オグさんです。今回はテーラーメイドの「ステルス2 」シリーズ全体に関しての試打レビューをお送りします。
「ステルス2」フェアウェイウッド(左)と「ステルス2 レスキュー」(右)
アマチュアゴルファーにとって最も関心があり、買い替えの需要も高いクラブがドライバーです。自分にとってよい結果をもたらすドライバーが手に入ったあと、それに合わせたフェアウェイウッド(以下、FW)やユーティリティー(以下、UT)、アイアンがあるなら、必然的に欲しくなりますよね。メーカーも、ユーザーのこのような声を認識しており、ドライバー・FW・UT・アイアンまで、同じコンセプトで設計したラインアップを用意しています。
ひと昔前は、1ブランドで、ドライバー、FW、UT、アイアンが1モデルずつ用意されるのが基本でした。しかしここ10年ほど、同一ブランドのなかで複数のモデルが用意されることが多くなり(たとえば「ステルス2」ブランドには、「ステルス2」と「ステルス2 HD」「ステルス2 プラス」の3シリーズがある)、あるブランドはドライバーからアイアンまで揃っているけれど、一部のブランドはドライバーのみとか、ドライバーとFWがあるといった、言わば虫食いのラインアップでした。
しかし、次第にドライバーなどを購入したユーザーから「ドライバーに合わせてUTやアイアンが欲しいが、どれを買えばよいのかわからない」といった声が上がり始め、今回の「ステルス2」シリーズ全般のように、ドライバーのモデル数に合わせてFW、UTをラインアップすることが増えてきています。
本連載の別記事では「ステルス2 HD」シリーズのFW、レスキュー(UT)、アイアンのレビューをお送りしましたが、今回は「ステルス2」シリーズについて、FW、レスキュー、アイアンのレビューをお送りします。
改めて説明すると、「ステルス2」を冠するシリーズには、スタンダードな「ステルス2」、つかまり性能とボールの上がりやすさを強化した「ステルス2 HD」、そしてつかまりとスピン性能を抑えた「ステルス2 プラス」の3つが存在します。基本的には、同じテクノロジーとコンセプトのデザインで仕上げられてはいるのですが、ターゲットとなるゴルファーが下記のようにそれぞれ明確に分けられています。
「ステルス2HD」:初中級者に多い、ボールをつかまえる技術があまり身についていないゴルファー。
「ステルス2」:ある程度ボールをつかまえる技術を有した中級者から上級者、ツアープロ。
「ステルス2 プラス」:ボールをつかまえる技術を持った上級者やツアープロが、より高いパフォーマンスを発揮するためのシリーズ。
飛距離の欲しい番手には硬度の高い素材をフェースに使用するなど、番手ごとに作り方が異なるという、凝ったFWです。テーラーメイド独自のテクノロジーがふんだんに使用されており、高い飛距離性能を追求しながら、打点のミスにも強いのが特徴です。
黒を基調に、赤を差し色に使ったシリーズ共通のデザイン。メカニカルな雰囲気があってまとまりもよいカッコよさがあります
トゥ側とヘッド後方にやわらかな角があるヘッドシェイプ。投影面積も適度で、構えやすさと安心感を両立しています。フェースには適度な厚さがありますが、ヘッド後方が低くなったシャローバック形状によりボールは上がりやすそうですね
●ヘッド素材 / フェース素材
#3・#3HL:ステンレススチール [450SS] + 3Dカーボンクラウン
/ マレージング鋼 [C300]
#5・#7・#9:ステンレススチール [450SS] + 3Dカーボンクラウン
/ ステンレススチール [450SS]
●ロフト角(°):#3 15/#3HL 16.5/#5 18/#7 21#9 24
飛距離が欲しい「#3」と「#3HL」は、フェースに高度のあるマレージング鋼を採用して飛距離性能を高めています。番手のラインアップは、カスタムモデル限定ではありますが、前作「ステルス」になかった「#9」が追加され、ゴルファーのより幅広いニーズに対応できるようになりました。
シャフトのラインアップは、純正シャフトの三菱ケミカル製「TENSEI RED TM50」
をメインに、カスタムモデルとして、グラファイトデザイン「TOUR-AD CQ-6」、三菱ケミカル「ディアマナGT 60」、フジクラ「スピーダーNX GREEN 60」を用意。このラインアップは、基本的にドライバーと揃えており、ドライバーのシャフトに合わせて選べます。
シャフトの好みが明確になっていないなら純正「TENSEI」がおすすめです。ドライバーのシャフトをカスタムモデルにしているなら、基本的にドライバーと揃えたほうがミート率は高めやすくなるでしょう。
また、ドライバーのシャフトの重量よりも軽いシャフトをFWに選んでしまうと、振り心地が変わってしまい、ミート率が低下しやすいので、同じモデルでなくともドライバーと同じ重量帯を選ぶことをおすすめします。
適度なしなりとクセのない挙動を持つ純正シャフト「TENSEI RED TM50」。ドライバーにも同じモデルが用意されているので、ドライバーと揃えるとミスの軽減につながります
お借りしたのは、#3の純正「TENSEI」Sフレックス装着モデル。丸みを帯びた三角形のヘッドは、目標に構えやすく、ほぼスクエアなフェースと相まって中・上級者に好まれそう。
ドライバー換算のヘッドスピード38m/s程度で打ってみると、#3らしいロフトなりの高さで、適度なスピン量をともなう弾道が自然と打てます。打点のミスにも強く、前作「ステルス」と比較すると、安定感がかなり増した印象。打点のミスに強くなったにもかかわらず、操作性はアップしている感じを受けました。
ヘッドスピードを高めると、打ち出し角が高くなり、やさしさをより実感しました。スピン量はヘッドスピードを高めても増える印象はなく、ヘッドスピードが高いゴルファーほど、扱いやすいと感じるでしょう。
つかまり性能はニュートラルですが、スイングがある程度安定していれば、一定の弾道を打ちやすく、十分使えるはず。トータルバランスのすぐれたFWに仕上がっています。
アスリートモデルでありながら、扱いやすさを手に入れた仕上がりで、バランスがよいFWです。打感ははじき感があり、気持ちよかったです
「レスキュー」とは、テーラーメイドがUTに使う伝統的な呼称。その名のとおり、アマチュアが苦手とするロングアイアンなどに代わる用途を想定し、ミスに強いクラブとして設計されています。
デザインはシリーズ共通。FWをそのまま小さくしたような仕上がりです
●ヘッド素材 / フェース素材
ステンレススチール [450SS] + カーボンクラウン / ステンレススチール [450SS]
●ロフト角(°):#3 19/#4 22/#5 25/#6 28/#7 31
「ステルス2 FW」の5番以下と同じ素材を使用し、飛距離性能や上がりやすさなどを追求した構造。レスキューにもカスタムメイドクラブ限定ではありますが、前作にラインアップされていなかった「#7」が追加されています。こういった部分は、ユーザーにとってとてもありがたいことだと思います。
FWの奥行を狭くしたようなヘッドシェイプは、FWとの共通項を多く持つ形状。シリーズで揃えたときには顔のつながりがよいと感じるはずで、構えたときの違和感をなくしてくれます
シャフトは、ドライバーやFWに用意されている純正の「TENSEI」シリーズと共通の「TENSEI RED」を標準装備。レスキューへの搭載に合わせ、重量アップなど専用のチューニングが施されています
お借りしたスペックは、純正「TENSEI」Sフレックスの#4(22°)。いかにもウッド型のUTといった形状で、FWと同じように構えられます。FWを苦手としていないゴルファーにとって、違和感はまったくないでしょう。フェースもヘッドも黒いので、セットアップしやすいようにフェース上部にレーザーでサイトラインが彫られており、より構えやすくなりました。FWにも同様のあしらいが施されています。
ドライバーで38m/s程度のヘッドスピードで試打すると、楽に高さが出て適度につかまります。一般的にUTはロフトのある番手ほどつかまりやすい傾向がありますが、このモデルは無理にそれを軽減しようとせず、自然とつかまる仕上がりです。打点ミスへの強さはかなり高く、少々芯を外してもしっかりと高く上がり、ボールをつかまえてくれますね。
ヘッドスピードを上げていくと、高いつかまり性能の効果でやや左に飛び出すことが多かったですね。安定して飛ばしてくれるぶん、左のミスを嫌がる人にとってはちょっと使いづらいかもしれません。オートマチックにつかまえてくれることでミスに強い、レスキューの名に恥じないUTに仕上がっています。
安定したつかまりは、このレスキューの特徴のひとつ。UTにやさしさを求めている人にはぜひ試してもらいたいモデルです
しっかりとつかまった弾道が打てていますね。リシャフトなど、使い手仕様に調整すればつかまりも抑えられるはずなので、左へのミスを抑えたいゴルファーでも使えるヘッドです
「ステルス アイアン」は、前作の「ステルス」シリーズと同時に発表されたアイアンです。これが2023年も継続販売されるため、ネーミングに「2」の文字はありませんが、「ステルス2」シリーズのアイアンはこれになります。直進性と打点のミスへの強さを高めつつ、飛距離性能まで磨いた、かなり欲張りなモデルです。
ウッド系とは異なり、派手なカラーを使わない落ち着いたデザイン。シンプルで飽きのこない外観に仕上がっています
●ヘッド素材 / フェース素材
#5〜#8:ステンレススチール [450SS] (鋳造)
#9〜AW:ステンレススチール [17-4SS] (鋳造)
SW:ステンレススチール [431SS] (鋳造)
●ロフト角(°):#5 21/#6 24/#7 28/#8 32/#9 37/PW 43/AW 49/SW 54
飛距離が欲しい番手と狙いたい番手で、フェース素材を使い分けています。ロフト構成は7番で28°と、かなり飛距離を意識した設定。アスリート向けと言うよりは、アベレージゴルファーがアイアンに求めるニーズに合わせた設計です。
トップブレードはやや厚めですが、全体的なシェイプはスマートに仕上げられており、形状にこだわるゴルファーも満足できるよい顔です。トゥ側の金属部分を削り、軽量なポリマーでふさぐ「トゥラップテクノロジー」など、独自のテクノロジーが数多く搭載されています
注目のモデルとしてすでにレビューをしていますが、簡単に表現すれば、ミスに強く、飛距離性能も高いアイアンです。それでいて形状もうまくまとまっており、かなりの完成度でまとまっていると感じました。
打感は、ポリマーを内蔵した中空アイアンとは思えないほどソフトな感触で、打っていて気持ちよい。操作性を求めないゴルファーであれば、満足度は高いはずです。
詳しくはこちらをご覧ください。
「ステルス2」シリーズは、上達意欲の強い中級者から、上級者、果てはツアープロまで、幅広いゴルファーにおすすめできるシリーズです。「ステルス2 HD」シリーズは一貫したつかまりとやさしさを持っていますが、「ステルス2」シリーズはFW、UT、アイアンそれぞれが各ジャンルに対するユーザーニーズに合わせた特性を持っている印象です。あらゆるミスが出るゴルファーには「ステルス2 HD」シリーズ、ある程度スイングが固まってきたら「ステルス2」シリーズをセットで使うと、ミスが軽減できそうです。
「ステルス2」シリーズのライバルシリーズは、キャロウェイ「パラダイム」シリーズですね。ターゲットとしているゴルファーもほぼ同じでしょう。それぞれUTとアイアンが、ミスへの強さを重視している点も同じですね。そのほか、コンセプトはややズレますが、スリクソン「ZX5 MkII」シリーズもライバルと言えると思います。
前作「ステルス」シリーズのウッド系はかなりのアスリート志向だったのに対して、「ステルス2」シリーズは寛容性を増し、それほどヘッドスピードがなくても扱えるシリーズに進化しました。前作を試打してあきらめた人でも先入観を持たず、ぜひ試してもらいたい仕上がりですね。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。