オグさんです!今回は、ブリヂストンの「Bシリー ズ」のアイアン、2022年モデル3タイプを、まとめてご紹介いたします。
左から時計回りに、「221CB」「222CB+」「220MB」
今回のBシリーズのアイアンは、ツアープロの要望に真っ向から向き合い、性能や形状、打感などを煮詰めて開発されたそうです。3モデルとも軟鉄鍛造ヘッドで、タングステンなどの異素材を一切使わず、設計だけで勝負しています。
メインとなるモデルは、軟鉄鍛造キャビティの「221CB」です。ロフトは7番で32°と、アスリートモデルとしてはやや多めの設定。ヘッドサイズは7番で76.3mmと、アスリートモデルとしては標準的なサイズですね。
221CBをベースに、ミスへの寛容性を高めたモデルが「222CB+」。ヘッドサイズが7番で79.0mmとやや大きくなり、芯を外したときにだけ作用するポケットキャビティ構造を、全番手に採用しています。ロフト設定は7番で31°です。
「220MB」は、直営店や限られた試打会などでしか購入できない「B-Limitedシリーズ」のマッスルバックモデル。操作性を極めて重視しただけあり、ロフト設定は7番で33°、ヘッドサイズは74.4mmと、かなりシャープな仕上がりです。
各モデルが軟鉄鍛造の“1枚物”として、性能をどこまで追求できているのか非常に楽しみです。「222CB+」「221CB」「220MB」の順に、詳しく見ていきましょう!
芯で打てば厚みのある打感を味わえ、芯を外したときにはポケットの効果を発揮するという、フィーリングとやさしさを両立したモデルです。3モデルの中で最も高い飛距離性能を有していますが、「狙う機能」をしっかりと残してあり、さすがプロからの要望を反映した仕上がりです。
バックフェースはシンプルで美しいデザインです。バッチなども装着せず、潔さすら感じられますね
ちょっと大きめ、といったサイズ感。視覚的にもやさしさを感じられます。ややシャープな形状ではありますが、適度な厚みを持つトップブレードが、ちょうどよい鈍重さを生んでいますね
フェースの溝には0.02mmにこだわった「ツアーグルーヴデザイン」を採用(シリーズ共通)。高精度な溝により、安定したスピン性能を実現させています
適度な幅を持つソールは、ヌケのよさと適正なバンス効果を狙い、フラットな形状を採用しています
シリーズ3モデル中、飛距離性能が最も高く、ミスに強いのが、この222CB+です。バックフェースの厚みを、上部を薄く、下部を厚くした「グラビティコントロールデザイン」により、低重心でボールが上がりやすい設計。その分ロフトを立てることで、飛距離性能を高めています。
とはいえ、極端な飛距離は追求せず、狙う機能をしっかりと盛り込んでいるのがこのアイアンの美点ですね。また、フェースの中央部に厚みを残した「デュアルワイドポケットキャビティ」を全番手に採用し、フィーリングとやさしさを両立させています。
こういったコンセプトを掲げたアイアンは、今までありそうでありませんでした。同じような思想で設計されているアイアンはみな、飛距離性能をもう少し持っています。ですので、ライバルモデルは現状見当たりません。強いて言えば、ミズノ「Mizuno Pro223」、タイトリスト「T100」」あたりになるでしょうか。
ロフト:#5 24°#6 27°/#7 31°/#8 36°/#9 41°/PW 46°
ロフト設定は7番で31°。シリーズ3モデルの中で最も立っている222CB+ですが、現在のアスリートモデルの主流と比較すると、スタンダードに近い設定と言えます。今回のBシリーズのアイアンは、狙う性能にそれだけ特化しているのです。
シャフトは、90g台スチールの「NS PRO 950GHneo」と、70g台カーボンの「BCI B70」をラインアップ。カスタムでは重量級のシャフトも選べます
ポケットキャビティは、ミスには強いが、インテンショナルなど、あえて曲げた弾道も消されてしまう点(ミスヒットしてもボールを曲がりにくくしている性能に起因)が、個人的にあまり好きではありませんでした。ですが、この222CB+は、それなりに曲げることもでき、それでいてミスしても助けてくれる。これら相反する性能を、非常に上手に両立させていますね。
ロフトを立て過ぎず、スピンが適度にかかりやすくなっている点もよい方向に働いているのでしょう。「プロが求めるやさしさ」ってこういうことなのかな?と体感させてくれるアイアンに仕上がっていると思います。芯でとらえればよい打感を味わえて、ミスしたときにだけ助けてくれる、ある意味“理想のアイアン”だと思います。
バックフェース下部すべてを彫り込むのではなく、芯付近を残すアイデアは秀逸。過去に、近いコンセプトのキャビティバックアイアンはいくつかありましたが、ポケットキャビティ構造のアイアンでは初めてかもしれませんね
7番アイアンとして適度なスピン量と高さを維持しながら、できるだけ飛距離性能を高めた印象。これ以上距離を出そうとすると、スピン量を削る必要が出てしまい、グリーンで止める性能が低下してしまいます。バランスがすばらしい!
軟鉄のみで鍛造されたシンプルなキャビティモデル。細かいボールコントロールに必須のスピン性能や打感などをしっかりと備え、芯を外しても大ケガにならないやさしさを兼ね備えたアイアンです。
こちらもバッチなどを使わない、シンプルなデザイン。メッキは反射を抑えたクローム仕上げ。個人的には好きです
222CB+と比べてひと回り小ぶりなヘッドサイズ。ブレードも少し薄くなっており、シャープさが増しています
3モデル共通のツアーグルーヴデザインを採用し、安定したスピン性能を実現させています。軟鉄ならではの、フェースに吸い付くような打感は「気持ちいい」のひと言!
ソール前方リーディングエッジと、後方トレーリングエッジそれぞれをカットし、インパクト前後のヌケを向上させた「ツアーコンタクトソール」を採用。ツアープロからのフィードバックを色濃く反映させた個所のひとつです
シンプルな軟鉄鍛造キャビティアイアンですが、その実、構造はかなり凝ったもの。キャビティ部分は、上部を厚くしたグラビティコントロールデザイン。適度な高重心に設計することで、コントロールに必要なスピン量を確保しています。インパクトの前と後、両方のヌケを考えたツアーコンタクトソールと共に、狙うための機能を高めてあるのが特徴です。
4番、5番には、やさしさと安定した飛距離性能を持たせるため、222CB+に採用されている「デュアルワイドポケットキャビティ構造」を採用。ポケットのサイズを少し小さくすることで、操作性を残しつつ、球の高さとミスへの寛容性を高めています。
ブリヂストンによれば、2022年9月上旬現在、男女問わず多くの契約プロが221CBをテストしているそうです。シーズン中なのですぐにチェンジとはいかないようですが、一部のプロはすでに使用しているとのこと。それだけ、完成度が高いということなのでしょう。女子プロは221CBではなく、222CB+を選びそうな気がしますが、厳しいコンディション下でも狙う性能が高いモデルを好むプロが多いそうです。
ロフト:#5 25°#6 28°/#7 32°/#8 36°/#9 41°/PW 46°
ロフト設定は、7番で32°。222CB+と比べると、1°だけ立った設定です。大きく差を付けなかったのは、シリーズ内のバランスを取る意味もあるのでしょうが、複数モデルを混合させた「コンボセッティング」を考えてのことなのかもしれませんね。
シャフトラインアップは、純正に日本シャフトの「NS PRO MODUS3 TOUR120スチール」と「同TOUR105スチール」を用意。カスタムには同じく「TOUR115スチール」と、専用設計の三菱ケミカル製「TENSEI BS black 80iカーボン」が用意されます
「これぞアイアン」といった仕上がりで、非常に扱いやすいと感じました。適度なスピンと、マットの上でも感じるヌケのよさ。芯を外してもそれなりに助けてくれる寛容性、そして、芯でとらえた時のフェースにのる感触。これらの相乗効果か、不満はほとんど感じられませんでした。
222CB+と比較すると、スピン量がより増えて操作性が高まっています。芯を外したときの弾道もちょっと異なります。222CB+は、初速は少し落ちますが、芯で打ったときとの弾道にさほど差を感じませんでした。221CBは、芯を外すと初速が落ちてスピン量が増える印象があります。ミスすると距離が少し落ちる分、飛び過ぎのミスがないように作られています。
リーディングエッジをカットし、ヌケをよくしたツアーコンタクトソール(赤丸部分)の性能は、マットでも感じられました。突っかかりにくく、ボールを拾いやすい
左の222CB+は、キャビティの中央部が厚めに。右の221CBはキャビティの上部を厚めにすることで、モデルごとのコンセプトに合った適正スピン量を調節しています
222CB+と比べると、“ちょっとだけ飛ばない”感じです。その分操作性を高め、狙う性能をさらに向上させています
「ザ・マッスルバック」といった仕様で、操作性とフィーリング面を極限まで追い求めたアイアンです。ヘッドサイズは3モデル中最も小さく、技術のあるプレイヤーならさまざまな球種を打つことが可能。“狙う”ことだけに特化したアイアンと言えます。このモデルは、直営店や試打会などでしか注文できない「B-Limited」シリーズの製品です。
まるで日本刀のような美しさを持つ、非常に美しいアイアンです
ブレードは薄く、ヘッドもかなり小ぶりに仕上がっています
こちらもツアーグルーヴデザインを採用。あらゆるライから安定したスピン性能を発揮します
220MBには、プロからの要望により、あえてツアーコンタクトソールは搭載されていないそうです。もともと幅の狭いソールなので、ヌケがよ過ぎてもよい結果につながらないのでしょう
ミスへの寛容性などは一切考慮せず、芯でとらえやすく、高い操作性を追求したモデル。こちらも、タングステンなど異素材を使わない、軟鉄鍛造1枚物アイアンです。こういったモデルが作り続けられる理由は、結果を求めるツアープロからの要望にほかなりません。ミスが許されないシーンで使われるからこそ、最も操作しやすく、自分のテクニックが生かせるアイアンを求めるのでしょう。
ロフト:#5 26°#6 29.5°/#7 33°/#8 37°/#9 41.5°/PW 46°
ロフト設定は、7番で33°と、マッスルバックとしては立った設定。飛距離性能を考えてのことなのかもしれませんが、もしかしたら他モデルとのコンボセッティングで使われる可能性も視野に入っているのかもしれません。
マッスルバックアイアンは、言ってみれば「操作すること」に特化したモデル。ミスヒット時のリカバリー性能などはまったくなく、いかに芯でとらえやすく、狙いどおりの弾道を打ちやすくするかを追求したアイアンと言えます。220MBは、まさにそれを具現化したようなモデル。打っていて非常に楽しいアイアンです。自身が正しいインパクトさえすれば、弾道がしっかりと応えてくれるので、これでずっと練習していれば、かなりのテクニックを身に付けることができるでしょう。逆に言えば、ミスヒットすればそれに応じた球が出るので、技術の向上に最適というわけです。
221CBでも操作性は十分と感じましたが、220MBの打感と操作性を味わってしまうと、やはり物足りなく感じてしまいますね。芯で打てたときの打感が忘れられなくなりますよ。
打っていて最も楽しいアイアンはマッスルバックと断言できます! フェースのどこでボールをとらえたかなど、うまくなるヒントをくれるのも、マッスルバックのよいところだと思いますね
ネック周りがカチッとしたデザインに仕上がっている220MB。往年の名器を彷彿とさせる仕上がりです。好みもありますが、個人的には好きな形です
ちょっと引っかけ気味ですが……スピンのしっかり入った高弾道。これなら、競技仕様のかなり硬く速いグリーンでも止められるでしょう。一般営業のコースで使うとすれば、日本の道路でスーパーカーに乗るみたいな感じでしょうか
Bシリーズの2022年モデルは、アイアンに求められる性能を見つめ直し、原点に回帰した高性能モデルに仕上がっていました。220MBは本来のアイアンらしい操作性とフィーリングを重視、221CBは、そこに性能をじゃましない程度のやさしさを注入。222CB+は、さらなる直進性とわずかな飛距離をプラス。シリーズを通して、あくまで特定のエリアやターゲットを狙う性能を重要視して作られています。
打ってみると、やっぱり軟鉄鍛造のアイアンはいいなぁ……と、再確認させてもらいました。ぜひ多くの人にこれら3モデルを打ち比べて欲しいと思います。近年人気がある飛距離性能の高いアイアンも魅力ですが、本来のアイアンの魅力を味わえること間違いなしのシリーズに仕上がっています。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。