オグさんです。今回は、ほぼ間違いなく市場で高い評価を得るであろうパターをご紹介します。テーラーメイド「TPコレクション ハイドロブラスト」シリーズです。
その理由はいくつかあるのですが、最大の理由は本シリーズの製品のうち、「トラス」という構造を持ったモデルが最近の女子プロから大きな人気を博していることです。
テーラーメイド「TPコレクション ハイドロブラスト」シリーズ、トラス構造のモデル
このパターを手にした複数の選手による優勝争いのシーンが中継映像に映し出されたり、東京五輪代表の稲見萌寧選手が1ラウンド13バーディーのツアー記録を達成したりするなど、このパターは圧巻の結果を残しています。
プロに人気で、しかも結果が出ているパターとなれば、アマチュアゴルファーの間で話題にならないはずはありません。さっそく見ていきたいと思います。
TPコレクション ハイドロブラストシリーズは、現代的な美しさと伝統的な形状を融合させたシリーズとして誕生。8つのヘッド形状をラインアップしています。
高圧の水を吹き付けて表現も仕上げるハイドロブラスト製法を採用し、耐久性の高い滑らかな仕上げを実現。鈍く反射するボディはまぶしさを抑える効果とともに、高級感のある仕上がりを見せています。
テーラーメイドらしい独自のテクノロジーもしっかり搭載。合成樹脂とアルミニウムをかけ合わせたインサート「ホワイト ピュアロール」を採用。これはインサートに45°の角度をつけた溝を彫ることによって、手ごたえがありながらもやわらかい打感を実現し、インパクト直後から順回転がかかりやすくなるといいます。
45°の角度をつけた溝を彫っているインサート「ホワイトピュアロール」。安定した転がりと絶妙な打感を生み出すといいます
今作の最大のトピックは、いくつかのモデルにトラスデザインを採用したことでしょう。トラスデザインはもともと、「トラスシリーズ」という独立したシリーズの中で初めて登場したもの。女子ツアーでその評判が広がり、現在でも多くの選手がトラスシリーズのモデルを使用しています。
このトラスデザインとは、一般的な1本の棒状のネックではなく、三角形のようにして2点でヘッドとネックを支える形状のこと。テーラーメイド独自の形状で、芯を外してもヘッドがブレにくく設計されています。
前作のトラスシリーズでは構えた時の形状にちょっと違和感がありましたが、今作ではトラスデザインのモデルをやや小ぶりに設計してあります。ハイドロブラスト製法と相まって、非常に構えやすくなっています。
今回は、8モデルのうち、5モデルをお借りすることができましたので、ひとつずつ見ていきましょう!
絶妙な角ばり感を持つ、ザ・ブレードタイプといった形状。非常に美しい
パターの代表的な形状を、最新の技術を使ってていねいに作り上げたのがこのソト。ブレードタイプのパターには、ヘッドの四隅にある程度丸みを持たせたタイプと、角を強調させたタイプがあるのですが、このソトは適度に角張らせつつ、随所に丸みを持たせた非常に美しい形状をしています。ハイドロブラスト製法と相まって、所有感は非常に高いですね!
打てば裏切りのない安定の性能。ホワイトピュアロールはやわらかすぎず、打音もするのでフィーリングが出しやすく文句なし! 最近発売されたブレードタイプの中で、かなりの完成度を誇るパターと言えます。
外側の丸みは、ブレードタイプの顔を決める重要なポイントです!
やや細めのブレードにトラスデザインを採用した、最新のブレードタイプ
伝統的なブレード形状で、ネックにトラスデザインを採用したニュータイプのブレードタイプのパター。「TB」とはトラスブレードの頭文字ですね。ブレードタイプのメリットであるスッキリした見た目や構えやすさはそのままに、曲げ剛性に強いトラスデザインのネックを採用。この形状の弱点であるミスヒットへの寛容性を高めています。
振り心地は従来のブレードタイプとほぼ変わらず、違和感は全くなし。それでいて芯を外してもミスになりにくい、画期的なパターと言えます。通常のブレードタイプパターとの違いはネックの見え方ぐらい。現在ブレードタイプを使っている方で、よりやさしいモデルをお探しの方はもちろん、ブレードタイプが構えやすくて好きだけど、ちょっと難しいと感じている方にもおすすめできます。
2点でヘッドを支えているため、芯を外してもベッドがブレにくい。トラスデザインの最大のメリットです
ブレードタイプのヘッドを三角形で吊り下げたようなデザインになっています
その名の通り、トラスデザインを採用したセンターシャフトのモデルです。トップブレード中央から大胆にトラスデザインでつなぐという、今までのパターにない形状が最大の特徴。
一般的なセンターシャフトはフェース面がシャフト軸線より前方に出ているモデルが多いのですが、このモデルはフェースを少しだけ後方に下げた設計になっています。こうすることでボールを右足寄りにおいて構えやすくなり、ブレードタイプのように構えられるようにしています。
センターシャフト嫌いの方にもぜひ一度試してもらいたいモデルです。
横から見るとその特異な形状がよくわかります。ボールを構えた状態で後方から見ると、ボールがすべて隠れてしまいます
ブレードタイプのセンターシャフトはよくも悪くもヘッドがターンしやすく、トウ、ヒール、どちら側でミスヒットしてもヘッドがブレやすいという大きな欠点がありますが、このモデルはそれを大きく改善させています。センターシャフトのメリットである芯に当てやすさはそのままに、少々芯を外しても転がりが変わりにくい。ブレードタイプのセンターシャフトの概念を大きく覆す1本になる気がしますね。
前作のトラスシリーズでは、トラスデザインがもたらす立体感によってブレードに若干の違和感がありましたが、このハイドロブラストではそれがかなり解消され、かなり構えやすくなっています
曲線を多用したトラスデザインのマレットモデル。重心は短めでボールのつかまりはよさそう
トラスデザインを採用した、重心が浅めのマレット。「TM」はトラスマレットの頭文字です。ブレードタイプと比べて、ブレード長が短く、投影面積を大きめにしているため重心が短め、深めになっています。
ヘッドを浮かせた状態でシャフトを支えるとトゥ側にヘッドが傾くトウバランスになっているので、ワイパーのように弧を描いてストロークするプレイヤーでも使えますが、ストレートにヘッドを動かしても扱いやすい仕上がりになっています。
マレットタイプですが、重心を深くしてオートマチックに振らせる味付けではなく、投影面積の大きさで構えやすさを狙い、適度に操作性を残した、いいとこどりの特性を持っています。重心が深すぎないのでとっさのアジャストも受け付けてくれ、上級者にも受け入れられる仕上がりですね。フルオートマチックのパターは別モデルの「スパイダー」に任せてあるのでしょう。
フェース長が短く設計されているとはいえ、しっかりとトゥとヒールに重さを振り分けたミスに強い設計になっています
アードモアの丸みをすべて取って、角を強調したのがこのバンドン
アードモアの丸みのある部分すべてを直線的なデザインに変更したモデルといってよいでしょう。
性能を変えず見た目だけを変えたこのラインアップは、ゴルファーの細かい好みに合わせるためのもの。構えた時に曲線が目に入る形状のほうが目標に対して構えやすく感じる人と、直線だけで構成されたヘッドのほうがいいという人がいます。
目標に対して正確に構えることは、カップインの確率を高めるためにとても重要な要素。そういう部分も重要視しているところからも、このシリーズの作り込みの高さが感じられますね。
ヘッド形状以外は、アードモアとの共通点が多いバンドン。見えないところまで丸みを持たせたアードモア、細部まで直線基調デザインのバンドンと、しっかり作り分けされています
打った感想はアードモアと同じです。個人的に、構えやすいのはこの角ばったバンドンでした。これは人それぞれですので、両方を比べながら試打し、どちらが目標に対して構えやすいかチェックしてみてください。
見てのとおり、重心角もほぼ同じ。テーラーメイドはスパイダーシリーズでも、同じヘッドで細かい仕様違いを用意しています。ユーザーの細かい要望に、メーカーとしてしっかり応えたラインアップをそろえてくれますね
続いて、今回試打できなかった、残りの3モデルをご紹介していきますね!
ワイドなフランジを持ったブレードタイプ。重心を低めにするためにネックが削られています
フランジをやや大きめに設計したブレードタイプ。
打点のミスに強く、振り子のようなストロークで打つと安定しそうな形状ですね。
こういったタイプは鈍重な見ためになりがちですが、ハイドロブラスト製法のおかげかスマートに見えます
長いサイトラインと四角くくり抜かれたフランジが特徴。サイズが大きめのマレット型パターです
ベンドネックを採用したマレットで、こちらはフェースバランス設計になっています。振り子のように、パター任せに打つストロークと相性がよさそうです。
独特なフランジの形状は、構えやすくする視覚効果があるのだそう
ジュノとバンドンが合体したようなモデル!
マレットタイプのバンドンにトラスデザインを組み込み、センターシャフトに仕上げたモデル。ジュノと比べてブレード長が短いので、より芯でとらえやすそうなモデルですね。
構えやすい小ぶりなセンターシャフトといった見た目ですね。打ち方に固執せず、サラッと打っても狙ったところに打ち出しやすそう
TPコレクション ハイドロブラストシリーズは、非常に作り込まれた高性能パターでした。伝統的な美しい形状を継承しながらも最新技術で性能を高め、振り味に影響を及ぼさずにミスへの寛容性だけを高めている印象。女子プロに人気なのもうなずけます!
個人的に評価したいのが、パターの長さによって搭載重量を変えていること。シャフト長が変わると同じヘッド重量ではヘッドの効きが変わり、振り心地まで違うものになってしまうのが常。本シリーズのパターは34インチと33インチ以下でソールに搭載されているウェイト重量を変え、バランスを取っています。プロ仕様だけでなく、一般に販売するモデルまで対応していることがすばらしいですね。
久々に本気で欲しくなったパターに出合えた、楽しい試打でした!
ちなみに、私が使うならジュノです! 普段からセンターシャフトを使っているのですが、このジュノはミスに強く、何より打感がよいのでフィーリングが出しやすかったです。本気で購入を考えております!
仕上げも美しいので所有感もバッチリ! 撮影後もずっと打っていました……
写真:野村知也