オグさんです!
今回はキャロウェイ「APEX PROアイアン」の試打レポートをお届けします。
キャロウェイ「APEX PROアイアン」
「APEX」シリーズは、キャロウェイが2014年から展開している、主に軟鉄鍛造アイアンに使われるブランド。APEXというブランドは元々「ベンホーガン」というメーカーが使用していましたが、キャロウェイがベンホーガンブランドを一時保有した時代があり、現在はキャロウェイが使用しています。
APEXシリーズのアイアンには、歴代複数モデルが用意されています。アベレージゴルファーに向けた、やさしく結果の出しやすいモデルをメインに、マッスルバックやアスリート向けのキャビティなど、上級者向けのモデルもラインアップするのが定番の流れです。
21年モデルでは、3モデルを用意してきました。どのモデルもかなり革新的でチャレンジングな仕様になっているようなのですが、今回はその中でも個人的に注目している「APEX PROアイアン」を詳しく試打していきたいと思います!
マッスルバックにスリットが入ったような、上級者向けのモデルに見えるデザイン。ですが実際は中空構造になっており、ターゲットプレイヤーに合わせたチューニングが施されています。シンプルで所有感も満たしてくれますね
APEX PROアイアン・#5
APEX PROアイアン・#7
APEX PROアイアン・#9
ヘッドはやや小ぶり、かつトップブレードが細めに設定されているため、かなりシャープに見えます。ですが、PROと名が付くモデルにしては強めのグースネックになっており、ボールがつかまりそうな雰囲気があります。プレイヤーを過度に緊張させない、ちょうどよく締まった顔に仕上がっていますね
フェース素材はステンレス。ドライバーなどで非常に大きな評価を受けているAIによる設計の「FLASH フェース」を、鍛造アイアンで初めて採用しました。APEX PRO専用、なおかつ番手別に最適設計されたフェースが搭載されています
ソールはアスリート向けらしく幅が狭い設計で、ヌケがよさそう。ボディは軟鉄を採用し、内部には重心の最適化を図るために「タングステン・エナジー・コア」と呼ばれるウェートをヘッド下部に装着。さらに打感を追求するため、無駄な衝撃を吸収する「ウレタン・マイクロスフィア」を内蔵しています
ロフト:#4 23°/#5 26°/#6 29°/#7 33°/#8 37°/#9 41°/PW 45°
7番で33°と、アスリートモデルとしては少しだけ立てている設定。過度に飛距離を追求せず、アイアン本来の“狙う性能”を重視した設計になっているのでしょう。このモデルはキャロウェイ公式オンラインストア並びに、CALLAWAY SELCTED STOREでの限定発売となります。
新しいAPEX シリーズの個人的なトピックは、ウッドで好評を得ているAI設計のFLASHフェースがアイアンでどのように作用するのかという点。特に、プロやアスリートをターゲットにしたAPEX PROはどのような性能になっているのか、とても興味がありました。
まず形状ですが、ヘッドシェイプには上級者好みのシャープさがあり、適度に小ぶりなサイズ感もよいですね。ただどの番手もグースネックが採用されているので、苦手な方にはちょっと構えづらいかもしれません。今回は、純正である日本シャフト「MODUS3 TOUR105」のSフレックス装着モデルを5、7、9番とお借りしました。
このソール下部を中空にし、内部にタングステンを入れたことで低重心に仕上げています
まず7番を、ウォームアップを兼ねて軽く打ってみました。第一印象は「打ち出し角が高い!」。
見た目はほぼマッスルバックですが、中空構造だと理解したうえでも、高さが出るなという印象。しっかり低重心化されている効果が出ているのでしょう。
次に5番を打ってみました。これまた楽に上がってくれます。自分のアイアンの6番アイアンぐらいのイメージ。これだけ高さが出てくれれば、ロングアイアンは楽でしょうね。よりシビアなポイントを狙っていけそうです。
操作性はアスリートモデルとして必要十分といったところ。フック、スライス、どちらもちゃんと曲げることができました。
打感は軽やかにはじく感触。硬さはなく、フェースのどのへんで打ったかの情報もちゃんと伝えてくれますね。軟鉄鍛造マッスルバックの重い打感が好きな方には、ちょっと物足りないと感じてしまうかも……
中空構造を採用したからには期待される打点のミスへの強さですが、特に強いなと感じたのは上下のズレ。飛距離の差が少なく、飛び過ぎたりしないのがよかったですね。半面、低く抑えようとしても上がって飛んでしまうところがありますが、結果を考えると仕方のないところでしょう。
左右のズレにも強いのですが、ある程度の操作性を持たせているせいなのか、若干の飛距離ロスを感じました。こうしたほうが実戦での怪我が少ないので、あえてそうしているのかなと個人的に思います。アスリートゴルファーにとって、結果の出しやすい設計になっているという印象を持ちました。
ボールの高さが出るのは精神的にかなりありがたい(笑)。楽にアドレスに入らせてくれますね
最後に9番を打ってみましたが、5番や7番と比べて、よくも悪くも普通のアスリートモデルといった印象。8番以下の番手には、操作性やフィーリングを重視したためなのかFLASHフェースは採用されておらず、代わりに打点部分を肉厚化した「ツアーチューンドフェース」が搭載されています。ほかの番手と違って弾道を低く抑えることも容易で、より緻密にボールを操作することができるようになっています。
#5の弾道データ。普通に打てば通常のアスリートモデルよりも高さが出せるので、安心してグリーンを狙っていけますね。距離も一般的なアスリートモデルよりちょっと出ます
#7 の弾道データ。こちらも高さが出しやすく、ロフト設定の割には距離が出やすい印象です。それでいて、操作性がちゃんとあるのがこのモデルのすごいところ
#9 の弾道データ。9番は普通のアスリートモデルですね。より細かい操作を受け付けてくれますが、ほかの番手ほどはミスへの強さを感じませんでした
APEX PRO アイアンは、アスリートがアイアンに求める操作性をしっかり持ちながら、高い打ち出し角を可能にし、そして打点ズレによる飛距離差を軽減させた、まさに現代のアスリートに向けたアイアンに仕上がっていました。
アベレージゴルファーも十分使えるミスへの許容性を持っているとは思いますが、飛距離とやさしさを重視するゴルファーには正直おすすめしません。そういった方は、APEXシリーズの他モデルがしっくりくるでしょう。
あくまでシビアな環境からシビアなボールコントロールを必要とするスコア重視のゴルファーにとって、結果の出しやすいモデルであると思います。だからこそメーカーも販売店を限定したのでしょう。
ライバルモデルとしては、テーラーメイド「P770」がガチンコになると思います。どちらかと言えば、よりミスに強いのがP770で、操作性やフィーリングを重視しているのがAPEX PROといった印象です。
アイアンの進化を強く実感できるモデルでした!
写真:野村知也