オグさんです。今回は、タイトリスト「TSR4 ドライバー」をご紹介します。
タイトリスト「TSR4 ドライバー」
タイトリストのクラブ作りには、そのベースに一貫した考えがあります。それは、スコアアップへ導くために最高の製品を開発すること。そのクラブがツアープロに評価され、使用されることを目指しています。ゴルファーの最高峰であるツアープロの多くが使用すれば、最高の製品であると評価されたと考えているからです。事実、前作の「TSi」シリーズのドライバーはPGAツアーでの使用率No.1を獲得しており、タイトリストの考える最高の製品に仕上がっていました。
本作「TSR」シリーズは、そんな完成度の高い「TSi」シリーズの性能を受け継ぎつつ、航空宇宙産業で採用される希少なチタン素材をフェースに採用したり、モデルごとに専用設計された「VFT」と呼ばれるフェース構造を用いたりするなど、さらなるスピードアップと許容性を高めながら、プレイヤーのスイングタイプに合わせて完成度が追求されています。
「TSR」シリーズのドライバーには、「TSR2」「TSR3」「TSR4」と、ヘッドが3モデル用意されていて、それぞれが個性ある仕上がりです。ゴルファーには、さまざまな個性があります。それらに対応するために、タイトリストの考えでは3モデルが必要なのでしょう。
「TSR2」と「TSR3」はすでに試打レビューを掲載していますので、興味のある人はそちらもぜひご覧ください。今回取り上げるのは、「TSR4」。タイトリスト自身が“究極のロースピンドライバー”とうたうモデルです。
それでは詳しく見ていきましょう。
全体的に黒で統一され、鈍い光を放つ仕上げ。威圧感すら漂っているように思います。シンプルで好感が持てますね
<カタログ記載のスペック>
●ロフト:8°/9°/10°
●クラブ長:45.5インチ
●クラブ重量:318g(TSP311 65・S)/ 319g(TOUR AD DI 6S)
ロフト設定は「TSR」のほかの2モデルとほぼ同じ。長さや標準のライ角も同じですが、標準で用意されているシャフトの種類やスペックが異なり、重量が重く設定されています。低スピンが売りのヘッドだけに、それなりにヘッドスピードが高いゴルファーに向けた仕様です。
ヘッドシェイプはいわゆる洋ナシ型。ほかの2モデルが460ccなのに対して、「TSR4」は430ccと、ひと回り小ぶりです
フェースには、航空宇宙産業で使用される希少なチタンを採用。フェースの中心に向かって厚さを調整することで、フェース全体に一定で高い反発性能を発揮する「マルチプラトーVFTフェースデザイン」によって、飛距離と許容性の両立を図っています。これは「TSR2」と同じテクノロジーです
「TSR4」には標準仕様として、「TSP311」と名付けられた60g台のオリジナルシャフトが用意されます。しっかりした重量で、しなるポイントがわかりやすい「TSP311」は、ミートしやすく、比較的打ち手を選びません。このシャフトがシャフト選びのひとつの指針となります。
ほかにも、プレミアムシャフトとしてグラファイトデザイン製の「TOUR AD DI-6」をラインアップ。「DI」のキックポイントは中から手元で、つかまりを適度に抑える特性。左のミスを抑えたいゴルファーから高い支持を得ています。「TSP311」でうまくタイミングが取れない場合は、「DI」もしくはほかのカスタムシャフトを検討するとよいと思います。
「TSP311」の重量は64gと、純正シャフトとしてはかなりしっかりめ。クセのないしなりで、しっかり振っていけます
「TOUR AD DI」は、多くのツアープロが使用するロングセラーモデル。タイトリストがさまざまなシャフトをテストした結果、自社のヘッドの性能を引き出せるモデルとして選んだ、言わば“お墨付き”のシャフトです
構えてみると、そこまで小さくないという印象を受けました。確かに投影面積は、ほかの2モデルと比べてコンパクトですが、それは並べて比較してみての話。パッと構えてみるときれいな洋ナシ型で、極端なプレッシャーは受けません。むしろ、きれいな形だなぁと見とれるぐらいです。
お借りしたクラブは、「TSP311」が装着された10°のモデル。ウォーミングアップを兼ねてヘッドスピード40m/sぐらいで打ってみると、ちょっとスピードが足らない印象。ロフトなりに球は上がってくれますが、さすがロースピンを特徴にしているだけあり、ややドロップ気味になってしまいました。カチャカチャでさらにロフトを増やすことはできますが、それでもヘッドスピード42m/sは欲しいところです。
気合いを入れて、自身のフルスイングである43m/sで振ってみると、ようやくヘッド性能の一端を生かせたかな……くらいの弾道が出ました。最高到達点が手前に来るような高さが出たかなと思ったら、そこからすぐに前に飛ぶように変化する球筋で、非常に力強く飛んでくれます。ちょっとの風は気にならなくなりそうです。
ミスへの強さは、430ccにしては高いと言えますね。芯を外しても余分なスピンが入りにくく、曲がりも意外と少なめです。コンパクトなヘッドゆえに操作感はよいのですが、球はあまり曲がってくれません。ヘッドは積極的に動かしたいけどボールは曲がって欲しくない、といったゴルファーにピッタリでしょう。
私自身、ヘッドを積極的にターンさせていくほうなので、この「TSR4」はとても打ちやすかったです。大型ヘッドでは狙った方向にうまく打ち出せない人は、「小さいヘッドは難しい」なんて先入観は持たず、ぜひ試打してもらいたいです。ある程度のヘッドスピードは求められますが……
気持ちよく振ったデータです。適度な高さとしっかりと抑えられたスピン量で、かなり効率のよい弾道が打てました。ある程度ボールをつかまえる技術を持ったゴルファーなら、決して難しいという評価にはならないと思います
「TSR4 ドライバー」は、フェースローテ―ションが大きめで、小さいヘッドを好む(もしくはそのほうが結果がよい)ゴルファーに向けたやさしいモデルに仕上がっていました。気持ちよく振り切れるサイズながら、ミスへの寛容性や曲がりの少なさが磨かれ、安定した結果が出るように設計されています。ある程度の重量があるのも、スピン過多で悩んでいるゴルファーの多くはパワーヒッターであるという理由からでしょう。
ライバルモデルは、限定モデルになってしまいますが、キャロウェイの「ローグST ♦♦♦S」ですね。こちらも小ぶりで振り抜きがよく、曲がりが少ないドライバーです。
「TSR」シリーズのドライバー3モデルは、ゴルファーの個性に合わせて選べるようにそれぞれの特性は異なりますが、よいスイングをしたときによい結果につながるように設計されているという点が共通していると思います。自身のパワーやスキルに合わせてスペックやモデルを選べば、タイトリストのクラブは決して難しいことはなく、どれも結果の出しやすいクラブだと思います。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。