低めの最大トルク値で、一般的なフルサスタイプのe-MTBのように車体が20kgあったら、多少非力さを感じてしまうかもしれないが、LEVO SL EXPERT CARBONの軽さと重量バランスであれば、十分過ぎる登坂力を発揮してくれる。

ちょっとした坂を登るだけでも圧倒的に軽量な車体のメリットが感じられる(走行の様子は下の動画でチェック!)

ちょっとした坂を登るだけでも圧倒的に軽量な車体のメリットが感じられる(走行の様子は下の動画でチェック!)

筆者も登り道を走行。ペダルを3漕ぎもすれば、軽さとそれにともなう挙動の自然さが感じ取れた

筆者も登り道を走行。ペダルを3漕ぎもすれば、軽さとそれにともなう挙動の自然さが感じ取れた

角度のある坂を見つけて登坂性能をテスト。ペダルを回しているだけであっさり登れてしまう

角度のある坂を見つけて登坂性能をテスト。ペダルを回しているだけであっさり登れてしまう

ギャップを利用して、軽々とジャンプ! 車体を引き上げなくてもフワッと浮いてくれる感じなので、ラクにジャンプできたという

ギャップを利用して、軽々とジャンプ! 車体を引き上げなくてもフワッと浮いてくれる感じなので、ラクにジャンプできたという

車体の軽さは、走行以外のシーンでも役立つ。狭いトレイルでは自転車から降り、車体を持ち上げて方向転換する動作が頻繁に発生するが、e-MTBの場合、重さがあるため、若干気合いを入れて持ち上げなければならないこと多い。しかし、LEVO SL EXPERT CARBONは、その感覚すらも普通のマウンテンバイクと大差がなかった。

トレイルでは1日に何度も行う動作だけに、軽い気持ちでできるのはありがたい

トレイルでは1日に何度も行う動作だけに、軽い気持ちでできるのはありがたい

そして、下りではさらに衝撃を受けることとなる。電動アシスト機能を搭載したe-MTBは、登りでラクができるのが最大のメリット。さらに、近年のフルサスモデルであれば、強力な登坂性能で“登りを楽しむ”という新たな遊び方もできる。しかし、その半面、モーターやバッテリーの重量があるため、下りの運動性能だけで比較すると、正直、普通のマウンテンバイクのほうが楽しさは上だと筆者は感じていた。だが、今回試乗したLEVO SL EXPERT CARBONは下りでのライン取りの自由度も普通のマウンテンバイクと変わらない。特に、ある程度の速度で木々の間を縫うように切り返して下っていくようなシーンでは、過去に乗ったe-MTBが鈍重に思えてしまうほどの軽快さだった。

ハイスピードで下っていく際でも、タイヤが路面に吸い付くような安定感がある。重心のバランスやリンク機構の設計などが光る部分だ

ハイスピードで下っていく際でも、タイヤが路面に吸い付くような安定感がある。重心のバランスやリンク機構の設計などが光る部分だ

下ったルートをそのまま登って気軽に再チャレンジできるのが、e-MTBの楽しいところ

下ったルートをそのまま登って気軽に再チャレンジできるのが、e-MTBの楽しいところ

下りでの切り返しなどは、運動性能の高さがもろに出る部分。軽さとバランスのよさが感じられた

下りでの切り返しなどは、運動性能の高さがもろに出る部分。軽さとバランスのよさが感じられた

下りながら左右に倒し込む操作がしやすく、速度が出ても安定している

下りながら左右に倒し込む操作がしやすく、速度が出ても安定している

特に、写真のように膝をイン側に入れながら車体を倒す操作がしやすい。重量バランスだけでなく、フレーム形状なども影響する部分だ

特に、写真のように膝をイン側に入れながら車体を倒す操作がしやすい。重量バランスだけでなく、フレーム形状なども影響する部分だ

今回試乗したトレイル最大の難関。急な下りの途中ある段差を乗り越え、すぐに切り返さなければならないセクションだったが、余裕でクリア

今回試乗したトレイル最大の難関。急な下りの途中ある段差を乗り越え、すぐに切り返さなければならないセクションだったが、余裕でクリア

その後、同じ所を登り返すというチャレンジも成功! トルクではなく、回転数で登る特性なので、これまでのe-MTBとは少々違った乗り方となる

その後、同じ所を登り返すというチャレンジも成功! トルクではなく、回転数で登る特性なので、これまでのe-MTBとは少々違った乗り方となる

まとめ

試乗する前から期待の高かったLEVO SL EXPERT CARBONだが、実際に乗ってみると期待値以上の完成度に驚かされた。特に、トレイルでの運動性能の高さは特筆モノで、普通のマウンテンバイクとほぼ同じ感覚で操れると言っても過言ではない。電動アシスト機能を搭載しながら、下りで普通のマウンテンバイクと遜色ない運動性能を感じられるモデルはほかにはないだろう。それでいて、e-MTBの強みである急な登りも存分に楽しめる。ひと漕ぎごとのトルクは大きくないものの、その分をペダルの回転数で補えるライダーであれば、不足を感じることはないだろう。長くマウンテンバイクに乗ってきたベテランが乗り換えても満足できるモデルだ。

実は、スペシャライズドのe-MTBには日本国内では販売されていない「TURBO LEVO」というシリーズが存在する。このシリーズは、他メーカー製のe-MTBと同じく強力なトルク感のアシスト性能を備えており、筆者もクローズドコースで試乗したことがあるが、どこでも登っていけるのではないかというほどの登坂性能を持っていた。ただし、その分、モーターとバッテリーは大きめで、車体は重量級。そうした中、多くのライダーから、トルクは低くてもいいのでより軽く、トレイルでの運動性能の高いモデルを求める声が寄せられたことを受け、新たなドライブユニットを作ってまで開発したのが「TURBO LEVO SL」。本気のマウンテンバイクライダーたちの期待に応えるべく開発されたモデルなので、運動性能の高さは折り紙付きなのだ。

ただ、初めてマウンテンバイクに乗る人が、この運動性能をフルに味わえるかというと疑問符が付く。普通のマウンテンバイクである程度の経験を積んでいれば、その性能の高さを感じることはできそうだが、初級者にとってはトルクの強いモデルのほうがありがたみを感じる場面が多いかもしれない。そうしたことから、LEVO SL EXPERT CARBONはある程度マウンテンバイクに乗り慣れた人向きと言えるだろう。マウンテンバイクの楽しさは十分知っているが、e-MTBにはいまひとつ気が乗らないという人にこそ、ぜひ一度乗ってみてもらいたい。おそらく、e-MTBに対する偏見が吹き飛ぶはずだ。

「TURBO LEVO SL」シリーズには最上位グレードの「S-WORKS LEVO」と、ひとつ下のグレードとなる「LEVO」が用意されており、どちらにも複数のモデルがラインアップされているが、今回筆者が試乗で感じた走行感はTURBO LEVO SLシリーズならどのモデルでも感じられるだろう

「TURBO LEVO SL」シリーズには最上位グレードの「S-WORKS LEVO」と、ひとつ下のグレードとなる「LEVO」が用意されており、どちらにも複数のモデルがラインアップされているが、今回筆者が試乗で感じた走行感はTURBO LEVO SLシリーズならどのモデルでも感じられるだろう

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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