ヤマハ株式会社は、2017年9月11日、新製品「RMX(リミックス)」シリーズの2018年モデルを発表した。同社のゴルフブランドは2つある。1つは、少ない時間で結果を欲し、ゴルフに合理性を求めるゴルファー向けの「inpres(インプレス)」。もう1つは、情報にどん欲でゴルフを探求する意志の強いゴルファー向けの「RMX」である。つまるところ、お手軽さを求めるか、ゴルフを深く追求するかでターゲットを変えているということ。今回発表されたのは後者とあって、同社契約のプロゴルファーが男女3名ずつ登場する華々しいものとなった。
男女の契約プロがせいぞろい。左からユン・チェヨン、大江香織、大山志保、藤田寛之、今平周吾、谷口徹。ほかの契約プロも合わせ「ヤマハで年間10勝」を狙っている
中級者以上をターゲットにしたRMX
自ら研鑽を積み、ゴルフを高めたい人にとっては最適のクラブとなるという
RMX2018年モデル(以下18RMX)はドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティー、アイアン、ウェッジからなるゴルフクラブの総合シリーズ。ここではドライバー、フェアウェイウッド、アイアンの3カテゴリーにフォーカスし、プロのコメントも交えて紹介していく。
もっと低スピンで飛ばせるドライバーは作れないものか…?」ヤマハの看板プロ・藤田寛之が開発スタッフにリクエストを出した。コースの距離が年々伸びていく男子ツアーを戦っていくうえで、決して飛距離で勝負するタイプではない藤田のリクエストを受け、ヤマハのスタッフは奮い立った。「藤田さんを驚かすような、それまでの藤田さんを超えるようなクラブを作ろう!」スタッフの間で18RMX開発の裏テーマはいつしか「超・藤田」となった。
「若い選手はどんどん飛ばしている。48歳になったが、自分も飛距離を伸ばしたかった」と藤田選手
具体的に藤田が欲したのは“飛距離”と“直進安定性”。無駄なスピンを排除し、まっすぐ飛んでいく球が打てるドライバーを藤田は求めた。状況に応じてフェードとドローを打ち分けるが、基本的にはストレートに近い弾道を好む藤田。クラブに直進安定性が加われば、飛距離アップが望めると感じていたようだ。
そこでヤマハが注目したのが「ヘッドターンエネルギー構造」。同じようにヘッドターンしても、フェースがシャフト軸から遠いほうがインパクトのエネルギーが大きくなる。そこで前作よりもフェースを7mmトウ側に移動し、同じスイングでも大きなエネルギーをボールに与える工夫を施した。これは、ヘッドターンのしやすさに定評のあるヤマハならでは。大型ヘッドであっても"つかまり性能"を重視してきた技術が進化した格好だ。
シャフト軸から遠いほうがインパクトのエネルギーが大きく、ボール初速が速くなる
ボディを極限までたわませて反発性能を上げ、初速アップを実現
18RMXのドライバーは「RMX118」と「RMX218」の2モデル。前者は“ストレート弾道で飛ばす”、後者は“つかまえて飛ばす”がコンセプトになっている。
ドライバーは2種類がラインアップ
ソールに白いラインの入るRMX118ドライバー
ヘッド体積はやや小ぶりな445cc。上級者が好みそうな顔つきだ
RMX218ドライバーはソールに赤いラインが入る
ヘッド体積は460cc。ヘッドに奥行きがあり、構えたときに安心感を与えてくれる
18RMXの2種類のドライバーは、118が中上級者向け、218が初級者向けということになるが、上級者だからといって218が合わないとは限らない。218にはドローバイアスがかけられており、もっとつかまえて飛ばしたい中上級者も使える可能性がある。ドライバーに自信がなければ、まずは218を試すのがいいだろう。118はストレートに近いドロー、フェードを打ち分けたいプレイヤーに向いているが、左へのミスに悩むパワーヒッター(腕前は問わない)が試してみてもいいはずだ。「RMX118ドライバーを打って弾道測定器で測ると、前作よりキャリーが5〜7ヤード伸びた」という藤田選手。18RMXのドライバーは確実に性能を上げてきた証拠だろう。また、今作のスリーブが旧モデルにも対応している点も見逃せない。好みのシャフトを持っていれば、ヘッドだけ購入すれば使用可能だ。
18RMXのアイアンは前作と同じく3種類をラインアップ。ロフト角が大きく、飛びすぎを嫌うベタープレイヤー向けの「RMX018ツアーモデル」、軟鉄鍛造ボディにスリットを入れてミスの許容性をやや向上させた「RMX118アイアン」、ミスに強く飛距離も出せる「RMX218アイアン」だ。RMX018は、オーセンティックなブレードアイアン。期待の若手、今平周吾選手は「とにかく打感が柔らかく、弾(はじ)きがいい」と018を絶賛。「ソールが丸いので、低い球を打つときもつっかからない」と抜けのよさにも満足しているようだった。この018、藤田選手もすぐにインバッグしたようだ。
「打感がいいので距離感が作りやすい」(今平選手・中央)。「018はマッスルとキャビティの間くらい。すぐに投入しました」(藤田選手・左)「僕にはちょっと小振りすぎ。018は上級者向けでしょう笑」(谷口選手・右)
「アイアンは上から打ち込むタイプなんで、118を試しています」(大山志保選手・右から2人目)
軟鉄鍛造ならではの打感と、14%アップした直進性の強さでグリーンを狙える
RMX118アイアンの7番。ほどほどのサイズで多くのプレイヤーに受け入れられそうだ
さらに拡大した反発エリアにより、ミスに強く飛距離も出る
RMX218アイアンの7番。フェースのオフセットがやや強く、つかまえて飛ばす顔つきだ
昔ながらのフラットバック形状を継承するデザイン
018アイアンの7番。上級者が好む“操作性”を一番に考えられたサイズ
非常に洗練されたルックスを持ち、集まった報道陣の多くを魅了していた018だが、アベレージプレイヤーが“結果”を求めるなら118か218になるだろう。アイアン3モデルにはプロもうなる“抜け”を追求したアクティブソールが搭載されており、どのモデルを選んでもヤマハの新技術を享受できる。
打ち込んでも刺さらずしっかり抜けるよう、リーディングエッジ側のバンスを広くしている
谷口徹といえば、そのバッグには長らく他社製フェアウェイウッドが入っていることで有名だった。ヤマハ契約とはいえ頑(かたく)なに使い続けるそのウッドについて本人は「もうこれは変えられんよ」といい続けてきた。しかしそれがついに"退役"を向かえたという。
「古いウッドですか? もうどこかへやってしまった!」と笑う谷口選手(右)
後釜に座ったのは18RMXシリーズの「RMX FW」だ。「毎年新製品を合宿に持って行くが、フェアウェイウッドはいつも変えないやろなと思っていた。しかし、今度のは違ったんです。芝の上からでもティーアップしたようにやさしく打てる。合宿を終えてすぐに(ヤマハに)オーダーを入れた」のだそうだ。打ちやすさと飛距離を合わせ持った18RMXのフェアウェイウッドは、芝の上から打ってみたくなる逸品だ。
前作比で直進安定性20%アップ。飛んで曲がらなくなったという
RMX FWの3W。ヤマハらしいキレイな顔つきは健在
ライに影響されにくいソール形状をしている
ロフトバリエーションは19度、22度、25度
契約プロと2年をかけて共同開発した新設計のソールがウリ
クセのないティアドロップ型のヘッド
18RMXシリーズは、常に実戦の場、つまりコースの芝の上で開発されたという。そのため、芝からの抜けのよさやボールのつかまり、ミスへの許容性などが、より本番に近い環境でテストされ、磨き上げられてきた。練習量、ラウンド回数ともに豊富で、常に自身の進化を目指すプレイヤーは、一度18RMXを手に取り、芝の上から試打するべきだろう。プロの厳しい要求をクリアしたクラブで打てば、今までにない何かを感じるに違いない。この18RMXシリーズは2017年10月6日より、RMX218ドライバー・アイアンは11月3日の発売が予定されている。
80台で回ったかと思えば、突然100打ったりするゴルフ部員。得意なクラブは強いて言えばミドルアイアン。苦手なドライバーとパッティングを安定させるべく、練習器具を漁る日々です。