南井正弘の「毎日走って、わかった!」

ランナーの潜在能力を引き出す! HOKAの最新レーシングモデル「ロケットX2」

HOKAから2023年春にリリースされた「ROCKET X 2 (ロケットX2)」は、エリートアスリート向けの軽量レーシングモデルだ。

本モデルでは、ランナーそれぞれのフォームを生かしてスピードに乗れる構造を実現。たとえば、一新した2層の超高反発・高性能ミッドソールフォームによって推進力のあるカーボンファイバープレートを挟み込んだり、足をしっかりと包み込むメッシュ素材や、中足部のフィット感を高める足当たりのよいガセットを採用したりと、前モデル「ロケットX」から設計を徹底的に見直している。今後のレースシーンのゲームチェンジャーとなりそうだ。

HOKA「ROCKET X 2」(品番:1127927)の公式サイト価格は35,200円(税込)

HOKA「ROCKET X 2」(品番:1127927)の公式サイト価格は35,200円(税込)

モデルチェンジの最大のポイントはミッドソール素材!

HOKAのレーシングシューズで最も知名度が高いのは、2019年にファーストモデルが発表された「CARBON X」(カーボンX)だろう。しかし同シリーズは、どちらか言うとフルマラソン(42.195km)以上の距離を走るウルトラマラソンにマッチしたスペックを結集しており、「世界レベルのアスリートがハーフマラソンやフルマラソンといった距離を走るには重すぎる……」「推進力がもう少し欲しい……」といった声があったのも事実だった。

いっぽうで、ハーフマラソンやフルマラソンにマッチする初代「ロケットX」も2021年にリリースされたが、こちらも競合ブランドの同種のレーシングシューズと比較すると、ミッドソール素材の反発性がもう少し欲しいという声が聞かれた。このような状況を打破すべく、HOKAが今春発表したのが「ロケットX2」である。

本モデルが前作からのモデルチェンジで特に機能性向上に成功していると思われるのが、ミッドソールマテリアル。超臨界発泡成形による超高反発・高性能PEBAミッドソールフォームは、クッション性と反発性が向上したことに加え、ミッドソール自体の厚みも増したことから、着用ランナーからは前作以上のポジティブなフィードバックを集めたという。最近は世界陸上競技連盟のミッドソール規定「40mm」をオーバーしたランニングシューズもちらほら見られるが、この「ロケットX2」は世界陸上競技連盟のシューズ規定に合致しているスペックなので、公認記録を狙う陸連登録者がレースで着用できる。

高い通気性とフィット感を高次元で両立したテクニカルシンセティックアッパー

高い通気性とフィット感を高次元で両立したテクニカルシンセティックアッパー

履き口部分の内側は凹凸を付け、かかとのフィット感を高めることに成功

履き口部分の内側は凹凸を付け、かかとのフィット感を高めることに成功

新たに採用されたPEBAをボリュームたっぷりにミッドソールに使用。高い反発性と衝撃吸収性を発揮し、今までの同ブランドのレーシングシューズ以上の推進力をランナーに与える

新たに採用されたPEBAをボリュームたっぷりにミッドソールに使用。高い反発性と衝撃吸収性を発揮し、今までの同ブランドのレーシングシューズ以上の推進力をランナーに与える

アスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮するアウトソール

アスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮するアウトソール

高い推進力を発揮するために、従来モデルよりも反り上がった形状のカーボンファイバープレートを内蔵

高い推進力を発揮するために、従来モデルよりも反り上がった形状のカーボンファイバープレートを内蔵

【試走レビュー】同社レーシングシューズで最も高速走行に向くプロダクト!

「ロケットX2」を実際に履いて走ってみた!

「ロケットX2」を実際に履いて走ってみた!

「カーボンX」に関しては、初代から現行モデル「カーボンX3」まですべて履いているのに対し、「ロケットX」シリーズの原点とも言える「EVOカーボンロケット」は履いて走ったことはあるものの、今回ピックアップした「ロケットX2」の前作「ロケットX」の初代モデルは履いた経験がない。それだけに初めて履く日の前日は、「どんな走り心地なんだろう?」ととても興味を引かれていたし、評論家の金哲彦氏を始めとした先行でトライしていたランナーからの評価がとても高かったこともあって、より一層履くのが楽しみだった。

まず、シューズを手に取ると、上級ランナー向けのレーシングシューズだけあって、かなり軽い。公式重量は28.0cmで236gだが、自分のサイズ26.0cmの実測値は205gであった。

ミッドソールを指で押してみると、新採用のPEBAミッドソールはかなりやわらかく、弾性にすぐれる。硬度計で測定してみると、最近のランニングシューズのミッドソールでこれよりもやわらかいのは、ニューバランスの「フューエルセル SC エリートv3」くらいであることがわかった。

実際に足を入れて走り出すと、前述のミッドソールの弾性の高さを感じ、着地から蹴り出しまでの動きもスムーズで、非常に高い推進力をランナーに提供してくれた。

ちなみに、「カーボンX」のシリーズでは、ミッドソール素材にここまでの弾性はなく、ゆりかご状のソールユニットであるメタロッカー構造や、内蔵されたカーボンファイバープレートによるガイド効果で、すぐれた推進力を追求していたので、走り心地は今回の「ロケットX2」とは大きく異なる。

徐々にペースを上げてみると、ミッドソールの変形も大きくなり、その分、反発性も強くなる。一般的にミッドソール素材の変形が大きくなればなるほど着地安定性に問題が生じるが、「ロケットX2」では走行時の不安定さはあまり感じられない。これには内蔵されたカーボンファイバープレートの形状も関係していると推測できる。

いつもどおり日課としている6kmランで2度試してみたが、筆者レベルのサブ4ランナーでも4分30秒/kmほどのペースをキープできるなど、これまでの同社のレーシングシューズで最も高速走行に向くプロダクトであることは明らかだった。さらに、翌日の脚部の疲労の少なさは、衝撃吸収性にすぐれた厚めのミッドソールに由来しており、あらゆるレベルのランナーにうれしい特徴であると思う。

【まとめ】従来シューズにはなかったレベルの推進力をランナーに与えてくれる!

以上のように、HOKAの「ロケットX2」は、業界屈指の弾性にすぐれた素材をミッドソールに使用することで、同ブランドの従来シューズにはなかったレベルの推進力をランナーに与えてくれるモデルだ。

2023年3月1日に発売されて以来、「東京マラソン」「名古屋ウィメンズマラソン」「名古屋シティマラソン」といった大規模大会でも着用ランナーをチラホラ見かけるようになったが、今後もロードレースでの着用者を増やしていき、レースシーンにおける存在感を高めていくだろう。

ランナーのシューズの購買決定要素のひとつに価格があげられるだけに、35,200円(税込)という他ブランドよりも高めのプライス設定は気になるが、ランナーの脚部をしっかりと保護しつつ、これまで以上にペースアップできる構造を考慮すると、トライする価値は十分にある。使用されているミッドソール素材の特性を考えると、クッショニングを維持する寿命は短くないと思われる点もありがたい。

南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間50分50秒。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
スポーツシューズのその他のカテゴリー
ページトップへ戻る