オグさんです! 今回は2021年大注目のテーラーメイド「SIM2」シリーズのドライバー、「SIM2ドライバー」(以下、SIM2)、「SIM2 MAXドライバー」(以下、MAX)、「SIM2 MAX D ドライバー」(以下、MAX D)3モデルを一挙にまとめて試打させていただきましたので、率直な感想を交えた試打レポートをお届けします!
テーラーメイド「SIM2ドライバー」(左)、「SIM2 MAXドライバー」(中)、「SIM2 MAX D ドライバー」(右)
SIM2シリーズは、2021年1月20日に発表されたばかりのテーラーメイドの最新シリーズ。テーラーメイドというゴルフメーカーは、常に先進的で独創的な技術を得意とし、新作の発表のたびに我々を驚かせてくれるのですが、今回も驚かせていただきました!
従来のドライバーは重心位置を最適化する目的で、異素材や複雑な構造を実現するために別々に製造したパーツ同士を溶接し、溶接できない部分は接着によってヘッドを構成していました。
今作は、ボールを打ち返すフェース部分をコの字状のカップ型にした「ミルドバックカップフェース」に、U字型のアルミ製のフレーム「フォージドミルドアルミニウムリング」を接着し、その上下にカーボン製のクラウンとソールを接着するという、まったく新しい構造で設計されています。
そんな革新的な新構造を採用した結果、従来モデルより低スピンで高慣性モーメントの、ミスに強いドライバーに仕上がっているのだとか。
そんなワクワクするようなお話を聞いた後に、すぐ試打させていただくことができました!
先に結論を書きますが、一般アマチュアゴルファーにはMAX Dを真っ先に試していただきたいです。3モデルの中では一番つかまり性能が高く、安定してボールを飛ばせます!
詳しくモデルごとに見ていきましょう。
カーボンの網目模様を生かしたダークカラーのボディにブルーのアクセントを施した、精悍かつ爽やかなデザインがカッコイイ! 3モデルともデザインかつ搭載技術はほぼ共通で、ヘッドサイズもすべて460cc。大きな違いはソールのフェース側についているウェイトの位置とロゴぐらい。前作同様、空力を考えた「イナーシャ・ジェネレーター」、反発値を限界ギリギリで仕上げ、余計な曲がりを抑制する「スピードインジェクテッド ツイストフェース」、フェース下部の反発値を高める「貫通型スピードポケット」などは引き続き搭載しています
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3モデルの中では最もフェースの投影面積が大きく、つかまり性能が最も高い設計になっています
ソール後方のウェイトは各モデルで重量が異なっており、MAX Dは22g
一般的に見ると、ヘッド後方がかなり高いハイバック形状になっていますが、軽量のフォージドミルドアルミニウムリング、フルカーボンのクラウンとソールによって、この形状でも深低重心になっています
純正で装着されているシャフトは三菱ケミカルと共同開発した「TENSEI BLUE TM50」。しなりが大きく、ヘッドを走らせやすいモデルです
ボディ一体型のフェース「ミルドバックカップフェース」の採用により、慣性モーメントを高め、反発エリアの拡大を実現。MAX Dは高いつかまり性能と高弾道でやさしく飛ばす設計になっています。
ソール後方に搭載されたのウェイト重量は22g。ソールのフェース寄りに搭載されているウェイトはつかまり性能を高めるために最もヒール寄りに設定されています。
構えた印象は前作同様、洋ナシ形状ではありますが、ほぼセンターにボリュームの頂点があるように見え、ややつかまりそうなイメージを持たせてくれます。また、ライ角は3モデル共通ですが、MAX Dはややアップライトに見え、これまたつかまりそうな印象を与えてくれます。フェースアングルは気持ち左を向いているかな?ぐらい。いびつなところはなく、まずまずつかまるんだろうなといったやさしい印象があって、プレッシャーなくアドレスに入らせてくれますね。
MAX Dだけ結構アップライトに見えるのですが、ライ角は3モデルとも共通の56°。顔の向きを見え方で合わせると、これぐらいライ角が違うように見えました。構えた時につかまりそうな雰囲気があり、ちゃんとその通りにつかまる。とても重要なポイントです
今回お借りしたスペックはフレックスSの10.5°。最初は、軽くポンポンと打ってみました。ヘッドスピードでいうと40m/sぐらいでしょうか。狙ったところに飛び出し、ロフトなりの高さで、軽いドロー系のボールが飛んでいきます。体が温まり、徐々にヘッドスピードを上げていったのですが、球質がほとんど変わらない。少々芯を外しても、です。淡々と飛距離だけが伸びていく感じ。43m/sぐらいでややスピン量が増えたかなという程度で、非常に安定した弾道が打てました。
ブルーにアルマイト加工されたアルミニウムリングがデザインのアクセントになっており、とてもカッコイイですね。買い替えたらすぐに周りに気づかれることでしょう!
前シリーズとの大きな違いはヘッドの剛性感でしょうか。芯を外してもヘッドが当たり負けする感じがほとんどなく、弾道の安定感がとても高まっている気がします。つかまり具合の塩梅も秀逸で、しっかりつかまるのですが、つかまり過ぎないですし、前作の「SIM MAX D」と比べて重心距離が長くなったのか、よりオートマチックに打っていけます。ヘッドスピードが低くても強い弾道が打てる分、ロフト以上にすごく上がるといった感じではないので、まず10.5°から試すのがおすすめです。
ストレートな軌道を意識して振るとほぼ狙ったところに飛び出し、ドローボールが安定して打てます。操作はできなくもないですが、オートマチック感が強く、よほど極端にやらないと大きくは曲がりませんでした
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MAX Dよりもフェースよりのウェイトがややセンターに寄ったことと、ロゴのDがなくなったぐらいしか大きな違いがありません。ソール後方のウェイトは24gと、シリーズ中で最大となっています
MAX Dと比べると、少しだけトゥ側にボリュームがあるように見えます。クラウンもいくぶんフラットに見え、フェースアングルもほぼストレートに見えるようになっていますね
MAX Dに比べてフェースはやや中央寄りになり、クラウンもややフラットに設計されている印象
こちらもハイバック形状ですが、しっかり深低重心に。もはやヘッド形状で性能は読み取れなくなってきています……
基本テクノロジーは3モデル共通。MAXは、打点のミスを軽減させた直進性の高いモデル。ソール後方のウェイト重量は、24gを搭載し、ソールのフェース寄りに搭載されているウェイトはヒールとセンターの中間ぐらいの位置に配置されています。
装着シャフトはMAX Dと同じTENSEI BLUE TM50のほか、カスタムシャフトもラインアップされています。
構えた印象は、しっかりたたいていけそうだなといった感じ。MAX Dと比べてフラットな見え方とストレートに見えるフェースアングルとでつかまる印象を与えやすい部分がかなり減らされおり、気持ちよく振り切っていけそうな印象を与えてくれます。右へのミスが嫌な人にとってはちょっとプレッシャーに感じてしまうかもしれません。
お借りしたスペックは、こちらもSフレックスの10.5°。こちらも最初は40m/sぐらいからスタート。最初はスピンが不足気味でややドロップ気味の弾道が多かったのですが、42m/sぐらいから低スピンのままボールの打ち出しが高くなっていきました。
ある意味で今の時代を象徴するような仕上がり。ヘッド自体がつかまり過ぎない特性を持つので、プロやアスリートでも使える性能を持っています。スイング中にフェースを大きくターンさせるような方はインパクトでスクエアに戻しきれず、右へのミスが増えそう。そういった方にとっては難しく感じるかもしれません
こちらもヘッドの剛性感が高く、少々芯を外しても弾道への影響が少なくなった印象。球質は文句なし!低スピンの高弾道でしっかり飛距離が出ています。むしろシャフトのしなりが気になるぐらいなので、ヘッドの性能を生かすためにもヘッドスピードが高い方は、純正シャフトからリシャフトしたほうがよいと思います。
つかまり具合はニュートラルといった感じ。テークバックでフェースを開きすぎてしまうとインパクトで間に合わず、右へのプッシュスライスは出ますが、フェースをスクエアに戻せさえすれば、おおむねコース内には収まるでしょう。左のミスが嫌な方でヘッドスピードがない方は、MAXでもいいですが、ボールがどのくらい上がるかをしっかり確認したほうがいいと思います。
適正な打ち出し角、理想値に近いスピン量。非常に効率がいい弾道が打てています。左右にも曲がりにくく、シンプルに振っていける味付けですね
ソールフェースよりのウェイトが最もセンターに近い位置に配置されているのがSIM2。後方のウェイトは16gで、ミスへの強さやボールの高さよりも操作性や強い弾道を重視して設計している印象があります
ヘッドシェイプはMAXとさほど変わった印象はありませんが、フェースアングルはオープンになっています
フェースはやや小ぶりになっているようですが、個人的にMAXとさほど差があるとは感じませんでした。フラットに見えてしっかりたたいていける形状
SIM2が一番カッコよく見えるアングルかもしれませんね。ハイバックで鮮やかなブルーにカーボン模様も見えて、ハイテク感も感じます
このSIM2だけに用意されているのが、この「TENSEI SILVER TM50」シャフト。BLUEと比べてシャッキリ感があり、先端の剛性が高めてある印象。さらにたたいていける仕様といった感じでしょうか
SIM2は、3モデル中最も低スピンで高い操作性を持つモデル。ソール後方のウェイトの重量を、ほかの2モデルより少なくし、重心を浅くすることで安定して強い弾道を打てるように設計された、アスリート向け仕様です。
このSIM2は、テーラーメイドが認めた「テーラーメイドセレクトストア」のみが扱えるモデルとなっていて、どこでも買えるというわけではありません。同社のクラブフィッターのもとでフィッティングしてもらい、ヘッドの性能をしっかりと生かしてほしいというメーカーの思いが伝わってきます。
構えた感じは、「オープンなフェースアングルなので、自分でしっかりつかまえてください」と言っているかのようで、左のミスを嫌がるゴルファーが好む設定です。洋ナシ形状と相まって、しっかりと右手を使って打っていける雰囲気を持っています。
こちらも試打スペックはSフレックスの10.5°。ヘッドスピード40m/sから打ち始めましたが、ほかの2モデルよりシャフトがややしっかりしている印象で、これくらいのヘッドスピードでは右にやや滑る、ドロップした弾道しか出ませんでした。
3モデルの見分け方は、ウェイトの位置。左からMAX D、MAX、SIM2です
ヘッドスピード42m/sぐらいになり、ようやく球が上がり始め、フェード系の弾道でもスピンが増えず非常に強いライナー弾道が自然と打てる仕様です。つかまりはMAXよりも抑えてあり、ストレートを意識した弾道でも、少しフェードしていくぐらいに抑えてあります。ただ、MAXよりも操作性がいい設定のおかげなのか、インテンショナルに曲げることは意外と楽にできました。
チタン、アルミにカーボンと、素材を複数使いながらも、テーラーメイドらしい、乾いたソリッドな打感をしっかりと作ってきました。3モデルとも差はありません。不快感は一切なく、ヘッドの剛性感の高さにはちょっと驚きましたね
ミスへの強さはMAXのほうが強い設計なのだと思いますが、個人的にはさほど変わらなかった印象を持ちました。ドロー、フェードといった持ち球をしっかり持っているゴルファーなら、MAXよりSIM2のほうが扱いやすいと感じるかもしれません。
ややドローを意識して打ってみました。プレイヤーの操作をしっかりと受け付けてくれ、距離も十分です。ストレートを意識して振るとやや逃げていく弾道が多く、そのへんはMAXと作り分けされていると思います
SIM2シリーズは、ヘッドの構造にまず驚かされましたが、性能はいたって真面目に正常進化した印象です。特に、当たり負けしにくさと言いますか、弾道の安定感がかなりよくなったと思います。
前作では時期をずらして発表されたMAX Dも今作では同時発表となり、より選びやすくなりました。3モデル展開ですがSIM2はセレクトストアのみの扱いということで、尖った性能が欲しいゴルファーが能動的に動かないと手に入らないモデルになりますので、つかまりのよいMAX DかニュートラルなMAXか、選び方もシンプルになるでしょう。一般的なゴルファーであれば、まずMAX Dから試してみてください!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。