オグさんです! 今回は、2021年春に追加されたタイトリスト「TSi1 ドライバー」をお借りできましたので、試打レポートをお届けしたいと思います。
タイトリスト「TSi1 ドライバー」
シリーズ名の「TSi」とは、同社のテクノロジーを駆使して「スピードを追求する」といったニュアンスの「タイトリスト・スピード」の頭文字に「innovation(イノベーション/革新)」や「inertia(イナーシャ/慣性)」などの頭文字「i」を組み合わせたもの。
今回お借りした「TSi1 ドライバー」はすでに発売されている同シリーズの追加モデルという位置付けで、タイトリストセレクトストア限定モデルとなっています。
TSiシリーズのドライバーの基本モデルは「TSi2」と「TSi3」となっており、この2モデルで多くのアスリートゴルファーはカバーできます。ですがタイトリストは、各ゴルファーの特徴にさらに細かく合わせられるようにと、新モデルを追加してきました。そのモデルのひとつがこのTSi1ドライバーなのです。
TSi2とTSi3はすでにレポートしておりますのでチェックしてみてください。
■ギアフリークも納得の仕上がり! タイトリスト「TSi2」「TSi3」ドライバー
ではTSi1ドライバーを詳しく見ていきましょう。
ソールのウェートの位置やロゴのポジションなど、基本デザインは、すでに販売されているTSi2と似ています。よく見ると細部は異なるのですが、ぱっと見では見分けがつきませんね。ていねいな仕上げで、高級感のあるデザインです
ヘッド形状もTSi2とよく似ています。ややヒール寄りにボリュームがあり、アスリートモデルとしては投影面積も大きく安心感がありますね。TSi2はトゥ側にかなりの丸みを持たせ、つかまりそうなイメージを与えない工夫がされていたのですが、TSi1はそれが抑えられているように見えます
フェース素材には、ほかのTSiシリーズと同様の新素材「ATI425」を採用。ヘッド後方が低く抑えられたシャローな形状になっています
シャフトはTSi1専用の「TSP013 45」を装着。全体的にしなり、タイミングが取りやすい仕上がりになっています
TSi1ドライバーの基本コンセプトは、クラブを軽く仕上げることにより、小さなパワーでより速いヘッドスピードを生み出し、そのヘッドスピードをヘッド性能でしっかり飛距離につなげようという内容になっています。驚くべきはそのクラブ重量。純正モデルのSフレックスのモデルが273gしかなく、これは一般的なアベレージゴルファー向けのモデルと同じか、少し軽い重量です。
確かにクラブが軽量だとヘッドスピードが高めやすく、1発の飛距離は期待できます。ですが、スイング中に重さを感じにくく、安定したスイングがしづらいといったデメリットも出てきます。タイトリストはそこを、軽量でありながらしっかりしたシャフトと、打点のミスに強く、軽くてもスピンの増えすぎないヘッドで対応。軽さによるヘッドスピードアップのメリットにより、飛距離を最大限に伸ばしつつ、上記のデメリットを抑えるという、既存のアスリートモデルとは異なるアプローチで生まれた、実にチャレンジングなモデルと言えます。
本ドライバーをパッと手に取った感じでは、そんなに軽くは感じません。黒いヘッドやシックなデザインによって重厚な印象を受けるからでしょうか……。構えてみると当たり負けしなそうな感じがあり、やさしそうな印象すら受けました。
お借りしたスペックは、シャフトが純正の「TSP013 45」のフレックスS。最初は、ややヘッドスピードを抑えて40m/sぐらいから打ってみました。45.75インチと、アベレージ向けのドライバーと同じぐらいの長さで軽さもあり、ヘッドスピードは確かに出やすいです。
軽く振りきれるというのはやはり大きな魅力。ほかのメーカーで同じぐらいの重量のクラブを探すと、みな、つかまり性能が高い、いわゆるアベレージ向けになってしまいます。ボールをつかまえられる技術を持った方でも安心して振り回せる軽量クラブは、ありそうでなかったと言えますね
飛んでいくボールは、タイトリストのドライバーらしく、ライナー性の低スピン弾道。重量が軽いのでパワーがない人にも振ることはできますが、決してやさしいクラブではありません。つかまりはニュートラルに対して少しだけつかまるといった具合ですし、ボールも上がりやすい感じはなく、ロフトより少し上がる程度。
打点のズレにはかなり強い印象はありますが、それでも飛距離ロスが少ないだけで、ミスはちゃんとミスになる印象でした。ドライバーに対してやさしさを第一に求めるなら、ほかのメーカーのモデルのほうがよいでしょう。まあ、タイトリストを手に取る方々は、そういったモデルだと思っていないと思いますけど。
クラブは軽いのに、弾道はしっかりしたライナー系。これも今までのドライバーにはなかった性能と言えるでしょう。ちなみに打感は適度にはじくソリッドな感触があるのですが、硬すぎない爽快なもの。気持ちよく振り切ることができます
ヘッドスピードをいつもの44m/sに上げて再テスト。普段どおりに振ってもヘッドスピードが高めやすく、楽にスイングすることができますね。「ちょっと球質が軽いかな?」と感じますが、飛距離はきちんと出ています。感心したのはシャフト。強振してもしなりすぎず、ちゃんと着いてきてくれます。普段よりヘッドスピードが出せるので、いつもよりかなり飛んだのも何発かありました。
結構軽めに振り抜いたのですが、思いのほか飛距離が出ている印象ですね。スピンはやや多い気がしますが、280gを切るモデルでこれだけ強い弾道が打てれば十分すぎると思います
TSi1ドライバーは、軽量ではありますが、上級者に近い、ある程度ボールをつかまえられてスコアを常に意識しているゴルファーのためのクラブだと感じました。昔は重いクラブをガンガン振っていたけど、少ししんどくなってきたアスリートシニアや、パワーに頼らずボールを操る技術でスコアを作るゴルファーなんかにピッタリのクラブだと思います。最大の魅力は、普段はサラッと振って、いざというときに強振しても応えてくれる懐の深さでしょうか。
ライバルは、テーラーメイドの「SIMグローレ」や、マジェスティゴルフの「マジェスティロイヤル」。どちらも軽量でありながら強振に耐えるモデルです。
正直、ある程度自分でヘッドスピードが出せるゴルファーには無用の長物でしょう。そういった方はTSiシリーズのほかのモデルのほうが安定して飛距離を出せると思います。
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。