オグさんです!今回はスリクソンの「ZX MkII」シリーズのドライバー3モデルをまとめてご紹介いたします。
「ZX5 MkII ドライバー」(左)と「ZX5 MkII LS ドライバー」(右)
「スリクソン」は、ダンロップがワールドワイドに展開するアスリート向けブランド。今回の「ZX MkII」はその名のとおり、2020年に発売された「ZX」シリーズの2代目です。初代となる「ZX」シリーズは、2021年に松山英樹選手がマスターズで優勝したときに使用していたことで、一気にブランド価値が高まりました。その威光を最大限に生かすため、ゴルフブランドとしては珍しい「MkII」(マークツー)を使ってネーミングされたのでしょう。
「ZX MkII」シリーズのドライバーには、「5」と「7」があり、ゴルファーに合わせて特性を変えて設計されています。前作では、「ZX5」と「ZX7」の各1モデルだったのですが、今作では「5」が2モデル、「7」が1モデル、計3モデル展開となりました。
本稿では、この3モデルをそれぞれ比較しながら試打してみます。
「ZX MkII」シリーズ内のスタンダードなポジションに位置するモデル。アスリートモデルらしく、ややつかまりを抑えてあり、ソール後方にウェイトを搭載することで、直進性とミスへの寛容性を両立させた特性を持っています。
黒を基調とし、ソール中央付近は光沢のある仕上げ、ソール側とトゥ側は反射を抑えた仕上げと分けることで、落ち着いていながら光によって表情が変わる外装です
<カタログ記載のスペック>
●ヘッド体積:460cc
●ヘッド重量:199g
●ヘッド素材
ボディ:Ti-811 Plus(真空精密鋳造)
フェース:チタン Super-TIX 51AF
●ロフト:9.5°,10.5°
●クラブ長:45.25インチ
●クラブ重量:302g
前作と比較して最も変わった部分は、クラウンの素材。現在の主流であるカーボンから、チタンへ変更されています。これは、メインテクノロジーである「リバウンドフレーム」の効果を高めるため。「リバウンドフレーム」とは、剛性の低いたわむエリアと、剛性の高い受け止めるエリアを交互に配置することで、大きなたわみを生み出し、高いボール初速を生み出すダンロップの技術。前作から搭載されていましたが、今作ではクラウンにチタンを採用することで、よりスムーズなヘッドのたわみを生み出し、さらに高いボール初速を生み出せる「リバウンドフレーム MkII」に進化しています。
ヘッド形状は、トゥとヒールにわずかに角を持たせたシェイプを採用。ほんの少しだけトゥ側にボリュームがあるので、微妙な洋ナシ型と言えますね
厚みの差を小さくすることで、よりたわむフェースを搭載。フェースを支える周辺部は、厚みを持たせつつ角を作らないようにすることで、フェースのたわみをしっかり受け止める構造に。さらに、フェースとボディをつなぐ部分を後方に向けて薄くすることで、さらなるたわみを発生させます。クラウンにチタンを採用したボディがそのたわみを受け止めて跳ね返すことで、ヘッド全体でボールを押し返し、高いボール初速を実現させているそうです
シャフトは、専用に開発された三菱ケミカル製「ディアマナ ZX-II50カーボン」を用意。キックポイントは中調子で、パワーのない人からハードヒッターまで、フレックスによって幅広いゴルファーに対応するクセのないシャフトです
ダンロップが自社シャフトに必ず記載するのが、この「インターナショナルフレックスコード」。シャフトを手元から先まで4分割し、各部の硬さ(自社測定値)を1〜9の数値で表すもので、性能特性をわかりやすく表記するために使われています。数値が高いほど硬度が高い、つまり硬い。このシャフトは、手元がややしっかりめに設計され、全体的にしなるというのがわかります
アドレスしてみると、スッキリして構えやすい印象を受けました。460ccの割りには比較的シャープに見えますね。お借りしたスペックは、純正ディアマナのフレックスS、ロフト角は10.5°。試打してみると、直進性の高い弾道がオートマチックに打てますね。ロフト角が10.5°というのもあり、しっかりと高さが出て安定した飛距離が期待できます。スピン量は、適度な量といった感じ。極端な低スピンではないため、扱いやすかったです。
つかまりはニュートラルな印象ですが、重心距離の長さをちょっと感じるというか、ヘッドのターンが穏やかなので、テークバックでフェースをガバッと開いてしまうと右へ打ち出してしまいます。ミスへの寛容性は意外と高く、シャフトのフレックスRを選べば、300gを切る重量ということもあり、フェースをスクエアに戻せる技術があれば、そこまでパワーがなくても使えるドライバーだと思います。
アスリートモデルとしてはやや軽めに仕上がっており、軽やかに振り抜けますね。フェースにのる感じの打感と、気持ちよく余韻の短い乾いた打音が、その気にさせてくれます
やや左に引っかけた弾道ですが、フックボールにはならず。直進性の高さがよく表れたデータです
「ZX5 MkII ドライバー」の後方にあるウェイトを前方に移動させ、浅重心、かつ低重心にすることで、より強弾道に仕上げたモデルで、2022年11月現在、松山英樹選手も実戦投入中とのことです。
デザインは「ZX5 MkII ドライバー」と共通。相違点は、ウェイトの搭載位置と、トゥ側とヒール側それぞれに書かれた「LS」の有無です
<カタログ記載のスペック>
●ヘッド体積:460cc
●ヘッド重量:199g
●ヘッド素材
ボディ:Ti-811 Plus(真空精密鋳造)
フェース:チタン Super-TIX 51AF
●ロフト:9.5°,10.5°
●クラブ長:45.25インチ
●クラブ重量:302g
ヘッドサイズや、搭載されているテクノロジーは「ZX5 MkII ドライバー」と共通。ウェイトの搭載位置変更による重心位置の違いによって、特性を変更しています。
ヘッドシェイプも、スタンダードモデルとの差はありません。もしかしたら細部に変更されている点があるかもしれませんが、比較してみても差は見られませんでした
フェースに刻まれた装飾やヘッドの形状も同じですね
構えた印象は、スタンダードモデルと変わらずスッキリしています。お借りしたスペックは、スタンダードモデルと同じ純正ディアマナのフレックスSで、ロフト角も同じく10.5°。試打した感想は、「LS」のほうが明らかにボール初速が高く、そしてスピンが少ない! 振れば振るほど飛距離につながりそうな球質です。その反面、スタンダードモデルよりヘッドスピードは要求されます。フレックスSだと、40m/sを切るぐらいのヘッドスピードではボールが上がりきらず、キャリーが不足しがちでした。
球質は、スタンダードモデルと同じ直進性の高いもの。スピンが少ないのでより強い弾道に感じますね。つかまり性能は、スタンダードモデルとほぼ同じニュートラルな印象。浅い重心のためか、こちらのほうがヘッドを操作しようとすると動いてくれるので、ボールをつかまえる技術を持っているゴルファーならある程度コントロールはできると思います。
スタンダードモデルよりヘッドのフェース向きをコントロールしやすいので、狙ったところには打ち出しやすかったです。ヘッドの性能を生かすには、それなりのヘッドスピードが必要
左がスタンダードモデル、右が「LS」です。ウェイトの位置を前後に変更するだけで、これだけ弾道が変わるんですね……
同じロフト角なのですが、LSのほうが低く打ち出された低スピンの弾道になります。スタンダードモデルと「LS」の弾道の共通点は、直進性の高さです
「ZX5 MkII」の2モデルより、ヘッドを10cc小さく設計。ウェイトをトゥ側とヒール側の計2つ搭載することで、操作性とアジャスト性能を持たせたモデル。ダンロップセレクトショップ限定での販売です。
基本となるデザインは同じですが、ロゴとウェイトの搭載位置が異なるため、ぱっと見で判断できます
<カタログ記載のスペック>
●ヘッド体積:450cc
●ヘッド重量:199g
●ヘッド素材
ボディ:Ti-811 Plus(真空精密鋳造)
フェース:チタン Super-TIX 51AF
●ロフト:9.5°,10.5°
●クラブ長:45.25インチ
●クラブ重量:307g
「ZX5 MkII」の2モデルと比べて、異なるのはヘッドサイズとクラブ重量の2項目。それ以外の構造や素材は共通です。
ヘッド形状は、「ZX5 MkII」の2モデルと比べてやや面長。トゥ側に少しだけボリュームがあるのは共通ですね
トゥ側から見るとヘッドの形状がかなり違いますね。厚みがあり、奥行きも短めです
構えた印象は、小ぶりでよい顔。ディープになっている効果か、ヘッド容量の差よりさらにシャープで小ぶりに見えますね。鋭く振り抜けそうです。
こちらのスペックも、フレックスSで10.5°。打ってみると明らかにヘッドの挙動が異なります。ヘッドがターンしやすく、操作しやすい。弾道は、直進性の高さはありますが、操作性を考えてのことなのか、ちょっとだけスピンが入る印象。その効果もあり、ドロー、フェードは楽に打てました。シリーズのほかのモデル同様ボール初速は出やすいので、ティーショットで弾道を作るゴルファーには、こちらがおすすめです。
スイング中のフェース面の管理がとてもしやすく、「ZX5 MkII LSドライバー」よりも狙ったところに打ち出しやすかったです。自分で使うならコッチですね!
直進性も持ち合わせたヘッド特性のため、右に打ち出してからのドローボールは、ちょっと難しかったです。まっすぐ打ち出してからのドロー、フェードはとてもやりやすく、コントローラブルでした
「ZX MkII」シリーズのドライバーは、ボール初速性能と直進性の高さを兼ね備えながら、現代のプロやアスリートゴルファーのニーズに合わせ、3モデルをうまく作り分けてきたなという印象です。直進性とミスへの寛容性の「ZX5 MkII」、直進性と低スピンの「ZX5 MkII LS」、そして操作性の「ZX7 MKII」。プレイヤーがドライバーに何を求めるかによって選べます。
ライバルモデルは、タイトリストの「TSR」シリーズが真っ向からぶつかる感じでしょう。シリーズ内に3モデルを用意する点も同じで、性能的にも似たようなモデルが揃っています。
スリクソンのシリーズは、アフターマーケット用のシャフトのラインアップがもう少し充実してほしいなぁといつも思います。「Miyazaki」シャフトもよいモデルがたくさんありますが、自分が気に入っているメーカーやモデルを自身でリシャフトしないと使えないのは少し残念。ユーザーの買い替えの選択肢に入るのに、かなりハードルが上がってしまいます。ヘッドがとてもよいだけに、今後に期待したいですね!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。