オグさんです。今回は、グローブライド「オノフ フォージドアイアン KURO」の試打レポートをお届けします。
「オノフ フォージドアイアン KURO」
「オノフ」は、世界的な釣り具ブランド「ダイワ」を展開しているグローブライドのゴルフ総合ブランド。釣り竿によって培われたカーボン技術をふんだんに使った高性能なクラブと、ブランド全体で構成する独特の世界観により、老若男女問わず人気があります。
オノフは、ブランドの世界観を非常に大事にしていることも特徴で、クラブのデザインはもちろん、キャディバッグやポーチ、ボストンバッグなど、ゴルフ用のイクイップメントすべてがとても凝った作り。そのデザインにほれ込んでオノフのファンになる人もいるくらいです。
釣り竿開発で培われたカーボン加工技術をふんだんに使い、カーボンシャフトを自社で設計・製造できるのもオノフの特徴。ヘッドとのマッチングを自社で煮詰めることができるので、完成度が高くバランスのよいクラブを数多く生み出しています。
オノフが展開するシリーズは、主に2つ。エンジョイゴルファーが楽しくプレーするための機能が詰まった「AKA」(あか)と、今回ドライバーをご紹介する、アスリートゴルファーが求めるやさしさが詰まった「KURO」(くろ)です。
今回ご紹介するのは、「KURO」シリーズのアイアン。アスリートや上級者が求めるやさしさをどう具現化しているのか非常に楽しみです。さっそく見ていきましょう。
ヘッドは中空構造。中空構造を採用する場合は、鋳造製法を採るのが一般的です。しかし、このモデルでは性能を追求するため、あえて手間のかかる鍛造製法によるフォージドボディを採用しています。デザインはシンプルで、一見するとマッスルバックように見える美しい仕上がり。バックフェースのウェイトが、デザインのアクセントになっています
オノフ フォージドアイアン KURO・#5
オノフ フォージドアイアン KURO・#7
オノフ フォージドアイアン KURO・#9
ロング〜ミドルアイアンまでは、直線的でカチッとした顔をしています(#5、#7写真参照)。グリーンを狙う短めの番手(#9)は、トップブレードにやや丸みを持たせ、やわらかくボールを運ぶイメージが持ちやすい形状に。全体的に軽くグースネックでシャープですが、やさしそうな雰囲気も湛えていますね
フェースに特殊なバネ鋼を使い、ソール側から回り込むように作る「Lカップフェース」を採用しています。フェース全体の反発力を高めつつ、フェース下部の当たりでも飛距離ロスを少なくする工夫です。フェース面に見える六角形の模様は、安定してスピンをかけるためのレーザーミーリングです
アスリートモデルとしては、ソール幅はやや広め。ですが全体的に広くするのではなく、ヒール側をやや狭めに設定することで、ダフりに強くしながらヌケのよさも考えた形状になっています
ロフト:#6 28°/#7 32°/#8 36°/#9 40°/PW 44°
ロフト設定は、7番で32°と、昨今のアスリートモデルとしては標準的と言ってよいでしょう。距離よりも安定性に重きを置いて設計されているモデルと言えます。
シャフトは、オリジナル設計のカーボンシャフトとスチールシャフトをラインアップ。一般的に、アスリートモデルのアイアンはスチールのみのことが多いのですが、さすがダイワを有するグローブライド、しっかりと専用設計のカーボンシャフトを用意してきています。フレックスはどれもSのみです。
スチールシャフトは、日本シャフトのアスリート向けブランド「NS PRO MODUS3」から、105と115を用意。105は100g台で、アスリートモデルとしては軽量ながら、高い剛性で強振にも耐える特性。115は約120gで、適度に間を作ってくれるシャフト。好みに合わせて選べます
「オノフ フォージドアイアン KURO」用に専用設計されたオリジナルカーボンシャフト。重量、トルク、バランスポイント、振動数を番手ごとに設計したという、非常に凝ったシャフトです
構えてみると、カチッとした直線的な顔が目に飛び込んできます。ほかのメーカーでは見られない独特の顔です。契約プロの監修のもと開発されたそうですから、そのプロの好みが反映されているのでしょう。個人的には好きな顔です。適度なサイズ感で、難しそうなプレッシャーはまったくなし、です。お借りしたスペックは、フレックスSのオリジナルカーボンを装着した7番。軽く振ってみると、しっかりとした芯があり、しなやかさも感じる動きで、スイング中にヘッドの重さを感じやすかったです。
ドライバーでのヘッドスピード40m/s程度で打ってみると、ロフトが32°だけあって高さも出しやすく、7番らしいスピンをともなった弾道が打てました。意外と言っては失礼ですが、打感が気持ちよい!フェースにバネ鋼を使い、中高構造ということもあって打感にはさほど期待していなかったのですが、ボールがちゃんとフェースにのる感覚と、ソフトな感触を味わえます。
ミスへの強さもかなりのものですね。左右に芯を外してもしっかりとボールを上げてくれますし、飛距離ロスも少ない。アベレージゴルファー向けのアイアンとして販売しても、十分評価されるレベルだと思います。
この「オノフ フォージドアイアンKURO」には、ほかのアイアンにはない「クロスバランステクノロジー」という技術が搭載されています。これは「オノフ ドライバー KURO」にも搭載されている技術で、脱着可能なウェイトがヘッドとグリップに搭載されており、そのウェイトを交換したり入れ替えたりすることで、バランスやクラブ重量を変化させ、振り心地を調整できるというもの。クラブフィッターとしては、こういう技術は大歓迎です。個人個人のスイングに、より合わせた調整ができるのですから。
ヘッドに装着されたウェイトと同じものが、グリップエンドにも装着されています。これらを交換することで、クラブ重量を変えることなく振り心地を調整できます
バネ鋼を使った中空構造は、飛距離を追求したアベレージゴルファー向けアイアンに多いコンビネーション。それを、アスリートモデルに採用したのはなかなかのチャレンジだと思いました。この構造は、確かにミスに強く距離も出しやすいのですが、フィーリング面では不利なのです。しかし、ここまで気持ちよいフィーリングに仕上げたのはさすがとしか言いようがありません!
ヘッドスピードを高めていくと、ちょっと雰囲気が変わりました。ヘッドスピードが高いほどボールの操作がしやすくなり、しっかりとコントロールできます。また、ロフトの割には飛距離も出しやすい。ミスへの強さは変わりませんが、アスリートモデルだけあって、ちょっとヘッドスピードが高い人が性能を発揮しやすい設計なのでしょう。
さすがに、マッスルバックや鍛造キャビティのような鋭い操作性や打感のフィードバックなどは持ち合わせていませんが、フィーリングはしっかりと持ちつつ、操作性やミスへの強さ、そして飛距離を併せ持った、完成度の高いアイアンですね。
アイアンに求められる性能を、全部バランスよく詰め込んだアイアンといった感じ。試合などで戦う競技ゴルファーに重宝されそう
高さもスピンもしっかり入っているのに、普段より半番手ぐらい飛んでいました。何も犠牲にすることなく距離が出ているのですから、素直にすごいなと……
オノフ フォージドアイアン KUROは、結果を求めるゴルファーのために作られたやさしいアイアンという印象を受けました。ミスへの強さを持ちながら、フィーリング面と操作性を犠牲にしないよう研究を重ね、オノフが出した答えが「バネ鋼フェース+中空」だったのでしょう。自分の想像を超える仕上がりでした。中空構造はミスに強いモデルを作りやすいですが、ここまでフィーリングのよい中空モデルはなかなかありません。
ライバルモデルは、テーラーメイド「P790」、ミズノ「Mizuno Pro 223」といったところでしょうか。Mizuno ProシリーズでフォージドアイアンKUROと同じ中空モデルは「225」ですが、性能的には223のほうが近い。試合などに出て結果を残したい!なんて人にはぜひ試して欲しいモデルです。
写真:野村知也