本連載「だからザ・ノース・フェイスは選ばれる!」は、現在セールス絶好調のザ・ノース・フェイスが、ユーザーから選ばれる理由を検証する企画。第49回は、「SUMMIT VECTIV PRO (サミットベクティブプロ)」をピックアップした。
本モデルは、ロングからウルトラディスタンスまでのレースにおいて安定感を保ちながらより速く走れるトレイルランニングシューズで、トップアスリートからの信頼も高い1足だ。
ザ・ノース・フェイス「サミットベクティブプロ(SUMMIT VECTIV PRO)」(品番:NF02300)。公式サイト価格は29,920円(税込)。幅/ラストはSTANDARD(E相当)
ザ・ノース・フェイスの「サミットベクティブプロ」は、走行時のエネルギーを推進力に変えて安定した走りをうながす「VECTIV」システムを搭載した高機能トレイルランニングシューズ。
アッパー素材には、通気性とプロテクション性の高い「デュラブルメッシュ」を採用し、シューズ内の蒸れをスムーズに排出する。
ソールユニットには、切れ込みを入れることで着地時などの横ブレを抑えるウィング形状の3Dカーボンプレートを備えているうえ、32mmも厚みのある高反発EVAミッドソールを配置して足の負担を軽減することに成功。高いクッション性と推進力で走りをサポートし、100マイルのような長距離トレイルランニングレースにも対応するモデルに仕上がっている。
大会で入賞を目指すスピードランナーから、100マイルの完走を初めて目指すランナーまで、幅広いレベルのランナーに対応するプロダクトである。
アッパーには、通気性とプロテクション性の高い「デュラブルメッシュ」を採用。シューズ内部の蒸れを効果的に排出する
厚さ32mmの高反発EVAミッドソールは、足の負担の軽減とすぐれた反発性を提供。前作の特徴でもあった、自然とストライドが伸びるような推進力は今作でも健在だ
ミッドソールには、切れ込みを入れることで着地時などの横ブレを抑えるウィング形状の3Dカーボンプレートを内蔵。プレートは、写真のように前足部の両サイドで巻き上げられている
あらゆる路面で高いグリップ性を発揮する「SurfaceCTRLラバー」アウトソール
「サミットベクティブプロ」を実際に履いて走ってみた!
今回トライした「サミットベクティブプロ」は、本連載において2021年2月に紹介した「フライトベクティブ」の後継モデルであり、同ブランドにおけるトレイルランニングシューズのトップモデルだ。前作は自然とストライドが伸びるような推進力の高さが魅力だったが、「今作でも比類なき推進力を備えている」ということを知り合いのトレイルランナーから聞いていたので、試走するのが楽しみだった。
まず足を入れてみると、中足部のフィット感のよさが感じられた。一般的なランニングシューズと比較すると最初はタイトに感じられたが、しばらく歩くと窮屈さはなくなった。
走り始めてみると、やわらかめにセッティングされたミッドソールが確実に路面からの衝撃を吸収し、その力を反発へと効率よく変換してくれるのが感じられる。前作「フライトベクティブ」のミッドソールも反発性は高かったが、本モデルの32mmというハイスタック&ハイリバウンドなEVAミッドソールは、それを大きく凌駕するレベル。それでいて、安定性をないがしろにしていないのは、内蔵されたウィング3Dカーボンプレートが大きく貢献しているからだと推測される。
木の根や岩といった凸凹した路面も走ってみたが、足裏の保護性と足裏感覚を両立していたのはありがたかった。プレートなどで突き上げ感を緩和しすぎると、路面からの情報を得られなくなってしまうが、本モデルでは絶妙な塩梅でそれが両立されていた。
アウトソールパターンはどちらかいうと刻みが浅めだが、やわらかい路面でもしっかりとグリップしてくれた。また、試走した東京の「青梅丘陵ハイキングコース」のスタート地点は舗装路だったが、アスファルトの路面でも変に引っかかることなく、快適に走れた。いつもどおりに「矢倉台」で折り返す6kmを走ってみたが、これまで履いて走ったトレイルランニングシューズの中ではトップレベルの快適性と推進力を兼ね備えていたことが印象的だった。
以上のように、「サミットベクティブプロ」は、業界トップレベルの推進力だけでなく、快適性を高いレベルで兼ね備えているので、ブランドがアピールするようにトップレベルのトレイルランナーだけでなく、100マイルを初めて目指すユーザーでも履きこなせそうだ。
また、安定性も高いレベルにあったので、長距離を走った際の膝や足首といった部位への負荷が最小限に抑制されるところもうれしいポイント。一般的に柔軟なミッドソールを使用して衝撃吸収性を高めると、その分安定性が損なわれがちだが、本モデルの場合、ウィング形状の3Dカーボンプレートをミッドソールに内蔵することで、高いレベルの安定性を提供してくれるわけだ。
「サミットベクティブプロ」は、「快適に長距離を走りたいランナー」「ワンランク上のレベルで走りたいトレイルランナー」「トレイルレースで結果を残したいトップランナー」など、あらゆるタイプのトレイルランナーに対応する1足だと思う。
ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間50分50秒。