ナイキは、今マラソン界を席巻しているランニングシューズ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」と同じミッドソール素材を採用した新モデル「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」を、2018年8月2日に「NIKE.COM 」と一部小売店で発売する。
2018年7月11日にナイキが発表した「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」
そもそも、既存モデル「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」は、ナイキによる前人未踏のフルマラソン2時間切りプロジェクト「Breaking2」から生まれたエリートランナー向けモデル。同社史上最速シューズと言われており、最近では2018年3月に行われた「東京マラソン2018」で設楽悠太選手が使用し、フルマラソン日本記録を実に16年ぶりに更新。2時間6分11秒で総合2位(日本人の中では1位)に輝いた。
「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」。設楽選手以外にもさまざまなマラソンランナーが使用して好タイムを出したことから注目を集め、現在売り切れている店がほとんどだ。実際、最近の主要マラソン大会の表彰台の75%を、同モデル着用選手が占めるという
そんな中で発表された「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」は、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の要でもあるミッドソール素材「ナイキ ズームX」を採用する。
「ナイキ ズームX」の最大の特徴は、エネルギーリターンの高さ。エネルギーリターンとは反発性のことで、簡単に言えば、踏み込んだ足が地面から離れるときに素材が元の形に戻ろうと跳ね返って、足にエネルギーを還元させる割合だ。通常のランニングシューズのミッドソール素材だと、エネルギーリターンは60%ぐらいで残りの40%は損失してしまう。いっぽうで、「ナイキ ズームX」のエネルギーリターンは、驚異の85%。走行時の推進力は抜群と言えるだろう。
また、「ナイキ ズームX」は軽量なのもウリ。近年のランニングシューズは300g前後のモデルが多い中、メンズの28p(片足)モデルで238gと、驚きの軽さを実現している。
「ナイキ ズームX」は、ソールのフルレングスに搭載。持ってみると、誰もがその軽さに驚く
なお、ミッドソールは、耐久性と安定性を高めるために、「クッション性」「反発性」「軽量性」「耐久性」の4つを実現する素材「ナイキ リアクト」によって一部を補完されている。
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いっぽう、「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」のラスト(靴型)は、2018年6月2日に新モデル「35」が発売された「ナイキ エア ズーム ペガサス」がベース。エリートランナーから聞いた意見をもとに、「ナイキ エア ズーム ペガサス」をアップグレードし、スピード力を高めたという。
「ナイキ エア ズーム ペガサス」。通気性にすぐれたメッシュアッパーを採用する
「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」のアッパーには、シームレスで透明なメッシュ素材を使用。中央部には、シュータンの端から前足部の下まで、太めのレーシングストライプが飾られている。また、外側からも見える「フライワイヤーケーブル」は、シューレースと連動してランナーの希望通りの締まり具合を提供する。
ビビッドなレッドのストライプをダイナミックに配置
透明メッシュ素材の下に見える「フライワイヤーケーブル」
履き口は外側に反っており、アキレス腱を快適な状態に保ち、靴擦れも防ぐ
また、かかととつま先の厚みの差「オフセット(ドロップ)」は10mm、前足部分のソールは12mmと高めで、後ろから前へスムーズな重心移動が可能。安定感のある走りをサポートしてくれる。
かかとは、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」や「ナイキ エア ズーム ペガサス」と同じ流線型に成型されている
アウトソールのラバーは、小さな突起が衝撃を吸収しつつ、さまざまな路面でのトラクションを高める。中央(白いパート)はラバーを抜き取って軽量化を追求
既存モデル「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の場合、ランナーは硬いプレートのおかげで地面から素早く足を跳ね上げることができ、推進力を感じることができた。しかしこの時、スピードを感じられる代わりに、足の裏には硬さを感じていた。
「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」や「ナイキ ズーム フライ」のミッドソールに搭載されたプレート
プレートが搭載されたシューズを履いてメジャーなマラソン大会を走り、優勝したケニアのエリウド・キプチョゲ選手といったエリートランナーに聞くと、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」はプレートがあるからこそマラソンレースには最適であるいっぽうで、日々の練習には1歩ごとにそのような「跳ね」は必要ないと言う。
このような経緯から、「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」には、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」が採用するようなカーボンファイバーのプレートは搭載されていない。つまり、すぐれたエネルギーリターンをもつ素材「ナイキ ズームX」のみを搭載する「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」は、練習用として好ましい設計に仕上がっているわけだ。
では、本稿で登場した「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」「ナイキ エア ズーム ペガサス 35」「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」をどのように使い分けるべきか。ナイキが提唱するのは、高いエネルギーターンと推進力を持つ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」はレース本番用、クッショニング性の高い素材「ズーム エア」をフルレングスで搭載する「ナイキ エア ズーム ペガサス 35」は、ジョギングやリカバリーラン用、そして「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」はスピードやテンポ、距離を追い求めるトレーニング用として使用することだ。実際に、「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」は800q以上の長距離走行に耐えられるという。
「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」の発表会のワンシーン。左から、設楽悠太選手、オリンピック4回出場のアメリカ人メダリスト、シャレーン・フラナガン選手、「ナイキ オレゴン プロジェクト」所属の大迫傑選手。フラナガン選手は、テンポよく気持ちよく走れる「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」を、「(練習の中の)デザートシューズ」と表現する
月刊アイテム情報誌の編集者を経て価格.comマガジンへ。家電のほか、ホビーやフード、文房具、スポーツアパレル、ゲーム(アナログも含む)へのアンテナは常に張り巡らしています。映画が好きで、どのジャンルもまんべんなく鑑賞するタイプです。