ランニングは、基本的にはシューズさえあれば場所や時間を選ばずに1人でもできることから、コロナ禍においても着実に競技人口を増やしてきました。ウォーキングとともに最も気軽に始められるスポーツであることから、2023年の現在も安定した人気を誇っています。
ここでは、2023年春のランニング業界の大きなトレンドであるハイレベルなクッション性に着目し、ビギナーランナーだけでなく、あらゆるレベルに対応する11足を専門家・南井正弘氏がセレクト。意外と知られていないランニングシューズの正しい選び方についても同氏が改めて紹介します。
2023年春のランニングシューズ選びは、「ハイレベルなクッショニング」がキーワード! 初心者から中級ランナーまでが履ける11足はコレ!!
初心者がランニングシューズを選ぶ際にやってしまいがちなのが、大きめのサイズを買ってしまうこと。アディダス「スーパースター」やナイキ「ナイキ ダンク」、コンバース「オールスター」といった普段履きのスニーカーは、脱いだり履いたりすることを考えて、少し大きいサイズを選んでいる人は珍しくありません。しかしながら、ランニングシューズを選ぶとき、それはNGです。
かかとをピッタリとフィットさせたときに、つま先に少しゆとりがあるくらいのサイズを選びましょう。また、足長だけでなく足幅のフィットも重要。最近では「ワイド」や「スリム」のように足幅を選べるモデルもありますので、幅広の人や足が細い人はそれらをトライするのもよいでしょう。
ちなみに、今回紹介する「アルトラ」というブランドは、親指がいちばん長く、小指に向かって足長が短く、足囲にある程度ゆとりがある形状の「オブリーク型」というラスト(木型)を使用しています。この形状は、日本人の足形に最も多いと言われる「エジプト型」の足にも無理なくフィットします。これまで、「どのシューズを履いてもフィットしなかった……」というランナーは、1度試してみるとよいでしょう。
手に持ったときに軽く感じるシューズは、「速く走れそう!」と思うかもしれませんが、脚力のないビギナーにはおすすめできません。
走行中には、体重の3倍程度の衝撃が足にかかると言われていますが、軽量なランニングシューズは衝撃を吸収するための機能を省略することで軽量化を図り、脚力を効率よく路面に伝達することを重視しているので、衝撃がダイレクトに足に伝わってしまいます。こういったシューズを初心者が履くと、走り始めはいいかもしれませんが、しばらくしたら足が痛くなって走れなくなってしまいます。ビギナーは、足の保護性の高いシューズを選ぶべきなのです。
着地から蹴り出しまでの一連の動作において、足が内側に倒れ込むことを「プロネーション(回内)」と言います。この動きが軽度の場合はさほど問題ありませんが、この動きが過度になると「オーバープロネーション(過回内)」と言い、ケガの原因につながります。
こうした傾向のあるランナーは、ミッドソール内側に過度な倒れ込みを制御する機能を有したシューズを選ぶことをおすすめします。今回はピックアップしていませんが、アシックス「ゲル カヤノ」やブルックス「アドレナリン GTS」といったシリーズが有名です。これらのシューズは、着地から蹴り出しまでの動きを補助することから「サポートタイプ」と呼ばれており、正しい足の動きで走れていないランナーから支持されています。今回セレクトしたシューズの中では、「ナイキ インヴィンシブル3」がミッドソールの意匠や素材の組み合わせを工夫することで、着地時の極端な倒れ込みを防止することに成功しています。
2023年春に最も注目されているランニングシューズのタイプは、ハイレベルなクッション性を提供してくれるプロダクト。これまで以上のミッドソールの厚さを誇り、WA(世界陸連)の厚さ制限である40mmを超えた製品もリリースされています。こうしたプロダクトは、脚力が十分ではないビギナーを着地時の衝撃から守ってくれるだけでなく、30kmを超えるようなロングランも行う中級以上のランナーにとっても、脚部の負荷や疲労を軽減してくれる存在。実際に、中級以上のランナーの多くがひと昔前よりも厚手のシューズを選ぶようになりました。今回選んだ11足は、初心者だけでなく、あらゆるレベルのランナーに対応する、走行性能にすぐれたランニングシューズです。
アシックス「ゲルニンバス 25(GEL-NIMBUS 25)」。公式サイト価格は19,800円(税込)。写真のカラーは「Black/Black」
アシックスの代表的なクッショニングモデル「ゲルニンバス」が25周年を迎え、同シリーズ史上最もクッション性にすぐれたシューズとして生まれ変わりました。
アッパーには、長時間の走行時でも快適な履き心地を提供する1枚の生地において編み方を変えることで、足の部位によってフィッティングや通気性を適正化するエンジニアードメッシュを採用。また、やわらかく足当たりのよいニットの履き口と、伸縮性のあるニットシュータンにより、足に吸いつくようなフィット感を実現しており、足を快適に包み込みます。
ミッドソールには、軽量でやわらかく、跳ねるように反発する「FF BLAST PLUS」の機能性はそのままに、ミッドソールの約24%に植物由来の素材を使用し、環境に配慮された新フォーム材「FF BLAST PLUS ECO」をミッドソール全面に採用しました。
かかと部に搭載された「GEL」のクッショニングも従来のビジブル型から、内蔵型の「PureGEL(ピュアゲル)」に進化。従来のビジブル「GEL」よりもさらにやわらかさを増しており、軽量化も実現しています。
「ゲルニンバス 25」を実際に履いて走ってわかったこと!
「アシックスの『ニンバス』シリーズは、足の過度な倒れ込みがないランナーに最適なニュートラルタイプのランニングシューズの代表的モデル。アメリカやヨーロッパのマラソン大会では、数多くのランナーの足元でこのシリーズを見かけました。
そんな同シリーズが、超厚底シューズにフルモデルチェンジ! ミッドソール全面に『FF BLAST PLUS ECO』をボリュームたっぷりに使用することで、シリーズの従来モデルとはまったく異なった走行感が味わえます。厚底化による着地安定性の欠如を危惧しましたが、その心配はなく、日課としている6kmランの間でも、レベルアップしたクッション性を堪能できました。
アシックスは従来、モデルチェンジにおいては各シリーズのリピーターに配慮し、前作の70%前後の特徴を残す傾向にありましたが、今回の『ゲルニンバス 25』に前作『ゲルニンバス 24』の面影は一切なし。『ゲルニンバス』の新たな道のりのスタートです」(南井氏)
ナイキ「ナイキ インヴィンシブル 3」。公式サイト価格は22,000円(税込)。写真のカラーは「ホワイト/セイル/オートミール/オブシディアン」
抜群のクッション性でどんなランも後押しするナイキの「インヴィンシブル」シリーズに、第3弾「ナイキ インヴィンシブル 3」が登場。ナイキにおける最高レベルの足裏の快適さを実現しており、今日も明日もその先もランニングをサポートしてくれます。
本モデルは、前作からアッパーとソールユニットを変更したフルモデルチェンジを実施しており、クッショニング素材「ナイキ ズームX」によってクッション性が向上しただけでなく、安定性も大きくアップ。さらに着地から蹴り出しまでのサポート性も高いレベルで提供することに成功しており、いつまでも走り続けられるようにデザインされています。また、サポート性と弾力性を兼ね備えることで、すぐれた履き心地を確保しているのもポイント。日々のランニングを快適、かつケガなく行いたいと思っているランナーにはピッタリな一足です。
「ナイキ インヴィンシブル 3」を実際に履いて走ってわかったこと!
「ナイキの『インヴィンシブル』シリーズは、ミッドソールに採用されたフォーム『ナイキ ズームX』によるフワフワした走り心地を個人的にも気に入り、初代、2代目合わせて4足購入したほどのお気に入りでしたが、今回フルモデルチェンジということで、期待半分、心配半分でした。というのも、各ブランドは機能性向上のためにモデルチェンジを図るのですが、『前のままでよかったのに……』ということも珍しくなく、必ずしもそれがすべてのランナーにとってポジティブな結果になるとは限らないからです。
今回『ナイキ インヴィンシブル 3』で走って感じたのは、抜群のクッション性能を継承しつつ、着地安定性が大きくアップしているという点。前作までは高いクッション性と引き換えに、接地の際に若干の揺れがあったのですが、今作では着地のブレがほとんど感じられないレベルへと改善されています。『フライニット』アッパーのフィット感もアップしていることから、速めのペースで走った際も、無理なく走れました」(南井氏)
ミズノ「ウエーブライダー26」。公式サイト価格は14,850円(税込)。写真のカラーは「04:グレー×ホワイト×ライム」
ミズノランニングのベストセラーの一角が大幅アップデート。クッション性と反発性はもちろん、軽量性やフィッティングも追求している「ウエーブライダー」は、第26弾「ウエーブライダー26」にて、アッパーに柔軟で通気性にもすぐれたエアメッシュを採用しているほか、ミッドソール全面に搭載した「MIZUNO ENERZY」の厚みを2mm増量することで、素材の搭載堆積を17%アップさせました。これにより、シリーズ史上最高の柔軟性と反発性が生み出され、よりスムーズな走り心地でランナーをサポートしてくれます。
また、ミズノを代表するクッショニングテクノロジー「ミズノウエーブ」に関しても、前作の「ウエーブプレート」は内側だけ巻き上げることで安定感を出していましたが、今作は外側も巻き上げることで、より安定性を向上。このようにすべてが新しくなった「ウエーブライダー26」は、あらゆるレベルのランナーをサポートしてくれるでしょう。
「ウエーブライダー26」を実際に履いて走ってわかったこと!
「ミズノを代表するランニングカテゴリーのベストセラーがフルモデルチェンジ。ミッドソールのボリュームアップを始めとして、前作から大きく走り心地が変わりました。高いレベルで衝撃吸収性と反発性を兼ね備えた『ミズノウエーブ』を始めとしたスペックを見直すことで走行性能のアップを図っていますが、個人的に特に気に入ったのが、ミッドソールを厚くしたことによるクッション性のアップ。従来の『ウエーブライダー』は反発性と安定性を特に感じましたが、今作ではクッション性のよさを真っ先に体感できました。
2022年12月11日に開催された『ホノルルマラソン』を『ウエーブライダー26』で走りましたが、脚部へのダメージが最小限でスタートからゴールまで快適そのもの。走った翌日、翌々日も足の疲れをほとんど感じませんでした。シリーズ全26モデルのうち半分以上のシューズで走ったことがありますが、今回の『ウエーブライダー26』が最もトータルバランスにすぐれていると思います」(南井氏)
アディダス「ウルトラブーストライト(ULTRABOOST LIGHT)」。公式サイト価格は25,300円(税込)。写真のカラーは「ソーラーレッド/コアブラック/ナイトメタリック」
2015年にデビューしたアディダスの「ウルトラブースト」は、ミッドソールに採用された「BOOSTフォーム」による抜群のクッション性から生まれるフワフワした独自の走行感と、「アディダス プライムニット」による足をやさしく包み込むような快適なフィット感を組み合わせることで、ランニングシーンのみならず、ライフスタイルシーンでも人気を博しました。
今春リリースされた「ウルトラブーストライト」は、ミッドソール素材に、より軽量でエネルギーリターンが4%アップした「Light BOOST」を採用することで、従来モデルより30%の軽量化に成功。これまでのハイレベルなクッション性に、ライトウェイトという新たな特徴をプラスしています。
アウトソールには、自動車やレース用自転車にも採用されている「Continentalラバー」を使用しており、あらゆる天候やコンディション下におけるグリップ力の高さと、スリップによるエネルギーロスの軽減に貢献してくれます。
「ウルトラブーストライト」を実際に履いて走ってわかったこと!
「これまでに10足以上の『ウルトラブースト』を履いてきて、そのハイレベルなクッション性と反発性のハーモニーに魅了されてきましたが、同シリーズは現代のランニングシューズの基準からすると少し重いというのも事実でした。
今回リリースされた『ウルトラブーストライト』は、従来モデルより30%の軽量化に成功。サイズUS9で293gというライトウェイトを実現しています。実際に走ってみると、4%エネルギーリターンがアップした『Light BOOST』は、硬度が増したことによって、着地時の安定性が向上したことを体感できます。凹凸に成形されたかかと部分は、ペースアップした際にも足とのすぐれたフィット感を有しており、ランナーの脚力を効率よくシューズ、そして路面へと伝達してくれました。
今回ピックアップしたカラーリング以外に6カラー、計7色がラインアップされており、ランナーの好みやウェアのコーディネートに応じてお気に入りの一足をセレクトできるのもうれしいですね」(南井氏)
ブルックス「グリセリン20(Glycerin20)」。公式サイト価格は19,800円(税込)。写真のカラーは「イエロー」
ブルックスの「グリセリン20」は、同ブランド史上最もソフトな履き心地を提供するニュートラルタイプのランニングシューズ。ミッドソールには、ブルックス独自のクッション「DNALOFT」に窒素を注入し、臨界発泡させた「DNALOFTV3」クッショニングを採用しており、軽量で高い反発力がありながら、ソフトなクッショニングが快適なランニングをサポートしてくれます。
新デザインのエンジニアードメッシュアッパーは、通気性が向上し、足をしっかり包み込むようにフィット。長時間の走行時でも快適な履き心地をキープしてくれます。
以上のように、「グリセリン20」は、前作からのフルモデルチェンジにより、これまで以上のハイレベルなクッション性とフィット感を確保。あらゆるレベルのランナーを納得させるプレミアムなランニングシューズが完成しました。
「グリセリン20」を実際に履いて走ってわかったこと!
「ブルックスの『グリセリン』シリーズと言うと、『日本人ランナーにはちょっと重いなぁ……』という印象で、実際に『グリセリン11』はサイズUS9で335gほどありました。しかしながら、今回の『グリセリン20』は、手に持った段階で、『あれ、本当にグリセリンシリーズなの?』と思うほど軽く、マイサイズのUS8を計測すると280gだったので、同種のクッション性にすぐれたランニングシューズの中では、確実に軽い部類に入ります。
実際に履いて走り始めてみると、2021年に発売された『オーロラ』で初採用された『DNALOFTV3』ミッドソールのソフトな走行感が心地よかったです。ミッドソールの変形はそこまで大きくないので、着地時の沈み込みは最小限かつ反発がクイックなので、まさに宙に浮いているような浮遊感。とにかく快適で、『ゆっくりペースならいつまでも走っていられそう……』と思ったほど。4分50秒〜6分30秒/kmまで、さまざまなペースで走ってみましたが、どのペースでも走りやすさをキープしてくれました」(南井氏)
On「クラウドモンスター(Cloudmonster)」。公式サイト価格は18,480円(税込)。写真のカラーは「All Black」
「クラウドモンスター」は、On史上最大の「CloudTec」とソールユニット内部に配されたスピードボードの組み合わせが実現する、超ド級のクッショニングとエネルギーリターンをランナーに提供するモデル。2022年春のリリース以来、同ブランドのベストセラーの一角を占めています。
「クラウドモンスター」は、その名のとおり、ロードを爽快に駆け抜けられる“モンスターシューズ”で、これまでのシンプル&クリーンな印象のOnのアッパーデザインと比較すると、ブランド名のイニシャル「O」をアッパーサイドに大胆に配したデザインはインパクト十分。ロッカー構造のソールユニットの形状もあいまって、着地から蹴り出しまでの一連の動作もワンランク上のスムーズさです。走り心地のよさに思わず普段よりも長く、速く走ってみたくなるスペックとアグレッシブなデザインをミックスさせた一足に仕上がっています。
「クラウドモンスター」を実際に履いて走ってわかったこと!
「このボリューミーなフォルムを見たときは、『ちょっと重そうだな……』と思いましたが、手に取ってみると外観からの印象とは異なってかなり軽い。公式サイトによるとサンプルサイズで275gとのことなので、同種のトレーニングタイプのランニングシューズとしては軽い部類に入ります。
実際に履いて走ってみると、ブランド史上最大の『CloudTec』とソールユニット内部に配されたスピードボード、ロッカー構造の組み合わせによる推進力で、スムーズにペースアップ。最初は6分30秒/kmから走り始め、最終的に4分50秒/kmで走り終えましたが、ゆっくりなペースから速めのペースまで無理なく対応してくれました。
アウトソールは、アスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮するパターン。また同モデルは、そのインパクトあるデザインにより、ランニングシーンだけでなくカジュアルシーンでも活躍してくれます」(南井氏)
ニューバランス「フレッシュフォーム X モア v4(Fresh Foam X More v4)」。公式サイト価格は19,800円(税込)。写真のカラーは「BEIGE」
ニューバランスを代表するクッショニングテクノロジーとして、「フューエルセル」とともに知られる「フレッシュフォーム」。「フレッシュフォーム X モア v4」は、このテクノロジーを採用するシューズにおいて最も厚く、やわらかい「FRESH FOAM X」ミッドソールを有する、シリーズを象徴するモデルに仕上がっています。
新パターンのアウトソールは重心移動をスムーズに支え、ソールの厚みに負けない安定感を発揮。もっと長く走りたくなるようなライド感をランナーに提供してくれます。
また、足を心地よく包んでくれる、通気性にすぐれたエンジニアードメッシュアッパーを合わせやすいカラーで彩り、シューズと足をピッタリとフィットさせるためにDと2Eの2種類のウイズ(足囲)で展開。標準的な足の形状のランナーだけでなく、幅広の足のランナーにも対応してくれるのはありがたいですね。
「フレッシュフォーム X モア v4」を実際に履いて走ってわかったこと!
「ニューバランスのクッショニングテクノロジー『フレッシュフォーム』は、ミッドソール表面に独自の凹凸を配すことで、適切なクッション性、サポート性、軽量性を兼ね備えたミッドソールが、快適な走り心地を提供してくれます。
最も厚いソールユニットを有する『フレッシュフォーム X モア v4』を最初に見たときは、『HOKAのシューズにシルエットが似てるなぁ……』と思いましたが、走ってみるとそれとは異なることがわかりました。ミッドソール自体にある程度の硬度があり、沈み込みが少ないことから、そのロッカー構造のソールの形状もあって、特に着地から蹴り出しまで転がるような走行感を得られます。ランニング時の脚部の保護はもちろんのこと、従来モデル以上に効率のよい走行性を実現してくれました。
同シリーズの初代モデルを履いて走ったときは、着地時に生じるグラつきが気になりましたが、同モデルではその点も改善されているなど、トータルバランスにすぐれた一足に仕上がっています」(南井氏)
HOKA「クリフトン 9(CLIFTON 9)」。公式サイト価格は20,900円(税込)。写真のカラーは「バリアント オレンジ/インパラ」
HOKAの「クリフトン」は、日本を始めとしたワールドワイドでベストセラーの地位を獲得する人気モデルで、同社製品としてはミッドソールの厚さが控えめだった初代モデルは2014年にリリースされました。
2023年春発売された9代目「クリフトン 9」は、浮き上がるような乗り心地を実現するために、クッション性と軽さをアップグレード。ミッドソールの高さを地面から3mm増やしながらも軽量化を実現しつつ、クッショニングと反発力のバランスがよい新フォームを採用しています。
アウトソールも、デザインを改良することで耐久性が向上。さらに、素材が重なる部分と圧着パーツを削減したスリムなアッパーや、足当たりのよいヒール形状、反射素材のヒールパネル、さらにはタンのズレを防止するために内側にのみガセットを搭載した構造などにより、これまで以上に履き心地のよさを提供することに成功しています。
「クリフトン 9」を実際に履いて走ってわかったこと!
「『クリフトン』は、私のランニングライフにおいてヘビーローテーションで履くシリーズのひとつ。初代の復刻版を含めれば、すべての世代の『クリフトン』を履いてきました。今回リリースされた『クリフトン 9』は、前モデルよりもソールユニットをボリュームアップさせたことから、クッション性の向上に成功しています。
いっぽう、ある程度硬度を高めたことで、着地時の安定感もバッチリな点はうれしいポイント。これにより、メタロッカー構造による転がりの効率も『クリフトン 8』よりも上だと思います。着地から蹴り出しまでの動きは本当にスムーズで、まだ長距離を走ることに自信のないビギナーから中級ランナーまで幅広いレベルに対応してくれるランニングシューズです。
昔からホカを愛用する知人のひとりは、『今回のクリフトンは限りなくボンダイに近づきましたね』と語っていましたが、その軽快な走り心地は『クリフトン』シリーズならではのものだなと思いました」(南井氏)
アルトラ「ヴィア オリンパス(VIA OLYMPUS)」。公式サイト価格は23,100円(税込)。写真のカラーは「Black/Orange」
「ヴィア オリンパス」は、モデル名のとおり、多くのファンを持つ同社の人気トレイルシューズ「オリンパス」の流れをくんで作られたロードランニングシューズ。「オリンパス」と同様に最大級のクッションを備えながらも、しっかりとした安定感を持つシューズに仕上がっています。
同モデルは、これまでで最も厚い33mmのミッドソール「Altra Ego MAX」を搭載しており、高い反発性とクッション性、軽量性、耐久性が高次元に組み合わされた一足です。また、ロッカーシェイプは、より少ないエネルギーで効率的に前に進む推進力を体感でき、快適で自然なストライドを損なうことなく、より効率的な蹴り出しを実現するように設計されています。
このシューズを最初に履いたときから、極厚ミッドソールによる最大限のクッション、足指が自然な形で広がるオリジナルフットシェイプによる快適性、「Altra Ego MAX」ミッドソールや独自のロッカーシステムによるすぐれたパフォーマンス性を体感できるでしょう。
「ヴィア オリンパス」を実際に履いて走ってわかったこと!
「各ブランドから厚底ランニングシューズがリリースされるようになって久しいですが、アルトラの『ヴィア オリンパス』は、他ブランドの同タイプとはかなり異なった履き心地と走り心地を提供してくれます。最も厚い部分が33mmのミッドソールは、ホカのシューズのミッドソールと比べると硬めで、着地安定性にすぐれています。
いっぽうで、この硬さゆえに『クッション性は他ブランドと比べて劣るのでは?』と思いましたが、走ってしばらくすると、そのような心配は杞憂に終わりました。徐々にペースを上げていくと、『Altra Ego MAX』ミッドソールが適度に変形し、衝撃をしっかりと吸収してくれました。また、独自のロッカーシステムを採用したことにより着地から蹴り出しもスムーズで、6分30秒/kmといったスロージョグから少し速めのペース走まで対応。足指が自然な形で広がるオリジナルフットシェイプのアッパーは、幅広の足のランナーだけでなく、あらゆる足型のランナーにフィットするでしょう」(南井氏)
サロモン「エアログライド(AERO GLIDE)」。公式サイト価格は18,700円(税込)。写真のカラーは「Granite Green/Yellow Iris/White」
サロモンはトレイルランニングのトップブランドですが、最近ではオンロードランニングのカテゴリーも充実しています。2023年春のニューモデル「エアログライド」は、最大限の反発力とエネルギーで長距離を走破する、クッション性の高い軽量ランニングシューズ。軽く通気性にすぐれたアッパー構造やソフトなシュータンと履き口を採用した同シューズのフィット感とパフォーマンスは、一度履いたら忘れられないでしょう。
「Energy Foam」を使用した厚めのミッドソールにより衝撃をしっかり吸収。クッション性も抜群で、サロモン独自のロッカー形状「Reverse Camber」によりスムーズで素早い重心移動を確保しており、ランナーは軽やかに地面を蹴って前に進めます。「Road Contagrip」のアウトソールは、耐久性と密着性にすぐれており、アスファルトやコンクリートといった舗装路で、高いレベルのグリップ性を発揮。外観においては、ボリューミーなシルエットとアッパーサイド部分の新たな意匠が特徴的です。
「エアログライド」を実際に履いて走ってわかったこと!
「まず手に取ってみると、そのボリューミーなシルエットからは想像できない軽さを感じます。重量はUS9で254g。前作『グライドマックス』から21gの軽量化に成功しており、同種のシューズとしては軽い部類に入ります。
実際に履いて走ってみると、高いクッション性とサロモン独自のロッカー構造『Reverse Camber』により、かかとから前足部へのスムーズな重心移動が得られました。厚底ですが、ミッドソールの沈み込みはあまり多くなく、着地安定性にもすぐれている点は、ケガに悩まされているランナーにはうれしいポイントでしょう。
今回はマイサイズではなく、ワンサイズ大きいUS9での試走だったので、速めのペースで走ることをあえて避けましたが、この靴の特性として、そこまで速く走る必要はないと考えられるので、このシューズの快適な走り心地は十分に堪能できたと思います」(南井氏)
ヨネックス「セーフラン 200X」。公式サイト価格は18,700円(税込)。写真のカラーは「ホワイト」
ヨネックスと言うと、テニスやバドミントンのラケットのイメージが強いブランドで、ランニングとは関連がないと思う人は多いかもしれません。しかしながら、同社がランニングシューズに参入したのは2009年のことですでに14年ほどが経過しており、参入以来、機能性向上のために改良を重ねてきました。
最新モデル「セーフラン 200X」は、着地から蹴り出しをサポートしてくれるゆりかご状のロッカーアウトソールや、内蔵された3D パワーカーボンの効果により、高い推進力を提供してくれ、日々のランニングを楽しくしてくれる一足に仕上がっています。
また、フィット感にすぐれたエンジニアードメッシュのアッパーや、履き口周囲をやわらかく包むヒールパッドを採用しているので、長時間のランニングでも快適な履き心地をキープ。シンプルかつベーシックなデザインは、ランニングシーンだけでなくオフシーンでも活躍してくれます。
「セーフラン 200X」を実際に履いて走ってわかったこと!
「これまでにヨネックスのランニングシューズを何足か履いてきましたが、いずれのシューズも衝撃吸収性と反発性が高いレベルにあることを体感できましたが、今回トライした『セーフラン200X』は従来モデル以上の走行性能を提供してくれました。
実際に履いて走ってみると、着地から蹴り出しまで転がるような感覚で楽に走ることができました。アウトソールはアスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮し、雨上がりの路面が濡れた状況でも、十分なグリップ性を保持していました。
また、ミッドソール上部の硬度を高めていることで、厚底シューズにありがちな着地時のグラつきをほとんど感じないのは、これまでランニングを起因とするケガに悩まされてきたランナーにはうれしいスペックだと思います。“ひざのことを守る”というコンセプトを頑なに守ってきたヨネックスですが、この『セーフラン 200X』にもその思いは継承されています。今までで最もボリューミーなシルエット、かつシンプルなデザインを採用しているので、ランニングシーンからライフスタイルシーンまでシームレスに対応してくれる点もうれしい一足です」(南井氏)
パソコン・家電からカップ麺に至るまで、何でも自分で試してみないと気が済まないオタク(こだわり)集団。常にユーザー目線で製品を厳しくチェックします!