1977年、ナイキがひとつの願いを込めて世に送り出したランニングシューズがあります。その名は「LD-1000(エルディー・セン)」。“LD”は「LONG DISTANCE」、つまり長い距離を走ることを意味しています。そして“1000”には、「1年間で1,000マイル走れるようなシューズ」を目指す、という想いが込められていました。
幻の名作とも言われるその「LD-1000」が、時を経て、今の時代に“復刻”として帰ってきました。しかも今回は、ランナーのためだけでなく、普段のファッションにも取り入れやすいライフスタイル向けモデルとしての登場です。
ナイキ「ナイキ LD-1000」(品番:IB8868-222)。「ミタスニーカーズ」での販売価格は、16,060円(税込)
オリジナル版の「LD-1000」の開発を手掛けたのは、ナイキの創業者のひとりであり、伝説的な陸上コーチでもあったビル・バウワーマン。足の専門医とともに、走る人の体への負担を少しでも減らすことを考慮して制作されました。
特に注目すべきは、かかとの部分。ただ分厚くするのではなく、広がるようなフレア状のミッドソールを採用することで、走るときの足のねじれや、膝への衝撃をやわらげる工夫がされています。これにより、腱鞘炎などのケガのリスクも抑えられるようになりました。
広がるような形状のミッドソール。ヒール部分には、1980〜90年代に発売されたナイキのトレーニングシューズやランニングシューズの一部に見られたロゴデザイン「縦ナイキ」を再現
本作を見てまず目に付くのが、独特な形をしたアウトソール、つまり靴底の部分。でこぼこした模様が特徴の「ワッフルソール」と呼ばれるデザインは、今ではナイキを代表するアイコンのひとつとして世界中で知られています。
まるでワッフルを焼くときに使う鉄板のような形をしていることからその名が付けられた「ワッフルソール」。実はビル・バウワーマンが実際にワッフルメーカーを使って試作したという、ちょっとユニークな誕生エピソードがあるんです。
ナイキのランニングシューズを象徴する「ワッフルソール」
機能においても、見た目においても、この「ワッフルソール」は大きな役割を果たしています。
特徴的なラグパターンがすぐれたグリップ力を生み出し、クッション性の向上にも貢献。路面の状況を問わず、良好な履き心地を提供してくれます。
またルックス面では、長い年月をかけて愛されてきた正統派ランニングシューズのスタイルとして、どこか懐かしさのあるレトロ感を演出。むだをそぎ落としたシンプルなデザインのなかに「ワッフルソール」の存在感が加わることで、足元がぐっと引き締まり、コーディネート全体にほどよいアクセントをプラスしてくれます。
今回の新作は、ただ昔のデザインをトレースしただけではありません。当時の空気感をそのまま味わえるようなノスタルジックな見た目を大切にしながら、現代のファッションにもしっかりなじむようアップデートされています。
とりわけ目を引くのは、クラシックな2トーンカラー。どんなコーディネートにも合わせやすく、大人っぽさと遊び心がちょうどいいバランスに仕上がっています。そして、メッシュアッパーに、スエードと表革という、表情の異なるレザーを組み合わせたマテリアル使いも絶妙なアクセント効果を生み出します。
アッパーには通気性にすぐれたメッシュ素材を使い、そこにスエードの補強パーツを重ねることで、デザインと耐久性の両立を実現
スウッシュにはレザー素材を使い、そこだけ色を切り替えることで、アクセントの効いた足元を演出します
このシューズは、ただ懐かしいだけの復刻モデルではありません。当時の機能性や哲学を受け継ぎながら、今を生きる私たちのライフスタイルやファッションにもフィットするように作られた、まさに“過去と現在をつなぐ一足”と言えるでしょう。
シックな雰囲気でどんなスタイルにもフィットしてくれます
●取材協力/「ミタスニーカーズ」