オグさんです! 今回はテーラーメイド「ステルス2」シリーズで、個人的に最も注目している「ステルス2 HD ドライバー」の試打レポートをお届けします。
「ステルス2 HD ドライバー」
「ステルス2」シリーズは、ドライバーのフェースにカーボン素材を採用し、大きな話題となった「ステルス」シリーズの後継モデルです。そのカーボンフェースは踏襲しつつ、テーラーメイドらしく今作でもさまざまな点が改良され、進化しています。
「ステルス2」シリーズのコンセプトは、「FARGIVENESS(ファーギブネス)」。飛距離を表す「FAR」と、ミスへの寛容性を表す「FORGIVENESS」をかけ合わせた造語で、飛距離とミスへの寛容性を両立したことを強くアピールしています。
「ステルス2」シリーズのドライバーの、前作からの進化点は主に3つ。
●60層の「カーボンツイストフェース」の改良
●ヘッドを構成するカーボン使用量の拡大
●打音、打感の向上
「カーボンツイストフェース」は、基本設計は前作同様ですが、2種類のカーボンシートの使用枚数や順番などを見直すことで、2gの軽量化に成功しています。前作のヘッドはソールにはチタンを、フェースとクラウンにはカーボンを採用していましたが、今作ではソールやヘッドの輪郭を支えるフレーム部分もカーボン化。チタン素材は、ネックからフェース周りの部分と、ソール後方のウェイト装着部分だけの採用となり、テーラーメイドで初めて「ボディの素材容量においてカーボンがチタンを上回った」そうです。
ヘッド構造が大きく変わったこともあり、打音や打感の調整も改めて実施。一般的なチタンとは異なるカーボンフェースであることをまったく感じさせない、自然で心地よい打音、打感になりました。詳しくは、発表会レポートで説明しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
「ステルス2 HD」の「HD」は「ハイドロー」の意。シリーズ中、最も上がりやすくつかまりやすい仕様です。世界最高峰のツアープロがこぞって使うシリーズの中において、アマチュアゴルファーが使えそうなモデルということもあり、注目度も高いドライバーです。
同シリーズの「ステルス2 ドライバー」はすでにレビューしておりますので、下記をご覧ください。「ステルス2 プラス ドライバー」も近日レビューする予定ですので、そちらもお楽しみに!
シリーズ中、赤いカラーを最も多く使ったデザインが目を引きますね。基本的なデザインは同じですが、ウェイトがフェース側のヒール寄りに装着されているため、「ステルス2 HD」だとひと目でわかります
ヘッド形状は、シリーズのほかのモデルと比べるとヒール側に若干ボリュームがあり、つかまりやすそうな印象を与えてくれます。前作「ステルス」からの変更で、クラウンがグロス仕上げになったことで、重々しさも軽減されました
フェースの赤いカラーは、前作と比べて若干明るさが増しています。形状としてはヘッド後方が高いディープバックですが、低く深い位置に30gものウェイトを搭載しているため、いい意味で形状と性能が一致していません
●ヘッド素材
ボディ:チタンフレームボディ [9-1-1 ti] + 6層カーボンクラウン + 9層カーボンソール + 特殊強化カーボンコンポジットリング + フロントTSSウェイト
フェース:新60層カーボンツイストフェース + PUカバー
●ヘッド体積:460cc●ロフト角(°):9,10.5,12(左用は9,10.5)
●ライ角(°):58〜62
●標準クラブ長:45.5インチ
●クラブ重量:約303g(TENSEI RED TM50 S 装着時)
スペック上では大きな違いはありませんが、ほかの2モデルと大きく異なる点があります。それは、クラブの長さとライ角です。「ステルス2 HD」は標準で45.5インチですが、ほかのモデルは45.75インチ。これは、シャフトの長さで調整しているのではなく、ネックの長さ、つまりヘッド側が短くなっています。
「ステルス2 ドライバー」から脱着したシャフトをそのまま「ステルス2 HD」に付けると、自然と0.25インチ短くなります。短くなることで振り切りやすさがアップするので、より扱いやすくなるのです。
ライ角は、3モデル中最もアップライトな設定。前作はどのモデルも56°でしたから、2°アップライトになりました。前作の「HD」と比べると今作の「ステルス2 HD」は、0.25インチ短く、2°アップライトになり、スペックだけ見ても自然とつかまる仕様になったことがわかりますね。
用意されているシャフトは、「ステルス2 ドライバー」にも使用されている三菱ケミカル製「TENSEI RED TM50」。フレックスはR、SR、Sと用意され、基本的な特性は、極端な動きをしない中調子。フレックスの差が割りとしっかりつけられており、Rは楽にスイングしやすく、Sはそれなりに強振してもつぶれすぎません。カスタムシャフトと比べると若干ですが動きは大きいので、物足りないと感じる人はカスタムシャフトモデルを検討するとよいでしょう。
「ステルス2 ドライバー」と「ステルス2 HD」に共通で使われている「TENSEI RED TM50」。よくも悪くも無難なシャフトといった印象。ヘッドの個性が強いので、ちょうどよいのかもしれません
ここで、兄弟モデル「ステルス2 ドライバー」との違いを見てみましょう。ソールでの大きな違いは、フェース側に装着されているウェイトの位置。「ステルス2 ドライバー」は、ヒール寄りではありますが、フェースの中央寄りに配置されています。対して「ステルス2 HD」は、かなりヒール側に装着されていますね。これは、つかまり性能の違いによるものです。ヒール寄りにウェイトを装着すると重心距離が短くなり、ヘッドを小さい力でターンさせやすくなります。つまり、ウェイトがヒール側にあるほど、つかまり性能が高いということなのです。
左が「ステルス2 HD」で、右が「ステルス2」。並べて見るとウェイト位置の違いが一目瞭然です
また、上記のスペックのところでも触れましたが、「ステルス2 ドライバー」に比べて「ステルス2 HD」は0.25インチ短く設計されています。短くすることで振り切りやすさをアップさせ、ボールのつかまりやミート率を向上させようという狙いがあるのでしょう。
この長さの違いを、シャフトの仕上げではなく“ヘッド側”で行ったことが、個人的には非常に凝ったことをしていると感じました。シャフトとヘッドを簡単に脱着できるシステムを持つテーラーメイドだからこそ、ヘッド側での調整にこだわったのだと思います。
左が「ステルス2」で、右が「ステルス2 HD」。こんな微々たる長さの違いでも、ショットに現れる変化は意外と大きいものです。意識しないとわからないかもしれませんが、飛球の結果は大きく変わってきます
「ステルス2 ドライバー」のライ角は56°で、対する「ステルス2 HD」は58°と、2°差があります。ライ角は大きいほどヘッドがターンしやすくなり、ボールがつかまりやすくなりますので、つかまり性能を上げたい「ステルス2 HD」がよりアップライトになったのは自然な流れですね。むしろ前作では、同じライ角と長さでモデル間の違いを出そうとしていたため、差を感じにくかったのかもしれません。
微妙ですが、左の「ステルス2 HD」のほうが、シャフトが若干立っているのがおわかりになると思います。ライ角はつかまりに対する影響が大きいので、差が2°でも結構違いが出るのです
構えた印象は、前作と比べて安心感があるというか、気負わなくて済むようになりましたね。フェースの面が見やすくなり、つやっとした光を放つクラウンが自然と力みを取り除いてくれます。前作が重々しいマット仕上げだったので、その違いですかね。
つかまり仕様ということなのでフックフェースなのかと思っていましたが、さすがはアスリートブランド。シリーズのほかのモデルと比べると、若干フックフェースになっているとは思いますが、全然気になりませんでした。
ヘッドスピード38m/s程度で試打スタート。お借りしたスペックは、純正「TENSEI」のSフレックス、ロフトは9°です。何球か打ってみて、兄弟モデルと明らかに違いを感じた部分が、振り抜きのよさ。たった0.25インチの違いですが、「ステルス2 HD」のほうが明らかに振り抜けます。
飛んでいく球は中弾道で、「ステルス2 ドライバー」との差は感じられないライナー性のもの。それでいてしっかりとボールをつかまえてくれるので、飛距離が安定して出る弾道が打てます。
つかまり具合は、ストレートを意識して打つと強めのドロー、くらいのバイアスでしょうか。フックまではいかないので、大きめのスライスでお悩みの人が使うと、フェードくらいにはなりそうです。
「ステルス2」シリーズの3モデル中、ダントツで振り抜けるのがこの「ステルス2 HD」。左のミスを嫌がる人には使いづらいかもしれませんが、ミート率を高めたいなら、かなりよいドライバーだと思います
ヘッドスピードを高めていくと、つかまり具合がやや高まる感じがあります。シャフトの挙動による部分もあるかと思いますが、ヘッドスピードが高めの人はカスタムシャフトを選択したほうが弾道は安定すると思います。
シリーズのほかの2モデルと比較すると、若干ですがスピン量は多くなる傾向がありました。とはいえスピン過多とまではいかないので、安定した飛ぶ弾道を十分に打てるヘッドです。
極寒の中、気合を入れて打ったデータです。ちょっとトゥ側でのインパクトだったのですが、大きいフックにはなりませんでした。もうちょっと右に打ち出せていれば、最高でしたね。ヘッドの挙動はとても気持ちよいので、シャフトを合わせて打ってみたいです
「ステルス2 HD ドライバー」は、シリーズ中、前作「ステルス」から最も進化したモデルと言ってよいと思います。前作の強弾道を引き継ぎ、ミスへの寛容性を高めたうえ、自然につかまって上がるドライバーに仕上がっています。個人的には、弾道調整機能とカスタムシャフトを使って、“ちょっとつかまりをおさえたHD”を作ってみたいと思いました。
「ステルス2 ドライバー」との差異は結構感じましたね。振り抜きのよさ、つかまり具合、上がりやすさ、このへんは、「ステルス2 HD」のほうがすぐれています。球質は大きくは変わらないので、一般的なアマチュアゴルファーには「ステルス2 HD」のほうが間違いなくよいでしょう。ある程度のヘッドスピードがあって、左のミスを抑えたい人は、「ステルス2 ドライバー」ですね。
ライバルモデルは、キャロウェイ「パラダイムX」、スリクソン「ZX5 MkII」 、ブリヂストン「B2」あたり。
アスリートモデルの強弾道を持ちながら、適度なつかまり性能を持つモデルが最近増えてきました。クラブより腕を磨かなきゃ!と思っている人にはぜひこういったモデルを打ってもらいたいですね。そして1発飛ばしてもらい、練習の成果と合わせ、飛距離とスコア、両方の向上を手にしてもらいたいものです。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。