オグさんです! 今回はテーラーメイド「P770アイアン」の試打レポートをお送りいたします。
テーラーメイド「P770アイアン」
テーラーメイドの「P」は、同社がアスリート向けのモデルに使用するシリーズ名。タイガー・ウッズのために設計されたマッスルバックアイアン「P7TW」をはじめ、ツアープロや上級者といったミート率の高いゴルファーがアイアンに求める性能を追求しています。
今回試打したのは「P770アイアン」ですが、このモデルを語るに当たって外せないのが「P790アイアン」。アスリート向けのモデルとしては珍しく、打点のミスに強くなりやすい中空構造を採用し、フェースにはクロームモリブデン鋼を使うことで、やさしさと飛距離を追求したアイアンです。さらに、ヘッド内部に注入された充填剤によって打感や打音もチューニングした欲張りなモデルとして、多くのアスリートに受け入れられました。
2020年12月現在のP790は2代目で、飛距離と弾道のバラつき抑制を初代よりも進化させたことで高い人気を維持しています。
そんなP790で培ったデータと技術を元によりコンパクトに仕上げたのがP770です。
では詳しく見ていきましょう!
パッと見はマッスルバックのような中空構造を持つP770。サテンとミラーを使い分けた仕上げは素直にカッコイイです!
小ぶりなサイズでトップブレードもやや薄めに仕上げられており、いかにもコントロール性能がよさそうな形状をしています
フェースの素材にクロームモリブデン鋼を採用。ソール側からL字型に搭載し、「貫通型スピードポケット」との組み合わせによって飛距離とバラつきの少なさを両立させているそうです。しかもフェースは番手別設計となっており、総合的に非常に凝った設計になっています
中空構造ですがそれほど後方にはふくらんでおらず、ミスへの強さとコントロール性のバランスを考えての形状なのだと思います。トゥ側のビスはおそらく、充填剤を入れるための穴のふたでしょう
P790のコンセプトを引き継ぎ、よりシビアな環境で性能を発揮しやすくヘッドサイズをコンパクトに仕上げたのがこのP770。
ボディは中空構造で、3番から7番まで番手別に設計が施されたクロームモリブデン鋼のフェース「L型ICTフォージドフェース」を搭載しています。
高い飛距離性能とミスへの許容性を両立し、さらにヘッド内部に「スピードフォーム」と呼ばれる充填剤を注入することで、フェースの反発力を落とすことなく打音や打感を向上させています。
厳しいライからボールにしっかりとコンタクトし、飛距離を追求しながらミスへの許容性をも高め、それでいて打音、打点といったフィーリングまでをも追求した、まさにかゆいところに手が届くモデルに仕上がっています。
ロフト:#4 22.5°/#5 25.5°/#6 29°/#7 33°/#8 37°/#9 41.5°/PW 46°
ロフトは7番で33°。昨今のアスリートモデルとしては比較的寝かせた設定です。P790が7番で30.5°なので1番手近く寝かせています。飛距離を追求しつつもP790とのポジショニングを考えてのロフト設定なのでしょう。
構えた感じは、立派なアスリート向けモデル。小ぶりなヘッドに適度にシャープなトップブレードが目に入り、わずかなグースネック具合は構えやすく、迷いなくアドレスに入らせてくれます。
ネック側のフェース部分がやや高めに設定されていて、個人的にはヒール側で打ちたくなる印象。こういった形、私は好みです!
特に意識せず打ってみると、はじき感の中にやわらかさを感じる打感が印象的。P790はもう少しはじき感が強かった気がするのですが、さらにやわらかくなっているように感じました。フィーリングを重視したというのもうなずけます。
球質は、基本的には直進性の高い弾道。多少芯を外しても弾道のブレが少なく、一定のエリアにまとまった弾道が非常に打ちやすかったです。
操作性はというと、ガンガン操れるといった感じではないですが、曲げようと思えばちゃんと曲がります。個人的にはもう少し曲がってほしいとは感じましたが、ミスへの許容性を考えるとこれぐらいがちょうどよいのかなとも思います。
小ぶりでシャープなヘッドに技術を詰め込んだハイテクアイアン! 技術の進化を実感できるモデルの1本です
ヘッドが小ぶりだけあって、ボールへのコンタクトしやすさは文句なし!ヘッドのコントロールがこれだけしやすいのに、飛んでいくボールは曲がらない。P770は現代のアスリートモデルのひとつの答えなのかもしれません。
中空とは思えない雑味の少ない打感が好印象。ボールはよく上がりますし、小ぶりなヘッドに慣れてしまえば、中級者にも十分やさしいモデルと言える性能を持っています
テーラーメイド独自の貫通型スピードポケット。この溝がフェース下部でヒットした時でもエネルギーロスを抑え、しっかりとボールを前に飛ばしてくれます
高さ、スピン量はほぼアスリートアイアンの数値、これが少々の打点ズレでも変わりにくい。そして、直進性の高い球質が実戦でとても頼りになると思います
P770は現代の、“アスリートのためのやさしいアイアン”といった仕上がりでした。見た目はマッスルバックと見間違えるほど美しいので、個人的なランキングですが、“見た目と性能のギャップの大きさ”は最近のアイアンの中では5本の指に入ります。ぜひ先入観なく試打してもらいたいと思います。
ライバルモデルは、小ぶりでやさしいという点でピン「i210」やキャロウェイ「APE」といったところでしょうか。とは言え、どれもコンセプトが微妙に違うのでガチンコ比較にはならないと思います。
今のアイアンは本当に進化していますので、選ぶ時に先入観を持つのは禁物ですよ!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。