オグさんです。今回はスリクソン「ZX7 MkII アイアン」の試打レポートをお届けします。
スリクソン「ZX7 MkII アイアン」
「ZX MkII」シリーズは、松山英樹選手が2021年、マスターズを制したときに使用していた「ZX」の新シリーズ。快挙を成し遂げたブランドのイメージを色濃く残しつつ、さらに進化を遂げて登場しました。
「ZX MkII」シリーズのアイアンには「ZX4 MkII」「ZX5 MkII」「ZX7 MkII」がラインアップされており、それぞれがゴルファーの求めるニーズに合わせて作り込まれています。今回は、ダンロップセレクトショップ限定製品でもある「ZX7 MkII」を取り上げます。
外装には目立つカラーを使わず、モノトーンカラーのメッキを使ったシンプルなデザインを採用。飽きずに長く使えそうな仕上がりです
<カタログ記載のスペック>
ヘッド素材:(#3〜#7)軟鉄(S20C)+タングステンニッケル合金
(#8〜SW) 軟鉄(S20C)
ロフト:#5 25°/#6 28°/#7 32°/#8 36°/#9 41°/PW 46°
ツアープロやアスリートのニーズに合わせた、今では珍しい3番からのラインアップ。ヘッド素材に軟鉄を採用し、ロングアイアンからミドルアイアンには、重心位置を最適化するために比重の重いタングステンニッケル合金が内蔵されています。
ロフト設定は7番で32°と、アスリートモデルとしては標準的な設定です。
シャフトは、ダンロップが専用にチューニングした「ダイナミックゴールド D.S.T.」を採用。プロパー品よりもやや軽めに仕上げられ、キックポイントはやや中寄りに変更されています
ZX7 MkII アイアン・#5
ZX7 MkII アイアン・#7
ZX7 MkII アイアン・#9
7番までは、ブレードが直線的でシャープな印象を持たせ、ショートアイアンはブレードに少しだけ丸みを持たせることで、ボールを包み込むようなやさしいイメージを持たせる形状にデザインされています
ヒール側がやや高めにデザインされているのがスリクソンの伝統。素材に使われているS20Cと呼ばれる軟鉄は、カーボンの含有量が少なく、ソフトな打感をもたらします
アスリートモデルだけあり、極端な低重心設計になってはいません。グース具合も少なめです。「ZX MkII」シリーズで特徴的なのが、ソールの形状。ヒールとトゥ側を削って接地面積を減らすことで、ヘッドのヌケをよくしています
V字型にデザインされたソールは、バンスの効果を残しながら、ダウンブローアタック時の刺さり過ぎや、インパクト後のヘッドのつっかかりを軽減する工夫です
構えてみると、ダンロップらしいヒール側高めの端正な顔が目に入り、すんなりアドレスに入れます。ヘッドサイズは、やや小ぶりではありますが、適度なブレードの厚さが安心感を与えてくれるので不安感はありません。
お借りしたスペックは、「ダイナミックゴールド D.S.T.」のS200。いつものように、最初はドライバーでのヘッドスピード40m/s程度をイメージして打ってみました。アスリートご用達のダイナミックゴールドシャフトですが、プロパー品よりも軽く仕上げてあり、これぐらいのヘッドスピードでも問題なく振れます。
何発か打ってみると、ロフト角が寝た設定ということもあり、球の高さはしっかり出ます。そのぶん飛距離性能は高くはありませんが、必要にして十分。アイアンは狙うクラブですから。スピン量はしっかりとあり、ドロー/フェードは楽に打ち分けられます。それでいて、少々芯を外しても、飛距離ロスは少なめ。また、ドローを狙って、フェードやスライスになるといった逆球にもなりづらいのがとても気に入りました。
打感も秀逸です。芯でとらえると、余計な振動のない、非常にソフトで気持ちよい打感が味わえます。打っていて非常に楽しいですよ。芯を外すと、ちょっと感触が硬くなったように感じ、その振動がしっかり手に届きます。フェースのどの辺でヒットしたかといった情報もしっかりと感じ取れました。個人的には、上達にはこういう情報のフィードバックは必要不可欠だと考えています。
ヘッドスピードを高めても、基本的な印象は変わりませんでした。ヘッドスピードに応じてスピン量と飛距離が増えていき、コントロールショットもしやすい。ボールを操作したいと考えるゴルファーにも、できるだけ曲がりを抑えたいゴルファーにも受け入れられるであろう懐の深いクラブに仕上がっていますね。
芯で打ったときのご褒美のような打感は、何度でも味わいたくなります。芯でとらえられなかったときの振動や、感触による打点位置の情報。この2つは速やかな上達にとても有効だと私は思っています。これらを有しているのが、この「ZX7 MkII アイアン」なのです
7番のデータ。しっかりとした高さに多めのスピン量、そして十分な飛距離と、ほぼ理想の弾道です。かなり完成度が高いアイアンですね
「ZX7 MkII アイアン」は、アスリートモデルとして完成の域に達していると思います。打感、操作性、情報のフィードバック、ミスへの寛容性など、アイアンに求められる性能がバランスよく、そして高い水準で詰め込まれています。ツアープロや上級者には手放しでおすすめできますね。また、上達志向が高い初中級者にもおすすめしたいと思います。反対に、できるだけクラブに助けてもらいたい、楽にプレーしたいと考えるなら、ほかのモデルを選んだほうがよいでしょう。
ライバルモデルは、ミズノ「JPX923 ツアー」や、ブリヂストン「221CB」、タイトリスト「718CB」といったところ。どれも高い完成度なので、購入時は本気で悩むと思いますよ。
フィーリングがよくインパクトでの情報量の多いこういうアイアンを打つと、プロや上級者が好む理由が改めてわかるような気がします。打っていると、感触で自分の今の調子を教えてくれる感じがするのです。アイアンの技術を磨きたいなら、「ZX7 MkII」はおすすめです!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。