キャンプ中にハンドドリップで本格的なコーヒーを淹れたいけれど、道具がかさばるからと諦めている人に「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」を紹介したい! 本製品は、コーヒー器具メーカーのハリオが2021年に立ち上げたアウトドア向けのコーヒー器具ブランド「Zebrang(ゼブラン)」シリーズから登場した、ポケットに入るくらいのサイズに収納できるドリッパーです。今回は、“お湯を注ぎ入れるだけでコーヒーを淹れる適温になる”同ブランドの「計量ドリップポット Zebrang」も一緒に使って、その実力をチェックしました。
「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」は、ハリオが誇る世界75か国以上の国や地域のバリスタに愛用されているドリッパー「V60」をアウトドアでも気軽に使えるようにしたもの。ドリッパー部にシリコーンを採用し、分解してコンパクトにまとめられるようにしたのがポイントです。ちなみに、「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」は2代目モデル。2021年10月に「V60フラットドリッパー Zebrang」として発売した後、2022年6月に細かい部分を改良し、「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」(以下、V60フラットドリッパー)に生まれ変わりました。
アウトドア用に開発されたコーヒードリッパー「V60フラットドリッパー」。使用時のサイズは、ドリッパー部が約120(直径)×85(高さ)mm、ホルダー部が130(幅)×75(奥行)×15(高さ)mmです
ベースとなった「V60」と並べてみました。持ち手やホルダーの形状は異なりますが、ドリッパー部は「V60」とほぼ同じ。どちらも1〜4杯用の「02」サイズです
ドリッパー部にシリコーン素材、ホルダー部にポリプロピレンを採用しているのが、「V60」との大きな違い。ドリッパー部は指でつまむと簡単にゆがむほどやわらかです
素材がやわらかいだけでなく、「V60フラットドリッパー」はこのように分解できます
展開したドリッパーをまるめ、ホルダーで固定すればコンパクトに収納できます。収納時のサイズは実測で約132(直径)×125(長さ)mm。ポケットに入るサイズ感なのでかさばりませんし、重量も約68gと軽いので楽に持ち運べます
使用時にドリッパーを組み立てるのも簡単。ドリッパー部を円すい状に巻き、ボタンで留めます
ドリッパーの下部にホルダーを差し込み、三角のマークが付いたボタンがホルダーの切れ目にピタッと合う位置(↓の部分)までスライドさせます(左写真)。その後、全体を逆側に向け、右写真のように、ホルダーの下にボタンを出したら組み立て完了
実は、2022年6月のリニューアルで変わったのが、組み立ての手順の最後に出てきたボタンの有無。この小さなボタンを備えたことで、新モデルは組み立てたときにドリッパー部を水平に固定できるようになりました
テーブルなどに置いた際、ホルダー部がドリッパー部から外れなくなったのもボタンの効果。小さな改良点ですが、使い勝手は格段によくなりました
「V60フラットドリッパー」だけでなく、アウトドア向けのドリッパーの中には分解したり、折りたたんだりしてコンパクトに収納できる製品もありますが、抽出にまでこだわっているものは多くありません。その点、「V60フラットドリッパー」は、「V60」と同じスパイラルリブを備えており、「V60」と同レベルの本格的なコーヒーを淹れられます。
大きなひとつ穴に、独自の渦巻き状のリブ(線状の突起)を備えているのは「V60」と同じ。この構造は、リニューアル前のモデルも同じです
リブは「スパイラルリブ」と呼ばれるハリオ独自の形状。ペーパーフィルターとドリッパーが密着することを防ぎ、お湯を注いだときに発生するガスの抜けをよくすることで、コーヒー成分をしっかりと抽出します。そして大きなひとつ穴は、速く注げばスッキリとした味わいに、ゆっくり注げばコクのある味わいになるというように、お湯の注ぎ方でコーヒーの味を変えるためのキモとなる部分。このように、「V60フラットドリッパー」は世界が認める「V60」の特徴がきちんと再現されています。
続いて、ハンドドリップでコーヒーを淹れる際に必要なポットを紹介。今回使用する「計量ドリップポット Zebrang」は、ポットにお湯を注ぎ入れるだけでコーヒーを淹れるのに適した湯温に調整されるのが特徴です。
サイズは約177(幅)×78(奥行)×128(高さ)mm、重量は約98g。欧米では哺乳瓶にも使われる、丈夫で耐熱性や安全性の高い素材「PCT樹脂」を採用しています
ハンドドリップでおいしいコーヒーを淹れるには、注ぐお湯の細さや動かし方のほか、お湯の量や温度も重要です。自宅であれば、温度計で湯温を測ったり、注ぐ湯量をスケールで計ったりできますが、それをアウトドアでやるのは少々面倒。そんな手間がかからないのが「計量ドリップポット Zebrang」のすぐれたところです。目盛りが付いているので、湯量を計るのは容易。そして、沸騰したお湯を「計量ドリップポット Zebrang」に入れれば、コーヒーを淹れるのによいとされる93度前後の湯温に自然と下がるのです。気温やポット自体の温度に影響を受けるため、必ず93度になるというものではありませんが、おおよそ93度前後になるとのこと。もちろん、湯量の調整がしやすいように、注ぎ口は細口仕様を採用しています。
刻まれている目盛りは300mlまでですが、「Zebrang」という文字の下端が350mlラインなので350mlまで計量できます
ただし、ボディの色が濃いため、注ぎ入れたお湯の水面が見えにくいのがネック。順光では写真のように読み取るのが難しいです
中のお湯がよく見えるように、計量するときは逆光になる位置に「計量ドリップポット Zebrang」を置くことをおすすめします
注ぎ口は、お湯を細く注げる細口仕様。注ぎたい位置へ静かにお湯を注げます
ちなみに、「計量ドリップポット Zebrang」の中に「V60フラットドリッパー」を入れて収納することも可能
では実際に、コーヒーを淹れてみましょう。ハリオは、「V60フラットドリッパー」でコーヒー1杯を淹れる場合、コーヒー粉12gに対してお湯170ml(コーヒー粉:注ぐお湯=1:14)を推奨しています。せっかくなので、この割合でコーヒーを淹れたのですが、「計量ドリップポット Zebrang」に記されている目盛りは50ml単位。170mlという湯量は正確には計れません。そこで、ハリオが推奨するコーヒーとお湯の比率「1:14」を参考に算出。コーヒー1杯は「コーヒー粉11g、お湯150ml」という割合で上手に淹れられそうです。
「V60フラットドリッパー」と「計量ドリップポット Zebrang」のほか、ペーパーフィルター、コーヒー粉、計量スプーン、マグカップ、湯を沸かすためのシングルバーナーとクッカーを用意。「計量ドリップポット Zebrang」の湯温を計測するため、温度計も準備しました
今回は2杯分のコーヒーを淹れたいので、「コーヒー粉22g、お湯300ml」で抽出します。
「V60フラットドリッパー」にペーパーフィルターをセットし、コーヒー粉を22g入れます。コーヒー粉を入れたら、ドリッパーを軽く揺すってコーヒー粉を平らにならしておきましょう。こうすることで、抽出ムラが防げます。ちなみに、リニューアル前のモデルでこの作業を行うときは、ホルダー部とドリッパー部の固定が甘いため、ドリッパー部が動かないように気を付けなければなりませんでした
「V60フラットドリッパー」をマグカップにセット
通常の「V60」と比べると「V60フラットドリッパー」のホルダー部は小さめなので、マグカップに載せにくそうなイメージがありましたが、ホルダー部の裏側に小さな突起が設けられているのでズリ落ちる心配はありません
コーヒー粉の準備をするのと同時に、シングルバーナーで沸かしておいたお湯を「計量ドリップポット Zebrang」に注ぎます。お湯は必ず沸騰するまで加熱してください
「計量ドリップポット Zebrang」に注いだ直後のお湯の温度は93.1度。外気温約20度の状況下では、ほぼ理想の湯温でした
お湯が適温なうちに、抽出しちゃいましょう。コーヒー粉の中央にお湯を注ぎます。少し傾けるだけで細くお湯を注げるので、一度に大量のお湯が入らないようにコントロールしやすい!
コーヒー粉全体にお湯が行き渡って粉が膨らんだら、30秒間蒸らします
蒸らし終えたら、中心に「の」の字を書くように3回に分けてお湯を注ぎます
すべてのお湯を注ぎ終えたら、「V60フラットドリッパー」を取り外します。ホルダー部とドリッパー部がしっかり固定されているので、持ち上げた際の安定感も問題なし!
抽出したコーヒーを飲んでみると、スッキリとしていながらコクのある味わい。筆者は普段、通常の「V60」を使ってハンドドリップしていますが、「V60フラットドリッパー」で淹れたコーヒーの味や香りは「V60」で淹れたものと同じでした
淹れたコーヒーに不満はまったくありませんが、「計量ドリップポット Zebrang」でお湯を注いでいるときに気になったことがありました。「計量ドリップポット Zebrang」の注ぎ口は細いのですが下部のほうまでボリュームがあり、その部分が「V60フラットドリッパー」に当たってしまうのです。「の」の字を書いてお湯を回し入れる際に、少々ストレスに感じました。少し高い位置からお湯を注げば当たらずに済みますが、コーヒー粉に勢いよくお湯を落とすと、コーヒー粉が必要以上に動いて雑味が出ることがあるため、ハンドドリップに慣れていない場合、注意が必要です。
低い位置から静かにお湯をまわし入れようとすると、注ぎ口の膨らみが「V60フラットドリッパー」に干渉してしまいます
そこで提案したいのが、「一点注湯」という注ぎ方。「の」の字を書かず、中央の1点だけに湯を落とし続ける方法なので、「V60フラットドリッパー」への干渉が防げます。ただし、今回紹介した3回に分けて回し入れる「3投式」に比べると、若干さっぱりとした味になるので、好みに応じてコーヒー粉の量を少し増やすなどの工夫をしたほうがいいかもしれません。
筆者は、リニューアル前の「V60フラットドリッパーZebrang」も半年ほど使用していたため、何よりも、改良された「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」の仕上がりに感動しました。構造としては些細な違いですが、使いやすさが大きく向上。これならストレスなく使えると思います。
そして、筆者は自宅でも普段からハンドドリップでコーヒーを淹れており、通常の「V60」の愛用者でもあるので、「V60」と遜色ないレベルのコーヒーが淹れられるのかも厳しめでチェックしましたが、その点は問題なし。さすがハリオというべき、再現度。お湯を注ぐスピードを変えることで好みの味のコーヒーが抽出できる「V60」の特徴を備えながら、アウトドアに持ち出しやすいコンパクト収納を実現した「V60フラットドリッパー 02 PLUS Zebrang」は買って損をしないアイテムだと言えます。
一緒に使用した「計量ドリップポット Zebrang」については、上述のように注ぎ方によっては気になる点もありますが、自然にコーヒーを淹れるのに適切な湯温になる手軽さは大きなメリット。注ぎやすさも申し分ないので、温度計など、なるべく持ち物を増やさずにおいしいコーヒーを屋外でも淹れたいなら「ゼブラン」シリーズは要チェックです!
アウトドア雑誌の副編集長職を経てフリーランスとして独立。以降、アウトドアをはじめ、グッズ、クルマ、旅行などレジャー関連を中心に執筆している。