オグさんです。今回は新たに発表されたピン「G430」シリーズのメディアカンファレンスに行ってきましたのでその模様をお届けいたします。
ピンのメインブランドだけあり、シーズン中にもかかわらず6名もの契約プロが駆け付け、メディアカンファレンスに花を添えました
G430は、大ヒット作となった「G425」の後継シリーズ。ドライバー、フェアウェイウッド(以下FW)、ハイブリッド、アイアンとG425同様、フルラインアップで登場しました。G425シリーズは、コロナの影響もあり、24か月というロングスパンでの発売でしたが、最後の最後まで売り上げランキングの上位を維持した人気シリーズでした。G425シリーズの人気の秘密は、ミスへの強さ。ドライバーに限らず、どのカテゴリーのクラブも、打点ズレによる飛距離ロスと曲がりの少なさは誰もが認めるところで、“やさしいクラブ!の代名詞と言っても過言ではないほどの評価を受けていました。もちろんプロの世界でもしっかり結果を残しており、グローバルで何と74勝! 文句のつけようのないシリーズだったと言えるでしょう。
そんな完成されたクラブの後継であるG430に、どこまで進化の余地があるのか、興味がありました。そんななかカンファレンスの冒頭、CEOのジョン・K・ソルハイムは、「今回のシリーズは、過去に類を見ないほど大進化を遂げた」と話していました。直近の試合では、すでに約7割の選手がG430にスイッチした、とも。使用を始めたツアープロのコメントでは「初速が速い」「打感がいい」「6ヤード飛距離が伸びた」「曲がりがさらに少なくなった」など、主に飛距離に関するものが多かったようです。
プロダクト紹介の前に、シリーズ全体のコンセプトの説明がありました。要約すると、ピンの今までの基本的な思想である、「ミスに強くやさしい」部分は変えず、そこに飛距離性能を上乗せするべく開発されたのがG430シリーズだ! ということのようです。これは期待が持てそう!
歴代のピンのドライバーの進化の軌跡を紹介。高い慣性モーメント、深低重心といった、ミスに強いモデルを一貫して市場に送り出してきました
G430のドライバーに関する進化ポイント。3つのうち2つが飛距離に関するものでした
G430シリーズの進化にポイントは主に3つ。それぞれ詳しく見ていきましょう
G430シリーズのドライバーには、フォージドフェースを採用。前作と比べて中心部が約6%、周辺部が約9%薄くなっており、インパクト時にフェース全体をたわませることで、たわみ量を増加させています。これにより、ボールの最大初速を高めることに成功しているそうです。
フェース厚の薄くなった部分の説明。薄くなるほど、インパクト時にフェースがたわみやすくなります
フェース全体がたわむことでインパクト時のエネルギーをしっかりと受け止め、ロスを少なくして最大初速向上を実現させています
「スピンシステンシー・テクノロジー」は、打点が上下にズレても最適なスピン量と打ち出し高さになるように用いられている新たな技術。フェース横方向の丸み「バルジ」と、縦方向の丸「ロール」を、ヘッドに合わせて搭載することで、飛距離ロスの少ない球を安定して打つことができるようになっています。
ちなみにスピンシステンシーとは、スピン(回転)とコンシステンシー(一貫性、均一性)という言葉を組み合わせたピンの造語なんだそうです。
打点の位置に合わせてあらかじめフェースに丸みを持たせることで、打ち出し角とスピン量をコントロールしようというのがこの技術の基本的な考えです
打点ズレによるボールのバラつきを表したグラフ。青が前作、赤が今作で、バラつきが減っているのがわかります
ゴルファーはそれぞれ、パワーやスイングの個性はもちろん、理想の弾道や悩みなど、スコアメイクやショットに対する考え方が異なり、マッチするクラブも人それぞれ。そんな幅広いゴルファーのニーズに応えるべく、ゴルフメーカーは同一シリーズ内に複数のヘッドを用意しています。ピンの考え方も同様で、前作同様ドライバーで3つのモデルを用意。それぞれのモデルの完成度、アジャスト能力を高めることで、ゴルファーの幅広いニーズに対応しています。
「MAX」「LST」「SFT」の3つのラインアップは前作と同様。個々のヘッド完成度とアジャスト能力を向上させることで、幅広いゴルファーに対応したドライバーシリーズです
従来モデルでも打音にはこだわってヘッドを開発しているピンですが、今作も音にしっかりとこだわって作られているようです。ヘッド内部の最も振動が発生する個所にリブを配置し、打点がズレてもよい音が出るように開発されています。
何でも、G425の音に対するフィードバックがグローバルでかなり多かったようで、もう少し打音がよくなればピンのユーザーが増える! という信念の基にG430の打音は開発されたんだとか。
振動を抑制するサウンドリブの配置図です。今作では、芯を外してもよい打音になるように配置されているのだとか
異なるヘッドの同じ個所にサウンドリブを入れると、打球音は変わるのだそう。サウンドリブは前作の流用とはいかないようです
何度も解析器を使って、打音の響く様子を確認。どこにサウンドリブを配置すればよりよい打音を生み出すのかを探っていきます
それではいよいよ個別に各モデルを見ていきましょう。
まずは主力となるドライバー3種から。
「MAX」は、3つあるヘッドタイプのいわゆるスタンダードなポジションにあたるモデル。3つのモデルのうち、慣性モーメントが最も高く、たたいてもブレないヘッドに仕上がっています。
高い慣性モーメントを持ちつつ、可変ウェイトを搭載。直進性の高い基本性能を持ちながら、ウェイトポジションを調整することで、ヘッドの特性を変えることができます。ちなみに「9700g・cm2」とはヘッドの左右上下の慣性モーメント値を足した数値。ルールで上限を定められている慣性モーメント値は、ヘッドの左右のみの数値です
G430のソールは、メカニカルでややイカつい印象を与えるようなデザイン。メインカラーにマットブラック、アクセントにライムグリーンが使用されています
過去作にも搭載されていた、空気の流れをスムーズにする「タービュレーター」の位置がやや中央寄りになり、少し大きくなっています。クラウン後方には、やや小さく見えるように縁取りの装飾が追加されました
ヘッドサイズは460ccでこちらは前作と変わりません。外層で最も変わったのは、クラウンですね。輪郭を縁取る装飾が追加されたこともあり、前作と比べてシャープに見えるようになりました。
カーボンクラウンを採用して理想の重心位置を追求することで、前作より慣性モーメントを高めつつ、低スピンの強い弾道を打てるよう進化しています。
3つのドライバーで、唯一カーボンクラウンを採用。低重心化により「MAX」と比べてバックスピンを減らし、より強い弾道を追求しています
クラウンをカーボンにすることで約6gも軽量化しています。たかが6gと思うかもしれませんが、この6gが大きな違いを生むのです
ウェイトポジション別による慣性モーメントの大きさを、前作と比較した図です。どこにウェイトをセットしても前作より高い慣性モーメントを実現したとのこと
外層デザインはほぼ同じ。「MAX」ではシルバーに塗装されている部分が一部ブラックに変更されている点と、トゥ側に記載されたモデル名が異なる程度です
カーボンとチタンの境目が見えるのが「LST」の特徴とも言えるでしょう
ヘッドサイズは440ccと、ほかのモデルと比べてひと回り小さくなっていますが、十分安心できる投影面積は持っています。ピンのドライバーでのカーボンクラウン採用は2006年の「ラプチャー」以来だそうです。
つかまりのよいやさしいモデルというポジションはそのままに、今まで固定式だったウェイトを可変式に変更。さらに慣性モーメントを高めることで、よりやさしくつかまるモデルへと進化しました。
「SFT」としては初めて、つかまりを調整できる可変ウェイトを搭載。つかまり過ぎを抑えることができ、より幅広いゴルファーに対応するヘッドになりました
可変ウェイトを調整しても、前作を超える慣性モーメントを実現させています
こちらも基本となるデザインは共通。PINGのロゴがウェイト搭載位置に合わせてやや傾いてデザインされており、つかまりのよさを表現しています
クラウン形状は、MAXに準ずるもの
ソール後方のウェイトポジションは、スタンダードの「DRAW+(よくつかまる)」と「DRAW(ほどよくつかまる)」の2つ
ヘッドサイズは460cc。つかまりやすい重心設計に加え、ウェイトポジションによってつかまり具合を調整できます。従来と近いポジションが「DRAW+」。新たに追加されたポジションは、適度につかまる「DRAW」。G430で最も進化したのは、もしかしてこの「SFT」かもしれませんね。
毎回ピンが用意する純正シャフトは作りが凝っているのですが、今作のために用意された3つのシャフトも、かなり凝っています。
日本専用に設計された、カウンターバランスを採用したシャフト「ALTA J CB BLACK」。従来でも好評だったシャフトをブラッシュアップした「PING TOUR 2.0 CHROME」。そして、ツアー向けのモデル「PING TOUR 2.0 BLACK」。
どのシャフトも、フレックスに合わせて重量とキックポイントが変わるよう設計されています。フィッティングに力を入れているピンならではのラインアップといえますね。
重量を落とさずに振り抜きやすくなるカウンターバランスを採用。最も楽に振れるモデルですね
プロがそのままトーナメントで使用するほど完成度が高かったシャフトの後継モデル。重量帯によって特性を変えるなど、さらに細かい調整がされているようです
今回新たに誕生したハードヒッター向けモデル。重めの設定で、生半可なゴルファーでは扱えそうにないスペックです
前作で長く高い人気を誇ったのがこのFW(左)とハイブリッド(右)。今作もヒットするのは間違いなさそう
G430シリーズでは、ドライバーだけでなくFWやハイブリッドもしっかりと進化しています。FWは2モデルを用意し、どちらにもカーボンクラウンを採用しました。前作と比べて約10%も低重心化に成功しているのだとか。ハイブリッドにもカーボンクラウンを採用し、より上がりやすくミスに強い仕様に。これまた、長く売れ続ける予感がしますね。
ミスに非常に強いと、多くのゴルファーに支持されてきたピンのGシリーズのアイアン。今作は、ミスへの強さはそのままに、飛距離性能と打感を追求してきました。
「ピュアフレックス」ピンが呼ぶ、7つに分かれた新構造の衝撃吸収バッジをバックフェースに搭載。このバッジの効果によってスピンが減り、ボールの打ち出し角を高めることにも成功。この効果によってロフトを立てることができ、新設計フェースの効果と相まって、高い飛距離性能と理想的な弾道の高さを実現させているのだそうです。
ピュアフレックスと名付けられたバッジが今回のモデルのポイント!
前作よりフェースを薄くできたことにより、さらなる初速アップに成功。より楽に飛ばせるアイアンに仕上がっているようです
芯の真裏に5角形のカーボンが貼り付けられている、なかなか前衛的なデザイン
サイズは大きめなのですが、ヘッド形状は割りとすっきりしていて構えやすい
試打ブースにて、ちょっとだけ打たせてもらいました!
振ってみて違いを感じたのは打感ですね。“軽やかにはじく”といった感触で、確かに飛距離性能は上がっていそうです!
それぞれ2〜3球ずつですが、全モデルをざっと打たせてもらいました! ドライバーは打感が軽やかになり、爽快感が増した印象。小振りな「LST」は振り抜きがよく、打っていて気持ちよかったです。屋内での試打でしたが、打音は耳障りがよく、やや甲高い感じで好印象でした! 近いうちにいつもの試打レビューをお届けしますので、楽しみにしていてください!
この「G430」、店頭での試打は2022年10月12日開始で、発売日は同年11月11日とのことです!(一部スペック除く)。 非常に楽しみな製品がまたひとつ登場しましたね!
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。