ゴルフ大好きな元サッカー日本代表の城彰二さんによるゴルフクラブ試打企画の第7回。スリクソンのドライバー、「Z585」と「Z785」を打ち比べてみました。
じょう・しょうじ 1975 年北海道室蘭市出身。中学生のときに父親の出身地である鹿児島県に帰省し、当地の鹿児島実業高校に入学し、サッカーの技術を磨く。高校 3 年時には冬の選手権大会でベスト 4 入り。卒業後は J リーグのジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)に入団し、デビュー戦から 4試合連続ゴールを挙げて注目される。また、各年代の日本代表としても活躍。1996 年のアトランタ五輪ではブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献、A 代表では 1998 年フランス W 杯に出場した。現在はテレビ解説や、北海道社会人チーム「北海道十勝スカイアース」の統括ゼネラルマネージャーに就いている。JFA 公認 S 級ライセンス保持。ゴルフを本格的に始めて 5 年、平均スコアは 85 くらいで、元サッカー選手の仲間とラウンドし、ゴルフ談義で盛り上がっているとのこと。最近ではサッカーの現場でもゴルフの話題で持ちきりだとか……。
編集N:今回はスリクソンのドライバー、「Z585」「Z785」の2本を打ち比べていただきます。
城:スリクソンといえば、松山英樹選手をはじめとする“アスリート”のためのクラブっていうイメージがありますね。
編集N:確かに。「SRIXON」ロゴをまとったキャップやバイザー、キャディバッグなどを使っている人は、無条件に3割増しくらいでうまそうに見えます(笑)。
城:スポーツのブランドって、そういうのは大事ですよ。プロ競技の世界で使われるものですから。
編集N:はい。今回の2本は、アスリート用ドライバーの中でも性質が異なるもので、まずはZ585から手にとってみてください。
Z585を構える
城:どれどれ。お、ヘッド形状はシャープですね!
編集N:Z585は、アスリートモデルの中でも比較的やさしさを重視して作られていますが……。
城:まあ、ヘッドサイズは大きいけどボワンとしてないっていうか、大きいけれどやや締まって見えるというか。でもスイートエリアは広くてやさしそうな印象です。うまくできている。
編集N:多くのメーカーと同じ、兄弟モデルがラインアップされている、やさしいほうです。
城:ちょっと打ってみますね。(Z585を打つ)
城:おおー、ボール初速が速い! あっという間にはるか彼方に飛んで行ってる感じがします。すげえ!
編集N:今回もテンフィールズファクトリー株式会社より弾道計測器「スカイトラック」をお借りしたので、データを見てみましょう。
数字は一番右端の球。高さのあるフェードボール
編集N:いきなり70m/s近く出てます! もっとスピン量が減ればいいのでしょうが、それは多分シャフトと城さんのマッチングでしょうね。
城:軽いフェード気味ですね。これはこれで、いいんじゃないかな。
編集N:PGAツアーっぽい弾道じゃないですか(笑)。
城:置きにいく300ヤード?(笑) まあとにかく、いいですよZ585。この連載で今まで打ってきたいくつかのアスリート向けドライバーに比べて、軽くて振りやすい。
編集N:ヘッドスピードが50m/sに迫ろうかという城さんでも、軽くて振りやすいほうがいいんですか?
城:そりゃあ、そうですよ(笑)。PGAツアーの選手だって、あんなにパワーがあるのに今は60g台のシャフトが流行ってるんでしょ?
編集N:確かに、プロツアーでは、シャフトは「軽・硬」のトレンドがあるようですね。もう少し硬いシャフトを装着して城さんが打ったらどうなるか、私も興味があります。
城:ビシビシとストレートボールを打っちゃいますね(笑)。いやー、最初の印象どおり、芯が大きくてやさしいですよコレ。
「少々芯を外しても大丈夫っていう安心感がありますね」
編集N:設計意図どおりですね。
城:どこで当たっても、というのは大げさですけど、打っていて芯が広く感じました。これが安心感につながって、ビュンビュン振っていけるひとつの要因になっているのかな。
編集N:的確な分析ですね。おっしゃるとおりかもしれないです。
城:小細工しないで振り切って、真っすぐ飛ばすドライバーなんだろうなあ。
編集N:極めて現代的というか、今の主流の作りですよね。では続いてZ785を。
城:おおお、今打ったZ585と顔が全然違う! こっちのほうが断然シャープに感じます。
左がZ585、右がZ785
編集N:こちらは、ボールを操る「操作性」も忘れていない、とメーカーはうたっています。
城:確かに、顔って大事です。うまくなった気がしますよ、構えただけで(笑)。
編集N:Z585はネックに調整機能を持っていませんでしたが、こちらは調整機能を備えています。アスリートの細かいニーズに応えられるモデルですね。
城:打ってみます。(Z785を打つ)
編集N:いかがでしょう?
城:フェースに球が乗ってる感じがします。
編集N:いわゆる「球持ちがいい」というか、フェースとボールが長くくっついてる感じ、っていうことですかね?
城:そうそう。バチンてはじくんじゃなくて、一回くっついて、そこからグッと押していくっていうか。
編集N:Z585とは、そこのフィーリングの作り分けもうまくなされているようですね。
城:さすがだなあ。
編集N:今回、シャフトを2種類お借りしたんですが、どうですか?
2種類のシャフトで打ち比べ。上が「Miyazaki MIZU」、下が「Miyazaki Mahana」
城:青(Mizu)のほうが、ヘッドがグッと走る感じがありました。こっちのほうが気持ちいいし、ヘッドの特性が生きる気がする。ソール後方のウェートがインパクト付近で効いてきて、ちょっとだけロフトがつくっていうかヘッドが上向きになるっていうか、そんな感じがありました。
重心が深いとインパクト付近でヘッドは上向きになるが、Z785を打ってみてそう感じたという
編集N:重心が割と深いんでしょうね。
城:そうそう。だから、アスリートモデルでシャープな顔してても、すごく難しいわけじゃない。でも僕はアマチュアだからZ585を選びますね。何より、安定してるんで。
編集N:操作性を持たせてあるということは、ヘッドが動きやすい。言い換えると、意図した動きもそうでないない動きもしやすい、と。
城:そう。僕はそこまでボールを操作しようとは思わないんで、安定して真っすぐ飛んでいくほうが好みです。でも、Z785で意図したボールが打てたときはめっちゃ気持ちよさそう。
編集N:そこは、スコアだけではないアマチュアゴルフの楽しみがありますね。
球筋の打ち分けはZ785のほうが断然やさしくできる
城:2本打った感想ですが、Z785はスイートエリアが585に比べて少し狭いのかも。その狭さが、動きのシャープさと関係してくる。
編集N:つまり、高確率で芯で打てる人向け。
城:そうそう。で、ちょっとスピンが入る。対してZ585は低重心の低スピン。フケずに曲がらない球を打ちやすいと思います。
編集N:今回は意外な結果でした。取材前は、城さんは絶対785を選ぶと思っていましたから(笑)。
城:同じアスリートブランドのクラブでも、モデルの性能差が大きいんだってことを強く実感しましたよ。
80台で回ったかと思えば、突然100打ったりするゴルフ部員。得意なクラブは強いて言えばミドルアイアン。苦手なドライバーとパッティングを安定させるべく、練習器具を漁る日々です。