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「MAX」や「LS」って何のこと? ドライバーでよく見る名前をまとめてみた

オグさんです。今回は個人的にちょっと気になった件を題材にしてみました。

近年の人気クラブの中には、シリーズ名に特定の英単語を加えてモデル名としているケースが多々あります。これは、みなさまもお気付きなのではないでしょうか。「MAX」とか「LS」といった単語です。

2022年の新作モデルで言えば、「ステルス プラス」「ローグST MAX」などなど。近年ではメーカーをまたいで多く使われています。わかりやすくていいなといったぐらいしか気にしていなかったのですが、それがいつごろから使われ始めたのかなどが気になってしまい、ちょっと調べてみました。

本稿ではドライバーに限定してそれらを振り返り、その後どういうモデルにその名称が与えられているかを考察してみたいと思います。

“やさしさ”を示すMAX

まずは一番多く目にするであろう「MAX」から。2018年の夏にピンが発表した「G400 MAX」が、近年のドライバーが「MAX」とネーミングする先駆けになったのではないかと記憶しています。

2018年にピンが発表した「G400 MAX」が、ひとつのキーポイントなのかもしれません

2018年にピンが発表した「G400 MAX」が、ひとつのキーポイントなのかもしれません

G400は、慣性モーメントを高めて直進性を追求するピンが、行きつくところまでいった大型ヘッドを一度見直したシリーズ。発売当初は扱いやすさや操作性とのバランスを考えて、ヘッドサイズを少し小さくしたモデルを中心としたラインアップでした。シリーズ自体は好調でしたが、最新のモデルで直進性を追求したモデルも欲しいという声があり、高い慣性モーメントを誇るモデルとして追加発売されたのが「G400 MAX」でした。

発売後、ヘッドの操作性はいいのに曲がりが少ないと、多くのゴルファー、特にトップアマに好んで使用されたモデルです。

高い慣性モーメントを誇りながら、振りやすさが多くのゴルファーに受け入れられたG400 MAX。今でも十分通用するモデルです

高い慣性モーメントを誇りながら、振りやすさが多くのゴルファーに受け入れられたG400 MAX。今でも十分通用するモデルです

次にMAXと名付けられたモデルが登場するのは、G400MAXの登場から1年半後の2020年。テーラーメイドが新シリーズ「SIM」シリーズの中で「SIM MAXドライバー」を、キャロウェイが「MAVRIK」シリーズの中で「MAVRIK MAX ドライバー」を、それぞれ発表しました(後に「MAVRIK MAX FAST ドライバー」も発表)。

MAXの先駆けであるピンはどうしたのかというと、この前年2019年に「G410 シリーズ」を発表するのですが、そこにMAXの名前はありませんでした。代わりに、前作ではシリーズ名のみだったスタンダードモデルに「PLUS」という名を与えて発表していますが、これには理由があります。

「G400 MAX」は慣性モーメントを追求したモデル。後継の「G410 PLUS」は性能のバランスを追求したポジションであり、慣性モーメントを特段追求したモデルではなかったのです。慣性モーメント自体もG400 MAXのほうが大きかったということもあり、MAXではなく「PLUS」という語を採用したのだそうです。

スタンダードの「SIM」より直進性を高めた仕様になっている「SIM MAX」

スタンダードの「SIM」より直進性を高めた仕様になっている「SIM MAX」

「MAVRIK MAX ドライバー」。テーラーメイド同様、スタンダードの「MAVRIK」より直進性を高めたモデルに「MAX」という名称を使っています。打ち合わせしたわけではないでしょうが、どのメーカーも、これと近いコンセプトのモデルにMAXと名付けています

「MAVRIK MAX ドライバー」。テーラーメイド同様、スタンダードの「MAVRIK」より直進性を高めたモデルに「MAX」という名称を使っています。打ち合わせしたわけではないでしょうが、どのメーカーも、これと近いコンセプトのモデルにMAXと名付けています

テーラーメイドとキャロウェイがMAXと名が付くモデルを出した半年後、“元祖MAX”のピンは、「G425 MAX ドライバー」を発表しました。前作ではPLUSの名を使っていましたが、その後継となるシリーズのスタンダードモデルにMAXと名付けています。これは、「G425 MAX」が「G400 MAX」の慣性モーメントを超えたことによるのだそう。前モデルの性能を超えないと新しいモデルは出さないというピンのこだわりが垣間見えるエピソードですね。

「G425 MAXドライバー」は「G410 PLUS」の後継モデルとして開発されたモデル。直進性を高めたコンセプトを追求するにあたって、さらに大きくなった慣性モーメントが「G400 MAX」の数値を超えたこともあり、「MAX」の名が与えられました

「G425 MAXドライバー」は「G410 PLUS」の後継モデルとして開発されたモデル。直進性を高めたコンセプトを追求するにあたって、さらに大きくなった慣性モーメントが「G400 MAX」の数値を超えたこともあり、「MAX」の名が与えられました

翌2021年には、テーラーメイド「SIM2 MAX」、キャロウェイ「EPIC MAX」が登場。こうしてMAXは複数のメーカーで、“ミスヒットに対する寛容性を示す直進性の高いモデル”に使われるようになっていった、と言えるでしょう。

2022年は、テーラーメイドがMAXの名を廃止し、「ステルス」シリーズで、無印と「PLUS(プラス)」を展開してきました。テーラーメイドはここ数年、ツアープロや上級者向けのモデルを無印で展開してきました(SIMドライバー、SIM2ドライバー)。ですがステルスシリーズでは、最もハードなモデルにPLUSの名を付け、標準的なモデルを無印としています。

これは勝手な私の想像ですが、ステルスシリーズは前作と比べて全体的にアスリートに向けた仕様になっているため、「前作までアスリート向けの無印を使っていたゴルファーでも、PLUSはしんどいから無印がちょうどいいですよ」といった無言のサインなのかなと思っています。

そのほか、コブラが「LTDx MAX ドライバー」を発表。新たに「MAX」表記のグループに参入?してきました。キャロウェイの「ローグST」シリーズは、慣例にのっとったネーミングですが、MAXを多用しています。ミスに強く直進性の高いモデルを「MAX」、ミスへの強さとつかまり性能を高めた「MAX D」、ミスへの強さと軽量化が売りの「MAX FAST」、そしてミスに強く、低スピン性能を追求した「MAX LS」です。

MAXは、ミスへの強さや直進性を現す、代表的な名前としてゴルフ界に定着した印象がありますね。よほどセンセーショナルなモデルが「MAX」の名を使わない限り、このイメージは変わらないでしょう。

“低スピン性能”を現す名前

低スピン性能を現すクラブのモデル名には、「ロースピン」の略称である「LS」などが使われるのが近年のトレンドですが、それをドライバーの名前として初めて使ったのは、2017年にピンが発表した「G400 LS TEC」だと思います。当時の呼称は「LS TEC(エルエステック、Law Spin Technologyの略)」で、クラブヘッドには「LST」と表記されていました。

その後ピンは、表記を「LST」に正式に改めました。キャロウェイでは、同じ特性を持つモデルを「Sub Zero」という言葉を使って表現してきました。が、2021年の「EPIC MAX LS」で初めて「LS」を使い、2022年「ROGUE ST MAX LS」でそれを踏襲しています。

コブラも2022年モデルの「LTDx LS」でLSを採用。MAXほどではありませんが、徐々に「LS=低スピンのアスリートモデル」といった流れが定着しつつあります。

「G400LS TEC」。LS表記の嚆矢(こうし)となったモデル。最近のピンのモデルの中では操作性がよく、ボールを操作したいゴルファーに多くの支持を得ていました

「G400 LS TEC」。LS表記の嚆矢(こうし)となったモデル。最近のピンのモデルの中では操作性がよく、ボールを操作したいゴルファーに多くの支持を得ていました

いっぽうテーラーメイドのクラブにおいては、LSという表現は今のところ見られません。スタンダードなモデルであっても低スピン性能が高い同社のクラブとしては、当たり前のことだからでしょうか。

“つかまり”を現す名前

つかまり性能の高さを示すモデル名は、各社の色が出ています。ピンは、2017年に「G400 SF TEC」という表記を使用。つかまえて真っすぐ飛ばせる性能という意味を込めて「ストレートフライトテクノロジー」と命名、「SF TEC(エスエフテック)」と呼称していました。その後は、上記の「LST」と同じく「SFT」に改められています。

テーラーメイドは、つかまり性能を高めた欧米モデルに、ドローを意味する「D」の名を付けたモデルを古くから発売していました。2020年に「SIM MAX D」を発表し、初めて日本モデルにも「D」の名を使用。つかまり性能を高めたことを明確に表現してきました。翌年の「SIM2 MAX D」では踏襲されましたが、2022年の「ステルス」ではハイドロ−を意味する「HD」に変わっています。

「SIM MAX D ドライバー」。日本モデルで初めて「D」の名を付けて発売されたモデル。ドローの頭文字はゴルファーにとってわかりやすいネーミングですね

「SIM MAX D ドライバー」。日本モデルで初めて「D」の名を付けて発売されたモデル。ドローの頭文字はゴルファーにとってわかりやすいネーミングですね

いっぽうキャロウェイでは、つかまりのよいモデルを明確に表記したのは「ローグST MAX D」が最初だと思います。今までは、近いニュアンスのモデルに「STAR」といった名前が使われていましたが、明確につかまるモデルというよりは、ミスに強いやさしめのモデルといった、ややフワッとした感じでの使われ方でしたね。

こうしてみると、このトレンドは2017年の「G400」から始まったものといえるかもしれません。こういったメーカー横断での表記は、賛否あると思いますが、個人的にはとってもわかりやすく、よい流れだなと思います。願わくば、すっごいアスリート向けのモデルに「MAX」なんていう名を付けるようなモデルが出ないことを祈ります。もうすでにあるのかもしれませんが……。

小倉勇人

小倉勇人

ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。

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