オグさんです。
今回は「XXIO CROSS(ゼクシオ クロス)」というモデルを紹介します。
こちらが、ゼクシオ クロス アイアン
ゼクシオは、ゴルフをしない方でも知っていることの多い、ゴルフブランドの王様とも呼べる存在。2000年にブランドが誕生して以来、20年近くトップセールスを続けています。そんなゼクシオから、昨今の飛び系アイアンブームの流れに乗って、飛距離を追求したゼクシオ クロスが登場したのです。
今回は従来のゼクシオ テン アイアンと比較をしてみました。
ゼクシオ クロスは飛距離を追求するためにさまざまな工夫がなされています。まずはロフトを比較してみてみましょう。どの番手もクロスのほうが少ないロフト設計になっており、最大で6度も違う番手があります。これは、飛距離にして2番手ぐらいの差になるのです。
上がゼクシオ クロス、下がゼクシオ テン、どちらも9番です。同じ番手でもロフト角が6度も違うので、フェース面の見え方が全然違いますね
装着されているカーボンシャフトでも、両者で特性が異なるものが装着されています。ダンロップ社製のシャフトには「インターナショナルフレックスコード」という4桁の数字が記載されていて、シャフトのどのへんがしなるかがわかるようになっています。ゼクシオ クロスに装着されるカーボンシャフトはゼクシオ テンのものと比べて中間から先端にかけてのしなりを多く持たせてあり、ヘッドが走らせやすいように設計されています。
シャフトに印字された4桁の数値がインターナショナルフレックスコード
4桁の数値は、左からグリップ側、グリップ側の中間付近、ヘッド側の中間付近、ヘッド側のシャフト部分、のしなりを表しており、数値が高いほどしなりが少ない、つまり硬いということになります。上記の写真は下がゼクシオ テン、上がゼクシオ クロスです。ゼクシオ クロスのほうがヘッド側にしなりを持たせているのがわかります。飛距離を追求するために、シャフトをよりしならせ、ヘッドを走らせようという意図が見えますね。
ゼクシオ クロスにはスチールシャフトもラインアップされています。やや重さのある設定なので、ある程度のヘッドスピードを稼げるゴルファー向けの仕様になりますね。シャフトのしなりが安定しやすく、方向性にすぐれているともいえます
ゼクシオ クロスはロフトを少なくした分、打ち出し角を稼がなければならないため、非常に凝った構造のヘッド設計になっています。ロフトが少ないとエネルギー効率がよくなるので、ボール初速を高めやすくなりますが、その分打ち出し角が低くなりがちです。その打ち出し角を稼ぐためには、重心をできるだけ深く低く設計する必要があります。
そうすればインパクト時に高いエネルギー効率を保ったままフェース面が上を向くので、ボールを上げることができるのです。重心の深く低い設計を実現するために、ポケットキャビティ構造を採用し、フェース裏を深く掘ってあります。さらに、広い打点エリアを確保するためにゼクシオ テン アイアンよりもフェース厚を薄くするなど、高い技術があってこその工夫が随所に見られます。
ポケットキャビティの深い掘りこみの奥には、ウェイトが配置されています。芯を外してもヘッドのブレを抑えて直進性を高めるための工夫です
ゼクシオ クロス(左)は、ゼクシオ テン(右)と比べてソールの幅が広くなっています。幅の広いソールは滑りやすいため少々ダフってもミスを軽減する効果があり、また低重心化にも寄与しています
それから、ゼクシオ クロスにはDW(デュアルウェッジ)という番手があります。ポジションとしてはSW(サンドウェッジ)とAW(アプローチウェッジ)の間に位置するウェッジ。全体的にロフトを少なく設定したことによる、短い番手間のロフトピッチが広くなってしまう問題を解決するために組み込まれている番手ですね。
上記のロフト設定を見てもらえればわかりますが、ゼクシオ クロスのDWのロフト設定は49度、ゼクシオ テンのAWと同じです。ゼクシオ クロスのAWは43度で、ゼクシオ テンのPWが43度ですから、まるまる1番手違うのです。このDWがないとAW43度の下はSWの56度になってしまいますから、よりシビアなコントロールショットが必要になってしまいます。
ウェッジには各メーカーでいろいろな表記や呼称がありますが、「デュアルウェッジ」はなかなか珍しいですね
それでは、実際にゼクシオ クロスを打ってみたいと思います。
参考として、7番アイアン同士でゼクシオ テンとデータを比較しました。想定ヘッドスピードはドライバーでだいたい42m/sぐらい。ゼクシオ クロスはカーボンシャフトとスチールシャフト両方をテスト。ゼクシオ テンはカーボンシャフトのみです。
ゼクシオ テン同様、フェースに硬い素材を使っているのに芯を外しても不快な感じはほとんどありません。芯を食えば弾き感の強いピシッとした打感が味わえます。このへんはさすがゼクシオ! といったところ
その前に1つ訂正が……。計測データの飛距離が私の設定ミスで「メートル表示」になってしまっています。ごめんなさい! 換算した数値を書いておきますのでそちらを参考にしていただければと思います。
ゼクシオ クロス #7
まずゼクシオ クロスのカーボンシャフトを打ちました。びっくりしたのがボール初速の速さ。さすが飛びを追求しただけあって、7番ですがロングアイアンを打っているような勢いでボールが飛んでいきます。それでいてボールの高さもちゃんと出ているので、飛ぶけどキャリーが出ないなんてことはなさそうですね。
これはヘッド構造もですが、とりわけカーボンシャフトがいい仕事をしている感じ。ヘッドがシュン! と走る感じは振っていてとても気持ちよかったです。個人的にはもう少しボールがつかまるクラブなのかなと思っていましたが、マイルドなヘッド挙動で適度なつかまりといった感じでした。
カーボンシャフトの数値 155.2m ⇒ 169y
お次はスチールシャフト装着のゼクシオ クロス。カーボンのときと同じような力感で振りましたが、シャフトの違いなのか少しだけヘッドスピードは落ちました。その分、前に飛ぶ強い球が出ましたね。
また、狙ったところに出しやすい感じも受けました。私がちょっと左に打ち出してしまいましたので数値的には距離は出ませんでしたが、ドライバーで42m/s程度振れる方ならここまでの距離差は出ないでしょう。
スチールシャフトの数値 142.6m ⇒ 155y
最後はゼクシオ テンのカーボン。このクラブは何度も試打させていただいていますが、いつ打ってもよく上がり、つかまり、ミスに強い。パワーがない人が効率よく飛ばせる、よくできたアイアンですね。
ゼクシオ テン #7
134.6m ⇒ 147y
ゼクシオ クロスと比べると同じ番手でわずかに重いのですが、その分短いので振っているときの抵抗感はほぼ同じに感じました。飛距離はゼクシオ クロスには及びませんが、ほかのモデルと比べると十分飛んでいる部類に入りますよ。
では、肝心のそれぞれどう違うかという点ですが、
・飛距離性能が高く曲がりの少ないゼクシオ クロス カーボン
・やや重くて打ちごたえがありつつ、安定性と飛距離性能を高めたゼクシオ クロス スチール
・ほどよい飛距離性能と扱いやすさにすぐれたゼクシオ テン
といったところでしょうか。
ゼクシオ クロスのすごいところは、振りやすさ、ミート率を考慮してだと思いますが、クラブの長さをそれほど長く設定しなかったのにほかの飛距離系アイアンと同等の飛距離性能を有していることにあると思います。
さらにそこに直進性能を付加して、インパクトでフェースを目標方向にさえ戻せれば後はクラブが何とかしてくれる。ゴルファー自身に求めるスイングを極力シンプルなものにしています。
換言すれば、さまざまなテクニックや咄嗟(とっさ)のアジャストをしたいゴルファーにはゼクシオ テンのほうが使いやすいと感じるでしょう。「とにかくアイアンにも飛距離を!」と考えるなら、ゼクシオ クロスを買えば後悔しないと思いますよ。
最後に、このゼクシオ クロスは、5番アイアンから6、7、8、9番、PW、AW、DW、SWと合計9本ラインアップされているのですが、売られ方はいくつかあります。
・7番からPWまでの4本セット
・7番からSWの7本セット
・5、6、AW、DW、SWの各単品売り
ゼクシオ クロス #5を探す
ゼクシオ クロス #6を探す
ゼクシオ クロス AWを探す
ゼクシオ クロス DWを探す
ゼクシオ クロス SWを探す
シンプルにアイアンの飛距離を追求するなら、すべてのウェッジまで入った7本セットがおすすめですね。ウッドやユーティリティーが苦手な人なら5番6番まで入れてもいいでしょう。飛び系のロングアイアンは下手なユーティリティーより距離が簡単に出せる可能性があります。100ヤード以内はある程度コントロールしたいという方はPWまでのセットを購入し、別モデルの単品ウェッジと組み合わせてもいいでしょう。ただし、PWのロフトが37度と非常に立っていますので、43度のAWまで購入し、その下を単品ウェッジで揃えたほうが飛距離の設定は作りやすいと思います。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。