オグさんです!今回は、2022年1月に発表されたキャロウェイの「ローグST」シリーズからドライバー4モデルをまとめて試打させていただきましたので、その模様をレポートしたいと思います!
ローグSTシリーズのドライバーは4モデル
2022年に発表されたローグSTは、いわば熟成のシリーズ。
2017年に「GBBエピック」シリーズで初採用された、インパクト時のエネルギーロスを軽減する「JAIL BREAK」テクノロジー。2019年に「EPIC FLASH」に搭載された、AIが設計する「FLASHフェース」。どちらも現在のキャロウェイを支える革新的かつ独創性あふれる技術です。これらの技術は登場以来、新型に搭載されるたびに改良を重ね、ローグSTシリーズでは、「JAIL BREAK AI スピードフレーム」、「FLASHフェースSS22」へと進化しています。
「JAIL BREAK AI スピードフレーム」は、ヘッド内部のクラウンとソールをフレームでつなぎ、インパクト時のフェースのたわみをコントロールする技術。今作ではソール側の剛性を高め、クラウンとソールの剛性に差を持たせることで、フェースがより効率よくたわむようになっています。
JAIL BREAK AI スピードフレームはソール側にバーが追加され、ソール側の剛性を強化。これによりクラウン側との剛性差が生まれ、フェースのたわみをさらに効率化させることに成功しています
「FLASHフェースSS22」は、ターゲットゴルファーの打点データだけでなく、飛びの三要素であるスピン量、打ち出し角、ボール初速の組み合わせまでも含めたアルゴリズムによって設計されています。
左の2つが前作EPIC MAXで右2つ今作ローグST。ターゲットとなるゴルファーの打点傾向に加え、スピン量、打ち出し角、ボール初速をAIのデータに追加。ミスへの強さだけでなく、飛距離も追求したフェースに進化しました
もちろん新技術も取り入れています。ボディ全体とJAIL BREAK AI スピードフレームを一体で成型する「UNIボディ」を採用。溶接や接着個所を減らすことで、軽量化しながら剛性を高めることに成功しています。
さらにソール後方に「タングステン・スピードカートリッジ」を搭載。横に長い形状のウェートをヘッドの最後方に装着することで、深く低い重心を追求し、高い慣性モーメントを実現させています。
スピードフレームを含む、ボディを一体成型にすることで、ボディ剛性を強化。インパクト時のエネルギーロスを極力抑えています
ソールの最後方に配置された、タングステン・スピードカートリッジ。ウェートを横長にすることで、深低重心設計と高い慣性モーメントを実現させています
前作のEPICシリーズは、途中から「EPIC MAX FAST」というモデルが追加され、最終的に4タイプのドライバーがラインアップされていましたが、今回のローグSTシリーズでは、最初から4タイプ用意されています。分類したゴルファーのデータに合わせて、クラブの特性を細かく設計できるAI設計の長所を生かした製品構成と言えるでしょう。
シリーズの中核となるモデル。最も幅広いゴルファーを対象としたヘッドで、極端な特性を持たない、いわゆる“クセのない”モデルです。深く低い重心設計でミスへの寛容性を高めながら、飛距離と振りやすさの両立を追求しています。
ヘッドの特性はほかの3モデルも基本的には同じで、各モデルがターゲットとするゴルファーに合わせてそれぞれの味付けがなされています。このMAXは、適度なつかまり性能を持っており、使い手を選ばない仕上がりになっています。
ソールにもカーボンを使い、ハイテク感と高級感もある、なかなかカッコイイデザインに仕上がっています。オレンジの挿し色もいいですね!
クラウンは、カーボン模様を継承しつつ、マットな仕上げで前作とは違った雰囲気に。ヘッドはヒールにボリュームがある形状で、当たり負けに強そうな印象があります
フェースには細かいミーリングが施されており、雨の日でも安定した性能を発揮してくれそう。前作よりクラウンの凹凸が減り、なだらかになりました。
シャフトラインアップは、純正に専用設計のフジクラ「VENTUS for Callaway」を用意。カスタムには三菱ケミカル「Diamana PD50(S)」、フジクラ「SPEEDER NX50(S)」、グラファイトデザイン「TOUR AD UB-5(S)」を用意しています。
純正のVENTUS for Callawayはしなりが大きめで、しなるポイントも広くタイミングの取りやすい仕上がり。パワーのある方だとSフレックスでも物足りなさを感じるかもしれません。Rで38m/s前後、SRで40m/s前後、Sで42m/sぐらいが目安になると思います。
カスタム系は、すべて50g台の設定。左のミスを軽減したいならDiamana PD、しっかり振って適度なつかまりが欲しいならSPEEDER NX、その中間がUBといった感じです。
純正のVENTUS for Callaway。カスタムシャフトのVENTUSとは違い、かなりしなりが大きい印象。サラッと振るととてもミートしやすかったです。半面、インパクトを強く作りたい方にはちょっと物足りなく感じるかもしれません
↓純正シャフト装着モデル(ほかのロフト、フレックスも選べます)
↓カスタムシャフト装着モデル
ポンと地面に置いてみるとフェースが真っすぐを向き、座りのよさを感じます。
クラウンはマットな仕上げで締まって見えますが、それでも投影面積は広め。落ち着いた雰囲気を醸しつつ、リラックスさせてくれます。
お借りしたスペックは、純正VENTUSのSフレックス、10.5°。軽く素振りをすると、手元から中間より先ぐらいまでがしなる感じ。腕力のない方でもしなりを感じてスイングしやすい味付けになっています。
ヘッドスピード40m/sぐらいで試打スタート。2〜3球打って感じたのは、ヘッドの剛性の高さ。少々芯を外してもヘッドが当たり負けせず、そのまま押し返してくれる感じがあります。その効果か、芯を外しても曲がりはかなり少ないです。
球質は、高弾道の低スピン。曲がりが少ないので、ゆったりとしたリズムで打っていると毎回同じところに飛んでいく、非常に安定した弾道が打てました。
しなりが大きめでアベレージゴルファーにピッタリの純正シャフト。インパクトを強めず、振り切るイメージで振ると飛距離につながりやすかったです
高い剛性を持つUNIボディの効果に加え、FLASHフェースの効果もあるのでしょう、芯を外してもヘッドのブレが非常に少ないです!
ヘッドスピードを43m/s程度まで高めると、ややスピンが増えますが、曲がりが少ないのは変わらず。スピンが増えたのは、シャフトによるところが大きいですね。ターゲットゴルファーの層から外れるのか、ちょっとタイミングが取りづらくなり、ミート率が下がりました。
43m/s以上ヘッドスピードがある方は、カスタムシャフトのほうがヘッドの性能をより生かせると思います。それでもボール初速はなかなかのもの。これだけ曲がらないのは、ヘッドの高い剛性と、フラッシュフェースの恩恵なのでしょう。自分に合わせたシャフトで打ってみたいです!
高いヘッドスピードで打つほど、ヘッドの剛性感のありがたみを感じます。多少芯を外しても大丈夫なんだ!と思わせてくれますよ
打感は4モデルほぼ共通。はじき感があり、ボールの重みがズシリと伝わる“フェースに乗った感”もある独特の気持ちよさを持っています。また今回のシリーズは初速アップをセールスポイントにしていますが、確かに初速は出やすいです。オフセンターヒットでも初速が出やすいことは驚きでした!
自分なりにサラッと振ったつもりでしたが、ちょっとスピンが多め。それでもこの飛距離は大満足ですね。カスタムシャフトにしたらもう少し飛んだでしょう。とにかく曲がらないというのが私のMAXの評価です
MAXをベースに、スライスしたり打ち出し方向が右に出たりするゴルファーに向け、つかまり性能を高めたモデル。重心位置やライ角を調整することで、スイングを変えることなくボールがつかまるようになっています。また若干ですが、ボールも上がりやすくなっています。
基本となるデザインはシリーズ共通。識別点は、ヒール側にある脱着式のウェートの存在と、「MAX D」の文字ですね
構えた印象はMAXとほぼ同じ。敏感な方が若干アップライトかな?と気付くくらいですね
フェースの形状がちょっとだけ違うかな?といったぐらいで、MAXとの外見上の差は見いだせません。トゥ側のシルエットはほぼ同じと言っていいでしょう
シャフトのラインアップは、純正、カスタムシャフトともにMAXと同じです。
純正のVENTUS for Callaway
↓純正シャフト装着モデル(ほかのロフト、フレックスも選べます)
↓カスタムシャフト装着モデル
つかまり性能を高めたドライバーには、ヘッドを地面に置いたときにフェースが左を向く傾向が多く見られます。ですがこのMAX Dはそれをほとんど感じさせず、違和感なく構えられます。
MAXのライ角が59°でMAX Dが60°ですからその差は1°。比較しなければ、ほとんどわからないでしょう。
MAXと同じように40m/sぐらいで打ってみると、確かに、右へのミスはしにくい印象。ですが極端ではなく、そこまでのつかまり性能は感じません。ちょっと極端に振り遅れてみると、多少は右に出ることはありましたが、そこからスライスせず耐えてくれます。インパクトをやや強めると左に飛ぶことはありますが、それでもそこから強いフックにはなりづらい。バランスを考えたちょうどよさがMAX Dの魅力です。
ヘッドスピードを43m/sに高めると、ちょっとつかまり性能が上がる印象。これはシャフトの影響だと思います。しっかり振ってMAX Dの性能を引き出したいなら、SPEEDER NXとの組み合わせがおすすめです。
強めのフックフェースではなく、ライ角と重心位置でボールをつかまえる仕様のMAX D。見ために違和感がないのがいいですね
MAXより高弾道。データ上はスピンがやや少ないですが、初速が出ませんでした。目視ではもう少し飛んでいたと思うのですが、数値に表れませんでした
プロや上級者に向けて開発されたモデル。ボールのつかまりを抑えたニュートラルバイアスで、低スピン性能を追求しており、ある程度パワーがないと性能を引き出せないでしょう。こちらは、キャロウェイセレクテッドストアでの限定発売となっています。
デザインは同シリーズほかのモデルと共通。MAX LSの文字が外見上の違いになります
ヘッドシェイプは、MAXと比べてヒール側がスマートになり、投影面積も小さくなっています
フェース面の形状も違いますね。トゥ側からのシルエットも、クラウンの角度が鋭角になっています
シャフトラインアップは、純正にMAX LS専用に設計された三菱ケミカルの「TENSEI 55 for Callaway」を用意。カスタムシャフトのラインアップは、ほかのモデルと共通ですが、MAX LSのみ60g台のSとなっています。
お借りした試打クラブには、フジクラのSPEEDER NX60(S)が装着されていました。手元側がしっかりした中調子で適度な張りを持ち、振り抜きやすい特性のシャフトです。
フジクラのSPEEDER NX60(S)は、ヘッドを適度に走らせてくれる中調子。比較的打ち手を選ばず、幅広いゴルファーに対応するモデルです
構えた瞬間からほかのモデルとは違うと教えてくれる、シャープなヘッドが印象的。フェースがやや右を向く座りで、ボールをちゃんとつかまえられる方でないと……と、ヘッドが語りかけてきます。
お借りした試打スペックは、SPEEDER NX60装着の9°。実際に打ってみると、40m/s程度ではまったく歯が立たず。すぐに43m/sに高めてみましたが、それでもしんどい。狙った方向に打ち出せるのですが、最後に右に滑っていく弾道が多く、みずからつかまえにいってもストレートがやっとでした。
スライス気味の球質でもスピンが少なく、非常に強い弾道が打てます。そこでちょっとズル(?)になるのですが、弾道調整機能を使い、ドローバイアスにし、ロフトを2°増やして再挑戦。すると、私が打ったとは思えない強い弾道が! いわゆるマン振りしてもスピンは増えず、ガンガン前に飛んでいきます。めちゃめちゃ手ごわいですが、ロマンが詰まったモデルです。
弾道調整機能を使って、やっと狙った弾道が打てる仕様に。それでも、私のパワーではギリギリ使えるかどうかといった感じ。スイングもフィジカルも、常にベストコンディションを保っていないと右へのミスが増えそうです
前述した弾道調整機能を駆使したときのマン振りデータです。保存しておきたいぐらいの理想的な弾道でした。大きく芯を外してもスピンは増えにくいので、パワーがあり、左のミスを嫌がるゴルファーには、強くおすすめしたいヘッドです
スイングスピードを高めたいゴルファーに向けた軽量モデル。接着型ホーゼルや超軽量シャフト、軽量グリップを採用してクラブ総重量を軽くすることで、振り切りやすさを向上させています。
さらにつかまりやすいドローバイアス設計にすることで、パワーがなくても振り切りやすく、ハイドローが打ちやすい設計になっています。
全体的なデザインは共通ですが、フェース側のソールがミラー仕上げになっています。見ため的にも軽やかな印象を与えてくれますね。ドローバイアス設計のため、MAX Dと同様にヒール側に脱着式のウェートが装着されています
ヘッド形状は、ぱっと見MAX Dとよく似ています。MAX FASTのみ、構えたときにフェースが白く光るような処理がされていますね。ネックは接着式のため、ほかのモデルと比べてスマートになっています
ライ角はMAX DとMAXの間に位置する59.5°。もちろんフェースも専用設計になっています。外装の仕上げは異なりますが、トゥ側のシルエットはMAXやMAX Dとほぼ同じです
MAX FASTの純正シャフトは、専用に設計されたフジクラ「SPEEDER NX for Callaway」。40g台の軽量モデルで、適度に張りのあるミートしやすい仕上がりになっています。フレックスはR、SR、Sの3タイプ。カスタムシャフトの設定はありません。
フジクラ「SPEEDER NX for Callaway」
↓純正シャフト装着モデル(ほかのロフト、フレックスも選べます)
構えた印象は、MAX Dとほぼ同じ。フェースの仕上げが異なりますが、言われなければわからないレベル。ドローバイアスの設計ですが、違和感なく構えられます。
ほかと同じように40m/sぐらいのヘッドスピードを意識して振ると、軽量化の恩恵も受けてヘッドスピードが少し速くなりますね。
打った感想は、MAX Dよりややつかまる印象。シャフトの性能も影響しているのでしょう。クラブ自体は軽量ですが、ヘッドの重さはちゃんと感じられるので、ミートはしやすいですね。
ヘッドスピードを高めていくとスピンが増えていき、飛距離の伸びは限定的。MAXなど通常の重さのモデルで40m/sぐらい振れる方は、MAX FASTだとかえって安定しないかもしれません。
シニアはもちろん、ちょっと長さがありますがレディースにもおすすめできますね。
軽いスイングでシュッとヘッドが走る感覚が気持ちよい!
ほかのモデルで40m/sぐらいを意識したデータです。しっかりとつかまった弾道で、思ったより飛んでいます。重さのしっかりある同シリーズのクラブと比較したため、軽さのメリットが生きました
ローグSTシリーズの完成度は、非常に高いと感じました。キャロウェイ独自の技術が熟成したことにより、高い基本性能を実現。それを、ターゲットゴルファーごとに細分化して作り分けたヘッドは、ゴルファーのポテンシャルを存分に引き出してくれます。
前作のEPICと比較すると、ミスへの寛容性を高めつつ、飛距離性能をちょっとだけ高めた印象。ミスへの寛容性を高めるために重心を深くすると、どうしても余分なスピンが入りやすくなるのですが、ローグSTはそれがほとんどありません。ミスへの寛容性と飛距離性能、両方を高めているのはすごいですね!
ヘッドの選び方ですが、特に強い悩みがなければMAXがおすすめです。スライスやプッシュなど、右へのミスが多い方は、MAX Dがよいでしょう。パワーに自信がない方は、MAX FASTですが、できれば最初にMAXを試してもらいたいところです。パワーがなくても重さが合った方が安定する方もいらっしゃいますから。MAX LSは完全にハードヒッター用と言ってよいでしょう。生半可なパワーで挑むと火傷しますよ。ただ、使いこなせれば、自身の最長飛距離到達も夢ではないと思います。
同時期に発表されたテーラーメイドの「ステルス」シリーズと比較されることが多いと思いますが、アベレージゴルファーにやさしいのは間違いなくローグSTシリーズです。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。