オグさんです! 今回は、テーラーメイド「ステルス アイアン」の試打レポートをお送りいたします
テーラーメイド「ステルス アイアン」
テーラーメイドが2022年に発表したシリーズ「ステルス」は、カーボンフェースを採用したドライバーだけが注目されがちですが、FW(フェアウェイウッド)からUT(ユーティリティー)、そして今回ご紹介するアイアンまでのフルラインアップとなっています。
近年のテーラーメイドは、メインブランドのラインアップに特徴があります。例えば近年の「SIM」「SIM2」、そして今回の「ステルス」、これらすべてのシリーズのドライバーやFW、UTは、世界のツアープロや上級者のためのアスリートモデルとして設計されています。しかし、なぜかアイアンだけは、どちらかといえばアベレージゴルファーに向けたやさしいモデルをラインアップするのです。ツアープロや上級者に向けたアイアンは、別途「Pシリーズ」というアイアン専用のブランドが用意されています。
このステルスアイアン、一見スマートな仕上がりですが、中身はテーラーメイドらしくテクノロジーが満載で、まさにハイテクアイアンといった仕上がり。今回の目玉となるテクノロジーは、「トウラップテクノロジー」と呼ばれるもの。トウ側の金属を削り、その余剰重量でさらなる低重心設計を実現させ、ロフトを立てつつも高弾道化に成功しているとテーラーメイドは言います。
前作「SIM2」から搭載されるヘッド剛性を高める「キャップバックデザイン」、ヘッド下部の打点によるエネルギーロスを防ぐ「貫通型スピードポケット」、打感、打音を最適化する「エコーダンピングシステム」と、独自のテクノロジーを複数搭載することで、打感がよく、ミスに強く、そして飛距離性能も高めた、欲張りなモデルとなっています。
テーラーメイドの分析によると、想定ユーザーのアイアンショットの72%が、フェースの下部でインパクトしているのだそう。だったらそのフェース下部で打ってもミスになりにくいアイアンを作ろう!と開発されたのが今回のステルスアイアンです
トゥ側の金属を取り除くことにより、10gの余剰重量を生み出すことに成功。この10gをほかの個所に使って低重心化を図っています
貫通型スピードポケットは、テーラーメイドのアベレージ向けモデルに使われる定番の技術
余計な振動や音を吸収するエコーダンピングシステム。これによりステンレスフェースでもやわらかで心地よい打感を実現させています
前作の「SIM2 MAXアイアン」と比べると、厚みが減ってかなりスマートな形状に変更されています。モノトーンで仕上げ、ハイテク感を感じさせるデザインになっていますね
ステルスアイアン・#5
ステルスアイアン・#7
ステルスアイアン・#9
ブレードは厚めでフェース長がやや長めの形状。番手が短くなるにつれ、ブレードが細く見えるような工夫がされています。長い番手は剛性感がありそうな、当たり負けしなそうな、短い番手は操作しやすそうなイメージを持たせようとする意図を感じますね
フェース、ボディともにステレンス鋳造ですが、5番から8番までと9番からAWまで、そしてSWと、3種の異なるステンレス素材を使い分けています。なかなか凝っていますね
ソールの幅はやや広く、ダフりのミスに強そうです。トウ側から見ると、トウ側の金属を削り、ポリマーキャップで覆った新しい技術「トウラップテクノロジー」がよくわかりますね
ロフト:#6 24°/#7 28°/#8 32°/#9 37°/PW 43°
ロフト設定は、7番で28°と、アベレージモデルの中でもやや立てた設定になっています。海外メーカーはボールの降下角度を大事にする傾向がありますが、ここまでロフトを立ててもボールの高さをしっかり確保しているのでしょう。
シャフトバリエーションは、100g台のスチール「KBS MAX MT85 JP」と、60g台のカーボン「TENSEI RED TM60」を用意。ミスに強いヘッドを最大限に生かすなら、シャキッとした振り味のスチールがおすすめですが、飛距離を重視したいなら軽めのカーボンがいいでしょう。
適度な重量を持ち、ミートしやすいKBS MAX MT85。若い男性ゴルファーにはこれぐらいがちょうどいいと思います
前作のSIM2 MAXアイアンは、わりとボテっとした見た目をしていて、ミスに強く高い直進性を持っていました。ある意味、見た目通りの仕上がりだったのですが、今回のステルスアイアンは、シャープとまではいきませんが、かなりスマートな見た目に変化しました。好みはそれぞれですが、一般的にはスマートなほうが好まれる傾向にあるようです。
お借りしたスペックは、スチールシャフト装着でフレックスはSです。
いつものように、ドライバーで40m/sぐらいを意識して試打をスタート。何球か打って感じるのは、打感のやわらかさ。フェース素材はステンレスですが、うまく振動を抑えています。かなり広範囲に芯を外しても、打感を硬く感じることはありませんでした。
弾道は、やや低スピンで直進性の高いもの。またロフト角にしては、高さが出るなというのが率直な感想です。少々当たりが薄くてもしっかり高さが出てくれるのはいいですね。
コントロール性は、なんとか曲げられるかなといった感じ。基本的には球筋を操作するモデルではありません。飛距離に関しては、アイアンの中では、飛ぶほうです。ドライバーで40m/s程度のヘッドスピードで振っても、その飛距離性能は十分感じられます。
すっきりした見た目のオートマチックアイアンといった印象のステルスアイアン
トゥ側の金属を削ることでより低重心に仕上げています。その効果もあって自然と高さが出ます
ヘッドスピードを徐々に速めて振ってみると、高さは変わらず、飛距離がどんどん伸びていく感じです。ミスへの強さ、直進性の高さも変わらず。非常にオートマチックに、ねじれない球が打てました。
よくも悪くも操作性も変化しないので、安定感は高いです。打感がやわらかく、ミスに強くて飛距離が出て、なおかつ曲がらないアイアンが欲しいなら、ステルスは間違いなく候補になるでしょう。
見た目以上に安定志向のアイアンに仕上がっていますね。1発1発の安定性を求める方にはとてもやさしいと感じる仕上がりです
ドローボールを意識して振ってみた7番のデータです。ほとんど曲がりません。スピンはやや少なめで、高さは十分。距離はクラシカルロフトのモデルより、1.5番手ぐらい飛ぶ印象です
ステルスアイアンは、見た目以上にオートマチックでミスに強いモデルでした。スマートな見た目で、見た目以上にやさしいアイアンが市場で求められているんだなぁと、強く感じましたね。
発売後はおそらくたくさんのゴルファーに受け入れられると思います。個人的には、もう少し操作性があってもよかったかなと思いますが、そのポジションにはテーラーメイドには「P790」というモデルがありますから、これでいいのでしょうね。
他社のライバルモデルは、ミズノ「Mizuno Pro225」、キャロウェイ「APEX DCB」あたりでしょうか。
とにかくやさしくて飛ぶやつ! それでいて見た目カッコイイやつ! がお好みなら、このステルスアイアンをぜひ試してみてください。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。