オグさんです。
今回はヤマハの「RMX 120 ドライバー」を試打させてもらいました。
ヤマハのアスリートブランドである「RMX(リミックス)」シリーズ。同社のアスリートモデルは、契約プロである藤田寛之プロの影響もあり、性能はもちろん、形状やフィーリングを重視したクラブを得意とし、そのていねいなクラブ作りはたくさんのゴルファーに受け入れられてきました。
そんなRMXシリーズが今回大胆なモデルチェンジをしました。飛距離とやさしさを最優先に考えて開発としたという今回のモデルは、従来のクラブとはまったく異なる仕上がりのようです。
テクノロジーもそういった考えに沿ったもので、フェースを囲むようにリング状に施されたリブ「BOOSTRING」と、打点ブレのミスに大きく寄与する慣性モーメントの大型化。BOOSTRINGはボール初速が大幅に向上したようですし、慣性モーメントによってかなりミスに強くなったようです。今回試打させてもらった120は、プロやアスリートに向けたモデル。どのような仕上がりか、さっそく試してみたいと思います。
ちなみにRMXシリーズのドライバーにはもうひとつ220というヘッドタイプがあり、こちらはアベレージゴルファーに向けたモデル。こちらのモデルについては別の記事で紹介しておりますのでよかったらご覧ください。
ヘッドは非常に大きく、一見しただけではアスリートモデルとわかりません。デザインは兄弟モデル220と共通ですが、こちらは重量調整用の脱着式ウェートがソール後方に装着されています
投影面積は大きめですが、ややヒール寄りにボリュームを持たせることで適度な操作性をイメージさせる形状。シェイプはいびつなところがなくスッと構えられます。やや面長なところもあり、たたいてもつかまり過ぎない感じがありますね
ちなみにこちらはRMX220。120と比べるとさらに投影面積が大きく、奥行きもあります
ややヒール寄りにボリュームがあり、上級者がたたけそうな形状。このあたりにアスリート向けのにおいがしますね
この形状だけ見るとシャローフェースでいかにもボールが上がりそうな印象を受けます。実際にどんな弾道が出るのか楽しみです
アドレスでは、投影面積の大きさが大きな安心感を生んでくれます。ただヘッドは大きいのですが、形状自体はアスリートモデルらしいシェイプで、鈍重なイメージはなくしっかりたたいていけそうな感じもあります。個人的に好きなのは、ヘッドのヒール側にボリュームがあるところ。あまりトゥ側にボリュームがあるクラブだとつかまらなそうな気がして、力んでしまうことが多いのです。ただ、そのままだとつかまり過ぎるイメージを抱く人もいます。この微妙な案配を、フェースのトゥ側に丸みを持たせ、いわゆる“逃げ顔”にしていることで対処しています。大きいのに上級者が嫌う見た目の要素をうまく取り除いている印象を受けました。
何球か打ってみると、打ち出した方向に強いライナー性の弾道が真っすぐ飛んでいきました。アベレージ用の220は軽いドローをともなう適度につかまった弾道が出ましたが、こちらは完全なニュートラル。
次にやや操作を試みてみました。ドローならドロー、フェードならフェードと狙った方向にボールは曲がっていきますが、イメージよりははるかに曲がらない。“どスライス”のイメージで強めのフェードになるくらいですね。球質は、適度にスピンを伴ったライナー性の弾道。強振してもスピンが増えず、振れば振るだけ飛距離につながりました。球の高さはロフトなりといったところなので、飛距離性能を生かすには、ロフト選びがひとつのカギになると思います。
ミスの許容度に関しては、アスリートモデルの中では非常に強いと言えますね。飛距離ロスも少なめですし、極端な曲がりもありません。直進性の高い弾道でストレスなく飛ばし、いざというときに多少は意図して曲げられる、そんなクラブです。
適度にフェースに乗る感じがある、やわらかめの心地よい打感。打音は低めの乾いた控えめなもの。アスリートが好む仕上がりになっていると思います
構えたときに見えるヒール側のボリュームが、投影面積の大きさによる鈍重なイメージをうまく消して、振り抜きやすそうなイメージを持たせてくれます
RMX120は純正シャフトのほかにカスタムシャフトが数種類用意されているのですが、今回はフジクラの「スピーダーエボリューション6」をお借りしたので、純正シャフトと打ち比べてみました。
上が純正の「TMX-420D」、下がカスタムシャフトのフジクラ「スピーダーエボリューション6」です。特性はかなり異なります
純正の「TMX-420D」はかなりしなり量が大きく、ゆったりとしたスイングで振るのに適したシャフトです。今回お借りしたシャフトはSRフレックスでしたが、以前Sフレックスも試打させていただいたときも同じ印象。タイミングが非常に取りやすく、ある程度しっかり振ってもちゃんとついてきてくれるシャフトですね。
直進性が高くミスに強いとはいえ、ライナー性の強い弾道が出やすいヘッド特性なので、安定して飛ばすにはミート率を高めたいところ。そういった意味ではタイミングの取りやすい純正のこのシャフトがいいですね。
カスタム扱いになる「スピーダーエボリューション6」はシャキッとした振り味で、かなり振りごたえがあります。純正と比べると同じSフレックスでもかなり硬く感じるので、ある程度振れる方、ヘッドスピードだと40m/s以上は欲しいところです。120と組み合わせると弾道がさらに強くなるので、ヘッドスピードがないとキャリーが出にくくなってしまうでしょう。わずかですが、つかまりも抑制されるので、左のミスを嫌がる方にいですね。強振してもへこたれない強さがありますので、常にしっかり振っていきたいパワーヒッターにおすすめの組み合わせです。
純正:やや左に打ち出しましたが、そのままほぼ真っすぐ。自分のクラブならもう少し強くフックしているので、クラブの直進性の高さが表れました。こういう、いったちょっとしたミスでも助けてくれるクラブ(とシャフト)です
スピーダー:本当は軽いドローを狙ったのですが、ちょっと芯を外し、ど真っすぐの強い弾道が出ました。スピンが多いのはそのせいです。たたけばたたくほど飛距離につながりそうで、つかまりも控えめ。ハードヒッターで左のミスが嫌な人が好む組み合わせですね
120は、つかまりがニュートラルで最低限の操作性を持ち合わせ、直進性の高いモデルというのが私の率直な印象です。アベレージ向けの220は適度なつかまりを持たせた打点のミスに非常に強い直進性の高いヘッド。どちらもライナー性の強い弾道が出るので、構えたときの雰囲気など好みに合わせてヘッドを選ぶといいと思います。
私自身がアスリート向けの120、アベレージ向けの220と分類して記述してきましたが、しっかり打ち出し角を確保するロフト角と自分に合ったシャフトを選べば、ヘッドスピードが速くない方でも120は使えます。反対に、パワーヒッターでも220を手にすることで効率よく飛ぶ弾道が打てます。安定感を最大限重視したいなら220、多少の操作性を求めるなら120、という選び方でもいいでしょう。個人的には、多少は操作したいと考えるゴルファーなので、120が好きですね。
写真:野村知也