オグさんです。今回は、スリクソン「ZX4 MkII アイアン」の試打レポートをお届けします。
スリクソン「ZX4 MkII アイアン」
「ZX MkII」シリーズとは、松山英樹選手が、メジャータイトル「マスターズ」を制覇した2021年に使用していた「ZX」シリーズの後継に当たるブランド。ドライバー3モデル、フェアウェイウッド、ウッド型ユーティリティー、アイアン型ユーティリティー、そしてアイアン3モデルという充実のラインアップを誇り、ツアープロから中上級者まで幅広いゴルファーに対応しています。
「ZX MkII」シリーズのアイアンには「4」「5」「7」があり、それぞれがゴルファーの求めるニーズに合わせて作り込まれています。今回は「4」を詳しく見ていきましょう。
一見するとツアープロやアスリートに向けたモデルに見える端正な外観ですが、実は中空構造を採用しており、ミスに強いです
ヘッド素材
└ボディ:(#4〜#7)軟鉄(S20C)SUS431 +タングステンニッケル合金
(#8〜SW) SUS431
└フェース:HT1770M
ヘッド製法:フェース 鍛造/ボディ ロストワックス精密鋳造
ロフト:#5 23°/#6 25.5°/#7 28.5°/#8 33°/#9 38°/PW 43°
ボディは軟鉄製ですが、フェースには通称“バネ鋼”と呼ばれるステンレス素材を使用。中空構造で、低く深い重心を追求することで、7番で28.5°と立ったロフト設定でも、ボールの高さが出せるように設計されています。
シャフトは、純正として三菱ケミカル製の60g台の軽量カーボン「Diamana(ディアマナ) ZX-II for IRON」を用意し、2023年4月には、日本シャフト製の90g台のスチール「NS PRO 950GH neo DST」が追加される予定です。「ディアマナ」は、適度なしっかり感があってミートしやすいため、エンジョイゴルファーにピッタリのシャフトです。
「ディアマナ」は一時期ツアープロが多く使用していたため、ハードなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、まったくそんなことはなく、とても振りやすいです。ドライバー用のカスタムシャフトも同様です
ZX4 MkII アイアン・#5
ZX4 MkII アイアン・#7
ZX4 MkII アイアン・#9
「ZX MKII」シリーズ中、ヘッドサイズとグース度合が最も大きい「4」ですが、形状には共通点が多くあります。ミドルアイアンまではブレードをまっすぐにしてシャープさを演出。ショートアイアンはブレードにやや丸みを持たせ、ボールを包み込むような形状にデザインされています
フェース裏のトゥ側と上部に溝を彫り、中央部の肉厚においてトゥ側にいくほど厚さを持たせた「スピードグルーヴ」と呼ばれるテクノロジーを採用。これにより、フェースのたわみを最大化させ、反発性能を向上させています
トゥ側から見たシルエットは比較的シャープです。このへんは、スリクソンブランドの一員であることを主張しているように思います
V字型にデザインされた「新・ツアーVTソール」。バンスの効果を残しながら、ダウンブローアタック時の刺さりすぎや、インパクト後のヘッドのつっかかりを軽減する工夫です
構えた印象は、きれいなのにやさしそう! スリクソン伝統の、ヒールがやや高いカチッとした顔でありながら、ちょっと大きめのヘッドにグースネックを採用しており、構えやすさと安心感をうまく両立しています。
お借りしたスペックは、純正「ディアマナ」カーボンのSフレックスです。ドライバーでのヘッドスピード38m/sぐらいをイメージして試打スタート。このくらいのヘッドスピードでもしっかりと高さが出るため、とてもリラックスして打つことができました。打ち出した方向にドーンとまっすぐ飛んでいってくれる直進性の高さが魅力です。
バネ鋼フェースと中空構造の合わせ技の効果がガッツリ発揮されている感じで、少々芯を外しても、ほとんど弾道に差がないですね。ちょっと初速が落ちたかな?と言った程度です。ちょっと意外だったのが、つかまりがよいこと。スリクソンブランドなので、つかまり具合はニュートラルぐらいを想像していたのですが、自然とボールがつかまってくれます。これにはシャフトの影響もありますので、スチールシャフト装着モデルが出たら改めて試したいところです。
サラッと振ってキャリーが出せるのは、パワーがないゴルファーがとてもやさしいと感じられる部分だと思います
打感はカチッとした感触で、ソリッドではありますが、嫌な振動はなく心地よいです。このへんは、スリクソンならではですね。
ヘッドスピードを高めていくと弾道がさらに高くなり、キャリーが伸びていきます。スピン量はやや少なめなので、振れば振るほど距離につながりそうではありますが、弾道に高さがあるため、ある程度はグリーンで止められそう。
操作性はほとんどないと言ってよいでしょう。曲げようと思えば曲がってはくれますが、コントロールするのがちょっと困難です。無理に曲げようとするより、直進性の高さを生かしてグリーンを狙ったほうが、確実によい結果につながるアイアンですね。
バランスのよい形状なので気になりませんが、フェース長は割と長めです。このへんが直進性の高さに好影響を与えているのでしょう
7番で気持ちよく振ったデータです。ロフトが立っていないアスリート向けアイアン並みの高さを出しつつ、サイドスピンの少ない直進性の高い弾道が打てています。曲げたくない人にはピッタリ!
「ZX4 MkII アイアン」は、アスリートブランドらしからぬミスへの強さと直進性を実現しながら、アスリートブランドらしく“狙える”アイアンに仕上がっていました。さすがに、全日本クラスの競技コンディションでは難しいとは思いますが、そこそこ締められたグリーンでもしっかりと止められる高さを確保し、曲がりの少ない安定した弾道が打てる性能は、幅広いゴルファーによい結果をもたらせてくれると思います。
ライバルモデルは、ミズノ「JPX923ホットメタルPRO」、キャロウェイ「ローグST MAX」、ピン「G430」、テーラーメイド「ステルス」といったところでしょうか。個人的には、飛距離と弾道の高さのバランスが気に入りました。高さが出ないことで悩んでいる人にはぜひ試してもらいたいモデルです。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。