オグさんです。今回は、キャロウェイ「パラダイムX」シリーズの中から、フェアウェイウッド(以下、FW)とユーティリティー(以下、UT)、およびアイアンセットの試打レビューをお届けします。
「パラダイムX フェアウェイウッド」(左)と「パラダイムX ユーティリティ」(右)
昨今のクラブメーカーでは、ひとつのブランド内に性格の異なったモデルを複数ラインアップすることが主流です。当初は、ドライバーが複数ラインアップされ、それ以外のFWやUT、アイアンなどは共通といった感じでしたが、ここ最近は、各ドライバーの特性に合わせたFWやUT、アイアンをそれぞれラインアップするようになりました。
この理由はシンプルです。ユーザーが迷わなくて済むから。シリーズのどれか1本でも自分に合うと思ったら、クラブセッティングをそのシリーズで揃えることにより、多くのクラブがマッチしやすくなります。メーカー側からすれば、どれか1モデルさえ気に入ってもらえば、より多くのクラブを購入してもらえる可能性が高まります。
実際、ドライバーは複数あれど、それ以外を共通モデルとして販売していたころは「ドライバーは気に入ったモデルがあるのだが、FWやUTは共通のモデルを選んでも自分にマッチするのか?」という問い合わせがメーカーに結構寄せられていたんだとか……。
今回取り上げる「パラダイム」シリーズは、4種のドライバーに対してFWを4種、UTを3種、アイアンは3種をラインアップしています。最もアスリート向けの「トリプルダイヤモンド」シリーズにはUTとアイアンの設定がないのですが、こういったモデルを選ぶゴルファーは自身の好みが明確なので、同じブランドで用意する意味があまりないという判断なのでしょう。
「パラダイムX」は、ブランド全体の核となる「パラダイム」をベースに、つかまり性能を高めた仕様。ミスへの寛容性を高めながら、ツアープロが好む強い弾道とつかまりやすさで、右へのミスに悩むゴルファーに合わせたラインです。
「パラダイム」のシリーズ全体を簡単に説明すると下記のとおり。
●パラダイム
スタンダードなポジションに位置し、幅広いゴルファーに対応するライン。ミスへの寛容性と余計なスピンが入りづらい強弾道を両立した性能
●パラダイムX
「パラダイム」をベースにつかまり性能を高めたライン。右へのミスが多いゴルファーに合わせた性能
●パラダイムMAX FAST
「パラダイムX」をベースにヘッド、シャフト、グリップすべてを軽量化したライン。ヘッドスピードを自身で高められないゴルファーに向けた性能
●パラダイム トリプルダイヤモンド
つかまり性能を抑え、強振してもつかまりすぎないライン。ツアープロや上級者へ向けた、コントロール性能にすぐれた性能
今回は、「パラダイム」シリーズの「パラダイムX ドライバー」と同じラインに属するFW、UT、アイアンのレビューをお届けします。UTとアイアンは、キャロウェイセレクテッドストア限定の商品。今回の「パラダイム」にはクラブのラインアップが非常に多くあるため、通常店舗に並べるクラブを限定したい意図があったのでしょう。その結果、スタンダードの「パラダイム」と性能が近い「パラダイムX」に、“限定販売行き”の白羽の矢が立ったのだと思います。
打点ズレのエネルギーロスを抑える「ジェイルブレイクテクノロジー」はFW専用設計。さらに、番手ごとにAIが専用設計した「フラッシュフェース」を搭載しています。右へのミスが多いゴルファーの打点データなどを細かく解析して設計されました。
デザインはスタンダードラインの「パラダイム」と共通です。見分けるポイントは、ロゴ下の「X」の有無
●ボディ素材
└#3・#3HL
17-4 ステンレススチール+トライアクシャル・カーボンクラウン+フォージド・カーボンコンポジットソール+タングステン・スピードカートリッジ約25g
└#5・#7
17-4 ステンレススチール+トライアクシャル・カーボンクラウン+タングステン・スピードカートリッジ約25g
●フェース素材/構造
└#3・#3HL・#5
マレージング鋼C300 / FLASHフェース+フォージドフェースカップ
└#7
カーペンター455スチール / FLASHフェース+フォージドフェースカップ
●ロフト角(度)
#3 15/#3HL 16.5/#5 18/#7 21
基本となるテクノロジーは、スタンダードラインの「パラダイム FW」と共通ですが、番手による構造や素材の使い分けが異なり、つかまり性能の高い「X」に合わせて設計されています。
番手構成は「パラダイム FW」よりは少ないものの、#3、#3HL、#5、#7と、FWとしては多めのラインアップを用意しています。
ヒール側にボリュームがある、いかにもつかまりやすそうなフォルム。適度なフックフェースで、見た目と性能がしっかり一致しています
シャフトは「パラダイム FW」と共通の「VENTUS TR 5 for Callaway」を採用。ほかのシャフトを装着したい場合は、カスタム注文する必要があります。クセが少なく振りやすいシャフトなので、まずはこのシャフトを試してみて、合わない場合はカスタムモデルを検討しましょう。
「パラダイム ドライバー」「パラダイムX ドライバー」「パラダイム FW」「パラダイムX FW」がこの「VENTUS TR 5 for Callaway」を採用。ヘッドが変わっても振り心地が変わりにくいシャフトです
構えてみると、つかまりそうな印象を受けます。ヘッド形状や軽いフックフェースが、打つ前にクラブの特性をしっかりと伝えてくれました。実際に打つと、そのとおりの弾道が出るのがとても好印象。見た目と性能が一致するとスイングに迷いが生じにくくなりますからね。
弾道は自然なドロー系。スタンダードラインの「パラダイム FW」と比べるとやや高さが出ます。打点のミスにも強く、つかまって上がるので一般のアマチュアゴルファーが考える、いかにもやさしいFWといった仕上がりです。
自然と高さが出て、つかまります。安心して振れるのでスイングの再現性が高まりそう。打感ははじき感があり、爽快です
5番から下の番手は弾道調整機能を持たず、よりオートマチックにつかまります
#5のデータです。ストレートな弾道を意識したのですが、ちょっとつかまりすぎていますね。右へ打ち出そうとしても、よほどのことがない限りはつかまった弾道になるため、右へのミスを抑えたい人には、うってつけのFWです
FW同様に「ジェイルブレイクテクノロジー」のほか、番手ごとに設計された「フラッシュフェース」を搭載したウッド型UT。「X」のほかのモデル同様に、しっかりとつかまり性能を高めています。こちらのモデルはキャロウェイセレクテッドストア限定です。
デザインはほかのシリーズと共通。「パラダイム UT」はバックフェースにロフトが表記されますが、「パラダイムX UT」には番手が記されます
●ボディ素材
17-4 ステンレススチール+タングステンスピードカートリッジ約11g
●フェース素材/構造
└3H・4H・5H・6H
カーペンター455スチール / FLASHフェース +フォージドフェースカップ
└7H
17-4 ステンレススチール
●ロフト(度)
3H 18/4H 21/5H 24/6H 27/7H 30
構造的には、「パラダイム UT」とほぼ共通ですが、「パラダイムX UT」のほうがひと回り大きめのヘッドサイズに設計されています。またUTは「パラダイムX」のほうが番手のラインアップが多く、ロフト30度の7Hが用意されているのが特徴です。
FWと同じくつかまりそうなヘッドシェイプを採用し、見た目と性能を一致させています
シンプルなウッド型UT形状につかまり要素を見た目に取り入れた形状でとても構えやすいです。FWとのつながりもよいですね。
打った感想は、右へ打ち出しにくく適度につかまり、直進性の高い弾道が持ち味。とても扱いやすい印象を受けました。UTというクラブはもともとつかまり性能が高いので、過度につかまり性能を高めていないところに好感が持てます。打点がズレてもこの特徴はほとんど変わらないので、アマチュアが考えるやさしいUTをうまく具現化しているクラブだと思います。
ドライバーやFWと揃う打感で、打っていて気持ちよいです
4H(21度)の弾道データです。ちょっと右へ打ち出すイメージで打ったのですが、しっかり戻ってきてくれました。高さも十分で、グリーンでしっかり止まってくれますね
ボディフレームとフェースをAIが設計した、右へのミスが多い人向けのアイアンです。ミスへの寛容性とつかまり性能をうまく融合させています。こちらもUT同様、キャロウェイセレクテッドストア限定販売です。
バックフェースのデザインがこの「パラダイムX」だけ異なり、メーカーロゴが中央に配置されています。個人的には、こちらのほうがキャロウェイらしくて好きですね
●ボディ素材
17-4 ステンレススチール+ウレタン・マイクロスフィア+MIMタングステンウェイト+タングステンメダリオン
●フェース素材/構造
└#4〜#9
カーペンター455スチール / FLASHフェース+フォージド フェースカップ
└PW/AW/51/56
17-4 ステンレススチール/フェースプレート
●ロフト角(度)
#4 18.5/#5 21.5/#6 24.5/#7 27.5/#8 32/#9 36.5/PW 41/AW 46/51 51/56 56
基本構造や素材は、スタンダードな「パラダイム アイアン」と共通ですが、設計や番手ごとの素材の使い分けは「パラダイムX」独自のもの。ロフトは「パラダイムX」のほうが立った設計で、飛距離性能を高めた仕様です。
ブレードがやや厚めに設計されており、堅ろうで当たり負けしなさそうな見た目です。グース度合いも強く、つかまり性能が目に見えるように形作られています
FWやUTもそうでしたが、ヘッド形状がしっかりと性能に現れていて、とても好感が持てますね。弾道も見た目どおり。しっかりとつかまり、多少芯を外しても安定してボールを運んでくれます。ロフト角が立っている設定だけあり飛距離性能も高く、どちらかと言えば、パワーがあまりない人のほうがやさしいと感じる仕上がりです。
「パラダイムX」のラインは、スタンダードの「パラダイム」をベースにしながらも、つかまり性能だけでなく、ミスへの寛容性やボールの上がりやすさなど、“やさしい”と感じる部分をしっかり高めていました。その半面、右へのミスに悩んでいない人が使うと左へのミスが増えてしまう可能性があり、それらを鑑みてセレクテッドストア限定販売になったのではないかと思います。
ライバルモデルは、テーラーメイドの「ステルス2 HD」ラインですね。特性はちょっと違いますが、安定してボールをつかまえてくれる点ではライバルと言ってよいと思います。
よくも悪くも安定して右へミスするゴルファーには非常に有効ですが、左右どちらにも曲がるゴルファーには、スタンダードラインの「パラダイム」がおすすめです。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。