オグさんです。今回はピン「G430 アイアン」の試打レポートをお届けいたします。
ピン「G430 アイアン」
「G」で始まるピンのクラブは、代々続く同社の主力ブランド。ワールドワイドに展開されており、日本はもちろん、本国アメリカや欧州でも高い人気を誇っています。人気の理由は、ミスへの強さにあります。ラインアップは、ドライバーからフェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンと用意されているのですが、そのどれもがミスヒットに対する寛容性が高く、ボールの直進性も高い設計なのです。
そのGシリーズの最新作が「G430」シリーズ。今作も以前の流れを汲み、ミスに強いクラブとして設計されています。ところが、ピンがG430シリーズに付けたキャッチコピーは「劇飛。」なるもの。ミスへの寛容性に加え、飛距離性能も強化したと言うのです!
歴代のGシリーズのアイアンは、ミスに強くボールが適度に上がり直進性が高い、いかにもやさしいアイアンとして設計されていました。「G430 アイアン」は、そこに飛距離性能を盛り込んだ、夢のようなアイアンに設計されているんだとか……!
果たしてその飛びやいかに!? クラブを見ていきましょう!!
金属の素材感をあえて残したボディに、アルミとカーボンを使用したバッジをバックフェースに搭載。独特の質感を持つ、カッコイイデザインだと思います
<カタログ記載のスペック>
ヘッド素材:ハイパー174ステンレススチール
ロフト:#5 22°/#6 25.5°/#7 29°/#8 33°/#9 37°/PW 41°
ヘッド素材にはステンレスを採用。変形、劣化しにくいため、長く使える製品と言えます。ロフトは7番で29°。昨今の飛び系アイアンには25°のものもありますので、驚くような数値ではありませんね。
バックフェースに装着された「ピュアフレックス」と呼ばれるバッジ。アルミとカーボンを使用し、7つのパーツを組み合わせた複雑な構造です。これにより、打感、ボール初速、打ち出し角、それぞれを向上させる効果があるのだとか
フェースは前作「G425 アイアン」と比べて、約3%薄肉化。フェース全面での初速アップと初速エリアの拡大に成功しています
トゥ側から見ると、かなり低重心に設計されているのがわかりますね。トゥについているビスは高比重ウェートです。ソールの幅は広めですが、段差のある形状によるヌケのよさも追求されています
ヘッドの分解モデルです。いわゆるポケットキャビティ構造ですね。ヘッド後方下部に、かなりの重さを集中させているのがわかります
「G430 アイアン」#5
「G430 アイアン」#7
「G430 アイアン」#9
ヘッドは意外とシャープな形状です。サイズは大きめなので、実際に構えるとプレッシャーはまったく感じません。長い番手ほどグースネックが強くなっており、どの番手も安定してボールをつかまえてくれそうです
ピンはフィッティングを自社で展開しているメーカーだけあって、多くのシャフトを用意しています。自社設計の純正シャフトだけでも、カーボン2種、スチール1種を用意。さらには、80、90、100、120、130g台のスチールを“標準で”用意しています。
純正シャフト3モデルは、フレックスに合わせて重量を変化させた凝った仕様。楽にプレーしたいという人であれば、純正の「ALTA J CB BLACKカーボン」がおすすめです。自分に合ったシャフトが欲しいと考えるなら、同社のフィッティングを受け、ベストな1本を見つけてもらいましょう。
G430シリーズには、アイアンに合わせたセットウェッジもしっかりと用意されています。このセットウェッジがとても秀逸! ミスヒットに強くオートマチックにボールを上げてくれ、とてもやさしいウェッジに仕上がっています。ウェッジが苦手な人には単品でオススメしたいぐらいです。
ロフトピッチもしっかり考えられ、45°、50°、54°、58°の4つのウェッジが揃います。ヘッドには数値が刻まれていますが、フィッティングなどでロフト、ライ角を調整して購入することもできます
セットウェッジ45°のヘッドです。意外といっては失礼ですが、バランスの取れた形状をしています。適度なグースネックにより、ボールもよくつかまりますね
セットウェッジは個人的にかなり気に入りました。オートマチックに打てるし、バラつきが少ない。45°のウェッジは、チッパー的な使い方もできましたよ
構えてみると、前作より形状がすっきりしたと感じました。形状だけ見れば、同社のアスリート向けモデルiシリーズに似ていて、結構シャープに見えます。それでもサイズは大きめなので安心感はばっちりです。
お借りした試打クラブは「NS PRO850GH neo」のSフレックスを装着したモデル。やや軽めですが、ミートしやすいシャフトです。ドライバーでのヘッドスピード38m/sぐらいをイメージして試打スタート。ピシッといったソリッドな打音を響かせ、ボールを楽に浮かせてくれます。
打感に関して、素材そのもののソリッドな感触はありますが、バックフェースに貼られたバッジの効果もあり、余計な振動が少なく、硬く嫌な感触は皆無です。7番でロフト29°とやや立ち気味な設定ですが、球の上がりやすさは申し分ありません。
放たれる弾道は直進性が高く、少々芯を外してもほとんど曲がりません。もともと、この「芯を外しても曲がらない」というのがGシリーズアイアン最大のセールスポイントだったのですが、今作はバラつきがさらに減った印象。特に、縦距離のバラつきが減った印象を受けました。
前作より立ったロフト設定にもかかわらず、楽に高さが出せるのはさすがのひとこと。性能を引き出すためのヘッドスピードは、ドライバーで35m/sもあれば十分でしょう
非常に深く掘られたポケットキャビティ構造。掃除はちょっと大変そう(笑)
ヘッドスピードを高めていくと、少しずつボールの高さが増し、飛距離が伸びていきます。同時にスピン量も増えるので、シャフトさえ合わせてしまえば上級者でも使えそうですね。
操作性は、まったくないとは言いませんが、ほとんどありません。ドロー、フェードは打ち分けられますが、その程度。そもそもそういったアイアンではないですからね。つかまり性能は、ちょっとだけつかまるといった具合。ボールを上手くつかまえられない人が打つと右方向に飛び出すことがあると思いますが、直進性が高くバラつきが少ないので、「難しいアイアン」という評価になることはないと思います。
7番のデータです。打ち出し角の高さに加え、スピンもしっかり入っているので、グリーンでしっかり止められますね。それでいてこの飛距離に、高い直進性。直線的にコースを攻めていきたい人にとっては、かなり魅力的なアイアンだと思います
「G430 アイアン」は、従来からのやさしさをしっかり継承し、キャッチコピー「激飛。」に恥じない飛距離性能を持っていました。ミスへの寛容性や飛距離だけでなく、見た目や打感、打音といったフィーリング面もしっかりと強化されているのはすばらしいと思います。
前作と比べると、ほぼあらゆる面で進化したと言えるでしょう。特に、上がりやすさやミスへの寛容性を犠牲にすることなく飛距離性能を高めてきたのは、特筆すべき点だと思います。
「とにかく曲げたくない」と考える人には強くおすすめしたいモデルですね。スピン量もしっかり入り、高さも出るので、上級者でも問題なく使えるはず。ユーザーを選ばない、この懐の深さややさしさが「G430 アイアン」の最大の魅力です!
写真:富士渓和春
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。