オグさんです。今回は、テーラーメイド「P790アイアン」(2023年モデル)の試打レビューをお届けします。
「P790アイアン」(2023年モデル)
「P790」は、テーラーメイドが展開する「P」シリーズに属するアイアン。「P」とは「personal(パーソナル)」の頭文字で、各ゴルファーの理想のプレースタイルにそれぞれマッチする、明確な個性を持ったアイアンがラインアップされています。
今回発表された最新の「P790」は4代目のモデル。初代は2017年に発売され、以後2年ごとにモデルチェンジを行いながら進化を続けてきました。どの年代のモデルも高い人気と評価を得ています。
テーラーメイドは、ブランドを刷新して新しさを演出することが多いメーカーですが、4代にわたって同じネーミングを使用するのは珍しいことです。同社にとって、よほど大事なシリーズなのでしょう。
中空構造のヘッドは歴代モデル共通ですが、今作では過去最大の進化を遂げたと言ってよいほど、さまざまな部分が変更されています。最も大きな変更点は、番手別設計を採用していること。「FLTD・CGデザイン」と呼ばれるこの技術は、ヘッド内部に搭載されるタングステンウェイトの搭載位置や量を番手ごとに変えることで、ロングアイアンでは飛ばしやすさを、ミドルアイアンでは狙いやすさを、そしてショートアイアンでは止まりやすさを追求しています。
ヘッド内部は、表面をディンプル状にすることで薄肉化による軽量化を実現させた「THICK-THIN バックウォールキャスティング」を採用。余剰重量を生み出すことで、番手ごとの最適な重心位置の追求や慣性モーメントの向上など、さらなるパフォーマンスアップを実現しています。
性能だけでなく、フィーリング面にもしっかり手が入っています。軽量かつソフトになった「SPEEDFORM AIR充填剤」で打感を向上。番手ごとに設計された「サウンド スタビライゼーションバー」が、心地よい打音を作り出しています。
2021年モデルのレビューは下記からご覧ください。
中空構造でありながら、マッスルバックのようなスマートな外観が特徴。デザインもシンプルで美しいですね
P790・#5
P790・#7
P790・#9
「P790」の名前の由来は、ブレード長が79mmであること。ロングアイアンからショートアイアンまで、統一感のある形状です。ブレードは適度な厚みがあり、アスリート然とした形状ながら、難しさを感じさせないやわらかな雰囲気を持っています。
ロフト構成は、7番で30.5.度。飛距離と狙う性能を両立させようとすると、このくらいがちょうどよいのでしょう。アスリートやスコアアップを目指すゴルファーのため、ボールコントロールに必要な性能をしっかり確保しつつ、飛距離やミスへの強さを上乗せしています。
飛距離やミスへの強さ、あるいは高い操作性などを望むユーザーへは、別のモデルを用意しており、テーラーメイド内できちんと棲み分けされています。
ソールには、独自の技術である「貫通型スピードポケット」を搭載。フェース下部でのヒットでもロスが少なく、安定した飛びが期待できます。トゥ側のネジは充填剤を注入するためのもの
フェース素材にはクロームモリブデン鋼を採用。下部から回り込むようにL字型に成形し、番手ごとにフェース厚を変えることで、オフセンターヒット時のばらつきを抑えています
シャフトラインアップは3モデル。90g台の中調子スチール「N.S.PRO 950GH NEO」、100g台の元調子スチール「N.S.PRO MODUS3 TOUR 105」、そして130g台の元調子スチール「Dynamic Gold EX Tour Issue」です。
ごくごく一般的な男性ゴルファーであれば「N.S.PRO 950GH NEO」がよいですね。パワーに自信があるアスリートゴルファーなら「Dynamic Gold」、ある程度の技術やパワーはあるけれど、重たいシャフトは苦手と考えるなら「MODUS」がおすすめです。
シャキッとした振り味で比較的軽量ながら、強振しても潰れない強さを持つ「N.S.PRO MODUS3 TOUR105」。アスリートのための軽量シャフトと言えます
構えてみると、適度な大きさとブレードの厚みが、安心感を与えてくれます。かといってお助けアイアンのような鈍重さは皆無で、すっきりとした形状です。
お借りしたスペックは、「N.S.PRO MODUS3 TOUR105」のSフレックスが装着されたモデル。ドライバーでのヘッドスピード38m/s程度をイメージして試打を開始しました。適度な高さで直進性の高い弾道を安定して打てます。つかまり性能はほぼニュートラルで、打ち出し方向の管理もしやすい。
個人的に印象に残ったのは、ヘッド形状に対してのミスへの強さ。アイアンの顔に一家言持つゴルファーでも満足できるであろう適度なシャープさを持ちながら、結構大きめに芯を外しても高さのある弾道がきちんと飛んでいきます。ミスしても飛距離ロスは少なめで、高い安定感が特徴です。
操作性に関しては、“最低限”は確保されている印象。結構大げさに操作しないとボールは曲がってくれませんが、こういったモデルにはそこまで操作性は求められていないでしょう。いざというときに、多少は何とかなるといった具合です。
中空モデルかつ、フェースにバネ鋼を使用したモデルながら、適度にソフトな打感を持つ「P790」。現代のアイアンのニーズをうまく詰め込んでいますね!
ヘッドスピードを高めていくと、ボールが少し高くなるぐらいで、球質の大きな変化はありません。グリーンをキャッチするための高さとスピン量はしっかりと確保されているので、試合などで戦うアスリートゴルファーにもおすすめできる仕上がりです。
シビアなコントロールは受け付けませんが、安定した弾道でボールを飛ばしてくれる、非常にバランスのよいアイアンに仕上がっています。
ソールに刻まれた溝が、フェース下部の打点ズレに効果を発揮する「貫通型スピードポケット」。このおかげで、多少薄い当たりでもボールの高さがしっかり出るので、飛距離ロスも抑えてくれます
高さ、飛距離、スピン量と数値的にもバランスがよいデータが出ています。スピン量はやや多めに出ていますが、目視での弾道は良好。とても扱いやすいアイアンという印象を受けました
4代目「P790 アイアン」は、中空アイアンの進化をしっかりと感じられるアイアンです。現代のアイアンに対するニーズに多い、飛距離とボール高さを高次元で両立させながら、直進性の高い弾道で、オフセンターヒットに強い。きれいな形状で打感もいい。ウィークポイントがなく、非常にバランスのよいアイアンだと思います。前作も非常に良作でしたが、今作はミスへの強さがさらにアップし、打感が向上した印象です。初心者から、操作性をあまり必要としない上級者まで幅広いゴルファーにおすすめできるモデルですね。
ライバルモデルは、ダンロップの「スリクソンZX5」、グローブライドの「オノフKURO」、キャロウェイ 「パラダイム アイアン」、ブリヂストン「222CB+」といったところでしょうか。
どれもバランスのよさが光るモデルばかりです。よほどシビアな環境でプレーするゴルファーでない限り、こういったアイアンが理想だと評価するのではないでしょうか。私が感じている、現代のゴルファーニーズのど真ん中を突いたアイアンです。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。