オグさんです。今回は2022年下期注目の1本、テーラーメイド「ステルスグローレ ドライバー」の試打レポートをお届けします。
テーラーメイド「ステルスグローレ ドライバー」(左)と「ステルスグローレ+ ドライバー」(右)
「ステルスグローレ」は、テーラーメイドのワールドワイドブランド「ステルス」のテクノロジーを、日本やアジア向けのブランド「グローレ」に融合させたシリーズとして開発されました。
「ステルス」シリーズは、テーラーメイド独自のテクノロジーをふんだんに使用。カーボンシートを60層にも重ねて精巧なポリマーコーティングを施したカーボンフェースや、溶接せずに接着のみでヘッドを組み上げる「マルチマテリアル構造」など、他社にはない技術がたくさん搭載されています。
グローレは、2012年に初代モデルが誕生。日本やアジアに向け、設計やこだわりを持ったシリーズとして2年ごとにモデルチェンジを繰り返し、常に高い人気を維持し続けています。
2016年までのグローレは、ワールドワイドに展開するシリーズとは別のテイストを持つクラブとして開発されていました。ところが、2018年に発売された「Mグローレ」によってその流れが変わります。「Mグローレ」は、当時のワールドワイドブランド「M」シリーズのテクノロジーを取り入れたグローレとして開発され、その流れを受けて2020年には「SIMグローレ」が発表されます。今回のステルスグローレもその流れに乗った形ですね。
今回取り上げる「ステルスグローレ ドライバー」は、いわば“カーボンフェースを使用した日本向けモデル”と言えるもの。ステルスシリーズが比較的アスリート向けに設計されていただけに、ステルスグローレはどのように仕上がっているのか、非常に楽しみです!
ステルスグローレ発表会の模様はこちらから。盛り込まれる技術などを詳解しています。
またまたヒット、間違いなし!テーラーメイド「ステルスグローレ」発表会レポート
狙ったところに打ち出せる適度なつかまり感と、多くの人にとっての扱いやすさを手に入れた、カーボンフェース採用のドライバー。ミスへの寛容性や低スピンの強弾道が打てると評価の高かったステルスシリーズのテクノロジーを再設計し、幅広いゴルファーに対応するヘッドに仕上がっています。
カーボン素材であることを主張する網目模様を生かし、白を基調としたデザインにまとまっています。落ち着いた雰囲気がありますね
カーボン模様の中に自社のロゴを入れ込むなど、凝った仕上がりが目を引きます
<カタログ記載のスペック>
●ヘッド構造
└ボディ:チタン 9-1-1 ti製フレーム+カーボンクラウン
└フェース:60層カーボンツイストフェース
●ヘッド体積 460 cc
●バランス D3
●クラブ長さ 46 インチ
●シャフト重量 43 g
●クラブ重量 272 g
ボディにはチタンを、フェースやクラウン、ソールにはカーボンを採用。それらを、溶接せずに接着だけで仕上げるマルチマテリアル構造によって、最適な重量配分を実現しています。
カタログスペックは46インチで総重量272g(R)と、長めかつ軽めの設定。パワーのない人でも、最大限の飛距離を引き出してもらいたいという意思が感じられます。
ヘッド形状は、ややトゥ側にボリュームのある洋ナシ型。投影面積はそれほど大きくはなく、扱いやすそうな印象を受けます
ステルスシリーズでは赤いカラーが印象的なカーボンフェースですが、ステルスグローレでは一部に白いラインを入れただけ。カラーはシンプルですが、フェースの上下と左右で表面仕上げを変えるなど、細かいところまで手が込んでいます。ソールに見える段差は、空気抵抗を軽減させる「イナーシャジェネレーター」。ダウンスイング時のヘッドスピードを高める効果があります
標準シャフトは、フジクラと共同開発した「SPEEDER NX for TM」。Rフレックスで43gと軽量で、クセのないしなり戻りにより、高い打ち出し角を生み出してくれます
構えてみると、すっきりした顔によりショットにスムーズに移行できそう。投影面積は大き過ぎず小さ過ぎずで、適度な安心感とシャープさをあわせ持っています。
お借りしたスペックは、9.5°のSフレックス。何回か素振りをすると、軽量に仕上げられているだけあり、長めの46インチでも軽やかに振り抜けました。
ヘッドスピード40m/sぐらいをイメージして何球か打ってみると、軽やかな振り心地に反して、ライナー性の重そうな弾道で飛んでいきます。打ち出し角は9.5°らしい中弾道。これくらいのヘッドスピードだと、10.5°のほうが飛距離につながりそうです。
つかまり具合は、ちょっとつかまる、バランスのよいところ。重心距離がさほど長くないのか、テークバックでフェースを大きめに開いても、スクエアに戻しやすい。純正シャフトのクセのなさによるところもありますが、多少振り遅れても大きく右に打ち出すようなことはありませんし、インパクトが強めに入っても強いフックになりにくい。これならば、シャフト次第ですが、スライスに悩む人から左のミスを嫌う上級者まで、幅広いゴルファーが使えると思います。
軽やかに振り抜けてヘッドが走らせやすいので、ヘッドスピードも高められそう。空力効果も効いているのでしょう
ライ角は58°。数字上ではさほどアップライトではありませんが、構えてみるとトゥ側がやや上がっているように見え、つかまりそうな安心感を与えてくれます。個人的に、9.5°では、よい意味で見た目よりつかまりませんでした
ヘッドスピードを徐々に高めていくと、中弾道ライナーのまま飛距離が伸びていきます。スピン量も同時に増えていきますが、サイドスピンにはなりにくく、高い直進性を実感しました。
操作性はというと、曲げられないことはないのですが、46インチという長さもあり、曲がり幅をコントロールするのはちょっと難しい。ただ、ヘッド自体の追従性はよいので、シャフト次第でまずまずのコントロールはできると思います。
打ち出し角がやや低めですが、これはシャフトによるところとも言えますね。ヘッドスピードがもう少し低いと、打ち出し角はさらに上がります。スピンを少し抑えることができれば、あと10ヤードぐらいは伸びそうです
今回のステルスグローレには、「ステルスグローレ+(プラス)ドライバー」(以下、+)というモデルも用意されています。言うなれば、“カチャカチャ付きステルスグローレ”で、カチャカチャの有無以外は、標準モデルと同じです。セレクトフィットストア限定のモデルですが、より自分に合ったシャフトでこのヘッドを使いたい! という人のために用意されたモデルと言えます。
弾道調整機能、いわゆるカチャカチャ以外は標準モデルとの差はありません
ヘッド形状も同じ。ネックの見え方が変わるぐらいですね
スリーブ形状はステルスなどと共通なので、テーラーメイド製ドライバーのユーザーはシャフトの流用が可能。これは非常に魅力的な仕様です。ただ、ヘッド重量がモデルごとに異なるので、クラブバランスを確認する必要がありますね
「+」は、弾道調整機能以外はヘッド、シャフトともに標準仕様と共通です。違いはクラブ重量くらいのもの。「+」のほうが3gほど重くなっています。カタログ値では、標準モデルのRフレックスが総重量272g、対して「+」は275g。これはスリーブ装着による重量増と考えてよいでしょう。念のため、何か変わるのか打ってみましたが、ちょっとヘッドが重く感じた程度で、弾道や振り心地にも特に差を感じませんでした。
「ステルスグローレ ドライバー」は、「ステルス ドライバー」のややハードだった部分が解消され、日本のゴルファーが扱いやすいモデルに仕上がっていました。もともとステルスの飛距離性能には定評があっただけに、その技術を使ってやさしく飛ばせるようなったのは、ユーザーにとって朗報です!
標準モデルは軽量に仕上げられているということもあり、ぶんぶん振り回すというよりは、サラッと振って飛距離につなげたい人向けと言えます。振り回していきたいなら、+をリシャフトしたほうが、ヘッドの性能をより生かせるでしょう。
ワールドワイドブランドのステルスと比較すると、「ステルスHD ドライバー」のヘッド追従性とつかまりを高めた感じですかね。ステルスシリーズとは、今度ジックリ比較してみたいと思います!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。