e-Bikeといえばロードバイクタイプやクロスバイクタイプ、マウンテンバイクタイプのモデルをイメージする人は多い。一般的にスポーツタイプの電動アシスト自転車のことを「e-Bike」と称しているので当然だが、スポーツタイプのドライブユニット(モーター)を搭載していればe-Bikeと呼べるため、小径車(ミニベロ)や実用的なタイプのe-Bikeも存在する。今回紹介するのは、そんな小径タイプのe-Bike、ブルーノ「e-tool」。たくさんの荷物を積んで走行したり、子どもを乗せる自転車としても使えるように設計されたモデルだ。
「e-tool」は大きなリアキャリアや両足タイプのスタンドを備えた、実用性にフォーカスを当てたモデル。リアキャリアに荷物を載せて運搬できるほか、ボックスやフロントにバスケットを別途追加すれば、さらに多くの荷物を積載できる。しかも、リアキャリアは後付けされているのではなく、剛性を高めるため、フレームと一体化しているのがポイント。自転車に積載可能な重量は法的には30kgまでだが、e-toolのキャリアは50kgまで耐えられる設計となっている。また、適応するチャイルドシートを取り付ければ、子乗せ自転車として使うことも可能だ。
全長は1,700mmと小径車としては長めだが、その分、荷物を積んで走行する際の安定性は高い。重量は18.6kg。BLACK、WHITEの標準カラーのほか、GREEN、SILVER、SANDの限定カラーが用意されており、価格は279,950円(税込)
フレームは高さを抑えたスタッガードタイプだが、角タイプのチューブを使用することで剛性を確保
前後ともに20×2.1インチの小径タイヤを装着。エアボリュームが大きく、路面からの衝撃を吸収できる
なお、今回使用する試乗車には、オプションが装着されている。フロントバスケット「BRUNO BASKET DEEP FORK MOUNT」(価格は9,075円/税込)、前後のフェンダー「MUD GUARD MINIVELO TOOL」(価格は5,082円/税込)は純正アクセサリーとして販売されているが、リアのボックスは市販されていない私物だ
今回は試していないが、リアキャリアにチャイルドシートを装着することも可能
e-toolに装着できるチャイルドシートとして、「OGK RBC-015DX リヤチャイルドシート」と「OGK urban iki リヤチャイルドシート」はメーカーに確認されている
リアキャリアはフレームに溶接されている。かなり細かく補強も入っており、見るからに剛性が高そう
キャリアを支える部分にも剛性を高めるため、角パイプが用いられている。また、ボトルケージを装着するためのダボ穴も装備
リアキャリアの上面サイズは160(幅)× 340(長さ)mmあり、試乗車のリアには、サイズ370(幅)×590(長さ)×390(高さ)mmの大きなボックスが装着されていた。このような深さのあるボックスを使えば、リアキャリアに直接くくりつけるよりもいろいろなものが運搬できる
標準装備のスタンドは、安定感の高い両足タイプ。チャイルドシートを装着して、子乗せ自転車として使うには必須の装備だ
実用性を重視したモデルではあるが、ブルーノはマウンテンバイクやシクロクロスなどのレースで活躍した選手、ブルーノ・ダルシーが設立したブランドなので、走行時の剛性などにも配慮されて作られているのはもちろん、走行性能も期待できる。搭載されているドライブユニットは、シマノ製「STEPS E5080h」。この「STEPS 」というドライブユニットには、e-MTB(マウンテンバイクタイプのe-Bike)などに搭載される「E8080」のほか、「E6180」「E5080」と3つのシリーズがラインアップされており、e-toolに搭載されている「E5080h」は、「E5080」シリーズの中でも最新型だ。街乗り向けのグレードではあるが、一般的な電動アシスト自転車に搭載されるドライブユニットに比べると、自然なアシストフィーリングで高いケイデンス(ペダルの回転数)にも対応している。さらに、変速ギアにシマノの外装式8段を採用しているのも、シティサイクルタイプのような電動アシスト自転車とは一線を画するところだ。
シマノ製の最新ドライブユニット「E5080h」を搭載。最大トルクは40Nmと高くないが、アシストのフィーリングの評価は高い
変速ギアはシマノ製「ターニーEX」グレード。変速はリアのみで、フロントには搭載されていない
前後ともにVブレーキを採用。e-Bikeではディスクブレーキを採用するモデルが増えているが、重量やコストを抑えるには有効な手法だ
フロントにはチェーン落ちを防ぐガードを両側に装備。チェーンが長い車両なので付いているほうがありがたい
幅は狭いもののBMXのような形状のハンドルを装備しており、スポーティーな雰囲気に。このハンドルにも、剛性を高めるため補強が入っている。なお、右手側にあるのは変速レバー。グリップ部を回すタイプで、入っているギアも表示されるので初心者でも操作しやすい
バッテリーはフレームに外付けされるタイプ。容量は418Whで、バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで3〜3.5時間かかる
車体の設計や装備は実用的だが、ドライブユニットはe-Bike向けというe-toolは、どのような乗り味なのか。坂道の多い街中で試乗し、確かめてみた。
走行モードは「ECO」「STD」「POWER」の3種類。今回は、平坦なところは「STD」、登り坂は「POWER」で走行した。なお、アシスト可能な距離は最長120km
車体にまたがってみると、ライディングポジションは前傾気味となり、上体が起きた状態で乗る電動アシスト自転車とは明確に異なる。前傾姿勢なので、サドルだけでなくハンドルを握る手にも適度に体重が分散され、ペダリングも太ももの裏側からお尻にかけての大きな筋肉を使う感覚だ。人の力を有効に引き出すポジションからも、e-toolが単なる実用車ではないことが感じられた。
ハンドル位置は低めで、ライディングポジションはクロスバイクなどに近い
そして、ペダルを踏み込んで走り出した時のアシストの出方もe-Bikeらしいもの。シティサイクルタイプの電動アシスト自転車の場合、踏み込んだ瞬間にグッと車体を押し出すようなアシストがかかるが、e-Bikeは漕ぎ出しのアシストは抑え気味で、ペダルを回していくと自然にアシストが上乗せされていく。そんな特性を備えたe-toolは、アシスト頼みで走るのではなく、ペダルを踏む力でアシストをコントロールしながら走れて気持ちいい。
アシストのフィーリングもe-Bikeらしい自然なものだ
スポーツ自転車としては大きめでクッションが厚いサドルだが、座り心地は上々。快適さとペダリングのしやすさを両立している
走行中のアシストについても、グイグイ車体を押し出すような感覚はないが十分にパワフル。かなり角度のある坂道を、もっともアシストが強い「TURBO」モードに切り替え、軽いギア比を選べば、ペダルを回しているだけでスイスイと登って行く。後日、リアのボックスに約30kgの荷物を積んで同じ坂道を登ってみたが、その状態でも足の力をほとんど使うことなく走破できた。
登り坂ではアシストの強さを実感。自然なフィーリングのままスルスルと登って行ける
30kg弱の荷物をリアのボックスに入れて走行しても車体は安定しており、アシストのおかげで苦もなく走れた。深さのあるボックスを用意すれば写真のようにプラスチック製タンクを積んで運べるので、e-toolなら灯油を買いに行くこともできそうだ
カーゴバイクや子乗せ自転車としても使える実用性の高いe-toolは、シマノ製のドライブユニットを搭載していることもあり、e-Bikeらしい乗り味で快適に走行できる。しかも、そのフィーリングはドライブユニットの性能だけに頼ったものではない。試しに、アシスト機能をオフにして走行してみたのだが、ペダルを踏んだ力が効率よく後輪に伝わり、よく進む特性は変わらなかったことからも、車体のできのよさも走行性能の高さに影響していることが実感できた。つまり、e-toolは、スポーツタイプの自転車に慣れた人が乗っても不満のない乗り味に仕上がっていると言える。チャイルドシートも装着できるので、普通の子乗せタイプの電動アシスト自転車では満足できない人にも選択肢になるだろう。
そして、e-toolのようなe-Bikeが1台あると自転車の楽しみ方が一気に広がると思う。家族や仲間とデイキャンプやBBQなどを楽しむ際の運搬&移動に使ったり、普通の自転車ではできない、e-Bikeならではの可能性が広がるはずだ。
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。