南井正弘の「毎日走って、わかった!」
オン「クラウドブーム エコー」とミズノ「ウエーブ リベリオン」を試し履き!

Onとミズノの異色の最新レーシングシューズを使い比べてみた!

ここ数年、レーシングシューズにおいて最も注目されている構造が、厚手のミッドソールにカーボンファイバープレートを内蔵したタイプだ。

パイオニア的なモデルとされているのは、2017年にリリースされたナイキの「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%」。東京五輪の「陸上男子マラソン」で金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ選手(ケニア)を始め、同シューズを履いたアスリートがさまざまな大会で優秀な成績を収めているのはご存じのとおりだ。

ナイキに追随するように、各ブランドからも似た構造のカーボンファイバープレート入りシューズがリリースされたが、そんな中、オンとミズノは異なるアプローチで新モデルを開発。今回は、そんな2社の最新レーシングシューズの走行性能をレビューする。

オン「クラウドブーム エコー(Cloudboom Echo)」

オン「クラウドブーム エコー(Cloudboom Echo)」

ミズノ「ウエーブ リベリオン(WAVE REBELLION)」

ミズノ「ウエーブ リベリオン(WAVE REBELLION)」

オン史上トップレベルの推進力を実現!

オンの「クラウドブーム エコー」は、つま先部分が大きくせり上がったカーボンファイバー製のスピードボードを採用し、従来モデル以上にパワフルな蹴り出しを実現したレーシングシューズ。アッパーにはミニマルなデザインを取り入れたほか、前足部はクッショニングを強化しており、レースの最後まで完璧な快適性を維持してくれるので、自己ベスト更新を狙うランナーにピッタリな1足に仕上がっている。

ミッドソールの上層には、柔軟な素材「へリオン スーパーフォーム」を配置することで、着地時の衝撃をしっかりと吸収し、そのエネルギーを反発力として還元。下層に配された2層構造の「クラウドテック」は、自然な着地と力強い蹴り出しを高次元で両立しており、内蔵されたカーボンファイバー製スピードボードの効果もあいまって、オン史上トップレベルの推進力を生む。

ミッドソールには、反発性、軽量性、耐久性を兼ね備えた「へリオン スーパーフォーム」を採用

ミッドソールには、反発性、軽量性、耐久性を兼ね備えた「へリオン スーパーフォーム」を採用

アウトソールのコンパウンドは、粘度の高いタイプを使用することで、アスファルトやコンクリートの道で最高のグリップ性を発揮。刻みの深さも適度に設けてあるので、公園などの土の路面でも十分なグリップ性を提供する。なお、下の写真中央に見える細長い黒いパーツが、カーボンファイバー製のスピードボード。他ブランドの構造と異なり、その多くの部分が外に露出している。

アウトソールには、接地面積を広く取った独自形状のラバーコンパウンドを搭載しており、雨天時でも高いグリップ性を確保し、きわめて効率的に走行することが可能だ

アウトソールには、接地面積を広く取った独自形状のラバーコンパウンドを搭載しており、雨天時でも高いグリップ性を確保し、きわめて効率的に走行することが可能だ

また、アッパーに用いたエンジニアードメッシュには、再生ポリエステルを100%使用。必要個所のみに施した補強パーツが通気性を確保しつつ、急カーブ時などでも足を確実にホールドしてくれる。

アッパーには、再生ポリエステルを100%使用したエンジニアードメッシュを採用

アッパーには、再生ポリエステルを100%使用したエンジニアードメッシュを採用

以上のように、「クラウドブーム エコー」は、マラソンランナーを支える最高のパフォーマンス性能を、すべてのパーツに注入しているようだ。

履き口部分の内側には、凹凸が付けられており、かかとにピッタリフィット。高速走行時でも、シューズと足の一体感を促進する

履き口部分の内側には、凹凸が付けられており、かかとにピッタリフィット。高速走行時でも、シューズと足の一体感を促進する

サブ3を目指すエリートランナー向けモデル

いっぽう、ミズノの「ウエーブ リベリオン」は、フルマラソン3時間切りを目指すエリートランナー向けのスピードシューズとして開発されたモデル。

まず、同社の従来のミッドソール素材「U4ic」に比べ、柔軟性が約22%、エネルギーリターンが約35% 向上した「MIZUNO ENERZY LITE」をミッドソール全体に採用。足が沈み込み過ぎない程度に衝撃を吸収し、それを高い反発に変える。

また、同社独自のクッショニングテクノロジーであり、クッション性を維持したまま、走行時の安定性を高める基幹機能「ミズノウエーブ」も搭載。本モデルでは、従来のナイロンの「ミズノウエーブ」より硬くて、しなり剛性が高いグラスファイバー素材を採用した新形状の「パラレルウエーブ」を採用している。

かかと部分から前足部にかけて、しなり剛性が高いグラスファイバー素材を採用した新形状の「ミズノウエーブ:パラレルウエーブ」を内蔵。着地から蹴り出しまでのスムーズな動作をサポートする

かかと部分から前足部にかけて、しなり剛性が高いグラスファイバー素材を採用した新形状の「ミズノウエーブ:パラレルウエーブ」を内蔵。着地から蹴り出しまでのスムーズな動作をサポートする

この「MIZUNO ENERZY LITE」と「ミズノウエーブ:パラレルウエーブ」の2つの機能を組み合わせることで、高い反発性と安定性を両立した。なお、一部のカーボンファイバープレート内蔵シューズは、そのシューズに合わせた走り方が不可欠なのに対し、本モデルは、従来の自分の走り方のままで最高のパフォーマンスを発揮してくれる。

アッパーには、通気性が高く、軽量でやわらかいエンジニアードメッシュを採用し、ランニング時の快適な履き心地をサポート。

エンジニアードメッシュを採用するアッパーは、長時間の走行時でも快適な履き心地を提供

エンジニアードメッシュを採用するアッパーは、長時間の走行時でも快適な履き心地を提供

アウトソールには、特殊な樹脂を分割配列した「G3ソール」を採用。軽量性とグリップ性を高めただけでなく、耐摩耗性も高レベルにあり、500km走行後でも減りがあまり見られないという。長い距離を走ることを日課としているランナーには、うれしいスペックだ。

軽量性とグリップ性、耐摩耗性を強化した「G3ソール」を採用

軽量性とグリップ性、耐摩耗性を強化した「G3ソール」を採用

実際に履いて走ってみた!

オン「クラウドブーム エコー」

オン「クラウドブーム エコー」

オン「クラウドブーム エコー」

まず、オンの「クラウドブーム エコー」に足を入れてみた。

全体的に2020年7月に本連載で紹介した「クラウドブーム」に似ているが、アッパーのフィット感が向上していると感じた。また、立っている状態ではミッドソールのやわらかさを感じられたが、左右へのグラつきはなさそうだ。

走り始めると、着地から蹴り出しまでの一連の動作の間に、オン独自の「クラウドテック」らしさを感じたが、それにプラスして、上層の柔軟なミッドソール素材が着地衝撃をしっかりと吸収し、そのエネルギーを推進力へと変換してくれるのを足裏で感じられた。さらに、カーボンファイバー製のスピードボードは、着地時の安定性向上と蹴り出し時の推進力の増大に大きく貢献していた。

この絶妙なハーモニーを生むために、トップアスリートがモニタリングに参加し、ソールユニットのプロトタイプの組み合わせを60回以上試したというが、その取り組みがオン史上トップレベルの推進力を生むことになったようだ。

脚が自然に前方へと進むような、その抜群の推進力は、筆者レベルのランナーでも体感することができ、脚の回転がスムーズになることで、無理することなくペースアップできた。さらに、従来モデル「クラウドブーム」と異なり、アウトソールの前足部にあえて屈曲溝を入れていないことで、蹴り出しの際の転がりを適度にサポートしてくれる。

他ブランドのプレート入りシューズでは、「無理やり速く走らされている気がする……」と感じることもあったが、「クラウドブーム エコー」はスピードのコントロールがしやすく、今回は4分10秒〜5分40秒/kmのペースで走ったが、いずれのペースでも走りやすかった。特に、筆者の脚力だと、4分50秒/kmより速いペースで走った際に、ソールの弧を描く形状と脚の動きがマッチした気がした。アウトソールのグリップ性に関しては、従来の「クラウドブーム」や新型「クラウドフロー」と同様に、粘度のある素材と独自のパターンにより、アスファルトやコンクリートの路面で最高レベルのグリップ力を発揮してくれた。

ミズノ「ウエーブ リベリオン」

ミズノ「ウエーブ リベリオン」

ミズノ「ウエーブ リベリオン」

次に、「ウエーブ リベリオン」を履いてみた。

サブ3を目指すランナーに向けて開発されたシューズということで、同社の「ウエーブ デュエル ネオ」のような、前足部がタイトなフィッティングを想像していたが、まったく異なっていた。レーシングシューズというよりも一般的なランニングシューズのフィッティングで、履く人を選ばなさそうだ。

立っている状態では、カチッとした履き心地で、アウトソール素材の硬さを感じた。この感覚は、硬度の高い特殊な樹脂を分割配列した「G3ソール」を採用しているからであり、粘度の高い「クラウドブーム エコー」のアウトソールとは対照的だ。

実際に走り始めると、ミッドソールの沈み込みはほとんど感じられず、着地時の安定性を強く感じた。さらに特徴的だったのは、蹴り出し時のコロンと転がる感覚。この走行感は、これまでのミズノのランニングシューズでは得られなかった走り心地で、走っていてとても楽しく、ペースアップもイージー。先述の「G3ソール」は、路面をつかむというよりも、その凸凹で噛む感覚で、舗装路だけでなく、土のグラウンドや東京の「中野区立平和の森公園」の全天候トラックでも高いグリップ性能を発揮してくれた。

日課である6kmランでは、4分30秒〜6分/kmで走り、全天候トラックでは100mダッシュを繰り返してみた。既存のカーボンファイバープレート内蔵シューズのほうが自然と前に進むような推進力を感じられるが、「ウエーブ リベリオン」は自身の走りを無理にシューズに合わせなくていいので、その点がありがたかった。

ミッドソールに内蔵されたグラスファイバー製で新形状の「ミズノウエーブ:パラレルウエーブ」は、カーボンファイバー製プレートよりもやわらかく、クセがないので、あらゆるタイプのランナーにマッチしやすく、扱いやすいのも大きな特徴。さらには、速めのペースで走った時にも腰が落ち込むことなく、脚部の後ろ側を効率よく使える走りへと導いてくれたことも印象的だった。このシューズを履いて走ったことで、効率的にペースを上げるヒントを得られたような気がした。

【まとめ】2足とも既存のカーボンファイバープレート内蔵シューズより扱いやすかった!

以上のように、オンの「クラウドブーム エコー」は、カーボンファイバー製のプレートとミッドソールの反発力だけに頼ることなく、「クラウドテック」も組み合わせることで、無理に速く走らされている感覚が少なく、既存のカーボンファイバープレート内蔵シューズよりもスピードコントロールがしやすいことがわかった。

デザインなどは、2020年に登場した「クラウドブーム」に似ているが、走り心地はかなり異なり、こちらのほうが幅広い層のランナーにマッチしそうだ。実際、国内外のアスリートから、早くもポジティブなフィードバックが寄せられているので、ワールドクラスのランナーの求めるパフォーマンス性能を確保していると言えるだろう。

いっぽう、ミズノの「ウエーブ リベリオン」は、サブ3達成という明確なターゲットを設定しているが、実際にはサブ3.5レベルのランナーのレース用としてや、サブ2.5レベルのランナーのトレーニング用としても使用できそうで、汎用性がかなり高い1足だと思う。また、シューズに無理やりフォームをアジャストすることなく、今までどおりの走り方で使いこなせる点は、大きな魅力と言えるだろう。

推進力に関しては、カーボンファイバープレート内蔵モデルよりも感じられないかもしれないが、カーボンファイバープレートよりも柔軟なグラスファイバー製のプレートを用いることで、走行時のクセが少なく、扱いやすいのもうれしいところ。このシューズもペースコントロールがしやすいので、カーボンファイバープレート内蔵シューズに対して「思ったとおりのペースで走りにくい……」と感じたランナーにこそ試してほしい1足だ。

南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。

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