今回は、アウトドア向けのカセットコンロ「フォールディングキャンプストーブ」を紹介します。イワタニのアウトドアブランド「FORE WINDS」で展開されているアイテムで、折りたたんでコンパクトに収納できるのが特徴。キャンプなどでもカセットコンロ派という人は要チェックです。
オートキャンプ、特にファミリーキャンプで使われるバーナーはツーバーナーが人気。しかし、最近は、バーナーが2口あっても持て余してしまうというキャンパーも多くなり、小型のシングルバーナーを愛用する人が増えています。とはいえ、大きめの鍋を載せると不安定になりやすいため、人数の多いキャンプでの調理にはあまり適していません。そんなシーンで活躍するのがカセットコンロ。高さが低く、ゴトクも大きいので、大きめの鍋を載せても安心です。ただし、シングルバーナーに比べると本体サイズが大きく、少々荷物になってしまうのがネック。そうした課題を解決したのが、今回紹介する「フォールディングキャンプストーブ」です。折りたためる構造となっており、半分以下の本体幅に収納して持ち運ぶことが可能。それでいて、一般的なカセットコンロと同様に、大鍋(直径24cmまで)が載せられる安定性も備えています。
カセットコンロでありながら、収納サイズは約111(幅)×285(奥行)×114(高さ)mmと1.5Lペットボトルと同じくらい。非常にコンパクトです
おしゃれキャンパーに人気を博したイワタニのベストセラー「カセットフー マーベラス」(左)と収納サイズを比較してみると、その大きさは1/3ほど!
重量は約1.6kgと、こちらも中身が入った1.5Lペットボトルとほぼ同じ重さ。ハンドル付きなので、持ち運びもラクに行えます
コンパクトに収納できますが、部品を取り外したり、かなり細かく折りたたんだりする必要はないので、収納や組み立ては簡単で、素早く完了できます。
ケースの中には、折りたたまれた脚やバーナーなどのユニットがキレイに収まっています。カバーを開けたところに組み立て方が記されているのも親切
ここからは、組み立ての手順を紹介します。
まず、側面のラバーキャップと底に差し込まれている「ヒートシールド」を取り外します
カバーを開けてバーナーユニットを引き出し……
3か所あるスタンドを開いたあと、脚とゴトクを展開
次に、ヒートシールドを開いて、バーナーユニットに取り付けます
最後にカバーを閉じれば、組み立て完了
ゴトクは大きく、直径24cmまでの鍋を載せられます。4つの脚で安定感もバッチリ。耐荷重は5kgなので、大抵の鍋料理が楽しめるでしょう
コンパクトに収納できるのは魅力的ですが、調理をするのに十分な火力を備えているかが気になるところ。一般的なシングルバーナーや家庭用カセットコンロは火力が2,000kcal/hを超えるものが多いのに対し、フォールディングキャンプストーブは1,900kcal/hと数値的には若干低めです。そこで、お湯を沸かすのにどのくらい時間がかかるのか計測してみました。
今回は、FORE WINDSブランドのロゴがデザインされた「カセットガス FORE WINDS ノルマル」を使用。このほか、「カセットガス FORE WINDS イソ」に加え、従来の「イワタニカセットガス」や「イワタニカセットガス パワーゴールド」の使用も可能です
点火ツマミがオフになっていることを確かめてから、カバーを開けてボンベを取り付けます
なお、ボンベ取り付け部には、ガスボンベが高温になり内部の圧力が高まると自動的に外れる圧力制御器を搭載。また、気化熱でガスボンベが冷えて火力が弱くなることを防ぐヒートパネルも装備されています
気温は約20℃と、ちょっと暖かめな日に検証。沸騰のタイミングがわかるようにフタをせず加熱し、鍋に入れた500mlの水(約13℃)が沸騰するまでの時間を計測します
点火スイッチを回して、最大火力で加熱。つまみが大きいので、グローブをはめていても扱いやすいでしょう
日差しが明るいので炎はわかりにくいですが、最大の状態。鍋底全体に火がまわっています
ちなみに、バーナーヘッドは新開発されたもの。内側にステンレスメッシュが装備され、外側の30か所あるスリットから炎が上がる仕組みとなっています。風の影響を受けにくそうなデザインなので、調理器具にムラなく火がまわり効率よく調理できそう
そして、点火してから3分26分後、水面が完全に揺れ動くくらいに鍋の水が沸騰。このくらいの時間で沸騰するのであれば、火力の低さはまったく気になりません
十分な火力であることがわかったところで、今度は料理を作ってみましょう。作るのは、スキレットを使ったアヒージョ。なお、フォールディングキャンプストーブで使える調理器具のサイズは直径24cm以下なので、直径約16.5cmのスキレットを使用しました。
使用したスキレットは6-1/2インチ(約16.5cm)と規定のサイズ内ですが、スキレットの取っ手がガスボンベの入っているケースユニットにかからないように載せましょう
アヒージョ作りは簡単。スキレットにオリーブオイル、ニンニク、鷹の爪を入れて弱火にかけます
ニンニクの香りがしてきたらエビ、タコ、マッシュルーム、下ゆでしたブロッコリーを投入
食材に火が通ったら完成。とろ火にする火力調節もやりやすい印象です
一般的なアウトドアストーブは屋内での使用が禁止されているため、キャンプ場などの屋外でしか使用できません。しかし、フォールディングキャンプストーブは、屋内での使用も可能。自宅で使う一般的なカセットコンロと同じように、食卓で鍋料理を楽しむこともできます。普段から使えるので“キャンプをしないオフシーズンは出番なし”という状況にもならず、1年中活躍してくれるでしょう。
家の食卓でお鍋やおでん、すき焼きなど、さまざまな料理が楽しめます。今回は直径20cmの鍋でポトフを作りましたが、家族4人(小食ですが……)で十分な量を作ることができました
直径20cmの鍋底全面に火がまわるほど十分な強火が得られ、卓上での調理もストレスなし!
かなりの弱火にすることもできるので、保温時に加熱し過ぎになることもありません
一般的なカセットコンロは、吹きこぼれなどの汚れを拭き取りにくい場合がありますが、フォールディングキャンプストーブはヒートシールドを取り外し、簡単に洗うことができます。着脱もしやすく、ヒートシールドの形状は薄くてフラットなので、洗いやすさも上々。いっぽうで、ガスボンベが入ったカバー部分の汚れは気になるところ。というのも、カバー表面に細かい溝が施されており、ここに調理中の油などがはねて入ってしまうと簡単に拭き取ることができません。この溝はデザイン的でもあり、カバーを開ける際のすべり止めにもなるので役立ってはいるのですが、溝に入り込んだ汚れを拭き取るには、アルコールを含んだ除菌ウエットティッシュで、ていねいに拭く必要があります。
バーナーの輻射熱によるダメージからテーブルを守るだけでなく、吹きこぼれを受ける役割も果たすヒートシールド。取り外して、洗剤を使って洗えるのは便利です
カバーの細かい溝はデザインと実用性を兼ね備えていますが、ここに汚れが飛んでしまうと拭き取りにくいという欠点も……。放っておくと汚れが固着して取りづらくなりそうなので、収納前にきちんと拭き取るようにしたほうがよさそうです
とはいえ、持ち運びはもちろん、家での保管場所をとらないので、コンパクトに収納できるのはやはり大きな魅力。使い勝手もよく、申し分ない火力も備えており、コンロとしての性能に不満はありません。アウトドアでカセットコンロを使うなら、フォールディングキャンプストーブは選んで損はしないアイテムと言えるでしょう。
コンパクト収納なので、キッチンのちょっとしたスペースに置いておくことができます
アウトドア雑誌の副編集長職を経てフリーランスとして独立。以降、アウトドアをはじめ、グッズ、クルマ、旅行などレジャー関連を中心に執筆している。