オグさんです。
今回は、ピンの新作パター「HEPPLER(ヘプラー)」シリーズを試打させてもらいましたので、レポートしたいと思います。
ヘプラーシリーズは10種類のヘッドをラインアップしています
ヘプラーはソリッドな打感と打球音を追求したシリーズで、「はじく」感覚を大事に作られています。どのモデルもブラウンとブラックのツートンカラーに仕上げてあり、コントラストによる構えやすさを狙ったデザインを採用。
ヘッドはオーソドックスなブレードタイプ(奥行きの短いヘッド)はもちろん、さまざまな形状やサイズのマレットタイプ(奥行き、サイズとも大きなヘッド)を用意し、好みに合わせて選べるようになっています。
フェースの素材は2種類用意されていて、ブレードタイプや小型のマレットはステンレススチール(右)、中型、大型マレットはアルミニウム(左)が採用されています
どちらも、はじく感触を演出した仕上がりですが、ステンレススチールのほうが金属らしいソリッドな打感なのに対して、アルミニウムははじき感の中にやわらかさを感じる打感になっています
ピンのすばらしいところは、自社でパターフィッティングを行ってユーザーに合ったモデルを選ぶだけでなく、どんな人にどのモデルが合うのか、しっかりした見識を持っているメーカーであること。そのため、商品をきっちりと分類し、性能分けがされています。
ピンのパターシャフトには、ヘッド特性を分類し、どんなストロークタイプに合うかを表すシールが貼られています。このシールのおかげで、どんな人が使いやすいパターなのかがひと目でわかるようになっているのです。
ストロークタイプをピンでは3種類に分類。どれにマッチするかを表すシールがシャフトに貼られています
この3分類、具体的に何が違うのかというと、シャフトを支えてヘッドを宙に浮かしたときにフェースが作る角度、いわゆる重心角です。トゥ側が下に垂れ、フェースが大きく横を向くモデルが「アークタイプ」、フェースが真上もしくはほぼ真上を向くモデルが「ストレートタイプ」、その中間が「セミアーク」です。
シャフトを支えてヘッドを宙に浮かしたときにフェースが真上を向くのがストレートタイプ(青)、大きく横を向くのがアーク(赤)、その中間がセミアーク(緑)です
ストロークタイプの違いは、簡単に言ってしまえば、ヘッドの動く軌道が、ワイパーのように“弧”を描くか、スライドするように“まっすぐ”動くかの違いです。アークは弧を描く軌道、ストレートはまっすぐ動く軌道で、その中間、ゆるやかな弧を描くのがセミアークになります。
アークタイプはヘッドが弧を描いて動くので、フェースの開閉も大きくなります。それには、トゥ側に重さがある重心角が小さいモデルがマッチします。
写真の右手はフェースの向きを表しています。弧を描く軌道はテークバックでフェースが開き、閉じながら打ち出す動きになりやすく、これには重心角の小さいパターがマッチします
開いて閉じる動きをしやすいのがアークタイプのヘッドの特徴
対して、ストレートタイプはヘッドがスライドするように動くので、フェース開閉は少ないほうが安定しやすく、それには重心角の大きいモデルがマッチします。セミアークはその中間になります。
右手の向きが示すように、ヘッドが直線的に動くと、ヘッドは上下に動いてもフェースの開閉の度合いは小さくなります。この動きには、フェースの開閉が少ない重心角の大きいパターがマッチします
ヘッドをまっすぐ動かしやすいのがストレートタイプのヘッドの特徴
ストロークタイプの違いは、身長や腕、足の長さなどの身体的特徴、アドレス時の前傾の深さや手の位置によって変わってきます。ストロークしているところを撮影し、ヘッドが弧を描いているか、それともまっすぐかで判断することができます。自分で判断できないという方は、ピンのパターフィッティングを受けてみるといいでしょう。
前傾が深いと肩の動きが地面に対して垂直に近くなるのでヘッドがストレートに動きやすく(左)、前傾が浅くなるほど肩が地面に対して水平に動くため回転の動きが加わり、ヘッドが弧を描く軌道になります(右)
パター用グリップを豊富にそろえるのもピンの特徴です。ヘプラーでは標準で4種類のグリップを用意しています(カスタムを含めるとその数は大変なもの……)。
・PP59…ほどよい太さと重さのピストル型最新グリップ。基本的に、これが装着されていることが多いモデルです。オーソドックスで握りやすため、特にこだわりがなければこれがおすすめです。
・PP60…やや細めで軽量タイプ。断面が五角形をしていてグリップの角がしっかりと付けられています。そのため、手のひらでフェース面を感じ取りやすいモデルと言えます。
・PP61…ピストル型が強調され、シリーズ中最も重いグリップ。これを装着すると手元側が重くなるため、ストロークのテンポの速い方にマッチしやすく、パターをササッと振りたい人と好相性でしょう。
・PP62…シリーズ中最も太く丸みのあるタイプ。手の余計な動きを抑える効果があるので、オートマチックに振りたい方や、手首がどうしても動いてしまう方におすすめです。
左から、PP59、PP60、PP61、PP62。正面(各上段左)と横(同右)、断面(各下段)の形状を見ると、それぞれかなり異なっていることがわかります
ピン独自の機構である、長さ調整機能付きシャフトもラインアップ。シャフトに目盛りが付いています(左)。グリップエンドにレンチを差し込んで回すだけで、パターの長さをかんたんに調整することができます(右)
では、10種類あるヘプラーの各モデルを、タイプ別に見ていきましょう。
<アークタイプ>
ブレードタイプでフェースの開閉をしやすいショートネックを採用したモデル。操作性が高いですが、ミスへの許容度も適度に持っています。重心距離が比較的長く、アイアンやウェッジと近い感覚で打てるので、距離感が出しやすいですね。
つかまりは抑えられているので、左のミスが嫌な人におすすめ
慣性モーメントを高めた、ミスに強い大型マレットですが、重心角を小さく設計して適度に操作性を持たせています。基本的にオートマチックに打ちたいが、いざというときに操作がしたい方にピッタリのモデルです。
ツアープロで大型マレットを好んで使う方の多くが、操作ができるこのタイプを選んでいます
<セミアークタイプ>
ご存じ“ピン型”と呼ばれる、ブレードタイプの定番中の定番モデル。構えやすいブレードタイプのヘッドに、クランクネックと呼ばれるカギ型のネックが付いており、よくつかまる形状です。セミアークタイプに分類されますが、クセが少ないため、ストロークのタイプがなんであれ違和感なく使えます。
どのメーカーもブレードタイプを発売していますが、元祖はこのANSERシリーズ。いまだにパターの基本とされる偉大な形です
小型のブレードタイプの、トゥとヒールのフランジを後方に伸ばしたような形状で、“ツノ”とか“クワガタ”などと呼ばれます。黒い部分が基となるブレードタイプのヘッドで、ブラウンの部分が後方に伸ばしたところ。寛容性と操作性を両立した性能を持っているモデルです。
黒いフェース周りの部分が比重の軽いアルミニウム、ブラウンの後方側がステンレススチールになっていて、見た目より重心が深くなっています
<ストレートタイプ>
オーソドックスな小型マレット。シンプルな形状で、2本のサイトラインとカラーのコントラストもあってとても扱いやすいモデルです。操作性もよく、ストレートタイプですが、いろいろアジャストもできます。
視覚的にもシンプルなので、長く愛用するのに向いていると思います。パターに求められる性能をバランスよく持っていますね
小型のマレットのセンターシャフトモデル。芯がシャフトの延長線上にあるため芯でミートしやすく、直感的に使えるパターです。PIPERとの違いは、PIPER Cのほうが操作性がよいぶん敏感で、ミスに対する寛容性が若干低いところでしょうか。
ラケットやバットと同じように、グリップ部分と芯が同一線上にあるモデル。この構造、ゴルフのルールではパターのみに認められています
日本限定モデル。ヘッド形状は上記アンサー 2と同じですが、クランクネックが長く設計されています。ネックを長くすることで重心角を大きくし、よりストレートに振りやすくなったパターです。
ネックの長さだけが違うだけで特性はかなり変わります。好みにもよりますが、よりオートマチックに振りたいならアンサー 5です
投影面積が大きいヘッドにサイトラインを3本入れ、ヘッド自体にも溝を掘ることで、視覚的にアライメントを取りやすくしたモデルです。オートマチックに振りやすく、打点のミスに強い設計になっています。
比重の重いステンレススチールをヘッドの外周に使うことで慣性モーメントを高め、ミスに強い設計に。視覚から得られる情報が多いモデルです
打点のミスへの強さと操作性を、いいところでバランスさせたモデル。ヘッド中央の丸は、アライメントの取りやすさに寄与するだけでなく、ここにボールを軽く押し付けると簡単にボールが拾える、面白い設計になっています。
茶色い部分が比重の重いステンレススチール。後方には配置していないところからも、重心をいたずらに深くせず、操作性をある程度持たせていることがうかがい知れます
試打してみて最もミスへの寛容性が高かったのがコレ。非常にオートマチックにヘッドが動き、安心してパターにストロークを任せられました。サイトラインがドットになっているのもいいですね。いい意味で、アバウトに構えられます。
ヘッド後方に配置された茶色いステンレススチールが、ミスに強い証。パットを極力シンプルに打ちたいならおすすめのモデルです
ラインアップにストレートタイプのモデルが多いのは、ピンのパターフィッティングで、ストレートにストロークするゴルファーが多いからなのでしょう。
また、打点のミスに強いパターを作ろうとすると、どうしても重心を深く作る必要があるため、必然的に大型マレットになります。大型マレットをアークタイプで設計すると、その性能をきちんと理解したゴルファーが使わないと、ストレートタイプに設計した大型マレットと比べて狙ったところに打ち出しにくくなることが多いので、ストレートタイプのモデルが多くなっているのだと思います。
これらはすべてストレートタイプ。本来パターは、自分が動かしやすいストロークタイプや、構えやすい形状のものを選ぶべきなんですが、何が自分に合っているのか意外とわかりにくいもの。だから、さまざまな形状のモデルがラインアップされているわけですし、メーカーみずからがフィッティングを行っているんです
最後に、誠に勝手ながら、私が個人的に使いたい3本を選んでみました。
左から、PIPER C、アンサー 5、FLOKI
1本目はPIPER C。唯一のセンターシャフトモデルで、芯に当てやすく狙ったところに打ち出しやすいのが気に入りました。
2本目はアンサー 5。日本限定モデルというところもくすぐられましたが、選んだのはもちろん性能で。こういった、ネックのあるブレードタイプでボールをつかまえやすく、なおかつストレート軌道に振りやすいモデルは意外にないんです。
3本目は全く性能の違うFLOKI。重心の深い大型マレットでミスに強い性能ですが、アークタイプに設計されていて、適度な操作性を持っているところがいいですね。速いグリーンにマッチしそう。
ヘプラーシリーズは、基本的に飛ばしやすいパター。パッティングがショートしがちという方には、ぜひ試してもらいたいですね。しっかりとしたはじき感から感じ取れる感触や音が、あなたの距離感を作りやすくしてくれるはずです。
写真:野村知也